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『これがほんとの大きさ!

スティーブ・ジェンキンズ作
佐藤 見果夢訳
評論社
2008年3月
31cm / 32p
本体1600円

“大きさ”を見せる絵本の力
 「 切り絵の力」「 “大きさ”を実感させる工夫」
本間佐男



 世界最大のガ「ヨナグニサン」の羽の先の模様は、ヘビの頭に見せかけ敵をおどす知恵だという。深海に住む体長18メートルの巨大な「ダイオウイカ」の目玉はバスケットボールほどの大きさがある。オーストラリアに住む巨大ミミズ「ジャイアント・ジップスランド・ミミズ」は、長さがなんと90cm以上、地下トンネルを掘って進むときはゴボッ、ゴボッと音を立てるという。世界一大きな肉食魚類「ホオジロザメ」の体重はなんと2.5トンにもなる。口には鋭い歯が3000本、それが何列にも並び、一本の歯が折れると次の列の歯が移動しその場を埋めるという。西アフリカに住むゴライアスガエルは、足を伸ばすと90cmにもなり、子どもを守るためには水場に来たゾウにも跳びかかるという。
 動物の不思議な、しかし、なるほどと思わず唸ってしまうような生態が温かく紹介されている。
 表紙のゴリラの手にはじまる質感のある切り絵は、生きる知恵と不思議に満ちた動物の魅力に、一気に引き込む力がある。切り絵はそれぞれの動物の特徴を正確にとらえ、紙面の構成は“大きさ”を実感させる工夫に満ちている。ゴリラの手に身長約6cmのピグミーネズミキツネザルをとまらせたり、シベリヤトラのひげの一本一本を表すなど、計算されたデザイン力に感服する。そこには、写真絵本では表現できない作者の人柄や体温さえもが感じられうれしくなる。
 アメリカ合衆国ノースカロライナ州立大学でデザインを学んだスティーブ・ジェンキンズは、幼い頃から昆虫や小動物をはじめ岩石、化石などに親しみ、絵を描くことを通して生物の不思議と知恵を発見した人である。この作家の邦訳作品には、動物たちの発するユニークな「ことば」を着色した揉み紙やちぎった和紙の技巧を凝らして伝えてくれる『どうぶつのことば』(評論社)、いろいろな動物が自分の耳や目や口、鼻、足、しっぽを使ってくり広げる驚くべき行動を、色鮮やかな切り絵で紹介してくれる『こんなしっぽでなにするの?』(スティーブ・ジェンキンズ/ロビン・ペイジ共作/佐藤見果夢訳 評論社)、『進化のはなし』(評論社)などがある。
 いずれの作品にも巻末に、生息地・大きさや食性、生態とその動物に備わった生きる知恵が、数字を上げて正確に、興味深く解説されている。特に、その生物が人間に発見された経過や、時に乱獲や環境の破壊で絶滅に向かっている状況などが端的に書かれていて興味が広がる。解説のそれぞれに添えられた切り絵は、実物の全体像と特徴を的確に捉えていて図鑑としても活用できる。
 保育園の子どもたちに見せたところ、イリエワニの口やゴライアスガエルやシベリアトラの顔の場面ではその迫力に驚きの声を上げた。くり返しページをめくり、切り絵の細部につきない興味をかき立てられていた。ゾウの足やゴリラの手は、絵でも写真でも表せない切り絵ならではの力を持っている。
 実物大を意識させる動物図鑑や、ほんとうのおおきさを写真でとらえた絵本〔例えば、『ほんとのおおきさ動物園』(福田豊文 写真・小宮輝之監修)など〕が数多く出版されている。カメラの目は、瞬間的興味を引くが、ひとつの作品を読むような温かさで、読者に働きかけ、知らず知らずのうちに科学の世界に誘うような落ちつきのある絵本は少ないように思う。そうした中で、この絵本は、表紙からはじまりやわらかな色彩と1ページごとに見事にデザインされた絵、そして、むだなく、すっきりと言い切った解説のことばが総合されみごとなまとまりを生み出している。
 手作りで表現するという作業が、実はそのものの持つ本質をより確かにとらえることになることを改めて教えられる作品で、子どもたちの創作表現にも生かすことができると思う。

(『子どもの本棚』2008年8月号掲載)

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