天使の9階級
〜 The celestial hierarchy 〜


 【天使の概念】で紹介した天使9階級。 天使達は神が炎、あるいは光から創られたものであり、あくまで純粋な存在であるために人間や悪魔からの揺らぎを受けやすい。精神世界である神に近い天使ほど霊的で堕天しにくく、物質世界である人間界に近い天使ほど物質的で誘惑に駆られて堕天しやすくなる。これは逆に言えば、高位の天使が堕天使となることは、より自らの確固たる信念の元に神に反逆した、ということになる。
ここでは階級別にどのような特徴を持っているのか、どのような天使達がいるのかを紹介したい。
(※所属する天使には諸説あるため、完全に特定することは不可である。同じ天使が多数の階級を兼任していることもある(ラファエルなど))

【天使9階級の構造】
Angel_Class.jpg


【上級天使三隊】

熾天使[セラフィム(Seraphim)]
所属する天使:堕天前のルシファー、ミカエル、ガブリエル、ウリエル、セラフィエル、メタトロン、アブディエル(アブデル)など、諸説あり

 単数形はセラフ(Seraph)。「天使9階級」のうち、頂点に立つ上級第一位にして神にもっとも近く、もっとも霊的で非物質的(精神的)な存在である。セラフィムの語源は、ヘブライ語の「燃える」及び「蛇」であり、その名の示すとおり、「熾」とは燃え盛る炎を意味し、彼ら熾天使は「獅子の如く吠ゆる、紅く輝く電光の空を飛ぶ蛇」として知られている。その姿形は極めて概念的であり、人の前に姿を現すときは、三対六枚の翼を持ち、二枚で頭を、二枚で脚を隠し、残り二枚で飛ぶとされる。彼らの象徴である炎は「愛」と「情熱」を意味し、「神と直接交わり、純粋な光と思考の存在」として「愛の炎と共鳴する」とされている。

 もっとも純粋で、「愛と想像力の精霊」とも謳われる熾天使は、常に神の周囲を飛翔し、神の威光を一身に受け続ける、威厳と名誉に満ち溢れた存在であり、その手にサンクトゥスの歌詞(要するに神を讃えるもの)が刻まれた短剣、もしくは旗を持っているとされる。

 しかし純粋であるが故に、栄誉ある存在であっても、一度神の意向に「疑問」を持ち、自らの信念を持つようになると、その純粋さから神に反逆して純粋悪に手を染めるようになる。この熾天使から堕天使となった者は、そういった信念の元、自ら堕天する者もおり、そういった者たちはそのまま高位の悪魔となり、地獄の強大な支配者となる事が多い。神に最も近い故に堕天しにくい反面、一旦堕天使となると、敢然と「悪」の旗を掲げて、神及び天使たちの掲げる「善」と抗い続けるようになるのだ。これは、物質世界からもっとも遠い熾天使であるが故ともいえよう。

 その顕著たる例がルシファーだ。かつて神の至高作品として作られ、反逆するまで唯一、神の横に侍ることを許されたルシファーは、全ての天使を統帥する大天使長であると共に、この熾天使の長でもあった。それはルシファーがよく蛇や龍として描かれることでも判るだろう。ルシファーの堕天に関しては『堕天使/悪魔の概念→ルシファー』の項で触れるのでそちらを参照していただきたい。
 
 ただ、どのような理由があったにせよ、天界大戦争を経て、ルシファーは堕天し、熾天使の長はミカエルが他の天使階級とともに兼任したという説があり、その指揮官にはガブリエル、ウリエル、セラフィエル(宰相)、メタトロン(宰相)など諸説ある。



智天使[ケルビム(Cherubim)]
所属する天使:ガブリエル、ケルビエル(=ゼルエル)、サンダルフォン、ゾフィエル(ザフィエル・イォフィエル)、堕天前のベルゼブブほか

 単数形はケルブ(チェラブ)。熾天使に次ぐ、上級天使第二位。ケルビムの語源はアッシリアの翼のある守護神、カラブ(Karabu)にあるようだ。その意味は、「祝福する(者)」、「仲裁する(者)」で、「智」の名が示すとおり、「知識」とも解釈される。神の意向を知り、神を見ることが出来る上、その叡智溢れる見識をもって、神性を独自に考察することが出来、惜しむことなくその見解である神の意向を次の階級の天使(座天使)に伝えることが出来る。この智天使の姿は熾天使に負けず劣らず怪異的で、人の顔、牛の顔、獅子の顔、鷲の顔という四つの顔と、四枚の翼を持っており、足元には車輪と、化け物と見紛うような姿だという。

