それは2002年8月のことであった。管理職選考を目前としながらも、考えた。私は40を迎えた。

 
こうして、爺とわかりつつ、若づくりして誤魔化そうとできるのは、あと数年であろう。ならば、毎年夏を迎え「くそ暑い夏の馬鹿野郎!」と数回叫べば、私はすでに50に突入し、本当に爺婆界の一住民となってしまう。...

 ならば、夏を楽しまなければ何のための人生なのか、ヘルメットを被ってしまえば、2歳〜18歳若いふりができるこの夏を己れの名誉出世のため、犠牲にしていいものなのか!と、もう一人の私が強く切実に訴えてきた。

 仕方なし!汝の主張は一理も二理もある。ならば、来年から通行禁止となると伝え聞く、乗り鞍スカイラインを中心にいこうではないかと、出発前日に決めたのだったそして、なぜか宿は高山市のホテルをインターネット予約したのだった。

 朝、8時に芝公園ICから首都高にのって、そのまま中央高速。塩尻ICで降り、マップルお勧め国道を通って、地蔵峠を越えて、開田高原のそばやで、金額的に迷いざるそばを食べる。

虫のバカヤロウ!!

 長野って、前もそうだけど、走ってて無防備な首のところに突然ピシッという刺激の後、連続してピリッという痛みが走るのね。そういうことが、前にもあった。その位置は赤く腫れてくる...つまり虫が何かに突然ぶつかり、あわてて刺してしまうみたい。
それから、虫対策のためバンダナを首に巻いて走った(仮面の忍者赤影のように?)。上高地乗鞍林道310円を進み、憧れの乗鞍スカイラインへ。

 だけど...1100円もとられたけど、混んでて、しかも曇ってて何もみえない状態。展望休憩所のソフトクリーム食べて、100円の環境美化協力金払って、おしっこをして、高山市を目指した。

 そのまま158号を通れば近いんだろうけど、その南側を走る野麦街道を走ってみたくて、わざわざ再び上高地乗鞍林道を引き返し、野麦峠に進んだ。野麦峠は大竹しのぶ主演「ああ野麦峠」という映画などの作品で知られているが、明治・大正時代に信飛騨の少女たちが、工場に糸引きにいくため、吹雪の峠越えを繰り返した峠である。

 正直いって、乗鞍スカイラインよりもこの道の方が、走っていて面白いし、過去の女工さんたちが極寒の中、移動した長い道を今、こうして何の苦痛もなく、快適に消化していけることの有り難さと、気恥ずかしさを味わいながら走れた。
高山市内は混んでいた。午後7時前にチョッと山の中にあるホテルで、やっと落ち着けた。一人で、食べるバイキングはついつい、話し相手がいないので、大量に食物と飲料を摂取してしまいます
岐阜 長野 幻想旅行

雨と青空、温泉の至福と夜道の恐怖の2日目

 僕は宿で、食後カンチューハイ等の酒をちびちひやりながら、翌日のコースをどうしようか?ここの道は面白そう、こっち行くと宿がないかな?..と思案しつつ、地図や、持参した雑誌記事をみるのが好き。
 そしてこの朝は、なんと泊まっている高山自体が、古い町並みが残っている小京都であることを忘れていたことに気づき、あわてて朝食前の6時にホテルを出発し、朝市や古い建物を見物してきた。帰りに通った道が林道みたいな道で雨が降ってきた。半袖ではもう冷たい朝だった。

 今日の天気予報は曇りと雨のマーク。ちょっと天気は不安だけど、エエイ迷うなかれ!と自分を鼓舞し、出発!!。
 途中、携帯電話が鳴った。まさか、職場の鈴木主任からではなかろうな、あいつは人が休みとっていると必ず、「今、大変ですよ」とせっかくの楽しい時間を壊しやがるからな...と思いつつも、無視、勿論そのまま直進続行。俺は宿屋のパンフに書いてあった世界文化遺産「白川郷」に行くんじゃい!!

 くそー、雨降り出しやがったよ。バイクだとすぐ止まるという行為がなぜ決断できないのだろう、なんとなく、停車が億劫になる。エスケープするような場所もなく、しばらく進んだ。雨を避けるのによさそうな木の下でカッパを着る。途中、廃止されたキャンプ場があり、そこで休む。
 退屈しのぎに娘宛てに、雷鳴ったとかEメールで実況したり、心静かに瞑想したりしていた。

まさに小京都
廃止キャンプで一人
 雨もやっとやんだ。休憩所でカッパを着替える。停めたバイクの周りが、カッパ上下、手ブクロ、ブーツカバー、手ぬぐいで埋まっていく。ここにプルーテントがあったら、ホームレスの人と同じ雰囲気かも知れない。
 周囲のクルマの連中が、うさんくさそうな眼で見てくる。ウルセーパーロー、お前らこそ鉄板の屋根の下に隠れて走りやがって、恥ずかしくはないのか?君たちは卑怯、欺瞞、モラトリアムという言葉がわかるかぁ!!..と、雨に打たれて壊れてきた僕自身であった。

めざせ白川郷

 さて、御母衣湖を眺めながら、快適ツーリング。やっぱり、晴れていなきゃ駄目だねぇ、雨の後は、余計にお日様のありがたさ、楽しさを実感することができる。
 白川郷は期待とは違って、観光バスいっぱいで観光地化されていた。僕はバイクを駐車場にいれ、周囲に雨具類のお店を開き、早く乾かそうとした。僕は身軽な格好で、いろいろ散策する。やっぱりいいところだね。何かホッとするね、しかもこの青空がいいね。 


 

 
いつも良き道を走ることを主眼にして旅してきたが、その地方のもつ風土や、歴史、文化を味わうのもいいなと改めて思った。
 
 そして、いよいよ待ちに待った マップルお勧めの大白川温泉に行く。
 白山公園線の荒れた舗装路を走ると、途中でポツリポツリとくるが、アクセルひねって白水湖につく。工事現場事務所みたいな受付に200円払い、貸切状態。 素晴らしい!ホンマにごっつうええ温泉やわ!!

