田中伸尚さん、受賞おめでとうございます。

樹花舎より「生と死の肖像」を刊行している田中伸尚さんがこのたび、第8回平和・協同ジャーナリスト基金賞を受賞されました。
受賞式でのスピーチ原稿を送ってもらえましたので、以下に紹介します。
田中さん、これからも体に気を付けて、熱い思いを語り続けてください。
そして、機会をつくって、樹花舎からも本を出してくださいね。

受賞スピーチ 「屈せざる市民」との「出逅い」

 これまで賞というものに全く縁がなかったから、報せをいただいたときに正直言って、大変戸惑い、面食らった。
けれども「基金」設立の趣旨を知って、このような賞をいただけるのは本当にうれしいと思いました。これは、私が書いてきた、現在の憲法の中身である平和や民主主義や人権の獲得のためにしたたかに活動している「屈せざる市民」へのエールと思いました。そしてそんな人びとを追ってきた私への激励、と受け止めました。授賞された長崎の朝鮮人被爆者調査。もっと「書け」と言われているようでプレッシャーも感じますが、ありがとうございました。
 私はこの25年、個人と国家の関係の中で、個人が個人として、国家に身を寄せず、託さずに「私」として生きる場を確保していくために批判/抵抗をしつづけている「屈せざる市民」の怒り、苦しみ、悲しみに寄り添うつもりで書いてきました。授賞対象になった本に登場した人たちは、決して憲法を所与のものとは思っていない。憲法を額に収めて「護憲」などと言ってはいない。だから「憲法を獲得する」としか言えない人たちなのです。
そうした人びとに出逅って、勇気や希望をもらった。それを読者に伝えてきた。その思いが、少数でも届き、勇気や希望をもらったと感じてくれるのがうれしい。

 心がけてきたこと―私の会う人は、多くはこの世界では圧倒的に少数者。その人びとに@コンパッション(共感共苦)Aそして、できるかぎり平易な言葉で語る

*契機
 こうした人びとのことを書くことになったのは、決定的な「出逅い」があったから。それは、中谷康子さんと、その自衛官合祀拒否事件との出逅い―中谷さんのことを書いた本の「あとがき」に私は「彼女の投げかけた問いに係わり続けていこう」と書いた。彼女と彼女の事件との「出逅い」によって、表現者として二つのことを書いていこうと思った。
@個人の生を抑圧する国家及びそれに類するものに抗い、批判し続ける人びと―「屈せざる市民」―の「生」と、場合によっては「死」を書くことによって、二度と再び個人の自由を抑圧する社会をつくらず、それが平和創造につながっていくと思った。
Aもう一つは、敗戦前から現在まで個人を抑圧するシステムとしてあり続けている天皇/天皇制のことを書かねばと思った。その一つが八巻の「ドキュメント昭和天皇」。これは戦後編をこれから書くことになっていますが、まだ果たせていない。

*これから
 今後も、私は批判し続ける「屈せざる市民」に「こだわって」、「出逅い」を求めて旅をし、発信を続けたい。「勇気と希望の配達人」として。
 ただ、あることへの強い「こだわり」は、リゴリズムに陥る危うさがある。それは思想が痩せて、貧弱になることにもつながる。そうならないように気をつけていきたい。

*私が最も尊敬するE.サイードは、こう言っています。
「この世界に希望をもつためには批判し続けることこそが必要だ」
「いつもだれか一人は話を聞いてくれた。その一人が沈黙しなければ、私の訴えは成功だ」。


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