 そして、この智天使には神から託された重要な任務がある。それは生命の樹へと至る途、エデンの園の東門の警備である。神は創世記のアダムとエヴァが楽園を追放された後、この場所に自ら回転する炎の剣と智天使を置き、生命の樹を守備させたとされる。そして彼ら智天使は、知恵の実を得た人間が生命の樹へと近づけさせないよう、脅すこともするという。

 しかし現在では、このように化け物じみた天使だったのにもかかわらず、どういう経緯を経たのか判らないが、彼ら智天使は、愛の矢を放つ愛くるしいキューピッドの、幼子のような姿で残っている。

 この階級に所属する司令官(長)はケルビエル[階級名の由来となった者=ゼルエル(力を司る天使)]、イォフィエル、ザフキエルが挙がる。イォフィエルとザフキエルに関しては、両者共に「ゾフィエル」という共通の異名があり、これには「土星の天使」と言う意味があり、土星層の支配者でもある。ただし、同じものであるとする説には異論もあり、確定的なことはいえない。

 なお、ここでは深く触れないが、新世紀エヴァンゲリオンのオープニング冒頭に現れる四枚羽の化け物はケルビムをイメージしたもので有名である。これについては、『天使紹介』におけるケルビエル(=ゼルエル)及び『エヴァンゲリオンの謎』の関連する項目を参照していただきたい(工事中)。


座天使[スローンズ(Thrones)/オファニム(Ofanim)/ガルガリム(Galgalim)]
所属する天使:ラジエル、ラファエル(?)、オファニエル、ガルガリエルほか

 単数形はソロネ、オファン、ガルガリン。上級天使第三位。彼らは「神の玉座を運ぶ尊厳と正義の天使」あるいは「意志の支配者」とされている。その意味にふさわしく、彼らは気高さと崇高さを持ち合わせており、その存在は全ての悪徳を超越し、人智を超えて高みへと上り詰めることを示している。

 座天使は「座」の名が示す通り、全ての卑俗なるものを退けつつ、主の傍らに「座」を占め、神的原理から来る熾天使及び智天使の「愛」と「知恵」の振動から降り来る物をその「座」で受け止めている。

 また、座天使という階位を語る上で必要不可欠な要素として「車輪」がある。座天使は「目と羽だらけ」の円形=車輪型をしているとされるからである(ラジエルは七人の大天使に数えられる(兼任している)こともあるので例外)。このような姿の特徴から、UFOと見紛うような姿が想起される。この車輪をもって、彼らは「神の玉座の運び手」として、戦車など実戦上の役割を担っていたという。

 通常座天使はスローンズと呼ばれるが、上で示したとおり、二つの異名がある。これは座天使に課せられた職務とその役割上、綿密な組織構成がされているためと考えられる。オファニム、ガルガリムとは、「オファニエル(月の管理人)」と「ガルガリエル(太陽の管理人)」という、2人の天使の名前からきている。前者は「車輪」もしくは「多眼」、後者は「天球」と言う意味を持つ。この2人の天使は対を為す存在であり、いわば並存して仕事を分担し、行っているのだ。何故このような組織構成になっているのか、詳しくは天使紹介のオファニエル、ガルガリエルの項を参照していただきたい(工事中)。


【中級天使三隊】

主天使[ドミニオンズ(Dominions)]
所属する天使:ラファエル、ハシュマル、ザドキエル(=サキエル)、堕天前のバルバドス、堕天前のバラム、堕天前のマルコシアスほか

 単数形はドミニオン。中級天使第一位(9階級第4位)。その階級名が示している通り、「統治する(Dominate)」という意味があり、「主」と表されるとおり、主権を意味し、別名「Lords」「Lordship」「Dominations」とも表されることがある。また、ヘブライの伝承では、ハシュマルの名からとられていると思われるが、ハシュマリムという異名もある。

 彼ら主天使の職務は「天使の務めを統制する」ことであり、神の威光を世に知らしめることをその任務としている。いわば天界の行政官といったところだろうか。彼らは神の主権を全面的に押し出し、神による真の統治を熱望しているのだ。そんな彼らのシンボルは、神の力を示す「錫」である。

 神の主権を肯定し、神の言葉を全宇宙に知らしめるために活動する主天使たち。それ故、主天使の名は自らを高める力、堕天への誘惑への抵抗を示していると捉えることも出来、その職務上、主天使であること自体が神性との連携を保っているため、決して自らを不調和、悪に貶めることはないとされている。

