オールスター・ゲームは多すぎる? 2000/07/15

清松みゆき

 今、京都は祇園祭りの真っ最中、京都の街は人間で溢れかえっている。河原町通りは、それこそ立錐の余地もないほど、人で埋まる。そして、神戸は三宮でさえ、「コンチキチン」の音楽を聞くことができる。阪急電車が、ここを稼ぎ時とばかりに宣伝しているのだ。そして、これまた、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に乗って、阪神地区の人間も、1時間前後をかけて、京都まで出かけていく。
 やや人ごみ恐怖症の気がある僕としては(対人恐怖ではない、人ごみ恐怖だ。田舎育ちの影響だろう)、日本人というのは、何ともお祭り好きだなあと、ため息つくしかない。などと言いながら、僕も、祭りそのものは、大好きである。満員電車の恐怖さえなければ、僕も、毎年、コンチキチンを聞きにいき、山鉾眺めながら、屋台巡りをしていただろう。満員電車は、どうしてもダメだが、祭りそのものの中に入ってしまえば、人ごみ恐怖も表に出てこない。そのくらい、祭りは魅力的だ。
 考えてみれば、それが宵々山、宵山。つまり、前々夜祭に、前夜祭。祭りのための祭りでの姿。日本人というのは、本当にお祭り好きである。

 ということで、プロ野球のお祭りたる、オールスター・ゲームの話。

 ここ数年、僕はオールスター・ゲームを見ていない。退屈なのだ。見ていたら、かなりの確率で、TVの前で眠ってしまうだろう。
 事実、そうやって眠りこむ年が続いたので、僕は見なくなったのだ。
 何故だろう、何故、退屈なんだろう。昔は、喜んで見ていた。今でも覚えている。田淵(当時タイガース)の、バックスクリーンへのホームランを、福本(ブレーブス)が、フェンスに登って掴み取ってしまった超ファインプレーを。
 いつから、僕は、オールスター・ゲームを見なくなったのだろうか?
 江川(ジャイアンツ)が8連続三振をやった1984年、これは、新聞記事のみ記憶にある。ゲームそのものは見ていない。SFコンに合わせて北海道旅行中だったからな。それが理由に見てなかったのかな? 旅行してなければ見てたのかな?
 オールスターが、ホークスターになってしまった、1994年はどうだろう? 松永が、秋山が、トラックスラーが、吉永が大爆発したシリーズ。パ・リーグ14安打中、12安打をホークス選手だけで叩き出したシリーズ。これは、明白に中継を見ていないことが記憶にある。新聞記事読んで、見とけばよかったかなと、ちょっとだけ後悔した覚えがあるから。
 どうやら、僕がオールスターを見なくなったのは、ここ10年ほどのことらしい。うーん、ちょうど、ホークス・ファンに転じた頃からか(苦笑)。
 ひょっとして、これが理由か? 弱小ホークスゆえに、選手が出なくなってしまったことが?
 いや、そんなはずはない。だって、僕は、去年の中継を最初から見ていない。工藤、城島、松中、篠原……いくらでも、好きな選手が出ていたじゃないか。東尾が、中島を捕手に据えるなんて、ひどいことをすると知らないうちから、見ようともしていなかった。
 だから、それが理由ではない。だが、この東尾采配は、理由に繋がっている。

 そうだ、今でも思い出すのは、ライオンズ監督(広岡? 森?)が、自軍伊東にえんえんマスクをかぶらせたシーズンだ。あの1984年(何だ、江川の8連続三振の年じゃないか)、ファン投票1位の香川(ホークス)は、まったくと言っていいほど、使ってもらえなかった。
 あのことは、鮮烈に覚えている。そして、猛烈に憤ったことを覚えている。この采配を、「チームの将来を見すえた素晴らしい采配」などと、誉めそやす言葉に唾したことを覚えている。香川がホークスの選手だったからではない。当時は、まだ、南海ホークスで、僕は、ホークス・ファンではなかった(僕は、ホークスが九州の球団だから応援しているのだ)。当時は、むしろ、「元九州」ライオンズを応援していた(で、急速に冷めたんだよ)。
 その頃からだ、オールスターに厭わしさを感じ始めたのは。

 そして、その対極として思い出すのが、数年前(1995年だったか?)、オールスターの前日に行なわれた、若手選抜VS助っ人連合の試合である。
 あの試合はおもしろかった。始まる前からわくわくしていた。始まってからも、僕の期待を裏切ることなく、僕は、TVから離れられなかった。
 何しろ、あのときの1・2番はイチロー(ブルーウェーブ)、野村(カープ)。両リーグのバットマンレースを全部門で引っ張る二人だった。のみならず、二人ともが、さらに盗塁王をめざさんとする勢いだった。この二人が、1・2番に並ぶラインナップを見るだけで、得した気分になった。そして二人は、初回からダブルスチールを決めてくれた!
 最高の瞬間だった。その後も、見どころ満載のゲームだった。唯一、あの試合で、がっくりしたのは、若田部がデッドボールをやっちまったときだけだ(笑)。

 このゲームには、近年退屈でしかたないオールスター・ゲームと異なる点が二つある。
 一つは、若手中心の選手たちが、真剣に、溌剌とプレーしていたこと。
 もう一つは、そのラインナップが納得するにふさわしいものだったこと。

 そう、結局はこの2点なのである。そこには、疲れるのがイヤだと、出場をしぶる選手はいなかった。身びいき推薦や、戦力隠しでの、どこがオールスター? というような選手の出場はなかった。チーム人気で、実力も実績も伴わずに出てきた選手はいなかった。
 今年、星野監督と工藤のあつれき(どっちもどっちだ……)、王監督の篠原温存(それに、東尾が文句つけるって? お前の舌は何枚だ?)を横目に、僕は、ただただため息をつく。今年もオールスターは見ないだろう。ホークスの選手を画面で見ることなど、あまりない機会にも関わらず。

 昔のオールスターはおもしろかった。「人気のセ、実力のパ」と呼ばれていた頃はおもしろかった。露出の少ないパ・リーグ選手が、そのうっ憤晴らしに全力でプレーしていたから。本気の野球を見ることができたから。最高の選手が、最高のプレーをしていたから。
 オールスターは1試合でいいという意見がある。メジャー・リーグを見習えと。
 意味がない。たとえ、1試合であっても、そこにプレーが伴わなければ見る価値はない。希少なだけが価値なものか。選手を厳選したって、その選手が動かなければ、どれほどのものだ。大体、厳選するったって、選ぶのは誰なんだい? オールスターを取り巻く今の環境が変わらない限り、1試合にしたところで、関係ない。まあ、つまらない期間が短くなるという利点はある。……おいおい、だったら、最初から0試合で構わないよ。
 僕が見たいのは、おもしろいオールスターだ。その条件さえクリアしてくれれば、3試合あったって、何の不都合はない。それどころか、大歓迎だ。
 だって、僕は、お祭り好きの日本人なのだから。


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