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『Fragile −こわれもの teen's best selections

石崎洋司 編著/長崎夏海 著/
令丈ヒロ子 著/花形みつる 著
ポプラ社
2007年7月
20cm / 293p
本体1300円

多感な時期は成熟期
鈴木理代



 四人の作家による短編集。一見どこにでもいる中学生たち。こわれもの…多感な思春期はまさに取り扱いに注意しなければならないこわれもの。こわれそうな心のバランスをはかり、こわしたい壁に立ち向かう。熟成している時間だ。 
 <いじめと向き合う> トップクラスの成績をとっていじめの標的になる。いじめる側は理由なんて何でもいい。自分の心をビー玉に重ね合わせ落ち着かせた。ビー玉のような球面は外へと力を逃がす。だからいつも身近にビー玉をしのばせていた。
 自殺した子の心を割れた一輪挿しにたとえ、ビー玉だったら、投げつけられても破片にならず、胸を張って輝き続けていられたのに。亡くなった少女への無念な想い。自分もビー玉のように強く生きたいと願う。(「Fragileーこわれもの」石崎洋司著)
 <少女から大人になっていく>  学校が嫌い。でもみんなで群れている時間が好きだった。とりあえず一人になって自分を試したかった。手伝っていた民宿に学生のグループが泊まりにきて、学校のみんなを思い出したが意外と平気だった。ちゃんと一人で立てる自信がついた。バイトしている食堂で「いいこ」だと言われ、その響きが素直にうれしかった。仕事が終わると誇らしい気持ちになった。
 頭がいっぱいになっても引き出しがある。忘れたいものもそこにしまえ、必要なときには取り出せる。引き出しを増やしていけば、人間そう簡単に壊れない。自分を見失うことなく生きていける自信がついた。(「忘れ物」長崎夏海著)
 <相手の気持ちに気づく>  お笑いのコンビを組んでオーディションを受けようとしたが、出番前に相方と喧嘩して舞台放棄。考えてみれば、気の合う相方だと喜んでいたのだが、相方はいっさい意見を言わなかった。(あたしの思い通りに合わせてくれてたってこと?)自分の無神経さが悔やまれた。(もしこれが逆の立場だったら、あたしだっていやだなあ)相方のご機嫌しかみてなかったことに気づいた時から、お互いの本音をぶつけて話せるようになった。(「あたしの、ボケのお姫様」令丈ヒロ子著)
 <自分の居場所を確保する>  美術部はロクでもない生徒のたまり場で、存在する価値もないと決めつけられて、じわじわと怒りがこみ上げてきた。「自分が大切にしていたものを、バカにされたことだけは我慢できない。」本気になれば何だってできる。無気力だった気持ちに火がついた。校長を交渉に引き出す。昨日まで真面目で目立たない文系人間だった私を、ギャラリーも共感を示してくれた。それをパワーに気持ちを奮い立たせた。私の戦う姿をみて、不登校とおたくの部員二人も感動して行動をともにしてくれた。ともに戦った絆は強くなった。新たな居場所を確保できた。(「アート少女」花形みつる著)
 <逃げない> いつも周りを気にして、注目されないようにしていた。だれからも好かれなかったし、だれからも嫌われなかったし、いじめられもしなかった。ノーマークの存在であり続けることに努力した。
 スケートボードをすることで目立ちたいわけじゃない。一緒にいたいだけ。「うつむいてばかりの、そんな不健康なスポーツやってるから、視野が狭くなってまわりが見えなくなるんだよ」と言われたオレだったが、人にトリックを見せる興奮と、星空を見上げる感動を知った。(「流星群」石崎洋司著)
 気づいていた。逃げなきゃならないようなことはしていない。なにかひとつ、自分で自慢していえるものが欲しかったのだと。

(『子どもの本棚』2008年2月号掲載)

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