センター試験の古文

2002年度国語T・U講評

嘉恵女『松しま日記』

問1語句の解釈。(ア)「さあること」は「さ」の指示内容を問うているが、直前ではないので注意が必要。(イ)「その山口の道」は「山口」のニュアンスもヒントになるが、直前から導ける。(ウ)「やさしき心」は「やさし」の意を「優美だ」という丸暗記の知識のみで解答したら間違う。重要300語はしっかりと言葉を理解しておく必要があるし、文脈確認も怠ってはならない。
問2部分解釈。「まゐらす」の解釈で二つに絞り、「松」が誰のことを指すのかを考えればよい。敬語の解釈を問うた良問。
問3部分説明。結局、この後問6まですべて問われていることは同じような内容。ここは「理聞こえず」「詮なくや」の解釈で絞れる。
問4筆者の主張。これは難しい。しかし、「明け暮れ」の歌と「咲きしより」の歌を比較検討すれば導ける。
問5部分説明。直前が読めれば容易。
問6和歌の説明。問4と同様。二首の和歌を比較検討させる問題であるが、今までの流れに合わせれば容易。
問7文学史。文系志望者にとっては難しい問題ではないが、理系志望者や日頃あまり作品内容に関心を持っていない受験生は引っかかったかもしれない。Bの『土佐日記』の引っかけはにくらしい。

昨年よりは本文が読みやすく選択肢が短いので平均点はやや上がりそう。28点位。

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<総論>

【出典】

98・本『西鶴名残の友』ーー近世ー小説/98・追『落窪物語』ーーーー中古ー物語
99・本『井関隆子日記』ーー近世ー日記/99・追『源氏物語』ーーーー中古ー物語
00・本『宇津保物語』ーーー中古ー物語/00・追『風につれなき』ーー中世ー物語
01・本『和歌庭訓』ーーーー中世ー歌論/01・追『浜松中納言物語』ー中古ー物語

【平均点】…入試センターは国語全体しか公表しないため数字はベネッセによった。

98・本ー国語T・U全体123.2点/古文25.7点
99・本ー国語T・U全体114.1点/古文22.3点
00・本ー国語T・U全体116.5点/古文21.4点
01・本ー国語T・U全体108.5点/古文25.5点

【特徴】

◎98年度以降、新課程入試となり、新学習指導要領にある「自己表現力の養成・伝統文化の素養 を身につける」というテーマを強く意識しているものと思われる。したがって、「単語・文法」 の丸暗記や文章の「直訳」あるいは、選択肢の消去だけでは正解が導けないよう工夫されてい る。
◎本試においては「的中」を避けるため、あえてマイナーな出典を探し、有名な出典を用いた良 問は「追試」で出題するという矛盾も起こっている。しかし、この点に関しては、昨年、「過 去に出題した内容の再利用もありうる」という答申があったことから、来年度は有名出典の可 能性もある。
◎98・本『西鶴名残の友』は、西鶴独特のくせのある文章で一読では内容がつかめない上に、注 が二十一個もあり、読解しづらく日頃の学習の成果を試すという意味では評判の悪かった問題 である。
◎99・本『井関隆子日記』は、時代は江戸であるが、平安時代の文章を真似た「擬古文」であっ たために、平安文学の感覚で読めた。選択肢にも工夫が凝らされた良問であったが、内容が随 筆的で読みづらいと感じた受験生も多かった。
◎00・本『宇津保物語』は、待望の(平安文学)で良問であるが、受験生には心情問題が難しか ったようで、平均点は予想以上に低かった。これは残り三問との兼ね合いで時間配分がうまく いかなっかたことも考えられる。
◎01・本『和歌庭訓』は、まず、本格的な「歌論」で、高校で学習する内容のレベルを超えてい る上に、文学史が出題されたという点で、今までの流れを完全に無視したものであり、非難の 声が大きい。しかし、全体の平均点のわりに古文の平均が高いのは、「よくわからないけれど も選択肢をじっと読んで選んだら当たった」という受験生が多かったことと、漢文の平均が例 年より低かったことによるものであろう。
◎追試はすべて物語で、かつ、内容も日常の学習の成果が試される良問揃いであった。しかし、 物語系は有名出典が多く(01『風につれなき』以外は有名。)、先に述べたように、的中を避 けるために追試にまわしたものと考えられる。ただ、今後は、今年の反省も含めて、本試に有 名出典が出題されることもあると思われる。

【対策】

◎出典傾向は、中世・近世の「随筆・評論・紀行文」系と中古・中世の「物語・日記」系に分け られる。前者は、古文というより現代文の力が大きく左右される。後者は、日常の学習がすべ て反映される典型的な「古文」の問題である。どちらが出題されてもいいように苦手意識をな くしておく必要がある。
◎出典傾向は迷走しているが、選択肢の作り方は、98年以降一貫して、@丸暗記はだめA直訳だ けではだめB選択肢の消去だけでは絞りにくい、出題が続いている。市販の問題集や模擬試験 だけでは対策ができないほど巧妙に作られているので、過去問による訓練が必須である。
◎時間配分が原因、つまり、「古文にまで手がまわらなかった」ことが平均点低迷の原因である ことは明らかである。大問四問をどの順番で、それぞれどれくらいの時間をかけるかは訓練が 必要である。


さあ、いよいよ実戦だ!次回は「語句編」。やるぞ!


<語句の意味>

【出題内容】

〔98・本『西鶴名残の友』近世ー小説〕

 ア「市をなしぬ」イ「をかし」ウ「一つも埒あかずどもの寄り合ひ」

〔98・追『落窪物語』中古ー物語〕

 ア「かかることなまねび給ひそ」イ「あなわりな」ウ「恥づかしげに」

〔99・本『井関隆子日記』近世ー日記〕

 ア「はかなくも」イ「いかがはかけとどめむ」ウ「ことわりによりて思ひとり」

〔99・追『源氏物語』中古ー物語〕

 ア「あはれに かたじけなかりけること」イ「はしたなくも思しぬべきこと」

 ウ「おほかたのことども」

〔00・本『宇津保物語』中古ー物語〕

 ア「あさましき」イ「なおぼしへだてそ」ウ「もし、心ならでまゐり来ずとも」

〔00・追『風につれなき』中世ー物語〕

 ※出題されず

〔01・本『和歌庭訓』中世ー歌論〕

 ア「作者の得分」イ「いりたちて案内者げに」ウ「よんどころなきこと」

〔01・追『浜松中納言物語』中古ー物語〕

 ア「心やすきものにて」イ「のどかにありつきなむのち」ウ「気色ばみこと離れてはあらで」


【特徴】

(1)当然であるが、〔98・本〕〔01・本〕のような「中世・近世の文章」が出題された年は、「語句 の意味」も「現代語」的な表現が多い。なお、いわゆる「基本単語」というものに傍線を付し たので参照してほしい。

