WRCを観戦するチャンスがあっても、思う様に写真が撮れてなかったらガッカリ。
そんな悩みをカメラマンの坂本廣志氏に解決してもらいましょう!
★ターマック・ステージのワン・ポイント・アドバイス

グラベル・ステージで行われる競技は、大きなドリフトが迫力を、濛々と巻き上がる埃が雰囲気を出してくれます。ところが、ターマック・ステージではドリフトは瞬時、埃はほとんど立ちません。つまり、走りの写真の名脇役がいない訳です。
そこで、ドリフトの代わりの車のロールなど、動きの不安定感を出す事を考えます。
埃の代わりには、鈴なりになっているギャラリー、競技車が走っているコースを
ひとつの風景として狙うなど情景描写が必要になってきます。
ヨーロッパの青い空に浮かんでいる沸き立つ様な白い雲、岩山の斜面にびっしりと埋まったギャラリーの前を走って行くカラーリングされた競技車。何処かのカレンダーの様なシーンです。

ラリーを美しい風景のひとつとしてロングショットで狙う

世界のトップドライバーの走りならば、ついついクローズ・アップで撮りたくなるのは誰しも
同じでしょう。その日の最初の見学場所は早めに行き、お目当てのコースサイドに陣取る ことが出来れば、ワイド気味のレンズで埋め尽くされたギャラリーをバックに狙います。
この場合コーナーのイン側を確保したい。もしアウト側に立つ様な事になれば、跳ねる石には注意!
しかし、場所を移動しながら見て行く場合は、どうしても良い場所に入る事は難しく、人の頭越しという事になってしまいます。無理してそこで撮ると、人の頭が邪魔になりカメラを振る事が出来ません.もし高い所に登れる所があれば、たとえコースから離れて車が小さくなってしまっても、ビッシリと埋まったギャラリーの間を埃を巻き上げながら走る姿を狙ってみます。
車の走りを撮るという狙い方ではなく、そこの風景を狙うという考え方でフレーミングしてみるのです。美しいステージ、強い光、青く澄ん
だ空など走る車を引き立ててくれる役者には事欠かないでしょう。
天気が悪くても気持ちだけは負けないで撮りたい

アウト・ドアで行われるラリーは、必ずしも天気が良いとは限りません。ニュージーランドなどは本格的な冬を前にした雨の多いラリーです。こんな中で写真を撮るのはなかなか大変です。しかしこんな天気に負けず熱い走りを狙って頂きたい。
悪天候下での撮影では何処もビショビショで、行動範囲を半径が大幅に挟まってしまいます。そこで長靴や防水が施されているトレッキング・シューズなどで、自分の足元をしっかりと固める必要があります。ポンチョなどは滴がズボンを濡らしてしまうので、上下セットのレインウェアなら完璧です。
カメラには少しの雨なら乾いた手拭いを乗せておく程度で十分ですが、強い雨ならレインウェアが必要です。最近のカメラはほとんどが電池で作動しているので、それなりの対策はしていますが、濡れた事が原因で動かなくなってしまう事があります。傘なども有効ですが、雨対策は十分に作戦を練って望んで欲しい。
たまに雲間から青い空が覗く事もありますが、陽がさすという事は余り期待できません。スロー気味のシャッター速度に絞りも開け気味、カメラブレや被写体のブレにも注意しなくてはなりません。速度の落ちるコーナーを狙ってみたり、ストロボを同調させたディライト・シンクロなども効果的なテクニックです。
動きの表現こそ走りを狙う醍醐味、ジャンプに挑戦

ジャンプ・シーンは多くのラリーに設定されていますが、ギャラリーが見る事の出来るジャンプというと数が限られてしまいます。ラリー・オーストラリアでもラングレィ・パークやバーニングスの下り3段ジャンプなど名物コースがあるものの、古くからジャンプ゚といえばフィンランドラリーの代名詞にもなっています。
ジャンプに限らず良い写真をものにするには、まず良い場所を確保しなければなりません。良い場所が確保出来れば、撮影の半分は終わったと言って良いでしょう。次に考えなくてはならないのは、どの様な角度でジャンプしてくるかです。大概の場合はカメラと車の間に角度がついているので、ピントを送りながらカメラを振ってやらなければなりません。プロはこの間に連続で数カットは撮ります。
使い方によってはオート・フォーカスも力強い味方になってくれますが、アップでは車のスピードにオート・フォーカスがついて行かない場合もあるので注意したい。地上なら「ここに来たらシャッターを切ろう」と目印をつけられるものの、ジャンプならフレーム内で「この位のサイズになったらシャッターを切る」という目星を付けておきます。
被写体は横の動きに上下の動きが加わっています。ついつい慌ててしまいブレてしまったという事があります。落ち着いて車の動きに合わせてシャッターを切るという事を心掛ける事が第一です。
一つの被写体もサイズを変えて狙ってみたい

ターマック・ステージでは、砂埃などの走りの写真の名脇役がいないと言う話を以前しました。ジムカーナ場の様にコースが広ければやはり車の動きそのものに頼らなければなりませんが、ヨーロッパのステージの様に何処を撮っても絵になる風景が控えているので、必ずしも車の動きだけに頼らなくても良いのです。
WRCの舞台に立てばスピード感ある世界の頂点の走りに、ついつい目が行ってしまいがちですが、それぞれのコースの特徴的な風景とラリー車の組み合わせで狙う事が、後々の思い出を引っ張り出すという事を考えると一番良いでしょう。 例えばツールドコルスの様に、道そのものに趣があるスチェーションでは、寄ったサイズでも、引いて風景として狙っても良いでしょう。
なかなか難しいでしょうが、良い場所を確保出来たらサイズを変えて狙ってみて下さい。 天候さえ悪くなければ速めのシャッターで一瞬の動きを捉えて下さい。

熱狂的なラテンの世界に入って一緒に楽しんでしまおう

どのラリー会場に行っても一年に一度行われるビッグなお祭り。バーベキューを楽しむ家族連れや仲間同士、恋人同士もいてコースサイドは観戦している人達で幾重にも折り重なっています。賑やかなこんな人の仲間に入る事が出来ればラリー観戦もがぜん楽しくなるに違いありません。上手く行けばこんがり焼けて油がポタポタ落ちるソーセージと飲みごろのワインにありつく事が出来るかもしれません。

こんなラリーの狙いのポイントは、これらの人達と走っているラリー車の組み合わせなんかではどうでしょうか。クラッシックな石造りの建物をバックに狙えたら、どこのラリーかがすぐに分かります。人の頭越しでも構いません。当然引き目のサイズになってしまいますが、どこで撮っても同じような車のアップでは面白くありません。 標準ズームレンズやワイド気味のレンズをボディにセットしておけば大概の状況はカバーしてくれるでしょう。