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東京いい映画館(こや)みたい映画館(こや)

──観客の未来のために──

B6判 並製 112ページ 800円 丹野達弥編 装幀・大熊肇

●「オール讀物」2000年1月号に長部日出雄さんによるすばらしい「紹介記事」が掲載されています。一部を紹介していますので、ご覧ください。

●読者より感想がメールで送られてきました。お読み下さい。

 映画は映画館で観るもの。こんな当たり前のことが当たり前でなくなった現代。映画は映画館で観なくちゃ……の合い言葉のもとに結集した六人衆。束ねたのが丹野氏。
 1998年の東京の映画館のありのままをするどく追及した渾身の報告。
 映画は映画館で観なくては! 
 でも、映画館を選んでね!
以下に「まえがき」を紹介します。


まえがき

 つい先だって亡くなった黒澤明は常々こう言っていた。「最近の劇場は映画を観る環境じゃない。それを改善もしないで、〈客が来ない〉と騒いでいるんだ」と。
 上映中でも昼のように明るい場内。逆に肝心のスクリーンは暗くてピンぼけ。ついでにスクリーンサイズもいい加減。音響設計ミスで音は割れるわ、ワンワン回るわ。いくらトラブルがあろうが客に謝りもせず、文句を言えばヤクザはだしで凄む従業員……映画ファンほど劇場から足が遠のく由縁である。
 レストランやホテルが厳しく批評され、ランクづけされるご時世に、同じサービス業である映画館だけがノーチェックで収まり返っていてはお天道様に申し訳が立つまい。それで長年こまめに劇場に通い、不勉強かつ傲慢な館側とやり合ってきた有志たちが立ち上がることにした……それが本書の執筆理由である。映画館自体を批判した本は多分史上初だと思う。ただのガイドなら山ほどあるが、映写などについて採りあげるのはタブー視されてきたからだ。本当はこんなこと、業界と接点のある評論家、ライター諸氏がやってくれれば話が早いのだが、まぁ変にモメて試写から締め出されたらメシの食い上げですからね。仕方ないか。
 で、本書の執筆者はいずれも映画業界とは無縁の者ばかり。毎日身銭を切って映画館に通う〈お客さま〉である。言いたいことを言う資格は十分だ。
 採りあげた対象は都内の主要ロードショウ館及び映画ファンなら必ず足を運ぶ自主上映施設に限った。特に単館ロードショウ館はキャパシティこそ小さくとも〈行かざるを得ない〉ため積極的に採った。採られなかった館はたまたま〈誰も行く機会がなかった〉場合と、〈批評する気さえ起きない〉場合である。だから、大きい劇場でも採られていない館はある。業界人でこの本を手にとった方で、「うちの劇場がないなァ」と思った場合は、自分のところがどちらにアタるか考えてみるのも一興でしょうね。
 チェック要件は、1.スクリーン(ピント、サイズは合っているかどうか)、2.場内の暗さ(フットライトなど、場内の明かりの多寡。暗ければ暗いほど良い)、3.音響、4.座席(見やすいように傾斜しているか)、以上4点に、従業員の態度、エトセトラを加味したものを総合評価とした。
 一応の目安として担当者のチェック月日と上映作品を附記したが、どの館も執筆者全員が複数回通っているところばかり。さほどの偏りはないはずだ。だいいち、上映側にとっては機械的な繰り返しでも、観客にとってはどの回も一期一会の大切な体験。「たまたま、その回だけトラぶったんだ」では済まされぬ。サービス業の宿命である。
 ☆印は、☆1つが最低、☆☆☆☆が最高。この星取りに就ては、数名の執筆者の合議によって決定した。
 チェック後の環境が改善された館、あるいは悪化した館もあろうが、〈98年の映画館状況はこうだった〉とのドキュメントとしてご寛恕いただければ幸いである。 (丹野)


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