映画ファンのための映画評論誌 誕生

映画論叢VOL1

A5判 88ページ 800円 編輯/丹野達弥

もくじはこちらを。pdfですので、アクロバットリーダーで
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以下に、本書に収録されている「創刊にあたって」を全文紹介します。「読んでから、買って下さい」。

2号も9月20日発売です!

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【創刊にあたって】

 映画ファンの為の、映画ファンが作る雑誌。そんな単純なものが、今の日本にはない。所謂ファン雑誌は、グラビアこそ立派だけれども記事はすべて提灯。よほどミーハーじゃない限り、真の批評なき媒体にはイヤ気がさす。歴史ある「キネ旬」も、ますます通俗化して、本格ファンは読まなくなった。
 80年代蓮實ブームのせいで、映画を語ることが学者先生のステイタスになった。彼等(や、学者きどりのエセインテリ)が仲間うちでやってる雑誌は、正直言って論外。スクリーンを満足に観てないモノが、言葉を上手に操ってみせても、騙されるのは無教養な編集者だけ。またこの編集者を称する連中が権威に弱く、真贋を弁えぬから益々通ぶった口舌の徒が増えている。
 ガキの時分から映画に惚れこみ、さんざん身銭を切ってきた筋金入りのファン。そんな人々の言論、意見を掬いあげる雑誌がない。だいたいこの映画ファンという奴等も困ったもので、揃いも揃ってエゴイスト。手前が一本でも余計に観られさえすれば天国で、文句があっても行動に移さない。黒人が議席とりやがって、と思いながら選挙には行かないイタリア人(「ジャングル・フィーバー」の。スパイク・リーは社会派だぜ)と、おっつかっつ。これからはそんな根性は捨てて、発言せねば。エセインテリや淀川長治系のヨイショ屋ばかりがメディアを支配したら、ここには資本主義的ファシズムが訪れる。自由な言論の場はなくなり……なにより気の利いた映画を観る機会が減るのは確実だ。80年代に映画批評の天下とってた蓮實重彦に、もし一つだけ許せることがあるとしたら、より多くのフィルムをはば広い観客たちにみせようとしたこと。後を継いだ奴等に、そんな使命感はない。
 映画ファンは世俗的名誉に関心がない。ガマンして試写室に出入りし、書きたくもないチョーチン記事を書き、少しでも発言権を得た人間が映画環境を良くしてくれれば良いのだが……。試写に行ってプロになると初心を忘れる人が多い(忘れないごく僅かな有志は、本誌に参加してくれるだろう。現に今号にも)。
 映画ファンは、発表のアテはないが色々と資料を蒐めている。自分自身が愉しむ為に。彼等は的確な批評、ウィットに富んだ鋭いコキおろしを行う。友と二人で喜ぶ為に。そうやって空気中に霧散してしまう彼等無欲なファンたちの言論を、少しでも活字に残したい。そんな思いが茲に結実した。
 先年、東京でも最もコアな映画ファン数人が、『東京いい映画館みたい映画館』を編んだ。案の定みなみなスクリーンを追いかけるに忙しく、原稿を集めるのに往生した。しかし、出来た本は大変な成果があった、と断定できる。身銭を切って、純粋に愉しんできたファンの魂が、熱い言葉となり、批評となってページ上に躍っていた。これに気をよくした気のいい版元が、我々に年数回の発言の機会を与えると言う。どうやら少しは件の本が売れたらしい。
「キネマ旬報」が今や普通のファン雑誌となったいま、載せることは多々ある。とくに映画祭、特集上映、自主上映の目ぼしいものは、批評・感想をなるべく載せる。一般の映画雑誌では、このてのものはスケジュールが記載されるていどだった。日本の批評家で、試写以外に目配りを忘れぬ御仁はごく僅かだからである。
 そして映画人の追悼。通りいっぺんの記事が多い昨今(いや、昔からか)、過去のスタア、監督、スタッフの仕事を記録することは必要である。
 映画人へのインタビューも積極的に行いたい。
 肝要なのは、他の雑誌に書けないこと、で構成される点だ。従って新作紹介、有名監督の作家論&作品論等は本誌とは無縁である。「営業上問題アリ」とか「今さらこんな映画とりあげたって仕方ない」とか、臆病な編集者に却下された文章を本誌は受け入れる。ちなみに、赤狩りと鈴木英夫監督については毎号しつこくやるつもり。編輯長の趣味で。
 また、本誌のレギュラー執筆陣は『いい映画館……』スタッフ全員でもあり、嘗ての映画科学技術研究会(映画の科学的側面を追究する会。各種カラー方式や、撮影機材について会合していた。ここ数年活動停止中)メンバーも数人混じっている。従って、鳴り物入りでリバイバルされたり、特集上映をされたものは、プリント状態を相当キビシくチェックするだろう。近年、市川崑作品を16ミリ版よりヒドいニュープリントで上映した大映や、レッド化した「河」をルノアール映画祭で上映したフィルムセンターなど、もう何年か前に本誌が出ていたら、タダでは済まなんだ筈。
 勿論面白エッセイもある。かなりコアなファン向けだが「怒り」がない読み物も入れておかないと、余裕がなく見えるからね。
 等々、随分と大上段にふりかぶってみせたが、なに、ちょっとウルサイ執筆者が多いけど、普通のファン雑誌です。ページ数は少々変動があるでしょうが、コンスタントに出すよう努力します。応援してやって下さい。
                           本誌編輯長


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