古文の学習法  

「古文を学習する」といったら皆さんは何を思い浮かべますか?

@古文単語
A古典文法
B文学史
C古典常識

さてどれがベスト1位かな?

正解は全部です。あるいはどれも不正解です。
なぜかというと、上記の@〜Cは所詮「覚える」内容に過ぎません。特に受験において陥りがちなのは、その「覚える」ことに終始して読解力をつけないまま入試本番を迎えてしまうというパターンです。もちろん、私立大学国立大学の二次試験などでは独立した知識も問われますが、点差がつくのはやはり読解力です。特に近年のセンター試験ではそれが顕著になっています。それらの詳細については別項で説明して行く予定ですが、安易な丸暗記に走らず、「文章を読んで理解する」訓練が一番大切だということを繰り返し強調しておきます。したがって上の@〜Cに
D読解力を足して下さい。あと、「解法テクニック」というのも入試では大切ですが、これは別項で揚げていきます。

それでは、まず@〜Cについて詳細に解説して行きましょう。

@古文単語                                                     ホームへ

参考書で一番売れているのがこの分野ではないでしょうか。書名は挙げませんが、一冊はほとんどの受験生が持っていると思います。ここではどれがいいと言うつもりは毛頭ありません。実はどれでもいいのです。もちろん本当に頻出する単語でないと困りますが。(以前、センター試験頻出といいながら過去に出題されたものだけを単に並べたに過ぎないものがありました。)大切なのはどう使って語彙力を付けるかです。ここで古文単語の参考書の必須条件を挙げてみます。

(1)出題頻度がうまく絞られている。
(2)語義・語感が詳しく説明されている。
(3)有名出典による用例が付いている。

(1)については既に述べましたが、具体的には参考書の前書きなどを読むとよいでしょう。

(2)が一番重要です。受験生がよく「古文単語の訳っていろいろあって覚えにくい。絞って欲しい」と相談に来ます。しかしその時、「よ〜しわかった!俺が絞ってやる。」なあんて安請け合いすると後で恨まれることになるのです。私はそういう経験を何度もしました。なぜかというと、最近の大学入試(特に新課程になってからの)は暗記では太刀打ちできない設問が多いからです。例えば、「あさまし」という単語が選択式で出題された場合、「@意外だA驚くほどだBあきれるほどだC嘆かわしい」の内のどれが正解だと思いますか?実は前後の文脈がわからないと解答不能なのです。これを、「古文ではほとんど『驚いた』が多い」なんて覚えてしまうと痛い目に遭います。もちろん「選択肢の消去法」の使える傾向のある大学ではその「多い」は90%有効ですが。(「選択肢の消去法」については、いづれ紹介するつもりです。)では、どう覚えるか。

「あさまし」・・・物事の意外さに驚きあきれはてるさま。

これでいいのです!「物事の意外さに驚きあきれはてるさま。」が語義・語感です。古文を読む時は、これを思い出せばいいのです。そして文脈に合わせてその場で訳を考えるのです。
ちなみに、私は昔から受験生にこう説明しています。

「朝起きたときに、『田代まさし』がいたらどうする?驚くだろう!?

 だから『朝マーシー』・・・」

但し、ここで大きな問題があります。お気づきの受験生もいるでしょう。そう「その場で訳を考える」ことが難しいのです。いや正確にいうと、「現代語がうまくないから頭に言葉が浮かんでこない」のです。これは日本という国家にとっても由々しき問題で、私は常々授業でも訴えています。「正しい日本語を身に付けろ!」これについてもいずれこのHPで述べて行きたいと思いますが、「頭に言葉が浮かんでこない」というのは「古文の学習法」に直結していない(実は直結!)のでここでの説教はここまで・・・。

(3)については古文というものの根本的な性格によります。古文の入試で出題される文章は当然ながら昔の日本人が実際に書いたものですが、何でも出題されるわけではなく、原則的には「学校で学ぶ知識」を基にすれば読解できる文章しか出題されません。ということは、限られた題材で限られた法則によって説明のつく文章が出題されるわけですから、たとえ違う文章が出ても似たような表現がたくさん出てくるということになります。これは(2)の単語で述べた文脈の中で訳を決定する力と通じるものがあります。それで「有名出典による用例」で学習することが大切なのです。


A古典文法                                                     ホームへ

「古典文法」で学ぶ分野としては、

1、歴史的仮名遣い
2、用言の活用
3、助動詞
4、助詞
5、敬語
6、修辞法

これらが一般的だと思います。ただ、最近の受験産業では、どうも、「語呂合わせ」や「歌」などで「暗記させよう」ということに重点が置かれ過ぎているように思われてなりません。もちろん、これらは覚えなければなりません。そのための方法として私は「語呂合わせ」や「歌」を否定するつもりは毛頭ありません。私自身も「語呂合わせ」や「歌」を授業で披露(?)しています。評判は今ひとつですが…。

