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 拙著『あなたの成長が地球環境を変える!』では、ページ数の都合上、「ゴミ・廃棄物問題」「地球温暖化」「生物種の絶滅」しか取り上げられませんでした。ここでは、「オゾン層破壊」「森林破壊」「水資源の危機」「酸性雨」をポジティブな視点で解説します。
 より理解を深めるために、拙著をお読みいただければ幸いです。


第1章 オゾン層の破壊  第2章 森林破壊  第3章 水資源の危機


第1章.オゾン層破壊

■オゾン層破壊とは?

◆オゾンとは?

 オゾン層は、私たちの地球の上空20キロから25キロくらいのところに5キロくらいの幅で広がっています。そして、太陽からの強い紫外線を吸収し、私たちを有害な紫外線から守ってくれています。
 オゾン層のオゾンは、大気中の酸素が太陽からの強い紫外線を浴びることによって発生します。オゾンは、オゾン浴などで健康に良いというイメージがありますが、これはごく微量の場合で、それ自体は非常に毒性の強い物質です。ところがこのオゾンが上空にあるときは、地球上の生物を守ってくれるのです。
 オゾンは、地上にあるときは光化学スモッグなどの原因となり、上空にあるときは生物を守ってくれるというわけです。

◆オゾン層はレースのカーテン

 地球は46億年前に誕生しました。35億年前に海の中で最初の生命が誕生し、進化していきました。やがて光合成の機能を持つらん藻類が現れ、大気中の二酸化炭素を酸素に変えていきました。
 酸素が増えていく過程で、海で進化した生き物は陸に上がろうとしたのですが、太陽からの紫外線が強すぎてどうしても上陸できませんでした。しかし、現在の状態に近い酸素の濃度になったとき、オゾン層が十分な厚さになり、強烈な紫外線が地上に届かなくなったのです。4億年前のことです。そして生命が上陸して、進化してきたわけです。
 だから、オゾン層がなくなれば、陸上には何も棲めなくなるのです。4億年前の状態に戻るというわけです。

 さて、オゾン層は5キロの幅で広がっていると説明しましたが、20キロから25キロ上空といえば、ものすごく空気が薄くて、圧力も非常に低いのです。実は、このオゾン層を大気圧に換算すると、わずか3ミリにすぎません。たった3ミリで地球の生命を守ってくれているのです。
 ちなみに、地球の空気がすべて大気圧だったとしたら8キロつまり800万ミリの厚みになります。3ミリといえば800万ミリの270万分の1。何と空気の270万分の1の成分が、地球の生物を守っていることになるのです。このようにオゾン層は非常に薄いので、「レースのカーテン」と呼ばれています。

◆オゾン層破壊と紫外線

 オゾン層が全部なくなると、陸上の生物は何も生きられません。しかし、いますぐには、そういうことは起こらないでしょう。したがって、「オゾン層が薄くなるとどうなるか?」が当面の問題です。
 研究の結果分かったことは、オゾン層が薄くなると紫外線が増えるということです。ただ、この紫外線というのは、オゾン層破壊が始まる前とは違うものです。
 私たちが「子供は真っ黒のほうが健康的だ」とか「ビタミンDができるよ」と言っているのは、実は紫外線A(UV−A)のことなのです。

 紫外線はA、B、Cの3種類ありますが、AよりもB、BよりもCの方が生物にとっては危険です。紫外線Aはまったく影響がないわけではありませんが、他の2種に比べるとかなり軽微といえます。とりわけ紫外線C(UV−C)に長く浴びてると、生物は死んでしまいます。このうち紫外線Cは、地球の40キロ以上の上空で大気に吸収され尽くされて、現在のところ地上には届いていません。
 オゾン層が破壊されて降り注いでくる有害紫外線というのは、紫外線B(UV−B)のことなのです。紫外線Bは、生物のDNAつまり遺伝子の本体を傷つけます。
 オゾン層が薄くなる前は、紫外線Bはオゾン層を通るうちに吸収されて、ほとんど地上に届いていませんでした。しかし近年、オゾン層が薄くなったために、紫外線Bの一部が地上に届きはじめたのです。