 だが、残念ながら他の階級と同様に、この階級からも、もれなく堕天使が生じている。主天使の長とされることもあるザドキエル(サキエル)においては、両極端だが大天使に数えられることもあれば、堕天使とされることもあり、はっきりしない(詳しくはザドキエルの項を参照)。その名が意味することに反して堕天使が生まれていることには、本来の主天使たちにとっては屈辱であると共に、皮肉としか言い様がない結果となってしまっている。


力天使[ヴァーチュズ(Virtues)]
所属する天使:ミカエル、ラファエル、バービエル、ウジエル、ペリエル、タルシシュ、ハニエルほか

 単数形はヴァーチュー。中級天使第二位(9階級第5位)。「高潔」と言う意味を持つ恩寵の天使である力天使は、「光り輝く者、輝かしき者」として知られており、別名マイトとも呼ばれ、能天使と共に宇宙の物理法則を保持する役割を担っているとされる。

 彼ら力天使は、神の恩恵と勇気を人々に授けるために、「地上の奇蹟」を司り、あらゆる活動において、ゆるぎない勇気を示し、難局にある鼓舞してその力を揮うことが役目とされる。彼らの階級名である「力」が意味するものとは、善なる者や英雄を勇気付け、その気力を与え、その者の持っている力を引き出させることであり、そのことから応援団や踊り子のような存在を想起させる。この気力は、神性の啓示を受けるにあたっていかんなく発揮され、潜在的に神の模倣を志向しているとも考えられている。

 また、アダムとエヴァの子、カインが誕生したときに産婆役を担った天使、及びキリストが昇天する際に付き添った天使はこの力天使とされる。

 この力天使の司令官は、ミカエルやラファエルといった大物天使が兼任している。これは力天使に限らず全ての天使階級にいえることだが、大天使とされるものたちはほとんどの階級の司令官を分担して兼任していることが多い(詳しくは大天使の項を参照)。


能天使[パワーズ(Powers)]
所属する天使:ラファエル、カマエル、カシエル、シャムシェルほか


 単数形はパワー。中級天使第三位(9階級第6位)。能天使はその名によって主天使と並び立ち、力天使と性質を共有するものであることを示しているとされる。力天使の項でも述べたが、能天使は力天使と共に宇宙の物理法則を保持する補佐官的役割を担っているとされる。

 能天使は最も調和的で神の本質に従属する善性によって高みに至る能力と知性を持っており、そして全ての能力の源泉である原理と同一化する傾向がある。これが能天使が「能」といわれる所以と思われる。この原理は可能な限り「天使(最下級の位階)」へと放射される。

 そしてこの能天使には、他の天使よりも極めて危険で過酷な任務がある。それは対悪魔戦闘においてもっとも最前線に立たされることである。これは、裏を返せば悪魔と接触する機会の多い天使たちであり、もっともその誘惑に晒される場にいることになり、堕天しやすい立場にいるということになる。よって、この能天使が自らの任務を完遂するためには、鉄壁の意志と忍耐強さが問われることになる。

 なお、この天使の司令官は七大天使の一人にも数えられる「破壊の天使」カマエルが有名。だがカマエルはその名からしても熾烈なまでの任務をこなすために破壊の限りを尽くす、ある種残忍な側面を持ち合わせているために、オカルト教義などで悪魔とされることも多いようだ。ただ、これは逆に言えばそうまでしなければならないほどに、この能天使の任務が苛烈なものであることを表しているともとれるだろう。


【下級天使三隊】

権天使[プリンシパリティーズ(Principalities)]
所属する天使:ハニエル(≒アナエル、アナフィエルとされることがある)、カマエル、堕天前のベルフェゴール、堕天前のニスロクほか

 単数形はプリンシパリティ。下級天使第一位(9階級第7位)。権天使はその名が意味する「Princedom(=王子が支配する領地)」の通り、地上の国や都市を守護し、統治・支配する天使であり、いわば国家権力のような主権を行使する存在である。

 しかし時代の流れとともに、信仰の擁護や人々の指導者の監視と正義への導きの役目も担うようになったとされる。具体的には、権天使は人々の指導者を監視しつつ、彼等がいわゆる正義に対しての決意を促し、鼓舞しているのである。また、善霊を悪霊から守護するなど、まさに「正義」である神の権力を正しく行使するべく存在している天使集団であり、それ故に彼等は、頑なで正統とされる善悪二元論を持つ傾向があるとされている。