98・本イ「一つも埒あかずどもの寄り合ひ」
 …@全く心を開かない、頑固な者たちの集まり
A全く検討外れなことばかりをする、常識を弁えていない者たちの集まり
B全くたわいない話ばかりをする、時間をもてあました者たちの集まり
C何であるか全く結論を出せない、物事を知らない者たちの集まり
D物事が全く決まらない、決断力のない者たちの集まり

※「埒(=本来は馬場の柵のこと)が明く」は現代でも用いる慣用表現。「物事がはかどる」の意。 Dは「決断力のない」で外れる。正解はC。

(2)一単語ではなく、「語句」の形で出題される。なお、いわゆる「重要語法」が用いられている 部分に編みかけを施したので参照してほしい。

98・追イ「あなわりな」…@まあ仕方がないAなんと理不尽なBとても不可能なCああすばらしいDひどくつらい

※「あな+形容詞の語幹。=感動表現」の語法が問われている。「あな、わりなし」を感動表現にすればよい。@ADが「わりなし」の語感に合うが、Dは感動表現になっていないので不可。@は会話主の心情に合わず不可。正解はA。

(3)「重要単語」が出題されても、選択肢の差が紛らわしいため、暗記による知識だけでは解答が 絞れない。

 98・本イ「をかし」…@風流だAかわいいBおもしろいC奇妙だD困ったことだ

※辞書的意味は@〜Cともよいが、「作者がおもしろがっている場面」だからB。

 00・本ア「あさましき」…@窮屈なAがらんとしたBひっそりとしたC気味が悪いD見苦しい

※語義は「驚きあきはてる程だ」の意だが、ここは「身よりのない女の住まい」のことなのでD。

(4)選択肢の作り方に工夫が見られる。

 00・本イ「なおぼしへだてそ」…@いいかげんだと思わないでください
                Aあまり思い詰めないでください
                Bもっと寄りそってください
                Cそんなに動揺しないでください
                Dうちとけて接してください

※「な(副詞)〜そ(終助詞)」は禁止で、「おぼし」は「お思いになる」。直訳すると「隔ててお思 いになるな」であるが、肯定に直すとDになる。心情の問題だからBは不適。

(5)覚えていない表現を語感や文脈、選択肢の差で判断させるものが多い。その際、現代語の正し い感覚が要求される。

 01・本イ「いりたちて案内者げに」…@擣衣の音が聞こえる場所を教える人のようで
A擣衣をしている現場に読者を導く人のようで
B歌を作る場に身を置いて解説する人のようで
C歌の作り方には詳しいと自慢する人のようで
D擣衣のやり方を細かく知っている人のようで

※「いりたちて」は重要表現ではないが、「案内」が「事情」であり、「げなり」が「〜の様子 だ」であるから、直訳すると「立ち入って事情を知っている者の様子で」で、歌の「今や衣を まきかへすほど」から「擣衣のやり方」を導き、Dとなる。


【対策】

(1)傍線部内の語を知らなくても現代語から推測できるように現代語に対する敏感さを養う。

(2)重要単語は「語源・語感・語義」から理解し、さまざまな意訳に対応できる知識にする。

(3)単語だけではなく、副詞や助詞の用法など、語法も解釈できるようにしておく。

(4)過去問の選択肢によって「いかに意訳されるか」を体感し、日頃から意識して演習する。


さあ、次回は「文法編」。やるぞ!

<文法>

【出題内容】

〔98・本『西鶴名残の友』近世ー小説〕=修辞法。

※出題されず(代わりに「表現問題」。修辞法の知識が必要)。

〔98・追『落窪物語』中古ー物語〕

※出題されず(代わりに「主語問題」)。

〔99・本『井関隆子日記』近世ー日記〕=助動詞・品詞分解。

「れれ・ひぬ・りな・れし・へる・てぬ」の文法的説明として正しくないもの。

〔99・追『源氏物語』中古ー物語〕=敬語。

「御覧ずる・給ふ・奏する・聞こえ・聞こしめし・思さ」の敬語の説明として正しいもの。
※敬語の種類・本動詞、補助動詞の違い・敬意の対象。

〔00・本『宇津保物語』中古ー物語〕=ひらがなの識別。

傍線部の「し」のうち、サ行変格活用・形容詞の一部・過去の助動詞のいずれでもないものを二つ。

〔00・追『風につれなき』中世ー物語〕=助動詞。

「れ」「る」の文法的説明として正しいもの。

〔01・本『和歌庭訓』中世ー歌論〕=動詞の活用。

3カ所の空白部分に補助動詞「侍り」を正しく活用させて入れる。

〔01・追『浜松中納言物語』中古ー物語〕

※出題されず(代わりに「主語問題」)。

【特徴】

(1)旧課程の時には毎年出題され、且つ同じ識別はほとんど出題されないという傾向があったが、98以降は出題されない年もあり、過去と同様の出題も見られる。
(2)「語句」同様、選択肢だけでは解答できないように工夫されている。

〔98・本〕傍線部a〜fについての文法説明として正しくないものを、次の@〜Eのうちから一     つ選べ。

@a「れれ」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「り」の已然形が接続したもの。
Ab「ひぬ」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「ぬ」の終止形が接続したもの。
Bc「りな」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「ぬ」の未然形が接続したもの。
Cd「れし」は、尊敬の助動詞「る」の連用形に、過去の助動詞「き」の連体形が接続したもの。
De「へる」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「り」の連体形が接続したもの。
Ef「てぬ」は、完了の助動詞「つ」の未然形に、打消の助動詞「ず」の連体形が接続したもの。

※本文はそれぞれ、a「七年になむなれれば、」、b「さし合ひぬべかめれば、」、c「おこたりなば、」d「嘆かれしを、」、e「この事にあへるも、」、f「あり果てぬ世」となっている。注意すべきは、a・eの「なれ・あへ」の部分を意味の上から四段活用と判断することと、fの「果て」を動詞「果つ」であると判断することである。正しくない選択肢すなわち正解はE。

〔99・追〕は「敬意の対象」が問われているので、当然読解が必要。

(3)@一語の識別A語尾を含む部分の識別B敬語(種類・敬意)C語の活用D品詞分解に分類される。

【対策】

(1)出題されない年もあるということは、文法のみの力はあまり重視されていないということである。したがって、「文法のための文法」といわんばかりの細かい識別は出題されないと考えてよかろう。さらに、重要なものは出尽くしたので過去問を中心に目を通せば充分であろう。(国語Tも含む)。

(2)選択肢の消去だけでは解答できないようになっているので、「文法問題は必ず本文の中で解答する」ことを習慣づける。

(3)文法事項全体を浅く広くマスターしておく。

@動詞の活用…「上一段・ラ変」「ヤ行上二段・ワ行下二段」「得・経・寝」。「下二段」の活用 表。
A形容詞・形容動詞…「カリ活用の定義」「語幹用法」。
B助動詞…接続。活用表「き・ず・り」。意味「る・らる・す・さす・ぬ・なり・む・まし」。撥音便無表記。
C助詞…「の(同格)・ば・だに(類推・最小限)・さへ(添加)・し(強意)」。係助詞。終助詞。
D敬語…重要敬語の暗記。敬意の方向のシステム。補助動詞の定義。
E修辞法…掛詞。縁語。枕詞。序詞。隠題。←暗記だけではなくシステムの理解を。

