その球団経営は誰のため? 何のため? 1999/12/09

清松みゆき

 工藤FAの衝撃も醒めやらぬ中、スカウトたちの首を切ったという話が伝わったのが1月前ほどのこと。功績のない人ではない。対象とされたのは、今年、日本通運広田投手の逆指名を取りつけた人間である。
 そして、今は、信じられぬほど低い年俸での契約更改交渉が進んでいる。
 功績のある人間を高給であるという理由でカットし、働いた人間にも昇給はなし、さらに、有望な新入社員獲得にも力を入れないとなれば、通常、その「会社」はもうおしまいである。じきに会社更生法適用が待っている。
「ダイエー球団」は何をしたいのだろう? 毎年10億円と言われる赤字体質を黒字体質に変えたいというのだろうか?
 言っておくが、そんなことが簡単にできるのなら、誰も苦労していないのだ。「俺ならできる」と思っているなら、それは思い上がりであり、そんな思い上がりを持てるのは、人生で負けた経験のない「子供」だけである。

 まして、プロ野球チームというのは、個人事業主の集団である。
「福岡ダイエーホークス」とは、選手があってこそ存在するもの。器だけ残っても価値のない存在だ。「グループSNE」が、名前だけ存在しても意味がないように。「SNE」のものなら、「へのへのもへじ」と書いてあるだけのものでも、ファンは買い続けるなんて幻想を抱いた瞬間、SNEは潰れるだろう。「ホークス」という器だけ残し、中身が草野球では、いくら僕でも応援できない。
 現状、パ・リーグの全球団は赤字であり、親会社の広告塔であるからこそ存在できている。その現状を打破しようという考えは持つべきだが、拙速にやってできるものではない。
 少なくとも、今の「ダイエー球団」のやりかたは、「角を矯めて牛を殺す」方向を向いている。

 個人事業主の集団という意味を考えてみよう。
 それは、彼らがチームと「契約」しているということだ。彼らは、チームのために努力することで、報酬を得ている。
 そして、彼らが「契約」によって求められているのは、野球をすることであり、野球において結果をもたらすことである。
 結果とは、利益である。広告塔であるならば、親会社のイメージアップであり、独立採算であれば、入場料収入やグッズ売り上げの増大であり、放映権料の確保である。現在の日本プロ野球チームは、概ね、この両方の側面を持ち、両方の利益を求められている。
 通常、「優勝」は、そのためにもっとも手っ取り早い手段である(場合によっては異なる。五連覇時代の西武ライオンズは、手段と目的を取り違えた)。広告塔ホークスは、親会社ダイエーに1000億円以上の売り上げをもたらした。
 この事実を見るならば、厳冬更改などあってはならないのである。選手たち、あるいは、監督・コーチたち、さらにはスカウトたちは、契約で求められたものに最高の結果で応えたのだ。
「ダイエー球団」の、「選手にも球団経営をわかってほしい」という言葉は甘えである。プロ野球選手たちとの契約に、そんな条項はない。経営への参加は、野球選手には求められていない。

 いや、唯一、それがなされているのは広島東洋カープである。暗黙の了解として「2億円上限」が課せられている。それは、「1人に2億円以上を払う契約は、球団経営上成り立たないから遠慮しろ」と言う意味だ。
 選手が、それに納得して入団するならば、それもまた「契約」である。緒方のように、それを認めて安く残留するもよし、江藤のように、もはやその契約には従えないと退団するもよしである。選手はあくまで個人事業主であり、事業主として判断しなければならない。天秤の皿に「情」を載せるかどうかは、個人の判断、どっちを選ぼうが、本人の自由だ。「個人」事業主なんだから、そのくらいの勝手は許される(笑)。

 しかし、「ダイエー球団」は、広島東洋カープではない。今まで求めてもいなかったことを、球団が(否、本社が)赤字であるからと、突然求める。甘え以外の何であろうか?
 仮に、ダイエー本社にあの天文学的赤字がなければ、そんなことを言い出しただろうか? そんなことはあるまい。間違いなく、かつての馬鹿げた大盤振舞を続けていただろう。
 自分たちの都合で、契約条項を勝手に書き換え、解釈する。自由主義(個人主義)社会では許されざる蛮行である。
 まさに、貧すれば鈍するというやつだ。状況の厳しさを責任転嫁の免罪符にしたがっている。ふざけちゃあいけない(なんか、TRPG業界も日本海外問わず、こんな流れがあっていやなんだよな)。

 許しがたいのは、こうやって選手に甘えようとしながら、「ダイエー球団」フロントには、選手を蔑視している節があることだ。
 選手を「野球しかできないぼんくら」とみなしている節があることだ。そうでなければ、「野球は素人だが、経営はプロ」なんて言葉が出てくるわけがない。
「将棋はプロだが、ノンゼロサム・ゲームの意味を知らない人間」が、いきなりTRPGのゲームマスターをやったら、結果はどうだと思う? ロクなものになるわけがない。
 同じことだ。「野球が素人」では、球団経営など務まらないのである。まして、FAにおける再契約金条項(残留の場合、0でもかまわず、上限もなしのまったく任意。「旧年俸の半分」なんて言葉はどこにも存在しない)も知らないというのでは、TRPGの骨組みどころか、ルールすらまったくわかっておらず、学ぶ気もなかったということだ。
 プレイヤーに愛想尽かされて当然であろう。

 傲慢と無知。人の上に立つには、もっとも不適切な性質を現「ダイエー球団」フロントは明らかにした。あげく、自分が悪者になったと感じるや、被害者意識を振りかざして、相手の中傷に走る。
 結果として、かすかに残されていたファンの願いは、無残に踏みにじられることになった。相手を「個人」事業主と知るなら、交渉において相手の気質を知っておくことは、基本中の基本(そう、彼らは契約締結において「情」を優先することが許されているのだ)。しかし、それすら、できなかった。
 つくづく無能の集団だと思う。少なくとも、球団経営においては。

「ダイエー球団」フロントよ、あんたたちは、誰のために球団を経営している? 何のために球団を経営している?
 ファンは不要なのか? 優勝は不要なのか? 「人気」は不要なのか?
 今までは、そのために球団経営していたように見えたんだがな。いつ、変わった?
 経営方針の転換があったなら、明らかにする義務がある。
 福岡ドームに足を運ぶファンに対して。球団と契約している個人事業主たちに対して。
 それが為されぬ限り、僕はこのページ説明文上で、「ダイエー」の上に引かれた打ち消し線を取るつもりはない。


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