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長谷川博一の処女作 ここに新版として刊行!

子どもたちの「かすれた声」

キレる深層心理を読み解く

小B6判 292ページ 1500円(税別)

装幀/熊澤正人 装画/松山悦子

 

社会を震撼させた子どもたちのキレの背景には

「光(=よい子)」と「影(=悪い子)」の

両極端へのこころの分裂が存在する。

そんなこころの闇を子どもたちは

「かすれた声」でしか伝えられない。

本書が、声に出すことができないでいる子どもたちの

こころの代弁となり、

「かすれた声」で訴えられているものを

受け止めようとする大人たちの指針となりますように……。

 


新版の刊行にあたって(一部)

止まらない「かすれた声」●

 1998年7月に日本評論社より出版された『子どもたちのかすれた声』は、単行本としての私の「処女作」にあたります。その年の一月から三月にかけて、「よい子がキレル」と騒がれる事件が連鎖的に起きていました。世を震撼させた神戸の連続児童殺傷事件の翌年のことです。今でこそ社会に認知された「キレ」という表現ですが、六、七年前はまだ、子どもたちに起きたその新しい現象が何なのかがわからず、大人たちは深く悩んだのでした。
 私はいち早く、この現象を引き起こしている心理を「解離」というメカニズムで説明しようとしました。この仮説の根幹は、子どもたちの心が「よい子(=光)」と「悪い子(=影)」の両極端に分裂した二重構造を成しているとするものです。表面的にはよい子(おとなしい子)が、その仮面の裏で膨れ上がらせた殺意や自虐性を抱えている……。このような異変は、全人口に占める子どもの割合が一三.九%(二〇〇四年)という超少子社会が招いたものだと考えています。大人たちの関心が子どもに過剰に注がれ、常に子どもは大人の眼差しを気にしながら過ごさなくてはなりません。大人の期待に応えて頑張ろうとした「ふつうの子どもたち」が作り出した、とても危うい心、それが「二重性」なのです。
 その後、私は何冊かの本を著しました。「光と影の分裂」というのは、それらの中で貫かれている理念(モデル)です。とくに『たましいの誕生日』(日本評論社)、『しつけ』(樹花舎)、『たすけて! 私は子どもを虐待したくない』(径書房)、『よい子になりたい』(樹花舎)、『カウンセリングマインドの重要性』(樹花舎)では、この表現を直接引用しています。このモデルの妥当性、普遍性、現代性を私自身があらためて実感しなくてはならなくなったのは悲しいことです。ここで「警告」した仮説が、その後、悲しく凄惨極まる事件として実体化を続けているのです。こうした子どもたちの心が向かう先は、今後も変わらないでしょう。さらに進行し、社会のいたるところにその顔が露になっていくでしょう。

(中略)


 子どもたちのかすれた声は、危険な優等生やキレという「顔」を持っています。彼(彼女)らがそのまま成人すると、自殺、虐待やドメスティックバイオレンスなど、社会に受け止められない訴え方──「大人たちのかすれた声」に変わるのです。声をかすれさせた人は、自分が生きる価値を見失い、現実と空想の間を浮遊している新しい人たちなのです。
 「かすれた声」はその「かすれ」から、何かを訴えているのだということに気づいてもらえません。それでも、気づかれることを求めて発せられていることに違いはありません。気づかれるためには気づく存在が必要なのです。このまま事態が進行すれば、近い将来に「かすれた声を持つ人たち」のほうが「受け止める人たち」よりも増えてしまう事態に至るのではないか……。そんな懸念を抱き始めています。そうなると、もはやその声は何の用も足さなくなってしまうでしょう。まだ少しの時間的猶予があるようです。
 本書が、「かすれた声」を受け止めようとする人たちにとって、指針となりますように。
 心に闇をもつ人たちには、「かすれた声」をあげ続ける勇気を注ぐものとなりますように。

本書もくじより

「新版」の刊行にあたって
「初版本」のはじめに

第一章 キレた少年のナイフ事件

ナイフ事件の衝撃/なぜ中学生はナイフを持つのか/「キレる」という表現をめぐって/事件の少年はキレたのか?/大人のとまどい

第二章 深層心理学でキレを考える

こころを診断するということ/解離のメカニズム/無意識という主体 /どのようにキレるのか/心理学は脳科学で解けるか

第三章 光と影のバランスを崩す子どもたち
人格の「光」と「影」/解離の準備段階/解離が引き起こす「影」の反乱/キレたとき、キレたあと

第四章 子どもたちをキレに向かわせたもの
愛されないアダルト・チルドレン/侵入自己の正体/診断名は「複合型PTSD」/「悪い子」のラベル /世代連鎖の行く末

第五章 傷ついた子どもと社会
学校と子どもの癒し/教師自らの癒し/癒しを進める学校と行政のかたち/どんな社会を作るか

あとがき

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