(4)クリアしておきたい「識別」。

@「なむ」A「なり」B「る・れ」C「に」D「ぬ・ね」E「せ」F「し」G「らむ」

【参考】…旧課程の問題。

97・本「れ」「ね」の文法的説明として正しいもの。
97・追「なり」「なる」「なり」の文法的説明として正しいもの。
96・本「奉り・おはし・聞こえ・給ひ」の敬語のうち、帥殿に対する敬意を表しているもの二つ。
96・追「格助詞『に』・断定の助動詞『に』・完了の助動詞『に』」の分類。
95・本「いづれの歌をか詠まむ」の「か」と「む」についての文法的説明。
95・追「侍り」を活用させた語形を入れる組み合わせ。
94・本「まうけつべかめり」の文法的説明として最も適当なもの。
94・追「ならせおはしまさず」の文法的説明として最も適当なもの
93・本「れ・侍り・うけたまはり・申さ・賜はり」の敬語のうち、成通に対する敬意を表すもの。
93・追「なりまさむ」の文法的説明として最も適当なもの。
92・本「おもひたまへらむ」の文法的説明として最も適当なもの。
92・追「事破りにおはしませ」の文法的説明として正しいもの。
91・本「連体形『べき』の働き(体言に準ずる・係助詞の結び・下の語を修飾する)」。
91・追「侍り」の違いの説明。敬語の種類・敬意の方向。
90・本「なり」「に」の文法的識別として最も適当なもの。
90・追「ねぬれば」の文法的説明として正しいもの。

〔92・追〕「事破りにおはしませ」の文法的説明として正しいものを次の中から一つ選べ。

@「事」は名詞、「破り」は動詞の連用形、「に」は格助詞、「おはしませ」は動詞の命令形であある。
A「事」は名詞、「破り」は動詞の連用形、「に」は完了の助動詞の連用形、「おはしませ」は補助動詞の已然形である。
B「事破り」は名詞、「に」は断定の助動詞の連用形、「おはしませ」は補助動詞の已然形である。
C「事破り」は名詞、「に」は格助詞、「おはしませ」は動詞の命令形である。
D「事破り」は動詞の連用形、「に」は完了の助動詞の連用形、「おはしませ」は補助動詞の已然形である。

さあ、次回は「部分解釈編」。やるぞ!

<部分解釈>

【出題内容】

〔98・本『西鶴名残の友』近世ー小説〕

※出題されず

〔98・追『落窪物語』中古ー物語〕

「なでふ、男の否と思ふことを、強ひてするやうかはある」

〔99・本『井関隆子日記』近世ー日記〕

「さなからむには、これにまさる悲しさもあはれさも、えあるまじければ」

〔99・追『源氏物語』中古ー物語〕

「かかるころなれば、大臣は里にもえまかで給はで」

〔00・本『宇津保物語』中古ー物語〕

「立ち寄り訪ふべき人もなきに、あやしくおぼえずなむ」

〔00・追『風につれなき』中世ー物語〕

「待ちつけてうれしげに思ひ給へる」

〔01・本『和歌庭訓』中世ー歌論〕

@「作者誰とも知り侍らねば、もしすぢなきこともや侍らん」

A「幽玄の姿は及ばぬままに詠まれ侍らねば、化け物を信仰せるにこそ」
※(本文全体の内容と関連させた解釈として適切でないもの)

〔01・追『浜松中納言物語』中古ー物語〕

「つゆばかりおどろかしほのめかし給ひたらましかば、さては聞き過ごさざらまし」

【特徴】

(1)重要語法が用いられた部分が問われやすい。□囲みは重要語法。
(2)指示語の内容で選択肢の内容が分かれることが多い。
(3)「語句解釈」同様、直訳のままでは選択肢は絞れず、選択肢に工夫が凝らされている。

〔99・本〕
傍線部「さなからむには、これにまさる悲しさもあはれさも、えあるまじければ」の解釈として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
@この世に執着があるならば、死ぬことにまさる悲しく耐えがたいことはありえないので
A死の覚悟がないとしたら、この世との別れにまさる悲しくさびしいことはありえないので
B人生経験が浅ければ、死別にまさる悲しく心の痛むことはありえないので
C意識がはっきりしているならば、死にまさる悲しくせつないことはありえないので
D信仰心がなかったら、死を迎えることにまさる悲しくわびしいことはありえないので

「さ(副詞)/なから(形容詞)/む(仮定婉曲の助動詞)/に(格助詞)/は(係助詞)」の直訳は、「そうでないとしたら」。他の部分(選択肢の後半にあたる)にはほとんど差がない。そして、直前を見ると、「心地たがひて人事を知らざらばこそあらめ(=気分が悪くなって意識がないならば感じもしないだろうが)」とあり、それが「さ」の指示内容となる。「そうでないとしたら」の「そう」が「意識がない」を指示しているから「意識がはっきりしているならば」になる意訳が難しかった。

(4)直訳だけではなく本文の内容と関連させて解釈させる出題が多くなっている。
(5)重要単語とまではいかなくても現代語の感覚による直訳で解答できる場合もある。

〔01・本〕
傍線部「作者誰とも知り侍らねば、もしすぢなきこともや侍らん」の解釈として最も適当なものを次の中から一つ選べ。
@歌の作者は名もない人なので、おそらく姿の整っていない歌を詠んだりするのでしょう。
A歌の作者とは面識がありませんので、仮に行き違いがあったとしても仕方がないでしょう。
B歌の作者がだれだかわからないととぼけたせいで、もしかしていさかいが生じたのかもしれません。
C歌の作者のことを知らずに言ったことなので、もしや気を悪くさせたのではないかと恐れます。
D歌の作者が誰なのか知りませんので、ひょっとすると見当外れな意見かもしれません。

前半を「作者は誰とも知りませんので」と直訳することは容易。「すぢなき」は「筋無し」であろうことは想像がつく。ということは、「筋が通らない」程度のニュアンスは感じとれるであろう。あとは、「や」が「軽い疑問の係助詞」。「侍ら」が丁寧の本動詞。「む」が推量の連体形なので、直訳は「もしかすると、筋の通らないこともあるのではないだろうか」となる。さらに、直前で「他人の批評」をしていることもヒント。あとは傍線部を消すことによって正解はD。

【対策】

(1)重要単語・重要語法は直訳できるようにしておく。=「文法問題」の対策と併せて。
(2)日頃から指示語の内容を補いながら解釈するように心がける。
(3)「語句の意味問題」同様、選択肢の意訳の仕方に過去問のよって慣れておく。
(4)選択肢の消去法だけでなく、本文の内容に関連させることを習慣づける。
(5)日頃から原文を自分で正しく解釈することを心がければ自然と得点できるようになる。

