『僕の我侭』





ちょうど仕事が終わったばかりみたいだった。
他はともかく、あの仕事結構キツイから。
どうなのかな?って楽屋をチラッと覗いてみたら、案の定、顔に疲れをモロに出してソファーに座っている。
声を掛けるのももしかしたら迷惑かもしれない、そう思って通り過ぎようとしたけれど。
ふとした瞬間。
彼を見つめていた俺の目と、視線を上げた彼の目がバッチリ合って。
マズイと思って目を逸らしたけれど、そんなのもう手遅れ。


『んなとこで何してるの、挙動不審。』


しっかりバレてしまい、仕方なく彼の方へと足を進めていった。
そしてその隣に、少し距離を取って座る。
漂う空気が何故だか重い。
困った僕は、ひたすら自分の靴を見つめていた。

最近松潤と居ると、どうしてもこんな嫌な空気になってしまう。
何故だろうね。
君が大人になってしまった所為?
僕が成長しない所為?
たぶん、どちらも当てはまるのだろう。
でも、人間ってどこか自己中心的なんだと思う。
この嫌な空気の原因は彼だって、心の何処かが云っている。
自分の事とか全部棚に上げて、責任全部押し付けて。
だから
変わってしまった君が悪くて、努力をしない君が悪いって決めつけてしまう。
ちょっとは僕の為に動けばいいんだって、勝手に怒ってしまうんだ。


『…ちょっと端行って。』


眉間に皺を寄せている僕に、松潤はそう言った。
言い方が気にくわない…なんて思ったけれど、今の松潤に言ったらどんな文句が返ってくるか分かったもんじゃないし、
大人しく端へ移動した。
すると彼は自分の鞄から一冊の本を取りだし、ゴロンとソファーに寝ころんだ。
なんだよ、やっぱり自分の為だけ?
ちょっとでも期待した自分が馬鹿みたいじゃないか。
今度ばかりは確実に君が悪い、そう思って文句を言おうと息を吸った。


『んー。』


鼻にかかった甘い声が、側で聞こえた。
膝のあたりに重みを感じ、それに遅れて君の愛用する香りが後を追う。

あれ?って思った時には既に、僕は君の枕に早変わり。
僕の足に頭を置いて、チラリとこちらを見つめてくる。
突然の事で混乱している僕を後目に、ちょっとだけ満足そうな顔して手にした本を開くんだ。
僕も僕で、なんだかなぁ…なんて表情作るくせに内心嬉しいんだ。
そんな自分がちょっと悔しいけれどね。
けれど今、君と二人で居ることに苦痛を感じないのは確か。
少なくとも、さっきよりは遥かに。
できることなら、このまま時が止まってしまえばいいのに…なんて願うのは、きっと僕の我侭なんだろう。






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あとがき兼言い訳

松本さんの特等席、というかもう定位置な感じで。
この二人って、こんな感じだよなーなんて勝手に決めつけ気味ですが。
実際に定位置だよね?