■オゾン層破壊の原因

 オゾン層破壊の直接原因は、フロンという化学物質です。フロンというのは実は日本語で、正式にはCFC(シーエフシー)と言います。CFCとは、クロロフルオロカーボンの略です。クロロは塩素、フルオロはフッ素、カーボンは炭素のことです。
 フロンは、空気中に排出しても分解せずに長期間地上付近に漂い続け、15〜20年かかってオゾン層に到達すると言われています。

◆オゾン層破壊のメカニズム

 フロンは地上にあるときは、非常に安定で分解することはありません。しかしこんな安定なフロンでも、オゾン層付近の紫外線を浴びると分解してしまうのです。
 普通の化学反応は、2つの物質が反応して1つの物質ができるとか、せいぜい3つの物質から2つの物質ができる程度のものです。ところが、フロンの分解によって塩素という原子が飛び出し、この塩素原子が連鎖反応で次々にオゾンを破壊してしまうのです。
 塩素原子がオゾンを破壊する→再び塩素原子が飛び出す→別のオゾンにとりつき破壊する→またまた塩素原子が飛び出す→そして、またまた別のオゾンを破壊する。こんなイメージです。こうして1個のフロンが大量のオゾンを破壊してしまうのです。
 なおCFCの中には、1分子あたり10万ものオゾンを破壊するものがあり、モントリオール議定書に基づいて1995年末を持って全廃されています。

◆オゾンホールとは?

 1985年に南極でオゾンホールが発見されました。オゾンホールというのは、オゾン量が平年値の半分以下になった状態を言います。しかも、その後の観測で毎年どんどん大きく広がってきていることが分かってきました。毎年春先から初夏にかけてオゾンホールが発生し、ここ数年その面積が南極大陸の2倍ほどになっています。
 最近では北極付近でも、春先にオゾン量が通常の30〜40%減といった、オゾンホールに匹敵する状況になってきました。そして「4月から5月にかけて、北極上空で形成されたオゾン濃度の低い空気の塊が北日本上空に流れ込んでいる」という観測結果も国立環境研究所などが発表しています。

■オゾン層破壊が解決すると・・・・

◆安心して外出ができる    
 オゾン層が少しずつですが元に戻り、オゾンホールの発生がなくなります。この結果、有害な紫外線B(UV−B)が減少し、人体への悪影響が軽減されます。

@皮膚ガンの発生が抑制される

 遺伝子の本体を傷つける紫外線Bが減少することで、とくに皮膚がんやメラノーマ(悪性黒色腫)の発生が抑制されます。

A白内障患者が減少する

 紫外線の一部が角膜を通過し、水晶体に到達すると白内障を招くとされています。白内障にかかると、目のレンズの役割をしている水晶体が濁って視力が低下し、場合によっては失明してしまうことがあります。
 UNEP(国連環境計画)は、「10%オゾンの減少が続くと、白内障による失明が毎年世界で160万人から175万人増える」と発表しています。
 紫外線Aと紫外線Bとの相乗作用で、より損傷が大きくなると言われています。このことから、紫外線Bが減少すると白内障患者が減少することが期待されます。

B免疫力が強まる

 紫外線Bが免疫力を低下させます。免疫力が低下すると、病気に感染しやすくなるし、いったん感染するとなかなか治りません。しかもウイルスを持っている細胞に紫外線を当てると、ウイルスが活性化する現象が見つかっています。「HIVウイルスの感染者が、紫外線に当たることによってエイズを発症する」という報告も出されているほどです。
 オゾン層破壊がストップし紫外線Bが減少すると、免疫力の低下を防ぐことができます。また日光(紫外線A)に当たることで、皮膚内部でビタミンDが合成されます。ビタミンDは腎臓と肝臓で酵素の作用を受けて活性化し、骨がもろくなるのを防ぎます。