【その他の意訳例】

〔95・本〕「かたなりなるは言ふにたらず、その心ばへは真心にして、さらに歌のほかならず」

@未熟でお話にならないほどひどく、歌に対する真剣な姿勢は見られるものの、とうてい歌であるとはいえない。
A未熟であることは言うまでもないが、素直な気持ちが込められているので、充分歌と呼べるものである。
B未熟であるのは言うまでもないことで、素直な気持ちが込められてはいるが、まったく歌の体をなしていない。
C未熟であるなどということはなく、素直な気持ちが込められているので、歌以外の何物でもない。
D未熟であるなどということはなく、歌に対する真剣な姿勢が見られるので、歌であるというほかはない。

【国語Tレベルの例】

〔新課程問題例〕

「いかやうにてか、おはしまさむずる」の解釈として最も適当なものを次の中から一つ選べ。

@どういうわけで、おいでになろうとしないのか。
Aどんな姿で、おいでになるのだろうか。
Bどうしてここに、おいでになっているのだろうか。
Cどういうつもりで、おいでにならないのだろうか。
Dどういう道を通って、おいでになるつもりなのか。



さあ、次回は「部分説明編」。やるぞ!

<部分説明>

【出題内容】

〔98・本『西鶴名残の友』近世ー小説〕

○表現の特徴…「縁語・掛詞・古歌・連想・リズム感・記録的」で消去法。
○「旅はさまざまにかはりて」の内容。…前後の文脈。
○「今日の参詣なり難し」とあるが、なぜそう言ったのか。…直後の文脈。
○「何がせかぬ貞室」に描かれている様子。…直訳・消去法。
※文法が出題されず。

〔98・追『落窪物語』中古ー物語〕

○「かくのたまふ」の内容説明…直前の会話文。
○「爪弾きをはたはたとして」に示されている心情。…直訳・消去法。

〔99・本『井関隆子日記』近世ー日記〕

○「明日こそ知らね、暮れぬ間の今日はあはれなり」からうかがわれる気持ち。
 …直訳・前後の文脈・意訳による選択肢の消去。
○傍線部によって「何が」明らかであるのか。…人物関係・前後の文脈・主題。

〔99・追『源氏物語』中古ー物語〕

○「今は心やすきさまにても過ぐさまほしくなむ」という発言及びそれに対する聞き手の行動。
 …直訳・前後の文脈(会話文の直訳)・意訳による選択肢の消去。
○「いかでこのことをかすめ聞こえばや」からうかがわれる心情。
 …直訳・指示語・意訳による選択肢の消去。

〔00・本『宇津保物語』中古ー物語〕

○自分の親のことを言い出した若小君の気持ち。…前後の文脈(会話文の直訳)。
○「誰とも知られざりし人なれば、聞こゆとも、誰とは知り給はむや」と答えたのはなぜか。
…直訳・前後の文脈・消去法。

〔00・追『風につれなき』中世ー物語〕

○「心あさく恨めしき御心なり」によって考えられる思い…直訳・前後の文脈(会話文の直訳)。
○「限りある道をば、国王も惜しみとどめさせ給ふことなし」の説明。…直訳・前後の文脈。
○「さらにこればかりは〜ゆめゆめ用意したまへ」の説明。不合致。
 …直訳・「人物関係・文法・表現」で消去法。
○経緯・心情説明。…直訳・消去法。
※「語句の意味」が出題されず、問七まであった。

〔01・本『和歌庭訓』中世ー歌論〕

○「宗匠などは弱くかひなき歌詠みにて。少しも風情こもり力ある歌は、人の歌をも見知らず、 我が身も詠まれず」の説明。
…直訳・前後の文脈。
※解釈問題も実質的には説明問題であった。

〔01・追『浜松中納言物語』中古ー物語〕

○歌のやりとりの説明。…和歌の解釈。
○「あさましながらさすがなり」にこめられた心情。…直訳・前後の文脈。





【特徴】

(1)傍線部自体の直訳は必須である。解釈問題同様現代語的な力も必要。

〔98・本『西鶴名残の友』近世ー小説〕

「何がせかぬ貞室」にはどのような様子が描かれているか。その説明として最も適当なものを次の中から一つ選べ。

@何事にも動じることもなく、人が困っていても平気で万事に無関心な様子。
A何が起こってもあわてず、人の考えなど問題にせずに自己主張している様子。
B万事にせわしなく、人情の機微を解さない無神経で傍若無人な様子。
C万事に急ぐことがなく、俗事にはまったく無頓着で、人の迷惑に気づかない様子。
D何の心配もなく、風雅に専心するあまり、まわりの人にもそれも強制している様子。

「せく」は、「急ぐ。あわてる。」の意。したがってB「せわしなく」は逆で、D「心配もなく」は語義に合わないので不可。後は文脈より、@「人が困っていても」A「人の考えなど問題にせず」が不可で、正解はC。

(2)傍線部前後の解釈も必須である。しかも和歌を含む多量の部分。
(3)心情問題・理由問題・内容問題とも解法に特に差はない。
(4)会話文が根拠になっていることが多い。
(5)指示語の内容や人物関係もからんでくる。

(6)当然ながら、選択肢は一発では消せないように工夫されている。

〔99・追『源氏物語』中古ー物語〕

「いかでこのことをかすめ聞こえばや」からうかがわれる心情として最も適当なものを次の中から一つ選べ。

@藤壺の遺言に従って退位に反対する光源氏に、自分が帝位にとどまることがいかに道理に反しているかを納得してもらいたいと思っている。
A光源氏と藤壺が密通して桐壺帝を裏切っていたことに大きな衝撃を受け、子としての立場から、光源氏に問いただしたいと思っている。
B光源氏が実の父だと知ったことを光源氏にひのめかすことによって、子としての思いを伝え、親を臣下としている罪悪感をわかってほしいと思っている。
C光源氏と自分の顔が似ているので以前から光源氏が実の親だと気がついていたが、言い出せないままになってしまったことを、光源氏に対して申し訳なく思っている。
D桐壺帝が亡くなった後も、光源氏が親子の愛情よりも秘密をまもることを優先して、自分こそ実の父だと打ち明けてくれなかったことを悲しく思っている。

直訳は「何とかしてこのことをほのめかし申し上げたいものだ」。「このこと」の指示内容(=ここは、『自分の父が実は光源氏であることをお聞きになったこと』)で吟味する必要があるのだが、「申し上げたい」という直訳だけで@Aにしてはいけない。設問は、「うかがわれる心情」であるから、Bの「てほしい」でもかまわないのだ。正解はB。

(7)「表現・構成」問題が意識的に出題されている。

【対策】

(1)傍線部自体の直訳力は増強しておくに越したことはない。指示内容の指摘も。
(2)傍線部以外のどこに根拠があるかを見抜く訓練をしておく。
@直前・直後、特に直後への流れから逆算する。助詞の解釈に注意。
A「会話文・心情文」を重視する。
Bその際、設問部分とどういう繋がりがあるのかを確認することが大切。
(3)選択肢の差は過去問で訓練しておく。
(4)「表現・構成」問題は選択肢のキーワードに慣れておけば怖くない。

さあ、次回は「内容合致・主題編」。やるぞ!

