日頃の社会保障の充実、発展へのご尽力に心から感謝申し上げます。
私たちは、兵庫県内で生活保護受給者や生活に困窮した方の相談・援助活動を行っているNGO/NPOによるネットワークです。
私たちは、昨年より貴委員会で行われている議論について、わが国の生存権保障の行方を左右するものとして重大な関心を持って注視してきました。それは、収入がなくその日の食事さえもままならない生活から生活保護受給により生活安定が図ることが出来た多くの事例と共に、本来の趣旨とは違った生活保護制度の運用の横行とそれによる多くの人権侵害の事例に直接接し、その方々の塗炭の苦しみを知っているからです。貴委員会が真剣な議論の結果出された「入りやすく出やすい自立支援型」の生活保護制度という方向については私たちも同様の思いを持っており、現行制度の不十分性を取り去り、健康で文化的な最低生活を保障する制度として真に確立させるために重要な点であると考えます。また、生活保護に付きまとうスティグマ排除や違法な運用が行われないような体制、制度つくりも必要不可欠であると強く感じています。
つきましては、貴委員会が近く行おうとされている「報告書」については、次のような点について特に御留意いただき、生存権保障のための制度として生活保護が真に役割を果たせるような内容としていただくように強く要望したします。
1、現在生活保護受給者への権利侵害、保護を必要とする人を排除する違法な取り扱いが全国各地の実施機関で多く発生しています。生存権保障の根幹である生活保護制度におけるこのような重大な権利侵害行為は、社会保障だけでなく人間の尊厳そのものの否定にほかならず、断固として排除しなければならないことはいうまでもありません。しかし、そのような行為が広範に行われるのは、単に一部の制度を理解できていない職員の存在だけに原因があるのではなく、これまでの指導・監査や実施体制にも問題があると考えられます。実施機関による違法行為の横行や職員の資質低下の現状を直視し、その原因を明らかにして対策の実施を明記することによって、実施機関による違法行為・権利侵害の根絶を図る必要があります。
2、これまで17回にわたる議論を踏まえた内容としていただくようにお願いしたします。第15回専門委員会で事務局から提出された「論点の整理」が、これまでの議論を反映していない内容でありことに深く失望せざるを得ませんでした。「入りやすく出やすい自立支援型」とする方向が確認されていたにもかからず、そうではなく抑制的な方向が検討されていることに危惧を抱きます。
「自立支援プログラム」が、「保護費の減額、保護の停廃止」という重大な不利益処分を前提に行われる案が出されています。厚生労働省からは生活保護費の補助率の削減案と関連して、自治体の「自主性・独自性を生かして自立就労支援を実施する体制」という考えが打ち出されていますが、本人の意思に反して強制となるような「プログラム」は「自立支援」とはかけ離れたものとならざるをえません。「自立支援プログラム」であるからには、本人の自発的な自立意思に依拠したもので、十分なアセスメントの実施とニーズにあったプログラムでなければなりませんし、計画通りすすめられなかった場合はその原因を振り返り新たなプログラムの作成が必要となります。そのためには十分なインフォームドコンセントの実施が何よりも重要ですで、「自立支援プログラム」が押し付けられるようなことは絶対に行われてはなりません。「論点の整理」では「十分な取り組みが行われない場合には保護費の減額や保護の停廃止を行うことが必要」とされていますが、うまくいかなかったからといって不利益処分があるようでは「自立支援プログラム」ではなく「自立強制プログラム」にほかなりませんし、最低生活保障という生活保護制度の最も重要な目的にも反したことになってしまいます。仮に不利益処分を前提として「自立支援プログラム」への参加義務を課すのであれば処分性を持つことは明らかで、そうであるならプログラムへの参加に関し恣意的な運用がなされないような適正な行政手続きと不服申立の権利を保障することが求められますが、そもそも実施機関の恣意的な判断が入り込む余地が多い制度設計自体に問題があるということができます。
3、一部の自治体などから出されている期限付きの保護などという考え方は、現在の生活保護制度の根幹を崩すものであり、恣意的な運用を横行させる原因となり認めることはできません。このようなやり方はケースワーク機能の弱体化につながります。就労へのインセンティブを考えるのであれば、資格取得や職業訓練やその保護受給者の抱える問題の解決への支援などはもちろん、雇用創出にも責任をもった形で行うべきです。現状ではそのような支援はなされないまま形式的な就労活動の指示が行われ、権利侵害と生活保護制度の空洞化を招いています。
4、最近の福祉事務所の職員の資質低下については、2003年の「生活保護担当職員の資質向上に関する検討委員会」の提言にもあるように、現在の生活保護をめぐる状況の中でも重大な課題です。資質低下は、十分なケースワーク・援助が行えないというだけでなく、被保護者・要保護者の権利侵害に直接つながっており、そのような事例を私たちは数多く知っています。このような実態が放置されたまま「自治体の自主的独自性を生かして」今回提起されている「自立支援プログラム」が行われたとしても、それが果たして真の自立のための実効性のあるものとなるのか深い疑念を持たざるを得ません。今回の生活保護改革の方向を誤れば、生存権保障の根幹の制度が重大な危機に陥ることになります。権利侵害を誘発するようなことにならないように強く求めるものです。
以上
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