〜 コンクリートスピーカ1号 〜

写真1

読んで字の如く、エンクロージャーの素材にコンクリートを使用したスピーカです。
僕の持っている理論、技術の全てを集結し、かつてない費用と時間を費やした現在の
究極スピーカです。その性能はいかに…




アップ1

《 コンセプト 》

“コンクリート”と聞いて、「また奇抜な物を…」と思われたでしょう。
確かにコンクリートはスピーカの素材としては一般的ではありませんが、
実はちゃんと市販品にも存在します。材質として決して奇抜なものでは
ありません。

では何故コンクリートなのか?この辺の説明は以前の植木鉢スピーカの
解説と重複するのですが、まず「重量」、そして「硬さ」、「響かない」、
「音の内部減衰」。このような利点があります。植木鉢と決定的に違う
のは、形に自由度があると言う事です。実際には加工が難しいですが、
やろうと思えばどんな大きさ、形にもなります。

一般に自作スピーカといえば、エンクロージャーの設計を工夫すること
が醍醐味になっています。反面、その素材はもっぱら木材で製作するこ
とが前提になっており、それ以外の材質は“お遊び”程度の製作をされ
ている人が殆どです。確かに木材は加工も容易だし、仕上がりも美しい
のでスピーカに向いています。しかし木材の最大の欠点は、“重さ”、
“硬さ”の不足です。

ここで少々理屈になりますが…、スピーカユニットのコーンは激しく前
後に動きます。このスピーカユニットをしっかりと固定することが、ど
れだけ音質向上に寄与するか容易に想像できます。実際に市販のスピー
カの上に重い物を乗せただけで、数デシベル音量が上がると言われてい
ます。つまり重くて硬いこと、スピーカユニットを強固に固定すること
が、いかに大切かと言う事です。これは大型スピーカならいざ知らず、
小型スピーカではより深刻な問題です。今回のコンクリートスピーカで
目指したのは「究極の小型スピーカ」だったわけです。


◆



FE107E

《 製作 》

コンクリートと言えば「水で練って放っておけば固まるもの」と思われ
ているでしょう。しかし実際にやって見ると困難の極みでした。

まず、設計の初期の段階から、全ての面をコンクリートにするのは諦め
ていました。前面と背面を木材で、残りの面をコンクリートにするわけ
です。それでもコンクリートなんて扱ったことが無い、知識も経験もな
い状態です。全てが試行錯誤連続でした。とにかく、コンセプトは決ま
っても製作の手順が見えてこない。材料を揃えてからコンクリートを打
つまでの状態になるまで何年も掛かりました。(主に放置状態でした)
そして左官技術の習得が始まります。もう何度投げ出そうかと思ったか…

最大の難関だったのが側面の施工です。生コンは重くて柔らかいので壁
を塗るようにはいきません。悩みぬいた結果、小さなブロックを積み上
げる方法を編み出し、なんとか形になりました。いま考えれば、コンク
リートの板をあらかじめ作っておいて、それを貼り付けるのが一番簡単
だったと思います。まぁ良い経験になりましたが…


◆




《 工程 》

パーツ
細部設計と製作手順が決まって、やっとパーツが揃いました。
いよいよ製作開始です。


組み付け
パーツを組みつけて行きます。この時点では、まだ先が見えない状態で、
不安感バリバリです。


骨組み
前後の板は6mmボルトで強力に固定しています。
側面は竹串を骨にしてコンクリートを塗ります。
なんとか、ここまでは思い通りに進行しています。


施工1
いよいよコンクリートの登場です。ここに来て初めて
“コンクリートが自重で垂れる”という事実を知りました。
側面の施工は、まさに登坂困難な巨大な岩壁となりました。


施工2
困難な側面がようやく終わりました。
上面の施工は問題無く進みそうです。


施工3
いよいよ登頂目前です。感慨深い状態です。


施工4
施工完了です。表面の処理も思ったより
綺麗に仕上がりました。


底面
コンクリートの地肌は脆いので、コーティング用の塗料で塗装しています。
あと、底面は設置場所が痛むのを防ぐためクッションシートを張っています。


完成
いよいよ完成です。感動の瞬間です。
ユニットが無いと穴の空いた箱ですが、ユニットを取り付けると
一気にスピーカとしての存在感がでます。

ところで、見た目では判りませんが、計ってみると1台10Kgありました。
予想以上に重くなってしまいました。置き場所に悩みます。


◆



視聴中

《 視聴 》

いきなりですが、結論を言うと低音が出ていません。どうやら中域と低
域の間に大きな谷ができてしまったようで、ソースが合わないとスカス
カな感じがします。これはバスレフポートの設計をいい加減にしたのが
原因です。今回使用したバッフルの板(100円ショップのまな板)には
最初から穴が空いていて、これを無理に利用したのも敗因です。

