常勝球団なんかいらない! 1999/09/23

清松みゆき

 かつてのライオンズ黄金期、森監督はライオンズを常に優勝させながら、観客動員の低下を理由に解雇された。
 経営者としては、当然の判断だろう。プロ野球はエンタテイメントである。観客から金を取れなければ、勝敗なんざ無価値なのである。どんな難しい芸ができたって、観客に受けなければ、意味はない。その難しさを声高に主張して正当化しようとするのは、エンタテナーとしての自覚がないことを触れ回っているようなものである。
 このあたり、彼は勘違いしていた。その最たるものが、(投手比較などで)不利な対戦とあらば、わずかの雨で試合中止を決めていたことである。それで、目先の不利を解消すると同時に、毎年ライオンズは後半に試合が残り、有利なペナントレースを争うことができた。
 さだめし、自分を策士だと自画自賛していただろう。それが、己が首を締めていることに気づかないまま。

 こんなことをすれば、ファンから見離されて当然である。わざわざ球場に足を運んでも、かなりの確率で中止なのである。だったら、誰が行くものか。

 しかし、ライオンズ観客動員低下の真の理由は、それではない。

 では、よく言われる「野球がつまらなかったから」だろうか? 送りバントを多用し、先行してからは、さっさと守備を固め、強固な中継ぎ・抑えで逆転許さず逃げきりのワンパターン。
 おいおい、それは今年のホークスの戦いかただ。福岡ドームに、毎日48000人を集めているホークスの戦いかただ。
 単につまらない、おもしろいで言うなら、まだライオンズ黄金期のほうがおもしろい野球をやっていた。クリーンアップにバントはなかったぞ。

 そう、これもまた、ライオンズの観客動員低下の真の理由ではないのである。

 戦いかたがつまらなくても、勝っていれば観客はやってくる……こともある。
 そう、「こともある」。概ね、勝つことは観客動員にプラスになる。チームの人気を高め、グッズの売り上げ増にも、親会社のイメージアップにも繋がる。
 しかし、それは「概ね」なのである。ときに、勝つことは観客動員を低下させるのである。

 ライオンズの観客動員低下の真の理由。それは、きわめて簡単にして明快だ。
 ライオンズは「勝ちすぎた」のだ。

 つまらない野球をしていても、ホークスが福岡ドームに48000人集め続けられるのは、それが球団創立11年目にして初の優勝であり、前身の南海ホークス時代から数えて26年ぶりの優勝であり、九州の球団として36年ぶりの優勝だからだ。
 珍事だからである。珍しいから人は集まるのだ。強いホークスを見られる機会は、もう一生の間に巡ってこないかもしれないと思うから、優勝に向けて声援する機会などもうないかもしれないと思うから、人は集まるのである。
「勝ちすぎた」ライオンズは、だから、人を集められなくなった。勝つことが珍しくなくなったからこそ、勝てば勝つほど、人は離れていったのだ。
「常勝」ライオンズは、悪いことに、他球団のファンの数をも減らした。応援チームが負けることは、単純にストレスである。結果が負けるとわかりきっていて、応援する気になりはしない。

 だから、常勝球団なんかいらない。

 そんな球団は、リーグ全体を落ちこませていくだけだ。プロ野球は単純な勝負ではない。興行だ。「勝てば嬉しい」は、ファンレベルで十分。経営や運営に携わるなら、戦力を均等化し、戦国リーグを作ろうと考えるべきだ。
 ペナント争いは、ゼロサム・ゲームでも、球団運営は、ノンゼロサム・ゲームなのだ。ゼロサム・ゲームが得意でも、ノンゼロサムの観点のない人間は、監督をしてはいけない。少なくとも、強いチームの監督は。
 僕はホークスを応援しながら、2〜3年に一度優勝争いし、5年に一度優勝してくれれば御の字であると思っている。それでも多いくらいだ。2年に一度はBクラスになり、たまに最下位になればいいのだ。
 そのときは、腑甲斐なさに荒れ狂うだろう。だが、ホークスが「常勝球団」なんぞになってしまったら、今、感じている熱い応援の心も自分のうちから消えてしまうだろう。
 そんなことはまっぴらゴメンだ。僕は、いつでも熱くホークスを応援していたいのだ。

(今年、ホークスが優勝するのを前提に)来年はマリーンズの優勝を望むしだいである。
 ファイターズ? まずは、与死球を減らしてからだな(笑)。


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