 権天使の有名どころの天使としては、人間エノクを天へ導いたとされるハニエル(エノクを導いた存在は他にアナフィエル、ラグエルなど諸説あり)、破壊天使カマエルなどが挙がる。役割を見ても判るとおり、主天使や力天使、及び能天使と似通ったところがあり、その三つを取りまとめて権力として行使しているのが、所属する天使の指揮官にまで見えているのが判るだろう。


大天使[アークエンジェルズ(Archangels)]
所属する天使:四大天使をはじめとする、諸説ある「七人の大天使」、堕天前のルシファーほか


 単数形はアークエンジェル。下級天使第二位(9階級第8位)。大天使はその名が意味するとおり、元々は全ての天使を統制する高貴な存在であるが、その階級自体は神学が発展する過程において徐々に位階を下げていった。しかし彼等には単純に階級だけで推し量れない概念がある(前ページ参照)。この大天使に所属する天使たちはみな、天使の中でも実力は極めて強大、究極の精鋭であり、神直属の親衛隊といえる。彼等大天使は神の意向を直接聞き、直下に無数の「天使」を従えて指揮している。言うまでもないことだが、この大天使率いる大多数の天使部隊を率いる最高司令官は、大天使長ミカエルである。

 彼等はその階級に関係なく、神と同席することを許されている「御前の天使」、或いは「栄光の天使」と呼ばれ、その職務権限や待遇は非常に高く、まさに特権階級に所属しているといっても過言ではない。また、天使9階級のあらゆる階位を兼任していることもあり、それ故に事実上の地位と実力は熾天使をも上回る存在であるとされる。一般には「七人の大天使」として知られているが、何故七人なのか。それはヨハネの黙示録において「終末」を記された書物の封印が七つあることと何か関係があるとも考えられる。封印が解かれ、世界の終末に吹かれる7つのラッパを担うのが彼ら大天使であるからだ。

 しかし、この「七人の大天使」は、それを構成している天使たちが誰なのかについては諸説あり、完全に特定することは不可能である。ただ、その中でミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルといった四大天使は多くの文献で一致している。問題は残る3人に該当する天使なのだ。この残る3人の天使については、メタトロン、ラジエル、ラグエル、ラミエル、サリエル、カマエル、ハニエル、サラカエルなど、候補が乱立しているのだ。恐らく、この命題に正解などないだろう。

 なお、この大天使からも堕天使になった者、あるいは堕天使扱いにされた者がいる。例えばサリエルなどは、その持っている特徴(見つめられた者が不幸になる邪眼)から「死の天使」の有力候補でもあるため。ラミエルはその肩書きの不明瞭さから、カマエルは破壊天使の肩書きから、といった理由で堕天使とされることがある。他には「ファウスト」で有名なサタンの代役をも務める地獄の七大君主の一人である道化師メフィストフェレスなどがいる。なお、熾天使の項でも述べたが、大天使の頂点に立っていたルシファーもここから堕天したことには変わりない。大天使から堕天使となった者たちはそのまま地獄の強大な君主となるのだ。


天使[エンジェルズ(Angels)]
所属する天使:無名の天使を含める大多数の天使たち、各人間の守護天使、堕天前のカカベル、堕天前のサルマエルほか

 単数形はエンジェル。下級天使第三位(9階級最下位)。守護天使として考えるのであれば人間の数の2倍いるとされる。彼ら天使たちは人間にとって親しみやすい姿、容貌となって現れる。彼ら天使たちは、大天使直属の実働部隊として、その指令を忠実に受け止め、実行に移して任務を遂行する立場にある。守護天使として人間の傍に付き添う際は、その人間とは正反対の性別をとることが多いようだ。

 天使たちは大天使の直下にあることから、大天使の保護を受けているともいえる存在である。その保護と指揮のもと、神の名の下に人間の社会に密接に関わってくる。人間の守護天使として、人間を時には監視し、時には激励したりもし、必要であれば人間の身に誘惑となって現れる悪と対峙することもある。したがってこの天使たちはもっとも人間界と人間に接する機会の多い天使であろう。

 しかしそれは反面、人間からの影響を直接受けることにもなる。物質世界である物欲に駆られやすい人間界に直接触れているために、本質的に純粋な天使は、それに染められてしまうこともある。人間の女性に欲情して地上に降りるグリゴリなどはその例とも言える。だからこそ神と直結している大天使たちがその直接指揮に当たっているとも考えられるだろう。だがそれでも洩れがあって堕天使となるものがいることも確かである。


トップページに戻る  前のページに戻る