 今オゾン層破壊が止まると、徐々にですがオゾン層が回復していき、数十年後には完全に復活すると言われています。一般に、「オゾン層が1%回復すると紫外線Bが2%減少し、皮膚ガンや白内障などの影響が3%抑制される」と言われています。
 公園でたくさんの人が日向ぼっこをし、赤ちゃんが日光浴している。真っ黒に日焼けした子供たちが走り回っている。このように、真っ昼間でも安心してプールで泳いだり、外出することができるようになるのです。こんな未来を少しでも早く見てみたいものですね。

◆動物への影響が軽減される    

 紫外線Bが減少すると、動植物への影響も軽減されます。たとえば、@遺伝子が傷つきにくくなり突然変異が抑制される、A卵のふ化への悪影響が軽減される、B動物の失明が減少する、C植物や野菜の成長を妨げることが少なくなる、D海面付近のプランクトンへの影響が小さくなり、食物連鎖の上位にいる魚介類の減少に歯止めがかかる、などが期待できます。

◆太陽電池の寿命が長くなる    

 太陽電池は紫外線により劣化していきます。紫外線Bはエネルギーが大きく劣化を促進しますので、これが減少すれば太陽電池の寿命が長くなることが期待されます。これは、結果として効率のアップにつながり、石油代替エネルギーとしての役割が増すことになります。

◆構造物などが長持ちするようになる    

 太陽電池と同様、構造物の多くは紫外線によって劣化します。とくにプラスチック類は紫外線に弱いものが多いので、耐候性を持たせるための添加剤を入れたり、保護するための覆いを設ける必要があります。
 紫外線Bが減少すると、構造物が長持ちするようになるばかりでなく、対策のためのコストを最小限に抑えることができます。

■オゾン層破壊が止まると、他の環境問題も解決に向かう!

◆地球温暖化

 オゾン層破壊の原因物質であるフロンは、一方で強力な温室効果ガスでもあります。オゾン層破壊が止まることは大気中のフロンがなくなることを意味し、結果として地球温暖化が軽減されることになります。
 また、オゾン層が回復すると成層圏で紫外線の吸収が増加し、その付近の気温が上昇します。すると対流圏と成層圏の境目(圏界面)が下がります。このために上昇気流の到達高度が低くなり、集中豪雨の極端化や熱帯低気圧の大型化に歯止めがかかることが予想されます。
  
◆森林破壊

 紫外線Bが減少すると生長細胞が傷つかず、樹木の成長が妨げられなくなります。また抵抗力が低下しないので、キクイムシやウィルスなどの影響を受けにくくなり、病気にもかかりにくくなります。

◆大気汚染と酸性雨

 紫外線Bが減少すると、対流圏(地上付近)でオゾンの発生量が少なくなります。このために、光化学スモッグの被害が軽減されます。また現在降っている酸性雨には、硫酸と硝酸に加えてオゾンが混ざっていて、非常に酸化力が強くなっています。オゾンの発生が抑制されれば、人体をはじめ動植物、また構造物に対する影響が小さくなります。

◆ゴミ・廃棄物問題

 オゾン層の保護対策として、フロンや臭素(これもオゾン層破壊物質です)を含んでいる空調機器などのリサイクルが法制化されています。これは結果として、「ゴミや廃棄物の減量」につながります。

◆生物種の絶滅、食糧問題、飢餓問題

 オゾン層破壊が止まれば、多くの生物種が絶滅の危機から救われます。また穀物や水産資源が保全され、「世界各地に食糧が公平に分配される」という条件付きですが、飢餓問題にも貢献できるでしょう。

■どうすれば「オゾン層破壊」が解決するの?

◆過去の経験を行かす@・・・・オゾン層破壊は予測されていた

 実は、前もってオゾン層破壊を警告していた人がいるのです。アメリカのローランド博士とモリーナ博士という2人の科学者が、1974年に警告を出していました。「このままフロンを捨て続けると10年後にオゾン層に穴があく、20年後に人体に被害が出る、30年後に取り返しのつかないことになる」という内容でした。しかし当時は、ほとんど無視されて、迫害に近い状態だったそうです。

