冷房ケースについて                                     寄稿 絵慕氏

     
 よくいわれる「ヘリアンフォラに冷房がいらないのは常識」というありがたいお言葉。しかしながら6年ほどこの植物とつきあい、人一倍思い入れも強い私はいまひとつ納得できずにいます。
 たしかに高山性ネペンテスやダーリングトニアと違いヘリアンフォラは暑さで枯れるということがあまり無いのは事実です。しかしながら90〜100%というきわめて高い湿度を要求するこの植物は大抵密閉状態で管理するため夏季の日中は40℃、時に45℃という異常な高温に晒されるケースが多く、これでは高山性でない植物でさえも調子を崩してしまいそうです。実際ヘリアンフォラのなかでも比較的丈夫な交配種でさえ成長が止まったり葉が小さくなったりと不具合がでることが多いものです。秋になれば回復し始めるものの、翌年の夏までにもとの状態まで戻らなかった場合は前年よりさらに小さくなるわけで、しまいには漏斗形のつまらない葉や幼葉に戻るケースさえもあります。これでは鑑賞価値も著しく低下するので私としては基本的に冷房に頼ることにしています。
 もちろんこれは私のこだわりみたいなもので冷房がなければ作れないというわけではないのですが、より積極的にこの植物に取り組もうという方は一考されてもよいのではないでしょうか。本格的な冷房設備としてはやはり野外設置の冷房温室が最高なのでしょうが、コストや設置スペースの問題もあるのでここでは比較的手軽な室内用冷房ケースをとりあげてみます。 室内用冷房ケースは最近では市販品もありますが、ジュースなどを冷やす業務用の冷房ショーケースやビールストッカーでも代用できますので、これらの中古品を探すのもコスト的にお勧めかと思います。私は不要になった室内温室に中古冷蔵庫を二台連結して自作してみました。以下、製作に際してのおもなポイントについて述べてみます。

            

 まずは室温の設定です。もともとヘリアンフォラはかなりの高温にも耐えられる植物なのでそれほど神経質になる必要もないのですが、換気扇用のサーモスタットを取り付けて一応25℃くらいで冷房が入るようにセットすれば申し分ないでしょう。 冷房器具は一部の特殊なものを除き、それ自体が除湿機でもあるので高湿度を要するヘリアンフォラは蓋をした水槽などに入れてからケースに収容するのがもっとも簡便で安全な方法ですが、できれば広いスペースが望ましいのでケース内に直接鉢を並べ、不足する湿度を加湿器で補ってやるとより成績も上がることでしょう。また底に生ミズゴケを敷き詰めておくと湿度保持に一役買います。
 加湿器を使うばあいは超音波式に限ります。家庭用タイプで毎時450ccほどの十分な霧化能力がありますが、防水処理がなされていないため、なるべく加湿器本体はケースに入れず、吹き出し口にホースを取り付けてこれをケースに引き込むのが安全です。加湿器はファン内蔵なので長めのホースでも霧を送ることができます。

 ちなみに最近アクアリウム栽培で脚光をあびている「アクアミスト」などの小型加湿器は防水面での心配はありませんが、毎時250cc程度の能力ですので一台ではショーケースに対応できませんし、別に送風ファンで霧を拡散する必要もあるので少し使いづらいかと思います。加湿器の運転は冷房と連動させるのが安全で、下手にタイマーで作動を制限すると乾燥による思わぬ失敗を招き危険です(湿度は40%くらいにまで下がる)。また別に送風ファンを取り付けて15〜30分おきに植物に風をあててやるのもよい方法です。活性を促すとともに低くよどみがちな冷気を拡散するのにも一役買います。ちなみに水草栽培で常識化しているCO2添加が室内温室規模のものに有効かどうかを現在実験中ですが、今のところはっきりした効果は確認できていません。

             

日照ですが、室温上昇を押さえるために育成灯を使用するのが一般的ですが、当然ながらケースの冷房能力の許す限り自然光との併用が望ましく、またユニット自体も安定器からかなりの熱を発生するので、できればインバーター式の製品を使いたいものです。これもメーカーによってはかなり熱の出るものもあるので購入前にチェックしましょう。
蛍光管も最近は植物育成用としてさまざまな製品が発売されていますが、家庭用のパルック昼光色なども意外な効果があり、コスト面からもおすすめできるものです。

冷房ケースは高額というイメージが強いようですが、工夫次第でそれなりに安く製作することもできますし、ヘリアンフォラにかぎらず高山性ネペンテスやダーリングトニア攻略にも有効なので、ご興味のある方はこの機会に取り組れてみてはいかがでしょうか。

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