<内容合致など>

【出題内容】

〔98・本『西鶴名残の友』近世ー小説〕

この作品の登場人物を作者はどのように描いているか。

〔98・追『落窪物語』中古ー物語〕

乳母と中将の結婚に対する考え方の食い違い。

〔99・本『井関隆子日記』近世ー日記〕

本文全体からうかがわれる筆者の考え。

〔99・追『源氏物語』中古ー物語〕

本文の記述と合致する。

〔00・本『宇津保物語』中古ー物語〕

本文の内容と合致する。

〔00・追『風につれなき』中世ー物語〕

出家を決意した関白が、残される姫君に言った内容。。

〔01・本『和歌庭訓』中世ー歌論〕

筆者の主張する和歌の詠み方について。

〔01・追『浜松中納言物語』中古ー物語〕

本文の内容に合致しないものを二つ。


【特徴】

(1)単純な内容合致問題は少なくなった。不合致にしても二つにして紛らわしくしている。

(2)全体の内容だけではなく、「人物像」「考え方」「和歌の詠み方」など、本文にあるかどうかで はなく、それが「どう表現されているか」を問う出題が目立つ。

(3)本文にあるかどうかだけでは選択肢が消しにくくなった。

〔01・本『和歌庭訓』中世ー歌論〕

筆者の主張する和歌の詠み方についての説明として最も適当なものを次の中から一つ選べ。

@人間の顔が、目や鼻の数は同じでもその形や配置は一人一人微妙に異なっているように、和歌 も微妙な差異を強調して詠むできである。
A花を白雲に、木の葉を時雨にたとえて表現するのは、尊重すべき伝統的な詠み方であるが、卑 属な題材に陥らないようにしつつ、新しい比喩表現を考えるべきである。
B「擣衣」という題で詠む場合、衣を打つ音は優美なので題材としてふさわしいが、具体的な動 作を詠み込むのは卑俗になるので避けるべきである。
C農村風景を詠む場合、農業に従事している人に実状を確かめた上で、卑俗なことがらを排除し、 それ以外の題材で詠むべきである。
D伝統的な表現方法や題材を守るとはいっても、『万葉集』に収められている和歌を手本にする ことは、和歌を俗っぽいものにしてしまうのでやめるべきである。


@は「微妙な差異を強調して詠む」が本文にない。Aは「新しい比喩表現を考える」が本文にない。Bは、「いりたちて案内げに侍るこそ見苦しけれ」が「具体的な動作を詠み込むのは卑俗になる」と合致する。Cは、「農業に従事している人に実状を確かめた上で」が誤り。Bもヒントになる。そこまでして農村のことを詠もうとしていること自体不可である。Dは本文の「万葉集の耳遠きことば、凡俗の心を詠めるこそ、弱き歌とは思ひ侍れ」とあるが、これは例であって、そもそも「手本にする」とは言っていない。正解はB。


【対策】

(1)随筆・評論系は初読時から全体の主題を意識して読むように心がける。

(2)物語・日記系は登場人物の関係・場面(時間・場所)に注意してチェックして読む。

(3)単語的な消去はできないが、選択肢の分析は大切である。

〔98・本『西鶴名残の友』近世ー小説〕

この作品の登場人物を作者はどのように描いているか。

@生業をかえりみず俳諧に打ち込む貞室をはじめとする俳人たちを否定的に描き、浄久の使用人や農民たちの生活感豊かな生き方を、親しみをこめて肯定的に描いている。
A貞室をはじめ風雅に遊ぶ俳人たちの姿を誇張しながらも共感をこめて描き、風雅に理解を示さない使用人や農民の姿を、愚かしい存在として描いている。
B風雅の道に没入しているしている貞室をはじめとする浮世離れとした俳人たちも、承久の使用人や農民たちのような風雅を解さない人々も、それぞれ戯画化いながらもいきいきと描いている。
C浄久のように熱心だが句のよしあしを気にしない俳人の志の低さに比べ、名句を作ることに精魂を傾ける貞室の俳諧への思い入れの深さを、俳人の理想的な姿として羨望をこめて描いている。
D風雅に対する貞室の俳人としての姿勢をあざやかに描きながらも、結果として農民たちを生活苦に追い込んでしまう点を皮肉を交えて批判的に描いている。

最初に選択肢それぞれの内容を分類してみると、@は「俳人たち」を否定、「使用人や農民たち」を肯定、Aは「俳人たち」に「共感」、「使用人や農民たち」を「愚かしい存在として」、Bは両
者の優劣を付けていない、ということに気づく。そして、Cは「志の低さ」「羨望をこめて」が誇張しすぎていて不可であるし、Dは「農民たちを生活苦に追い込んでしまう」が「追い込んだ」事実は書かれていないので不可であるから、CDは消える。では@〜Bをどうするかであるが、本文では「俳人たち」「使用人・農民たち」の優劣を付けていないのでBが正解。

(4)選択肢の主語・述語・目的語等を正しく理解して分析すること。

(例)中納言が姫君の事を不審に思ったので、神のお告げを得るために、宮中に行く途中、お寺に  お参りをした。
※本文に「中納言が姫君の事を不審に思った」と書いてあり、「神のお告げを得たい」と書いてあり、「宮中に行く途中、お寺に  お参りをした」と書いてあったとしても、「お寺にお参りした目的」が「姫君の事を不審に思ったので、神のお告げを得るため」でなければ不可。

さあ、次回はラスト「文学史編」。やるぞ!

