やっぱり変だよ、高塚発言 1999/12/23

清松みゆき

 文中、栗色は、『週刊ポスト』1/7号の、高塚氏インタビュー記事からの引用である(ソースでは、<BLOCKQUOTE>で宣言してある)。
 いかに、おかしなことを言っているか、個々に指摘していく。

――やはり巨人、でしたね?
高塚 ボクは工藤さんがどこで野球なさろうと、関係ありません。

 俺は、関係ある。
 いきなり、これである。リーグMVPエース放出という前代未聞の事態に対し、何らの責任を感じていない、あるいは、負うつもりがないことが明らかなわけだ。

(高塚) 工藤さんが個人で、どんな戦略を立て、どう実行しようが、自由なわけです。

 今回のFA騒動、工藤が駆け引きをしていた説は、彼ら球団フロントが流し始めなわけだが、それをもう一度言おうとしている。
 だが、それは客観的事実としては、存在しない。真っ赤な嘘でも突き通せば、それらしく聞こえてくるということを狙った、卑劣きわまりないやり口であると、僕は観測している。

(高塚) ただ、われわれも同じように、工藤さんに払える金額をお話しする権利がある。それに対して誠意があるとかないとか、本来おかしな話。

 どこが「おかしな話」なのだか、さっぱり理解できない。黒木(マリーンズ)が10000→18000とかいう時代である。工藤に15000→16000などという最初の提示は、めちゃくちゃだろ?
 問題なのは、もっと払える用意があるにもかかわらず、「低い額で契約してくれたら儲け物」という交渉を行なったことなのだ。
 これって、本音を隠しての交渉だよね。それをして、「誠意がない」と呼ぶんだよ。

(高塚) いくら工藤さんが「駆け引きは嫌い」といっても、交渉そのものが駆け引きなんですからね。

 違います。交渉と駆け引きはイコールではありません
 このあたりが、この男の能力的限界を現わしている。交渉が下手、あるいはできないとまで欧米の人間に言われる典型的な日本人の姿だ。
 駆け引きとは交渉の一手段に過ぎない。本来、ノンゼロサム・ゲームである交渉を、ゼロサム・ゲームとして処理せざるをえなかったときに使う手段に過ぎないのだ。
 自分が、ノンゼロサム・ゲームとしての交渉をすることができない、交渉下手であったことが、この事態を招いたという自覚はあるのかね?
 訊くだけ、無駄か(嘲笑)。

 (巨人4年12億などという提示――結局、違った契約になったのだが――などの話をしながら、あまり金額を出す気がなく、複数年も拒否したかったなどと述べた後)
(高塚) それでは、他の選手とのバランスがとれなくなるから。

 ホークス投手陣は、工藤のみが実績において傑出した存在であり、成績的にも先発投手陣では防御率、勝ち星、奪三振すべてトップである(今年は無論、5年間の通算でもきわだっている)。
 押しも押されもせぬ大エースなのだ。そして、工藤は年俸高踏しがちなFA選手の中で、それをよしとせず、現状維持の条件で移籍してきている。工藤に大金払っても、それは、工藤の能力と実績がなさしめたことであり、バランスという意味では、まったく問題ない。
 昨年、武田に対して13000がバランス崩すと判断し、実際と異なる8400などという嘘をつかざるをえなかったドラゴンズとは事情が違う(笑)。
 お前、意味もわからず星野監督の言葉を使ってないか?

(高塚) 工藤さんが防御率のタイトルを獲れたということは、これを可能にするために中継ぎや抑えの投手が協力したとも考えられるわけで

 笑止千万。
 防御率において、他投手に助けられるというのは、イニング途中降板時、塁上に残したお土産(走者)を継いだ投手が返さなかった場合のみである。
 工藤の今シーズン、イニング途中降板は2回だけである。そのかたほうでは、継いだイニングのみを投げた投手にも自責点がついている。これは、お土産があったとしたら、全部自責に変化しているという意味だ。
 もう一つのケースでは、3安打1四球で2点が記録されたイニングでの降板。この2点は工藤の自責になっている。そして、このイニング、継いだ投手は1被安打1四球で自責0。工藤が喫した2安打走者のお土産は、やっぱり、しっかり自責にされているんだ。
 工藤の防御率は、より良かった可能性はあっても、より悪くなっていた可能性は0である。防御率タイトルホルダーであったことに変わりはないのである。
 知ってて言ってるなら、姑息な情報操作であり、知らなくて言ってるなら、野球に対して無知ぶりをまたさらけ出したといえよう。
 ちなみに、工藤をリリーフしたのは、4本柱ではない。ヒデカズと(シーズン後半の)山田である。