 このようなことは、歴史的に見てよく起こるようです。たとえば、レイチェルカーソンという人はその典型です。彼女は1962年に『沈黙の春』という本を書きました。「農薬を使うと、その影響でやがて春が来ても鳥が鳴かない沈黙の春が来る」という内容でした。非常に科学的で洞察力にあふれるものだったのですが、まったく無視されて、失意のまま彼女は翌年に亡くなってしまったのです。そして、いま頃になって彼女の評価が高まってきています。環境ホルモンの問題も、彼女の警告を真摯に受けとめていれば、回避できた可能性が大きいのです。

 ローランド博士らも、彼女と同じように無視されましたが、ねばり強い活動を重ねました。そしてとうとう特定フロンの全廃を果たし、1995年度のノーベル化学賞受賞へとつながったのです。
 これは「少数意見だからといって無視することはできない」、「新しい学説やアイデアには反対意見がつきものだ」、「きちんとした理論や観察に基づいた意見や学説は、あきらめずに発言し続ける」、「科学者だからといって、常に正しいとは限らない」など、多くの教訓を含んでいます。このことを忘れず、心を開いて異説を聴く謙虚さを持ちたいものです。

◆過去の経験を行かすA・・・・本気になれば解決できる

 世界中の人々がオゾン層破壊の現実を実感し、本気になって行動しました。その結果、モントリオール議定書が採択され、素晴らしい成果を上げつつあります。
 世界銀行が2003年9月に発表した報告書によると、「1987年に採択された議定書に従って各国がオゾン層破壊物質の生産を削減した結果、1999年の消費量は15万トンにとどまった」ということです。もし規制がなかった場合、「フロンなどの消費量は2010年には300万トン、2060年には800万トンに増加していたはずだ」、そして「有害紫外線に起因する皮膚がんは、2050年までに2000万件、白内障などの目の疾患は、1億3000万件も増えたと推定される」というのです。
これは、「先進国と発展途上国が国益を超えて協力して、国際的な環境保護を進めた成誇るべき事例」だと思います。良い意味での教訓として、様々な問題に対処していきたいものです。

◆これ以上フロンを排出しない

 オゾン層破壊を止めるには、言うまでもなく「フロンを大気中に排出しない」ことです。塩素系のフロンだけでなく、臭素系の難燃剤なども排出してはいけません。残念ながら自主的な取り組みだけでは不十分というわけで、「家電リサイクル法」「自動車リサイクル法」「フロン回収・破壊法」などで規制されるようになりました。しかし、未回収のまま大気中に排出されてしまったフロンがかなり多いのが現状です。
 環境省と経済産業省は、「2002年の1年間で、使用済み業務用空調機器などから出るフロンガスのうち約3300トンが行方不明となり、使用済みカーエアコンについては、半年間、約1000トンが回収されないまま大気中に放出されたと見られる」と発表しています。
  
◆ノンフロン製品を使用する

 フロンとくにCFCがオゾン層を破壊する力が強いので、これに代わるフロンが開発されています。これを代替フロンといいますが、どのようなものか見てみましょう。

@代替フロンHCFC

 CFCがオゾンを破壊するのは、「CFCが非常に安定なため、対流圏で分解することなくオゾン層に到達してしまう」からです。だとすると、オゾン層に到達する前に分解してしまえばいいわけです。こうして開発されたのが、代替フロンHCFCです。はじめのHは水素の意味で、これがついていると非常に分解が速くなります。
 しかし、10分の1くらいがオゾン層に届いてオゾンを破壊することが判明し、この代替フロンHCFCも2020年に実質全廃が決まっているのです。しかもHCHCは、温暖化の力が二酸化炭素の4000倍もあることが分かっているので、全廃時期を待たずに使用されなくなるでしょう。

