ドラフトは必要悪 1999/09/28

清松みゆき

 プロ野球の発展、あるいは、少なくとも人気の維持を考えるなら、各球団の戦力はなるべく均衡していなければならない。
 常勝球団などというのは、邪魔なだけである。これは、前にも述べた。
 ゆえにドラフト制度である。自由競争に任せていてはとんでもないことになる。戦力の均等など絶対にありえない。
 プロ野球という礎を守るために、ドラフトは必要なのである。それも、できれば完全ウェーバー方式であるべきだ。逆指名など言語道断と言っていい。

 しかし待て。だから、ドラフトは絶対なのか?

 プロ野球の繁栄:目的
 戦力の均等化:手段
 ドラフト制度:手段のための手段

 僕はプロ野球の繁栄には、戦力の均等化がもっとも有効であり、そして、その手段としてドラフト制度以上のものを思いつかない。ゆえに、ドラフト制度を支持している。戦力の均等化を考えるなら、完全ウェーバーが最良であろうから、完全ウェーバーのドラフト制度を取り入れるべきと主張している。
 しかし、ドラフト制度の位置付けなど、しょせんは、この程度でしかない。ほかに戦力を均等化するよい手段があるなら、あるいは、プロ野球の繁栄に戦力の均等化が不要であるならば、存在しなくてもよいものである。

 そして、別の観点から見た場合、ドラフト、特に完全ウェーバーのドラフトには大きな問題点が存在している。
 指名される選手の側の人権である。そう、職業選択の自由の侵害だ。
 選手はプロ野球に就職する? それは詭弁だよ。想像してみればいい。

「○○新聞取ってください」
「いや、うちは××新聞を」
「あなたは新聞を取るなら、○○新聞しか取っちゃいけない。新聞社の話し合いで、そう決まったんです」

 僕の自由は保証されているか? 言っておくが、僕は新聞なら何でもいいという人間ではない。読売新聞はまっぴらごめんだ(笑)。まして、言っちゃ悪いが、今のプロ野球の球団の中には、ゴシップ専門夕刊誌なみのレベルのものもある。「大スポ(東京スポーツ)」は愛読しているが(笑)、それしか読めないでは、僕は生きていけんぞ。

 ドラフトというのは、そういう制度である。日本プロ野球機構がかってに決めた制度だ。法的根拠だって怪しい代物である。
 個人的には、指名されればどこでだってやるという気概を持った選手は好きだ。だが、それをすべての選手に押しつけることはできない。
 押しつけることができると思うなら、二岡を責めてカープは責めず、ブルーウェーブは責めずに新垣を責めるというわけのわからん行動もできるんだろうが。
 僕にはできない。ドラフトは必要である、だが、同時に「悪」だ。選手側に一方的な犠牲を強いているのだ。

 これを球団側が自覚するなら、ドラフト指名を錦の御旗のように振り回すなぞ、恥ずかしくてできるはずがない。選手の意思を無視した強行指名なんてできるはずがない。
 ドラフトは悪でありながら、必要だという、取り扱いにきわめて慎重でなければならない制度である。
 ゆえに、そこには工夫がなければならない。おっと、逆指名は論外だ。これは、ドラフト制度そのものを崩壊させる(実際、崩壊してるだろ?)。悪を削るために、必要なものをなくしてしまっては、意味がない。「角を矯めて牛を殺す」ってやつだ。いや、「首を刎ねて牛を殺す」か?(笑)
 制度的に考えるなら、ドラフト権のトレード対象化は一つの手段になる。NFLなどでも行なわれている方法だ。将来の指名権と現在の選手とのトレードだ。江川のときの紛糾も、もし、このルールで、指名権が小林とトレードされてからのドラフトであったなら、もう少し後味はよかったろう。いや、それよりはるか以前の段階で、クラウンライター・ライオンズが、獲得絶望の選手に対して、無駄に「いの一番」指名権を費やさずにすんだだろう。
 これをやりやすくするためにも、指名順位が一意的に決まる完全ウェーバーは望ましい。いっそ、1〜2年前の成績で決めていくのもよいかもしれない。
 僕の現在のところの理想は、この方法である。

 しかし、そこまで行かずとも、必要悪とのつきあいかたはあるんじゃないか?
 スカウティングというのは、足で稼ぐものじゃなかったのか? 指名前には顔も見にこなかった、むしろ、他選手の獲得に躍起になっていた。それが、「指名してやったんだ」は、ちとひどいんじゃないか?
 僕は、東北福祉大は気にくわんが(笑)、九州共立大はギリギリ容認している(ホークスが九州の球団であり続けるという前提で)。二岡はカープに行くべき選手だったと思っている。
 むろん、これが裏金容認になることを僕は知っている。だから、理想はドラフト権のトレード対象化なのであるが……。
 しかし、僕には18歳新垣の涙が、「これで裏金がダメになったから悲しいな」という涙には見えなかった。高一の頃から目をかけてもらっていた、スカウトに指名を約束されていた、自分を高く評価してもらっていた、自分の住む九州で唯一の球団(それは、ちょうど野球を始めたころにやってきたのだ……)。
 どれだけ入団したかっただろう。そこに、なぜ、わけのわからん連中が、何の権利で割りこんでくるんだよという悲嘆の涙に見えた。

 ドラフトは必要にして悪である。
 存在はしていなければならない。しかし、運用には謙虚でなければならない。

 4年後、パ・リーグ所属球団の投手としてGS神戸のマウンドに立つ新垣の姿を想像することが、僕にはどうしてもできない。
 我々は才能あるスカウトを一人、永遠に失った。そして、才能ある野球選手もまた、一人、すでに失ってしまっているかもしれないのだ。


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