ここで私が言いたいのは、「古典文法」の学習は、一部の入試を除き、あくまでも読解のためにあるべきだ、ということです。現に新課程になってからのセンター試験にはその傾向が顕著に表れています。実は
私がこのHPを公開しようと思い立ったのも、「受験生に読解力をつけて欲しい」という気持ちが強かった、というのが一番の理由なのです。「語呂合わせ」や「歌」ならば、もっとおもしろい授業やHPがあるでしょうが、敢えて私は「きちんとした読解力」を受験生に求めているのです。しかし、結局はそれがセンター試験の高得点に結びつくわけなのですが。わかってもらえるかどうか。

前置きが長くなりましたが、要するに「古典文法」を学ぶ上で一番大切なのは、常に文脈を意識して、読解の中で「文法」を用いることです。もちろん、そのための暗記は必要ですが、「語呂合わせ」や「歌」を用いるなどして、要領よく覚えてしまうことです。

最後に…、前掲の1〜6まではすべて重要ですが、まず「用言の活用と助詞・助動詞」を中心に学習して「直訳力」の養成をし、「敬語」で人間関係の理解、「修辞法(特に和歌)」で心情理解の訓練をする、という流れになります。高校3年生でしたら、一学期中に「1〜3、4」を修了していることが望ましいです。特に案外、「助詞」が重要だということをご存じですか?これについては、今後「古典文法講座」のほうで紹介します。


B文学史                                                       ホームへ

一般的には、「センター試験」に文学史・古典常識の知識は出題されない、と言われています。過去、出題されていた時期はあったのですが、問題数の制限や知識に偏りがちになってしまうのを恐れて、近年では出題されていません。しかし、高校の現場では、この分野の指導も熱心に行われているのですから、現場の先生から出題の希望の声があると聞いています。

ただ、ここでも気になるのが、文学史を単に知識として捉えた考え方です。もちろん知識問題として取り上げられなくても、当時(近代以前)の人々の考え方は、まさにその「文学史・古典常識」の学習によって理解していくものなのです。もちろんクイズ番組で優勝できるほどのマニアックな知識は不要ですが、これもまた、「読解」に通じるものがあるということを忘れないで欲しいと思います。

さて、本題に入りますが、文学史の学習のポイントは次の5点です。

 
@何時代に成立したか。
Aジャンルは何か。
B誰が書いたか。
Cどういう内容か。
D当時の時代背景。

特に、知識問題として、私大・二次で問われるのが@〜Bです。普通、文学史と言えば、「誰の何という作品か」を覚えることに集中しがちですが、古文においては、@やAが重要となります。それでは一つずつ一言述べてみます。

@何時代に成立したか。
一般的に古文の入試においては、

奈良時代→平安時代→鎌倉時代→室町時代→江戸時代
(上代)  (中古)     (中世)    (近世)

と分類します。ここでよく受験生からでる質問に答えておきます。
1、南北朝や安土桃山はどこに入るの?→入試では室町時代に入れるのが一般的です。
2、平安後期って、いつからが後期?→「前期・中期・後期」の分け方は先生によって異なります。学習  の仕方としては、例えば、平安時代なら「『源氏物語』の前か後か」、江戸時代なら「俳諧の流れ」  に沿って他のジャンルをあわせて理解する、といったことが重要でしょう。

この時代分類が読解にどう影響するかというと、一つは前述の「時代背景」を理解することですが、重要なのは、「語句の意味や語法」が時代によって異なるということです。たとえば、別項の「古典文法講座」の「文法」とは原則的に「平安時代の文法」です。いたがって、センター試験に出題されることの多い中世・近世の文章には、学習した古典文法では説明のつかないことがよくあるのです。それを知らずに、「おかしいなあ、意味が通じない」とか「古文は例外が多いから」などといって古文嫌いが始まるのです。最近話題になっている「日本語の乱れ」も実は「乱れ」ではなくて、そもそも言葉というものは時代とともに変遷していくのだから、「進化」しているのだ、という意見もあります。それに関しては、私は別の意見を持っていますが、いずれにしても、古文を学ぶ上では「時は流れている」という感覚が大切です。