A代替フロンHFC

 オゾン層破壊の原因は、フロンの中の塩素でした。つまり、塩素が入っていなければオゾン層は破壊されないはずです。そこで、化学者は塩素のないフロンを作ろうと考え、その結果生まれたのがHFCという代替フロンです。これはHCFCから最初のCつまり塩素をなくしたものなのです。
 以前、電気屋さんで多く見かけた自称「地球にやさしい冷蔵庫」のカタログに「HFC−134a使用」と書かれていました。HFC−134aは、塩素の入ってないフロンの1種なのです。
 確かに、HFCは塩素が含まれていないのでオゾン層を破壊しません。ところがこの物質は、「地球温暖化の力が二酸化炭素の3000倍以上もある」ことが分かったのです。
 この物質については、今のところ廃止の予定はありませんが、世の中は脱HFCの方向に向かっています。しかしエアコン業界などの中には、「総合的に判断してHFCが最適」と判断している企業もあります。ただしこの政策をとる場合は、リサイクルシステムの完備などHFCの完全回収が不可欠です。

●ノンフロン冷蔵庫が出現!

 冷蔵庫の冷媒には、以前はCFCが使われていましたが、前記の理由のためにHCFC、そしてCFCへと代替されてきました。しかし地球環境問題を考えると、「オゾン層の破壊にも地球温暖化にも悪影響を及ぼさない冷媒」が望ましいことは言うまでもありません。
 そこで開発されたのが、シクロペンタン、イソブタン、プロパンなどの炭化水素類を冷媒として使用したノンフロン冷蔵庫です。すでにドイツでは1992年から「グリーンフリーズ」として販売されていました。日本では「引火性のガスのため爆発の危険がある」などとして販売が見送られていました。
 しかし、2002年になって日本のメーカーは様々な困難を克服し、相次いで「ノンフロン冷蔵庫」を開発し販売を開始しました。多少割高ですが、省エネ特性も高く、環境を考えるならお買い得といえるのではないでしょうか。
 ただし、この冷蔵庫もリサイクルシステムを完備させ、従来の冷蔵庫と混ざらないような分別収集体制を整えることが不可欠です。

■オゾン層が復活するまでに心がけたいこと

 今、すべてのオゾン層破壊物質の排出が止まったとしても、オゾン層が復活するまでかなりの時間がかかります。世界銀行は報告書(前出)で、「今後、途上国での消費の削減が議定書の規定通りに進めば、2050年ごろにはオゾン層は正常な状態に戻る」としています。それまでの間は、とくに紫外線Bの影響を避ける対策を立てる必要があります。 

◆太陽と空気さえあれば、必ずオゾン層は復活する!

 さて、ここで必ずといっていいほど出てくる質問があります。「科学技術を使ってオゾン層を修復することはできないのですか」というものです。
 残念ながら、オゾン層を人間の力で修復することは、少なくとも現在の技術では不可能です。しかし、最も安上がりで、しかも莫大なオゾンを製造する手段を自然が用意してくれているのです。それは太陽と空気中の酸素です。
 太陽がある限り、また大気中に酸素がある限りオゾンは常につくられています。今は、壊れるオゾンの方がつくられるものより多いので、結果として破壊が進んでいるのです。
しかし大気中のフロンが減ってくると、つくられるオゾンの方が多くなり、オゾン層は修復に向かいます。
 現在、冷蔵庫やエアコンに残っているフロン(冷媒だけでなく断熱材中のフロンも)を放出してしまわない限り、オゾン層がよみがえるのです。
 
◆紫外線Bから身を守ろう!

 多くの先進国では、直射日光に当たらないよう様々な呼びかけをしています。いくつか紹介してみましょう。

@バーンタイム・テンミニッツ!

 新聞やテレビの天気予報で「今日の紫外線情報」が発表されます。
 また、「バーンタイム」という言葉があります。バーンタイムというのは、簡単に言うと「これ以上、直射日光に当たると危険な時間」のことです。たとえばバーンタイム・テンミニッツというと、「10分間以上、直射日光に当たると危険ですよ」という意味です。
 オーストラリア、カナダ、ヨーロッパなどでは、このような情報を天気予報などで頻繁に警告しています。10分というのはいかにも短すぎるように思うかも知れませんが、日本でも夏の快晴時にはそれくらいか、もっと短くなります。曇ってるときでも夏は1時間以内です。小学校などで夏の日中に体育や水泳の授業がありますが、子供の健康を考えれば、朝の1時間目とか夕方の6時間目にしたほうがいいでしょう。