(高塚) むしろ、工藤さんがいなくなったことで、若手はかなりやる気になっていると思いますよ。現に今シーズン、武田さんが抜けてどうなるかと思ったが、篠原や星野が頑張ってくれたわけですから。

 永井はどうした?(笑) 何で、星野の名前があって、彼の名が出てこない? 逆なら理解できるが(成績は永井>星野)……。
 それと、工藤・武田はさんづけで、篠原・星野は呼び捨てかい? 選手はダイエーの会社員じゃないんだぜ。球団と契約している事業主、つまり、大切な商売相手だ。さんづけするなら、全員にすべきだが、そういう意識はないんだな?
 それはともかく、活躍して給料が高くなりそうなら放出という前例が作られて、若手がやる気になるとは思えんがね。「工藤さんがいなくなったからチャンス」などという低いレベルでモチベーションを持つ選手に何が期待できるんだ? 「小銭のために」という意識は発生しても、「優勝のために」という意識は出てこんぞ。
 そして、その若手投手陣をリードする城島のモチベーションがどうなるか、それこそが、一番問題なんだが、わかってる?
 マジに、城島を怒らせて喧嘩別れが起こりそうで怖い(今年は御機嫌とりに出る可能性もあるが、来年以降は……)。

――それにしても、球団が公表した反論文は異例でした。
高塚 はっきりいって、ボクが交渉内容を公表しても、得することはひとつもない。

 てめえの子供のごときチンケなプライドが満足するんだろ? で、オーナー命令で撤回されたはずのこの反論文書に問題がないと言い張るってのは何事?
 ダイエーホークスっていうのは、そういう球団なんだな? その場その場で言うことをクルクル変える、信用のおけないところとみなしていいんだな?

 (工藤の態度を駆け引きと断言しやがった上で)
(高塚) 選手は少しでも高く買ってもらいたいとあらゆる手段を使うし、こちらは納得してもらえるよう、公平な査定をする。ここに駆け引きがなければ、みんな喧嘩別れになっちゃいますよ。

 くどいようだが、交渉と駆け引きは違うものである。交渉をノンゼロサム・ゲームとして上手に行なえるなら、喧嘩別れはしなくていい。
 最初から、駆け引き以外の選択肢を持ちえなかった無能が、喧嘩別れを産んだのである。たとえば、交渉の最初のテーブルで「リーグ優勝おめでとう、そして、ありがとう」から入ったのかどうか?
 これを本心から言えるなら、それだけで交渉は1歩進んだ状態からスタートできるのである。
 交渉の基本は「お互いに幸せになろうよ」である。
 自分が駆け引きしかできないから、相手が駆け引き以外のものを求めていても気づかないんだろうな。

(高塚) 大体、年収300万円のサラリーマンがリストラされる世の中に、1億円の年俸増に「誠意がない」といわれれば、これはおかしいと考えるはず。

 世の中が、みんなお前の思ってるように金だと思うんじゃあない!
 工藤が「誠意がない」と言ったのは、もっと払う用意があるにもかかわらず、それを隠そうとしたことなのだ。
 なお、1億円の年俸増という言葉は、トリックである。最終的にフロントが提示したのは、(再契約金なし)、25000→20000→15000と、年々下がっていくという契約だったはず(自分らからそう言ったよな?)。
 単純に年平均20000であると同時に、相手のプライドを踏みにじるひどいものだ。少なくとも、工藤のようにプライドが高く、「40歳でも現役」を目標にしている男には、まだ、単年20000のほうがマシなのである。
 25000→20000、20000→15000という下がりかた(20%減、25%減)は、「何もしなかった選手」への提示にも匹敵する下がりようである。最低保証とは呼べない代物である。
 きちんと工藤を評価した上で、「単年23000。FAで他球団に移籍したという場合の最高年俸を、雀の涙ではありますが、上回らせていただくのが精一杯です」という提示を最初からしていたらどうだったかなあ?