<文学史>

【出題内容】

〔01・本『和歌庭訓』中世ー歌論〕

[一]平安・鎌倉時代の歌人についての説明として正しいものを次の中から一つ選べ。

@藤原俊成は「ますらをぶり」の歌風を尊重し、歌論者『近代秀歌』を著した。
A藤原定家は第八代の勅撰和歌集『新古今和歌集』の撰者であり、その歌論に『毎月抄』がある。
B後鳥羽上皇は『新古今和歌集』の編纂を命じ、自らも歌謡集『梁塵秘抄』を編んだ。
C西行は『新古今和歌集』に最も多くの歌が載る歌人であり、家集に『発心集』がある。
D鴫長明は無常観を基調とした随筆『方丈記』ならびに歌論書『無名草子』を著した。


[二]〔01・追『浜松中納言物語』中古ー物語〕

平安時代の物語について説明したものとして正しいものを次の中から二つ選べ。

@『源氏物語』の中で「物語の出で来はじめの祖」と呼ばれた物語は、『宇津保物語』である。
A『伊勢物語』は、在原業平を思わせる「昔男」の一代記のかたちをとる歌物語である。
B『源氏物語』の作者である紫式部は、一条天皇の中宮彰子に仕える女房であった。
C『蜻蛉日記』の作者である菅原孝標女は、『源氏物語』の愛読者であった。
D『狭衣物語』は、「虫めづる姫君」「貝合」などの短編を集めた物語集である。
E『栄花物語』と『今鏡』は、藤原道長の栄華を賛美した歴史物語である。


※旧課程での出題例

[三]〔91・追〕在原業平に擬せられた人物が登場する作品は何か。そのような作品は文学史上 何と呼ばれるか。

[四]〔センター試験試行問題〕建礼門院右京大夫とほぼ同時代の歌人。

 @和泉式部 A在原業平 B宗祇 C藤原定家 D吉田兼好

[五]〔89・追〕軍記物語に属する作品。

 @大鏡 A日本霊異記 B国性爺合戦 C古今著聞集 D保元物語

[六]〔88・本〕連歌に最も関係の深い人物。

 @去来 A能因 B阿仏尼 C後鳥羽院 D宗祇 E藤原俊成

[七]〔88・追〕平家の全盛から源平の争乱にかけての時代を背景として書かれた作品。

 @栄花物語 A徒然草 B方丈記 C蜻蛉日記 D風姿花伝






<解答>[一]A[二]AB[三]在原業平・歌物語[四]C[五]D[六]D[七]B

【特徴】

(1)単なる暗記による知識を問うことにならないように作品内容や人物関係などをからめている。
(2)一つの知識で解答できないように複数の作品・人物に渡って選択肢が準備されている。

【対策】

(1)なんといっても大切なのは、「日々の授業をきちんと自分のものにすること」である。
(2)理系の受験生には負担が重いという批判があり、ここまで詳しく問うことはなくなる可能性は ある。
(3)「平安・鎌倉時代の歌人」「平安時代の物語」が出題されたということは、新課程で出題され ていない残りは…。

@日記文学
A軍記物語
B随筆
C俳諧(貞門ー談林ー蕉風ー蕪村ー一茶)

<元禄の三人>

井原西鶴・・・[浮世草子]
好色物〜好色一代男・好色一代女
武家物〜武家義理物語・武道伝来記
町人物〜日本永代蔵・世間胸算用
雑話物〜西鶴諸国ばなし・本朝二十不孝
松尾芭蕉・・・[紀行文]
野ざらし紀行・鹿島紀行・笈の小文・更科紀行・奥の細道
[芭蕉七部集(俳諧七部集)]
冬の日・春の日・曠野・ひさご・猿蓑・炭俵・続猿蓑
近松門左衛門・・・[浄瑠璃]
時代物〜出世景清・国姓爺合戦
世話物〜曾根崎心中・冥途の飛脚・心中天の網島・女殺し油地獄

D室町の文学(御伽草子・能楽・連歌)

E近世の小説

F国学者(四大人→荷田春満・賀茂真淵・本居宣長・平田篤胤)

契沖・・・「万葉代匠記」
《以下、国学の四大人(「大人」は「学者」の意味》
荷田春満・・・「万葉集僻案抄」
賀茂真淵・・・「万葉考」 「冠辞考」
本居宣長・・・「古事記伝」 「源氏物語玉の小櫛」
平田篤胤

(4)もちろん、似通ったことは今年出題されてはいるが、以下の点には注意が必要である。

@平安女流文学に関して。
A勅撰和歌集(八代集)について。※特に『古今和歌集』について。「六歌仙」など。

<『古今和歌集』の撰者>
 紀貫之・紀友則・凡河内躬恒・壬生忠岑。

<六歌仙>
 小野小町・在原業平・僧正遍昭・大伴黒主・文屋康秀・喜撰法師。

B歴史物語について。

さあ、これで敵の動向はつかんだ。あとは訓練だ。やるぞ!




〈2001年度センター試験国語TU古文〉

1、出典・分量

中世の歌論書「和歌庭訓」。分量は平年並み。設問は本試験としては初めて7問あった。昨年の追試で問7まであったのはこの伏線であったか。
前書きや注等でテーマを理解していないと読みづらかっただろう。

2、設問

問1…(ア)(イ)はほとんど文脈からでしか判断できない。しいて言えば、「案内」に「事情に詳しい」の意があるくらいか。特に(ア)は難。(ウ)「よんどころなきこと」は「よりどころ」を思い出せば一発で解答できる。

問2…センター試験史上最も平易な文法問題(?)。解説の必要なし(?)。おまけにバラで点がいただける。a「べき」の前は終止形だが、ラ変型は連体形である点に注意。b前に「こそ」がある。c「ぬる」は連用形接続。

問3…これも平易。「すぢなき」「や侍らん」の直訳で、ある程度いける。

問4…これも平易。「かひなき」「我が身も歌詠まれず」の直訳と、文脈で為世のことを否定していることに気づけば平易。

問5…ここから先の設問は難しい。まず、「適切でないものを二つ」というのを見落としてケアレスミスをしていないだろうか。一つ目に4を選ぶのは難しくない。「幽玄の姿は〜あやまりを含んでおり」が明らかに誤り。2か5で迷う問題。2は「今こそ正しい歌詠みの伝統に〜」が言い過ぎのようにも思えるが、それよりも、5の「かえってそれに到達しないままに詠まれるのがよく」が明らかに書かれていないので、これが誤り。傍線部の解釈を違えて作った選択肢である。

問6…これも微妙。3が正解である根拠は和歌の解釈と傍線部(イ)から「具体的な動作を詠み込む」を読みとることである。この設問は傍線部(イ)と重複するのでいかがなものかと思われる。

問7…さて困った。来年から理系の受験生にどう指導しようか。センター試験実施以来(共通一次は除く)、本試には一度も出題されておらず、理系ではまず受験指導の中では重視されない文学史が出題されてしまった。もちろん今年は、理系の受験生同士なら条件は一緒であるから落ち込むことはないが、5点は大きい。文系の受験生でも「毎月抄」まで正解で選ばせるとは…。学習指導要領に反しないか?。でも、「高校生として常識的なこと」ということであろう。

3、平均点。

問1は(ウ)しかできない受験生が多いのでは。問2は完答できるだろう。問3〜4はできる。しかし問5〜問7は厳しい。。ということは4+6+6+6=22点。問5の一方ができたとして、26点。こんなところか。
やはり難しかったセンター試験の古文。重要単語は直接出題されず、解釈問題の選択肢は意訳ばかり。内容問題も全体をよく読まないと差が見つけられない。

2000年版
今年も、「国語がいまいちだっった」という声を多く耳にした。
しかし、昨年度書いたことに付け加えなくてはならないことが2点ある。

<その1>
今年は「平安時代の文章で、直訳だけでは選べない選択肢になる」と予想できていた。にもかかわらず出来なかったのは、「失敗」ではなく「対策不足」なのである。