Aスリップ、スロップ、スラップ&ラップ

 スリップ、スロップ、スラップ&ラップというのは、紫外線から身を守るためのスローガンです。オーストラリアで始まりましたが、いまでは多くの国で使われています。

【スリップ】すばやく長そでのシャツを着なさい。もちろん夏でもです。
【スロップ】日焼け止めローションを塗りなさい。ただし、顔を洗ったり、泳いだりした      ときに水を汚してしまうので、塗りすぎないように注意しましょう。
【スラップ】首すじなども隠れるような帽子をかぶりなさい。
【ラップ】 サングラスをかけなさい。

 外出するときは、こんなかっこうで夏でも歩きなさいというわけです。実際にオーストラリアの幼稚園では、園児がまるでちびっ子ギャングのような姿で通学しているのです。また、オーストラリアのブリスベーンという町で市長選挙があった際、「市内の公園すべてに太陽光線を90%シャットアウトする布製の屋根を取り付け、子供たちを直射日光から守る」と公約した現市長が再選されたのです。
 そのほかのスローガンとして、「直射日光の強い日には、子供を外に出さないように」とか「ノーハット、ノープレイ!(帽子をかぶっていないと外で遊んではいけません)」というのがあります。このようなことは、日本以外の先進国ではもはや常識なのです。

◆木を植えて木陰を増やそう!

 外で遊んではいけない。そう言われても、元気な子供は黙って家にいるわけがありません。でも、今の日中の直射日光は本当に危険なのです。どうしたらいいのでしょうか。
 一番のおすすめは、森の中で遊ぶということです。紫外線が木の中に含まれるリグニンという物質で吸収され、直射日光の10%くらいに低下しているからです。
 都会のど真ん中など森がないところには、校庭や講演に木をどんどん植えて木陰を増やすことです。木の成長には時間がかかるので、できるだけ早く取りかかりたいものです。
ちなみに木造の校舎は、建物や地面から反射してくる紫外線を吸収するので、コンクリート校舎に比べてより安全と言われています。 

◆うれしいお知らせ・・・・日本でも紫外線予報が始まった!

 日本では、日本気象協会が1997年4月より紫外線予報を発表していましたが、気象庁も2004年から紫外線情報を毎日発表するようになりました。0〜14までの有害紫外線指数(UVインデックス)として、天気図のように地図上に数値を示し、「2以下:安心して戸外で過ごせる」「3〜7:長袖シャツや帽子の着用や日焼け止めクリームの使用が必要」「8以上:日中の外出はなるべく控え、外出時は必ず長袖シャツなどが必要」などと具体的な対処方法を図柄などで呼びかけています。
 日本付近では最大13〜14程度になるそうです。8で「外出を控える」ですから、いかに紫外線量が多くなっているか、分かりますね。
 すでに日本でも、いくつかの学校で「保護帽子の着用」や「紫外線カットの屋根をプールに設置」などが始まっています。この予報が浸透することで、ますます対策が進んでほしいものですね。

◆脱フロンを超えて!

 フロンを使用しないよう、また排出しないよう呼びかけたり、フロン回収を推進する運動を「脱フロン」と言います。
 ここで、もう少し深く考えてみましょう。
 フロンの用途は、冷やすこと、発泡すること(断熱すること)、洗浄することでした。
 この用途のすべてでフロンが使えなくなったので、代替フロンが開発されました。そして、代替フロンが使えなくなることが確実になり、炭化水素などが使われるようになりました。
 ところで、液化ガスは重油を精製して作られます。しかし、この精製するときのエネルギーは石油を燃やして得ています。その際に、地球温暖化を起こす二酸化炭素が発生してしまい、同時に石油という資源も消えていくのです。
 つまり地球規模で考えると、単にフロンを使わないだけではなく、炭化水素などほかの物質も使わないことが大切なのです。たとえば、ある洗浄工程でフロンを使っていて、それが使えなくなったら代替フロンを使い、そして石油系の炭化水素を使い、そして純度の高い水を使う・・・・こんなことをしていたらキリがありません。