スピーカを設計するときに「何かに突出した音にしたい」と毎回頭を捻
るものです。当然ですが、メーカー製スピーカは万人受けするように無
難な設計をしています。しかし、同じ事をやっても自作の意味が無いと
言うわけです。今回の場合、中高音はこれ以上やることがない状態なの
で問題は低音になります。いや、小型スピーカの設計において、低音再
生こそが大命題なのです。そういう訳で、今回は思いきって低いところ
の再生を目指してみたのですが…少々やり過ぎだったようです。そのか
わり、大きさからは想像できない低い音が再生できます。ちょっと大袈
裟ですがスーパーウーファーに近い音です。

少々不満があったものの、全体としては申し分無い音質になりました。
もう、オーディオ専門店で鳴っていてもおかしくないレベルかも。(ち
ょっと言い過ぎ?)元々フォステックスのユニットは繊細な音が出るの
ですが、さらに磨きが掛かったような、艶のある解像度の高い音です。
例えれば、透き通った水のようなイメージでしょうか。ボーカルや独奏
楽器は生々しく、オーケストラの音場感がすばらしいです。

さて、満足と言いながら具体的にどのくらい良いのか比較したいのが人
情です。今回は同クラスのスピーカが手元に無いため、以前作ったスピ
ーカと比較してみます。




旧作
エントリーは…

@ FE127+FOSTEX製エンクロージャー

A FE87E+本の設計図を元に作ったエンクロージャー

B FE83+植木鉢エンクロージャー(植木鉢1号)





まず@ですが、良くも悪くもメーカー製スピーカに近い音です。高低は
あまり伸びてませんが概ねフラットで良い音です。さすが12cmユニット
で、低音が分厚く迫力があります。しかし、中低域でモコモコしたイヤ
な音があり、バスレフポートの設計に問題があるように思います。
コンクリとの比較では、やはり全体にメリハリが無いように感じます。

次にAです。このスピーカは、僕が初めて自作した記念すべき物で、ス
ピーカ自作の世界にズッポリハマる原因になりました。まぁ、完成当時
は身震いするほど感動したものですが、今聞くと少々物足りない感じで
す。具体的には、音に伸びが無く寸詰まりな感じがします。これはエン
クロージャーの形状と容量不足が原因と思われます。FE87Eの新型コーン
は高音が美しいのですが、それ以外はコンクリと比較するのが可愛そう
な感じです。

最後は自信作のB植木鉢1号です。これに関しては詳しいインプレがある
ので、そちらも参考にして下さい。改めて聞くと音が良く伸びているし、
メリハリがあります。ただ、やはり低音は物足りない感じです。
大きさを考えると良く鳴ってると思うのですが…コンクリとの比較では、
どうしようもないエンジンパワーの差のようなものを感じます。

この比較で感じるのは、音の透明感です。これが高級な音なんだ…と思う
瞬間です。コンクリを聞いた後に以前のスピーカを聞くと、どうしても音
が濁ったような印象があります。これはユニットの性能もありますが、い
わゆる“定在波”によるものと思います。(素人考えですが)定在波とは
エンクロージャーの中で反射する音が合成されたもので、音質に大きく影
響します。これは小型スピーカでは重大な問題で、メーカーでもエンクロ
ージャーを台形にしたり工夫しています。今回のコンクリスピーカでは僕
なりに対策をして設計したつもりなので上手くいったと思っています。


◆



使用中

《 総括 》

スピーカ工作というのは、当然ながら良い音楽を鳴らすためにする行為です。
つまり、工作自体が目的になってはいけません。(そういう楽しみ方をして
いる人は別ですが)しかし凝った設計にすると、製作に四苦八苦して目的を
見失う事があります。こうすれば音が良くなる筈…と思いながら作っていて
も、そのうちに完成させることが目的になってしまうのです。今回の製作も
そんな感じでした。とくに今回は、あまりにも時間と労力を掛けすぎて、
「これで完成して良い音じゃなかったら…」と考えると恐ろしくなりました。
結果的に満足できる音になりましたが、あまり凝った設計はスピーカクラフ
トにおいては、やるべきではないと思いました。

とはいえ、良い音のスピーカが出来あがると、何にも代え難い満足感があり
ます。今回は苦労が大きかっただけに尚更です。コンクリートスピーカ1号
は、当分の間(一生?)僕のメインスピーカとして君臨することでしょう。









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