今井美沙子と中野章子の本

女たちの日月

小B6判 320ページ 1800円+税

装幀/熊沢正人

●取り上げた12人の女性たち

澤田美喜 地上の宝を天上に積んだ混血児の母 
武田百合子 ありのままを生ききった愛すべき人 
森茉莉 パッパの夢に生きた過保護老嬢 
美空ひばり 日本人を生ききった戦後最大の歌姫 
高群逸枝 夫に神とあがめられた女性史家 
向田邦子 粋で古風な独身女性の星 
雫石とみ 書くことで救われた市井の作家 
相馬黒光 新宿中村屋の女主人はアンビシャス・ガール 
江口康子 「あれを上げよ、これもあげよ」の無私
長嶺ヤス子 猫と仏とエロスと踊り 
北村サヨ 唄って踊って道を説いた神さま 
市川房枝 シワに刻まれた女性運動の足跡

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●樹花舎から出ている今井美沙子と中野章子の本●

男たちの天地(今井美沙子/中野章子)

心に生きる本(今井美沙子)

猫はエライ(今井美沙子)

やっぱり猫はエライ(今井美沙子)

読者カード/書評の紹介(4月24日更新)

以下に本書の「はじめに」を収録します。本書がどのような意図で編まれたか、ご理解いただけると思います。

今井 昨年二人で、十二人の「夫にはしたくないけど愛すべき男たち」について語り合い、『男たちの天地』という本にまとめたのね。今度また、何人かを除いては妻にしてもいい人もいるけど、私たちが心を寄せた女の人たちを十二人選んでみたわけだけど。

中野 『男たちの天地』の女性版になるような、女の人たちを選んでみたのよね。

今井 現在、活躍している女性たちはたくさんいるけど、ほんとに小粒になったわね。その人たちの歩いた道を追体験してみようかと思うような人が少なくなった。でもこの十二人は、この人たちの後を辿ることで時代の側面を歩くことになる。

中野 私たち女性が現在いる場所を切り拓いてきた人たちだから。ではとりあげた十二人を紹介してみましょうか。まず澤田美喜。エリザベス・サンダース・ホームの創設者。

今井 社会福祉事業家ね。

中野 武田百合子。作家の武田泰淳の妻で自身も作家。それから森茉莉。

今井 森外の長女で作家ね。

中野 美空ひばり。

今井 これは説明はいらないでしょう。日本人なら誰でも知ってる。

中野 日本の戦後史と重なる歌手。それから女性史研究家の高群逸枝。これも大きい人。次に脚本家で作家の向田邦子。非常に魅力的な人。     ●このページのトップに戻る

今井 そうねえ。

中野 やはり作家の雫石とみ。

今井 この方は現存されてます。書くことによって自分の人生は救われたからというので、自分の全財産、二千八百万円ものお金を出して「銀の雫文芸賞」を創設した人。

中野 書くことがそのまま生きることにつながった人なのね。その次に相馬黒光。新宿中村屋の創業者。

今井 中村屋サロンとよばれた、画家、彫刻家、詩人など文化人のサロンの主。

中野 江口康子。

今井 この人は知っている人は少ないやろうね。

中野 今回とりあげた人の中では最もマイナーな人だと思う。

今井 私たちが語り継がなければおそらく忘れられてしまう人ね。この方は「地の塩の箱」運動をやった江口榛一の妻だけど、夫以上にこの運動に没頭した人。やはり過去にこういう人がいて無念の死を遂げたということを皆さんに知って欲しくて、敢えてとりあげたのね。

中野 もう一度光を当てましょう。十人目は長嶺ヤス子。フラメンコ・ダンサー。

今井 彼女も現存しています。

中野 オペラ歌手の三浦環に勝るとも劣らず情熱的で、恋に生き、芸に生きた人。

今井 恋愛の繰り返しだけど少しも汚くない。スカッとしているのね。そして私と同じ猫好きなの。

中野 美沙子さんご推薦。次は北村サヨ。踊る宗教の教祖。

今井 女性教祖はたくさんいるけど、その中でもとくに面白いといったらこの人に勝る人はいないのね。真面目で一生懸命な人はたくさんいるけど、この人ほど面白い人はいない。それにこの人は労働が根底にあっての教祖なのね。

中野 本業は農家の主婦なんだもの。ノンプロの教祖。  ●このページのトップに戻る

今井 いよいよトリは。

中野 市川房枝。

今井 女性の地位向上ひとすじに生きられた。晩年のあのお顔はいいわねえ。透明で。

中野 シワがまた美しいんだもの。

今井 この方がいちばん長生きされたんでしょ、この中では。

中野 没年は八十七歳。

今井 この十二人はみんな最後まで現役だったのね。

中野 とくに市川房枝は最後の参議院選挙で二七八万票も集め、全国区トップ当選だったのね。

今井 史上最高だった。

中野 きれいな選挙を貫いてね。いまこそこんな政治家が求められているんではないかしら。

今井 では私たちがこの十二人をどういう基準で選んだか、それを紹介しましょうか。

中野 1、物欲がないこと。2、女を武器にしなかったこと。3、経済的に自立していること。4、精神的に自立していること。5、楽天的であること。6、性を超えていること。7、血縁を越えて愛されたこと。8、時代の証言者であること。先駆者でもあった。9、カリスマ性をもっていること。北村サヨはまさにそう。10、生涯現役だったこと。そして全員が、一九四六年生まれの私たちと同じ時代の空気を吸っているのよね。

今井 江口康子は病床にあっても困った人が訪ねて来たら、「あれを上げよ これもあげよと いふ妻の 言をよろしと 従ひまつる」と夫が短歌をつくっているような人間愛の固まりのような人で、この人も生涯現役といえるでしょう。それではこの人たちが歩いてきた道を追体験してみましょう。

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