Aジャンルは何か。
これは。最も暗記が重要な分野です。自分勝手な分類は許されません。「随筆」はあくまでも「随筆」です。以下に主要なジャンルを揚げてみましょう。

随筆・評論(歌論・俳論・物語評論)・作り物語・歌物語・歴史物語・軍記物語・日記・勅撰和歌集・私家集・紀行文etc。

丸暗記は、ジャンル別に時代順に暗唱するとよいでしょう。例えば、日記は「とかいむささケイト(都会はむかつくとサッサと帰ったケイトちゃん)」といったふうに。

B誰が書いたか。
これは単純なようで、実は最近の流行があります。例えば、『枕草子』の作者は…で「清少納言」と答えさせるのではなく、「…の父が編纂に関わった勅撰和歌集は何か」というふうに、突っ込んでくるのです。清少納言の父は「清原元輔」ですから、正解は「後撰和歌集」です。まあ、出題されやすいものはある程度決まっていますから心配する必要はありません。

Cどういう内容か。
これは、センター試験については前書きを重視すべきですから除外して、主に私大入試における対策です。
まず、私大志望者は過去問を見て下さい。例えば、私の地元で人気の西南学院大が『蜻蛉日記』を出題した際、「夫との結婚生活がうまくいっていない」ことを知らないと読みようのない文章を出題したことがあります。これはこの大学の大きな特徴で、この「不親切な」出題は日本一といってもいいでしょう。ここで誤解して欲しくないのは、決して問題を非難しているのではなく、文学史の知識のいる典型的な出題方式をとっている大学だといっているに過ぎないということです。
このように、私大はあらゆる形式で受験生の知識を問うてきます。要注意!

D当時の時代背景。
これは次項の古典常識に通じるものがあります。たとえば、『枕草子』を読むとき、生活レベルをどのあたりにおいて考えますか?当時の貴族ってどういうレベルで生活していたのでしょう。実はその貴族にもレベルがあるのですよ。我々庶民(上流のご子息子女の皆さんごめんなさい)と同レベルで考えてはダメです。ご飯は自分では炊きません。塩水の海なんて余り縁がありません。
ところが、『平家物語』を読む時は、同じ貴族が出てきても、生か死かの状況で風流なんて気にしていられない時代であることを忘れてはなりません。
私は元来歴史は好きでしたが、暗記が苦手だったのであまり熱心には勉強せず、古典で歴史を学んだという感じです。

C古典常識                               ホームへ

「文学史」の項で述べたこととかなり重複しますが、例えば、「ある男が女の所に通わなくなった」という場面が出てきたとします。その理由がどう浮かびますか?「愛が薄れたから」なんて答えたらギャグになってしまいます。もちろん、本文がないとわかりませんが、『伊勢物語』には「親なく頼りなくなるままに」とあります。では、「女の親が亡くなった」のがなぜ理由になるのでしょうか。これが当時の習慣によるのです。当時は「結婚を認めるのも、結婚生活の面倒をみるのも女側の親だったので、男にとっては経済力のある親がいることが女の魅力の一つだった」のです。そこで、この男は「一緒に貧乏暮らしなんかするものか」と他の女に心が移ってしまうという話。
これなどはまさに、当時の習慣を知らないとどうしようもないですね。その他、身分制度や宗教についても常識が必要です。私は受験生に「仏教における理想の死に方」の話をしてヒンシュクをかったことがあります…。さらに、現代の常識がないために古典の常識がわからないってことも…おっと、また愚痴っぽくなるのでやめます。

知識問題としてな、月に関するものとか、官職に関するものとか、宮中に関するものとか、いろいろです。詳細について、前述のように立派な参考書がありますので、ここでは揚げません。

D読解力                                ホームへ

私が授業で使っているプリントの一節を紹介します!

【読解セブン】シュワッチ!

@現代語と違う単語の意味・語法(特に助詞・助動詞)を意識して正確な解釈をする。
A本文以外に「前書き・作品名(ジャンル・文学史の背景)・古典常識・注・設問文」もヒントになる。 B初めと終わりの数行ずつの精読が重要。
C地の文と会話文、挿入文を分けて読む。
D省略を補いながら読む。
E主語・会話主をチェックしながら読む。→わからない所は後から戻る。
F内容がわからなくても、とにかく最後まで読む。→わからない所を後から推測する訓練が最重要!

一読しただけではピンとこないかもしれませんが、特にセンター試験の問題を20分で読んで解答しようという訓練をする場合、かなりヒントになると思います。
この項までいろいろ述べてきましたが、私は文法完璧、単語完璧を目指せと言っているわけではありません。極端になりますが、読めなくても正解が出ればよい、というのも事実です。しかし、最初から「読めない」ことを前提にする人はいないでしょう。大切なのは「正確に読もうとする努力」です。センター試験でしたら、六割ぐらい読めれば何とかなります。その六割が、何とかが大切なのです。完璧を目指して努力していけば、最悪でも六割は読めるでしょう。そのつもりで私は日頃指導しています。

さあ、その努力を一緒にしていきましょう。

                                       つるちゃん記す
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