<その2>
「最近のセンター試験の古文は本文・選択肢とも長文化しているので、20分で解答するのは至難のワザである」ことは十分わかっていたはずだから、時間が足りなっかたというのは「訓練不足」である。

厳しいことを書いたが、現に、全員が「失敗」したわけではなく、昨年度と違って、「予想通りだ」と平常心で解いた受験生の声も多く耳にした。さらに、古文が難しいと敬遠されることについて、いいわけを二つ。

<その1>
では、現代文は簡単なのか?現代語もあやふなのに、点数のちょっとした差で「古文のほうが難しい」と決めつけているのではないか。現代文が満点採れないのなら、古文が満点とれるはずがない。
<その2>
「古典」とまとめられていることから、よく、「漢文は満点だったのに」という声を聞くが、私に言わせれば、「だからどうした」である。根本的に考えが間違っている。「漢文」は所詮、中国の言語を日本人がどう読むかであるが、「古文」は、現代語に近いところまでつっこんで問うてくるのだ。文章の読みにくさ、選択肢の深さが全く違う。「同じ労力で古文も満点とろう」というのは甘い。また、そういうことを言っている指導者がいたとしたら、それこそ私が教えてもらいたい。

なんか、不満ばかりを述べた文章になってしまったが、実際、今の学習課程であの問題が解ける力を付けるのは大変なことである。文部省にも少し考えてほしいが、しかし、現実にそのレベルが出題されるわけであるから、当然我々指導者のほうも指導力を付けて行かなくてはならない。それを、「一年で満点を取らせるのは所詮無理」とあきらめて、適当に文法と解釈ばかりをやる授業は許されない。

センター試験まで残り1年を切った受験生は以上のことを肝に銘じて取り組んで欲しい。もちろん、無駄な労力を払う必要はない。真摯な姿勢できっちり学べばよい。

今後のこのコーナーにご期待下さい。

以下、1999年度版です。

98年度センター試験の翌年の授業で私はこういった。「あのような近世文を出題したら、高校での学習の成果が試されないから批判が多い。心配するな。来年は平安和文だ!しっかり基礎固めをしろ。和歌・敬語を中心に。」

そして、今年、また近世文が出た。

ところが今年は違っていた。近世ではあるが、擬古文(平安時代の文体をまねて書いた文章)であるので、読解はできなくてはならないレベルであった。

にもかかわらず平均点は大幅に下がった。理由は3つ考えられる。

@日記ではあったが、随筆風で受験生には読みにくい内容であった。
A選択肢が巧妙に作られており、以前のように消去法が使えなかった。
B全国的に高校生の国語の学力が低下しているので基本問題(文法・単語など)も得点できなかった。

これは大変な事態である。さすがのつるちゃんもしり込みしてしまう。「どうしようか。指導のしようがないよ・・・。」
しかし、「古文」と心中するつもりで覚悟して仕事をしているつるちゃんとしては、ここでがんばらなきゃ!

ということで、近年のセンター試験の古文は、従来の印象・方法ではどうにもならないことがわかった。では、どういう勘違いが考えられるか揚げてみよう!

@「センター試験は、記述式の入試問題をマーク式にしただけだ。」
  →未だにこの感覚でセンター試験を軽視している人がいるとしたら化石だ。
A「センター試験の古文は知識と読解力がしっかりしていれば満点がとれる」
  →これはとんでもない妄想である。98・99年度の本試にそれが通用するか。
B「センター試験の古文はいくら勉強しても満点は取れない」
  →これもとんでもない誤りである。「勉強の仕方」が問題なのである。

<以下は私が予備校で生徒に指導している速読・解答法です!!全国からの強いご要望に答えて特別に公開します!!>

……つるちゃんの センター試験古文 満点をとるために……

【試験までに】

@単語力を増やせるだけ増やしておく。
A助詞・助動詞の解釈を再確認しておく。
B重要識別問題は完璧にしておく。
C『敬語・和歌』の知識による実戦力をつけておく。
D二十分の体内時計を作っておく。

【実戦で】

<全体>

@前書きで素早く状況をつかむ。
A設問にも軽く目を通しておく。
B細部に拘らず最後まで超高速で読む。
C注は必ず使う。

<速読中>

@「と・とて・など」の前には必ず「」をつける。引用文は「具体化」してある。
A心情は、「引用文・和歌」にヒントが多い。
B「已然形+ば」は言動のきっかけになっていることが多いのでチェックしておく。
C「、」ごとに主語の転換に注意して読む。
D読解の三重視!
 (1)助詞・助動詞重視!
 (2)文末表現重視!
 (3)会話文・和歌重視!


<傍線部問題>

@傍線部は、まず文法力・単語力で直訳する。
Aあくまでも「正しい日本語」を意識する。
B傍線部内・前後の接続助詞を重視して、その関係から読解する。
C傍線部の根拠は後ろにあることが多いので、必ず次の「。」まで解釈してから考える。
D同一人物の会話文を探すとそこにヒントがあることが多い。
E対話形式になっていたら、相手の言葉もヒントになる。(贈答歌も同様)
F和歌内の傍線部は傍線の無い部分の解釈を正確に。
G傍線部に係り結びが影響していないかに注意する。
H傍線部の直前直後の「引用文・和歌」がヒントになっていることが多い。

<選択肢>

@設問をしっかり読む。
A選択肢を2対3や3対3に分けて考える。
B前半で消せるとは限らないので注意する。
C選択肢の文の主語ー述語の関係を分析する。
D「〜ので・ために〜」の表現に注意。
E最後に迷ったら、「危ないほう」を落とす。

<万が一時間がなかったら…>

@前書き・冒頭・末尾と設問で勝負しろ!
A会話文だけをつまめ!
B直訳力と傍線部前後の分析力と選択肢の消去法!


<以下は旺文社『蛍雪時代』1999年12月号で私が執筆したセンター試験対策のポイントです!!参考にして下さい!!>

<ポイント1>

文法問題は文脈の中で考えよ。

【例題1】

波線部a〜fについての文法説明として正しくないものを、次の@〜Eのうちから一つ選べ。

@a「れれ」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「り」の已然形が接続したもの。
Ab「ひぬ」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「ぬ」の終止形が接続したもの。
Bc「りな」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「ぬ」の未然形が接続したもの。
Cd「れし」は、尊敬の助動詞「る」の連用形に、過去の助動詞「き」の連体形が接続したもの。
De「へる」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「り」の連体形が接続したもの。
Ef「てぬ」は、完了の助動詞「つ」の未然形に、打消の助動詞「ず」の連体形が接続したもの。

           (99年度センター試験国語T・U 本試験 問2)

【解説】

教師の側からすれば、すべて、品詞分解と助動詞の接続の知識で完答してほしい問題であるが、意外と出来が悪かった。選択肢を見ただけでは、いづれも正しい選択肢になりうるが、新課程のセンター試験では、「文法問題のための文法」は敬遠されるため、常に文脈の中で分析する必要がある。ちなみに、本文はそれぞれ、a「七年になむなれれば、」、b「さし合ひぬべかめれば、」、c「おこたりなば、」d「嘆かれしを、」、e「この事にあへるも、」、f「あり果てぬ世」となっている。注意すべきは、a・eの「なれ・あへ」の部分を意味の上から四段活用と判断することと、fの「果て」を動詞「果つ」であると判断することであろう。正しくない選択肢すなわち正解はE。もちろん活用と助動詞の接続は完璧にマスターしておくこと。敬語も危ないぞ。


<ポイント2>

傍線部分析と前後確認が鉄則!