(高塚) 仮に工藤さんがFAで残留・再契約して、来シーズン失敗したら、誰が責任を取るんですか。

 工藤が抜けたことで、来シーズンの優勝可能性はかなり低くなったと思うんだが、優勝逃したら、責任は取ってくれるんだろうね?
 最下位にでもなったら、腹切って詫びてくれるか?
 暴言だよな。この台詞は、「高いカネ払うくらいなら、優勝はできなくていい」と同値である。そしてまた、彼の考える「責任」がファンではなく、球団収支にだけ向いていることを表わしている。
 だったら、身売りしろ。赤字は出なくなる。→その球団経営は誰のため? 何のため?

 (さて、いよいよ、例の火曜日発言である)
(高塚) 工藤さんが特別人気があるというなら、話はまた別ですよ。でも、工藤さんが投げた火曜日で、平時の他のゲームより入場者が多かったのは5試合しかないんです。しかも、当面の敵が西武なのに、西武戦では一度も投げていない。これをどう思いますかと、相手にぶつけてなにがいけないんでしょう?

 いけないに決まっている。登板日を決定するのは、監督の仕事である。そして、週頭を工藤にすることで、その週をいい形でスタートさせることは、シーズン135試合を戦う上での戦略であったのだ。
 観客動員は、イチロー、松坂のような特殊ケースを除き、個人の人気よりチームの動向に左右される。負けがこんでいれば落ちこむし、優勝目前となれば黙っていても満員だ(むろん、イチローや松坂ですら、チームが弱ければ、客は呼べなくなる)。
 で、工藤は特別人気がある選手ではないって言葉が、どうしても腑に落ちなかったので、工藤を含む福岡ドーム火〜木曜日試合(どんたくシリーズの5/3〜5/5は月火水、工藤登板は5/4)の観客動員を調べてみた。

試合日観客動員試合日観客動員試合日観客動員工藤登板試合−他試合平均
4/6380004/7(北九州)4/820000+18000
4/13200004/14200004/1520000±0
4/20200004/21200004/2220000±0
5/3460005/4480005/545000+2500
5/11200005/12210005/1320000−500
5/18210005/19220005/2020000±0
6/8230006/9270006/1024000−2500
6/15350006/16220006/1723000+12500
7/13320007/14330007/1534000−1500
8/3380008/4430008/5ゲームなし−5000
8/17480008/18470008/1946000+1500

 おーい、これは何だ?(怒) これで、工藤の投げる日は観客が少ないなどとよく言えたものだ。「悪かった」ってのは、8/3ぐらいじゃないか(しかも比較対象が1試合しかない)。逆に、6/15は、とてつもない好成績だ(4/6はドーム開幕だし、4/8があの、2−22ボロ負けの後だから、統計からは、はずしてあげるよ)。
 また、「当面の敵は西武」は誤りである。それは、5月までは、ファイターズであり、7月まではマリーンズである。優勝争いの相手がライオンズに絞られたのは、オールスター以降であり、そして、工藤はそれに合わせてローテーションを切り詰め、ライオンズ戦先発をやっている。

(高塚) FA宣言するということは、どこにでも行くというのが前提。

 日本では、宣言・残留のケースのほうがはるかに多い。また、宣言後の最初の交渉権は保有球団にある。これって、単に再契約金を払いたくなかったということだよね?
 宣言させずに、年齢で衰えたら、そのままポイしようって魂胆なんだろう。秋山の先行きが思いっきり不安である。

 (締めの台詞)
(高塚) 工藤さんもプロなら、今度の騒動に惑わされず、新天地で頑張ってほしいと思います。

 いけしゃあしゃあと何抜かす。
 ファンに対しては、何も言うことはないようである。


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