 そこで、「洗浄って必要なのかな?」ということから考え直すのです。洗浄する必要がなければ、フロンも石油系の炭化水素も水も必要ありません。同じように、「冷やす必要があるのだろうか?」とか「断熱する必要があるのだろうか?」と考えてみる必要があるのです。
 もしそのようなことができたら、オゾン層破壊、地球温暖化、酸性雨、エネルギー問題、資源問題などを一緒に解決することができるのです。それぞれの環境問題を個別に考えることも必要ですが、全体を見るのはもっと大切です。環境問題に限らず、どのような問題に対しても、このような発想が必要ではないでしょうか。

◆ビジョンを描きましょう!

 この章を参考にして、「オゾン層破壊問題」が解決している状況をビジョンに描きましょう。もちろん内容は自由です。絵と文章で表現するのがベストですが、文章だけでもかまいません。文章は「〜が・・・・になっている」というように、すでに実現しているかのような表現にしてください。完成したらしばらくそれを眺め、ワクワクした感覚を味わってみてください。

                                                             2004年7月18日掲載。

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第2章 森林破壊


■森林破壊とは?

 森林破壊とは文字通り「森林が破壊されること」ですが、過剰な森林伐採や無秩序な焼き畑など、人間活動が関与している場合を言います。
 地球は「緑の惑星」といわれるように、陸地の大部分は緑の森に覆われていました。そして森林地帯は、豊富で多様な生態系を育み続けてきました。森林は「原生林(自然林・天然林)」と「人工林」に分けられますが、かつてはすべて「原生林」であったことは言うまでもありません。
 一般に「森林破壊」という場合、原生林の破壊を意味することが多いようです。

■森林の種類

 ここで今後の理解を助けるために、人工林と原生林について整理しておきましょう。

◆人工林と原生林
 森林には大きく分けて、人工林と原生林(自然林、天然林)の2種類があります。同じ林という文字がついていても、この2つはまったく異なります。
 人工林は人間がつくった森林で、原生林は人間が手を加えていない森林と言えます。ただし、熱帯林の中には、何千年も樹木と共生してきた先住民族といわれる人たちが生活していて、この人たちは少しですが原生林に手を加えています。とは言っても、彼らはその地域一帯の食物連鎖の輪の中に入っていて、自然と調和した生活を送っています。したがって、彼らが手を加えた森林も原生林と考えていいと思います。

◆人工林の特徴

@同じ種類の木ばかり

 一般に、人工林には1ヘクタール当たり1〜2種類の木しか植えられていません。しかもマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹がほとんどです。しかし、同じ種類の木ばかりだと、いったん病虫害が発生すると、あっという間に被害が広がり、その一帯が全滅してしまいます。
 また、人工林は落葉するものが少なく、土が非常にやせています。このため生物がほとんど棲みつかず、生態系を育む力が極めて弱いのです。

A光合成の能力と空気浄化の力が弱い

 針葉樹は葉の面積が小さいので、二酸化炭素の吸収、酸素の発生、汚染物質の浄化能力が広葉樹と比べてかなり劣ります。また根や葉に蓄える水量も少ないので、保水能力が小さいと言えます。

B人手をかけないと育たない

 人工林は適当な時期に間伐しないと、隣接する木と木の間で栄養を奪い合うためうまく育ちません。また、成長するにつれて一帯の木の葉が重なり合い、密集するようになります。このために降った雨水が葉伝いに流れ、地面に届かなくなってしまいます。さらに、地面に太陽の光が当たらなくなり、下草も生えません。その結果、土が乾燥し、木が弱ってしまうのです。
 このような植林地帯を「緑のダム」に対して「緑の砂漠」と呼びます。日本の多くの人工林は、地面は砂地でつるつる滑るし、ところによっては砂も流されてしまって、岩肌がむき出しになっています。こうなると、根が岩にへばりついている感じになり、土をつかむことができなくなります。そこに集中豪雨が降ると、土砂崩れが発生して、一帯の森林が押し流されてしまうのです。