 闇夜近し、さぁどうする
 いろいろあった一日も暮れてきた。行き当たりばったり、出たとこ勝負の僕は、どこかに泊まるのか、一気に東京へ帰るのか、何も考えていなかった。明日には東京帰りたいからと、とりあえず長野方面に行こうということで、天生峠を通って高山方面を目指す。が...、またもや雨だ。スグガソリンスタンドニハイリアマヤドリヲサセテモラウ。なかなか親切なスタンドだった。雨雲も過ぎ去りそうで、カッパに着替えることなかったね、なんて笑いながら出発....雨は止まない....さらに激しく降る....。ええぃ!もういいや、しゃらくせぇ、こっちとら江戸っ子だっ! このまま松本までふっとばしたる!!
雨が何故、松本と結びつくかは、今こうして冷静になって過去を振り返っている僕には理解できないが..。

 国道158号をふっとばす、闇夜近し。平湯峠あたりだと、気温が10度台になっていた。寒い。安房峠道路に入るときは、すでに真っ暗だった。トンネルを出て、安曇の道路は暗くて、対向車がくると雨で曇ったシールドは何もみえなくなる。怖い、道もクネクネだし、いつもは嫌なトンネルの中でも、逆にホッとできる空間となっている。
松本についたのは午後8時30分。駅前でラーメン食べながら、iモードで当日宿泊できるホテルを探す。アッタアッタアッタ、駅前の飯田屋があった。名前は昔の宿屋だが、ちゃんとしたビジネスだ。5000円で泊まれた。バイクを店の入り口にとめさせて頂けた。
 感動と、絶望、怒涛の3日目
いよいよ最終日である。2002年の夏、最後になろうツーリングのクライマックスにふさわしいのは..。そうビーナスラインです。途中、高ポッチ山に登るが、ここの道ってなんかわかりづらいな。それでも、アルプス展望台からの眺めは抜群!!

 
 諏訪湖経由で、ビーナスラインへ。 昨日と違って天気は晴れ間に按配よく雲がかかっていて、あの世を走っているようだ。
 知らなかったけど、通行料も無料になっていた。だからだね、自転車多かったのは。
..と、素晴らしき午前を堪能し、おいしいそばを食べて、ほのぼのしていた僕は、まだ知らなかった。旅のクライマックスの本当の姿を.....。
アルプス展望台
 ツーリングGOGOという雑誌がある。以下は旅を終えた私が翌日、編集部にあてたメールである。


残暑お見舞い申し上げます
いつも貴誌を楽しく読んでおります
 
私、8月7日から昨日まで3日間
夏休みをとり、岐阜・長野にソロツーリングに行ってまいりました
乗鞍、高山、白川村、松本と2日間で周り、3日目は東京に帰るためビーナスラインを通って、そこで9月号の中部0円マップをみながら旅のラストを盛り上げるよい道は?...とさがしたところ、ありましたありました
道の東31位の川上牧丘林道が!!
 
川上村に入り、なんとか探し当てたその道は、狭く、舗装状態もかなり悪く、そして数分後、砂利道どころではない、デコボコの石ころだらけの道が待っていました
交差するクルマは4WDばかりで、5分くらい何とか進んだ時点で、オフローダーと遭遇しました
いつまでこの酷い道は続くのかときいたら、○○(よく聞き取れなかった)まではこの状態で、これから上はもっと酷い状態とのことでした。私のバイクは....そうヤマハドラッグスター400!!!なのです
しかも、白とワインレッドのスタイリッシュな奴!!!!!
でも、せっかくここまで来たんだから、少しくらいは頑張ろうとと思い、アクセルをまわしました
オフローダーの彼は驚きと哀れみの表情で私を見送ってくれました
 
そのまま、「発破中、立入り禁止」とかいう看板を横目に進むと、マウンテンバイクに乗ったおじさんと遭遇しました
彼と話して、先ほどの○○とは頂上(2360m!!!!!!)とわかりました
もう、この恐ろしき道をかなり進んできましたので、引き返すのも気が引けました
そして、なんと彼の計算ではあと頂上まで12kmとのことでした......
 
私は意を決して、そのまま進みました。空冷のエンジンにはきつい仕打ちをしたものです
スリップしつつ、強烈にガタガタしつつ、時速3k〜15kmで登りつづけました。俺の人生
って何なのか、これは自分で撒いた種か..と汗をかきつつ、林道に入って約50分後に
なんとか頂上にでました。幸い一度も倒れずに...
ガタイがでかい割には排気量の小さい、張子の虎の如き400ccアメリカンでも、オフロードバイクに変身できるのでしゅね グスン
 
とまだ、昨日の興奮冷めてませんので、長々と書いてしまって、すみません
私が言いたかったのは、マップか、補足説明で道がオンロードなのかオフロード専門なのか、わかる
ようにしていただけると有り難いのですが(ツーリングマッブルみたいに)..という意見でございます
なんせ林道っていっても原付でも大丈夫なのから、今回みたいにハードなものとかありますんで、
大変かとは思いますが、考えてみてくださいね

それでは、厳しい残暑ですが、身体に気をつけてください

  ※ちなみに、後で発覚したことだが、川上牧丘林道は、ガタガタ林道東日本1位(13年5月号同誌)であったことを最後に付け加えておく。




 ※※その後、このメールは編集されて、2003ツーリングGOGO1月号に掲載されたのでした。