京都には数多くの伝統行事や風俗・習慣が、ややもすると平安時代から続いているようなものが多く残っています。6月に入ると、数多ある和菓子屋さんの店先には「水無月」あるいは「みな月」などと貼りだされています。これは別に「今は6月ですよ」と分かりきったことを知らせているわけではなく(でも京都に来た頃の私はそう思っていた)、「水無月」という和菓子がありますよ、さあ(ウチの店で買って)食べましょうね、というアピールです。そして、それは6月の30日に食べるものとされているのです。
じゃあ何で6月30日にそんな菓子を食べるのかというと、夏越の祓だからです。何だそりゃ?と思ったら、「京都大事典」で調べてみましょう。
それじゃあ、その罪けがれを大いに祓ってもらおうではないかということで、「今年は本厄だから厄払い行脚しています」という酔いどれパンダさん、「何それおもしろそう、あ、私も後厄やん」という感じの酔いどれ図書館員さん、そして「夏越の祓の日ってちょうど定休日じゃん」と言い出しっぺの私・きよこ(後厄)の3人で八坂神社へと繰り出しました。あ、八坂神社を選んだのは交通の便がよいからです。
神社境内に着きますと、おっきな輪っかが鎮座しております。これが噂の「茅の輪」ですね。
大人がちょうど通れるくらいの大きさです。一応の予習はしてきましたが、右の方に作法が書いてあります。3回くぐり抜けるのですが、一度めは左回りに、二度めは右、そして最後また左にくぐるそうです。ものによっては右足からくぐる、と書いてあるものもありました。さらに、唱え言葉を唱えながらくぐるようです。こういう言葉です。「みな月の なごしの祓 する人は 千年(ちとせ)の命 のぶというなり」これをくぐるときに順番に唱えるようです。では早速くぐってみましょう。
「思う事 みなつきねとて 麻の葉をきりにきりて 祓いつるかな」
「蘇民将来。蘇民将来。」(繰り返す)
×3
と、そうこうしているうちに、何やら人の動きがあります。15時からの神事が始まるもよう。人の集まっているところへ行き、流されるまま神職の方から何やら白い封筒を渡されます。これは記念品とかお土産ではなく、中に人形(ひとがた)が入っておりました。神職のお兄さんが何度も「これは持って帰ってはいけません。これは神事です。」と繰り返されていたのが印象的でした。
粛々と神事は執り行われます。「低頭」と言われれば参列者は皆立ち上がり、脱帽低頭します。低頭している間、何やら祝詞というのか、お言葉を読み上げておられました。がんばって少しでも記憶しようとしていたのですが、3日もあれば忘れるのには十分すぎるくらいです。おそらく、半年分の罪けがれを祓います、――といったことではなかろうかと思います。そして、先ほど渡された封筒を開け、中に入っている小さな四角い紙切れを左、右、左の順にばらまきます。その後、残った人形(ひとがた)に三度息を吹きかけ、悪いところをなでて、先ほどの神職のお兄さんに渡します。

全てが済みまして、改めてみんなで茅の輪くぐりを行います。おそらく総代さんみたいな人たちが先にくぐられ、一般参列者が後に続きましたが、ものすごい行列です。50人、100人ぐらいはいたのでしょうか? みんなが順番にひだーりー、ぞろぞろ…、みぎぃー、ぞろぞろ…、最後にひだりー、ぞろぞろ…とくぐるので、結構な時間を要しました。その間、神社の方が例の唱え言葉の説明をしてくださっています。これこれこういう言葉を唱えます。このような意味があります、と。でも、三つめの蘇民将来の説明がよく聞き取れず、気になったので調べてみました。ええ、やはり「京都大事典」です。疫神社の項にあります。
とにもかくにも、これにて夏越の祓は終了。八坂神社クイズが開催されているのでちらりとのぞいて、でも解くことはせず、八坂神社を後にします。そして、この日の締めくくりはもちろん、水無月。実は小豆というか甘いものが苦手なので、私・きよこの人生初水無月です。だいたい、京都に来るまでこんなものの存在知りませんでした。ところで、水無月とはいったい何でしょう。「京都大事典」に聞いてみましょう。

こうして祓いに祓ったので、身も心もすっきり!――となればよいのですが、もうすでに下半期の罪けがれが積み重なりつつあるのを感じずにいられません。それはそれとして、初めての夏越の祓体験を、とどこおりなく負えることができました。
おことわり:私・きよこは神事にとことん疎い(何せペーパーとはいえ坊主である)ため、文章中に間違いや勘違いや不謹慎と思われる発言や、その他おかしなところがあるかもしれません。間違いはやんわりと指摘していただいたらありがたいですし、なおかつ笑って許していただけたら嬉しいです。
行事名称:夏越の祓(なごしのはらえ)(と、水無月)
効能:1月〜6月の半年分のけがれを祓う。無病息災。夏痩せしない。
実施場所:京都市内各神社(今回記事は八坂神社)
八坂神社へのアクセス:阪急「河原町」、京阪「四条」から徒歩5分ぐらい。市バスは「祇園」下車すぐ。
備考:7月31日に疫神社の夏越の祓(祇園祭のラスト)があるそうです。
参考資料:佐和隆研ほか編「京都大事典」(1984年、淡交社)
京都商工会議所編「改訂版 京都・観光文化検定試験 公式ガイドブック」(2005年、淡交社)