【例題2】

傍線部A「さなからむには、これにまさる悲しさもあはれさも、えあるまじければ」の解釈として最も適当なものを、次の@〜Dのうちから一つ選べ。

@この世に執着があるならば、死ぬことにまさる悲しく耐えがたいことはありえないので
A死の覚悟がないとしたら、この世との別れにまさる悲しくさびしいことはありえないので
B人生経験が浅ければ、死別にまさる悲しく心の痛むことはありえないので
C意識がはっきりしているならば、死にまさる悲しくせつないことはありえないので
D信仰心がなかったら、死を迎えることにまさる悲しくわびしいことはありえないので

           (99年度センター試験国語T・U 本試験 問3)

【解説】

これも、知識と読解力を問う良問。「傍線部の直訳」すら出来なかった受験生も多いと聞く。訓練しておこう。また、センター試験の傍線部には指示語が含まれる事が多い。その指示内容は前後の文脈から導く。ポイントは「さ(副詞)/なから(形容詞)/む(仮定婉曲の助動詞)/に(格助詞)/は(係助詞)」だろう。「そうでないとしたら」と訳す。他の部分(選択肢の後半にあたる)にはほとんど差がない。そして、直前(省略)を見ると、「心地たがひて人事を知らざらばこそあらめ(=気分が悪くなって意識がないならば感じもしないだろうが)」とあり、それが「さ」の指示内容となるので、正解はC。「そうでないとしたら」の「そう」が「意識がない」を指示しているから「意識がはっきりしているならば」になるのはわかるね。この意訳がセンター試験の特徴だ。



超直前の心構え


戦いはもう始まろうとしている。1月16日センター試験2日目。
君たちは今までがんばってきた。少なくとも敬遠されがちな古文についてこのHPで学んだことは大きいはずである。難問が出ても決してひるむことはない。条件はみな同じだ。落ち着いて全力をだせ!!

(1)国語全体の時間配分を確認して解答を始めよ。
(2)古文には最低でも15分はかけよ。
(3)最初に前書き・設問に目を通し、本文の全体像を捉えよ。
(4)冒頭の5行で方向は決まる!集中せよ!
(5)傍線部問題は特に傍線部の前後3行づつに注意して速読せよ。
(6)末尾が終わったら前書き冒頭に戻って全体を確認せよ。
(7)初読して内容がつかめなくてもあせるな!そんなときは他の受験生も読めてない!
(8)設問文をしっかり読め。解釈なのか心情なのか内容合致なのか主題なのか。
(9)選択肢の違いを集中して見極めよ!特に全体問題は選択肢の違いの分析に時間をかけよ!
(10)難問でパニックになってきたら深呼吸せよ!
<補足>国語TとT・Uを間違わぬように。

祈 センター試験古文満点!           つるちゃん大明神



2000年 国語T・U古文の解説

出典『宇津保物語』「俊蔭」(平安前期の物語)

【全体の講評】

去年に引き続き(去年は近世文だったが文体は平安文であった)平安和文のオーソドックスな文章であった。男女の心情を和歌や会話を通してつかむことを要求している。このことは去年の傾向をつかんでおけば
予想できたはずで、読解演習に励んだ受験生が報われる文章であった。設問も去年の形を踏襲しており、新課程の傾向通り直訳で解答できる設問はなく、選択肢の違いも微妙であった。繰り返しになるが、去年の反省に基づく演習を行っていれば決して難問ではない。しかし、近年の受験生の古文に対する苦手意識を考えると手こずった受験生も多いだろう。

【問1】(ア)「あさましき」は完全に文脈問題であった。普通「意外で驚きあきれた」と訳すが、ここでは「住まひ」を修飾しているので「あきれるほど見苦しい」ととる。(イ)「なおぼしへだてそ」も意訳されている。直訳は「気持ちを隔てなさるな」であるが、その「へだて」をフィーリングで解いた受験生が多かった。禁止を意訳して「うちとけて接して下さい」となる。(ウ)「もし、心ならでまゐり来ずとも」は「心ならで」が「思い通りでなく」の意であること、「まゐり来」が謙譲語で「こちらにうがかう」の意であることがポイントであった。敬語の解釈が問われることは予想されていた。

【問2】識別の単問が出題されたのは意外であった。「し」の識別は基本である。しかし、これも新課程の傾向として、「一単語かどうか」の識別が必要であった。「強意の副助詞の『し』」を忘れていなければ難しい問題ではない。

【問3】例年になく基本的な問題であった。わざわざ出題する必要もないような箇所である。強いていえば、「『なむ』の解釈」を問うているのか。ここの「なむ」は係助詞なので「侍る」などを補って訳す。「あやしく、おぼえずなむ」で「不思議で、わけがわかりません」ぐらいの直訳ができればOK。ただ、文脈で何となく@にした受験生も多いようだ。

【問4】「心情問題は同一人物の会話文から」の鉄則を使う問題。まず傍線部の直訳は「御覧になったように、親がいらっしゃいます」となる。次に、では「親が」いるから何なの?の答は直後の「片時おまへも放ち〜」にある。この部分に正解の「自分のことを心配している親のためにこのままとどまれない辛い立場」が出ている。さらに傍線部の直前に「一夜をともにして女を恋しいと思う気持ちはますますつのり」が出ている。

【問5】消去法でやると消しやすかった。もちろん本文解釈によって解答できる。「あまりにも境遇の差がありすぎるので」が若小君のそこまでの台詞から感じられる。また地の文の「女、いとどいみじきもの思ひさへまさる心地して、はづかしくいみじけれど」も根拠となる。

【問6】@とAで迷う問題。@は「頼りない」の内容が違っている。ここは「自分のことをいるものと思わないで欲しい」と言っているのである。実は和歌を解釈させている問題。これも予想できた。Aは「女がいなくなるのではないかと心配して」が気になるが、若小君の「夜中暁にもまゐり来むと思ふを、ここに、やがておはする人か」からうかがえる。

【平均点】去年は22点前後ということで、あまりにも低すぎた。今年も確かに手強い問題であるが、注が3つと例年よりも少なかったこと、選択肢の長さ・数が去年よりも受験生思いであったことを考えると、去年よりは高くなりそう。26点ぐらいかな。


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