◆原生林の特徴

@多種類の樹木と多くの生物が共生している

 原生林には、同じ種類の木は1ヘクタールに数本しか存在しません。しかもその数本は離ればなれになっているので、病虫害が発生しても伝染しにくいのです。また、原生林にはシダ類や草花などが共生して、密集しています。木ノ実や果実なども豊富にあり、多くの昆虫、鳥、動物が共生し、生物の声、羽音、ざわめきが聞こえ、大変にぎやかです。
 このように原生林は、たくさんの樹木の周りに強固な生態系を形づくっているのです。

A豊かな土を作り、保水能力にもすぐれる

 原生林には落葉樹が多く動物も多いので、落ち葉や動物のフンや死体が微生物によって分解されます。その結果、栄養分豊かな土が作られ、それが木の成長のために使われるという循環によって生態系が維持されるのです。また、豊かな土や葉が巨大なダムの働きをするため、保水力にもすぐれています。

B光合成の能力と空気浄化の力が強い

 原生林には葉の面積が大きな広葉樹が多いので、二酸化炭素の吸収力、酸素の供給力つまり光合成の力が強いのは当然です。また汚染物質の浄化能力が、人工林と比べてはるかにすぐれています。

C人がむやみに介入するとダメになる

 原生林は人工林の反対だと考えると、「人手をかけるとダメになる」ということになります。しかし、先住民族のように人手をかけてもダメにならないこともあります。
 この原生林に人がむやみに介入し、食物連鎖を断ち切ると生態系全体が崩壊してしまいます。こうなると、二度と元の姿に戻すことはできません。

■森林破壊の現状

 乱開発や過剰伐採のために、すでに世界の原生林の80パーセント近くが失われました。
 緑豊かに見えるヨーロッパでは原生林はすでに全滅していて、現存するのは全部人工林なのです。アメリカでも原生林は15パーセントしか残っていません。
 世界では、この20年間で日本の面積の10倍もの森林が失われ、そのうち半分が砂漠化しました。特に、中央アメリカ、東南アジア、アフリカ、アマゾンなどで原生林が大規模に破壊されています。
 たとえばアマゾンでは、1978年から96年までにフランス1国分の面積に匹敵する50万平方キロの熱帯林が消失しました。これはアマゾンの熱帯雨林の12.5%に相当します。現在、1年間に日本の3分の1から半分の面積に相当する森林が、地球上から消えています。これは成長量の10倍の速さで失われていることに相当します。
 このままでは、100年以内に世界の原生林が全滅する恐れがあります。しかも、温暖化や酸性雨で木が枯れたり、木材の消費量が増えると50年とか30年で全滅してしまうかも知れません。

◆森林伐採に伴う表土の流出

 この20年で、世界でインド全土の耕地に相当する5000億トンもの表土が流失してしまいました。とくに熱帯地方では、もともと肥えた土というのは10センチくらいの厚みしかありません。非常に暑いので、落葉したり、動物が死んだりしても、すぐに腐って分解してしまい、土ができるひまがないのです。
 何千年もかかって、やっと10センチくらいの土ができますが、森林伐採後の大雨で、いとも簡単に流失してしまうのです。

◆森林破壊の影響

 原生林がなくなると、豊かな土が流される、水を保つ力がなくなって水が枯渇する、二酸化炭素を吸収できなくなって地球温暖化が進む・・・・。こんなことになれば、確かに人間にとって大変な時代になるでしょう。しかし、地球全体の生命維持システムが崩れるわけですから、人間だけではなく、生物種の大量絶滅にもつながっていくでしょう。
 また、表土が流出するというのは、よく肥えた土がなくなってしまって、農業ができなるということを意味します。近い将来、確実に農業生産にも影響し、人口爆発のことを考えると、深刻な食糧危機に見舞われる可能性があります。
 人工衛星からの写真を見ると、昔は緑でおおわれていたところが赤茶けてきていることがはっきり分かります。フィリピンや中国では、台風や大雨の度に大規模な洪水に襲われていますが、これは上流の森林地帯が破壊されたために、保水力がなくなったのが大きな要因です。
 また、アマゾンや東南アジアなど至るところで山火事が発生しています。これも森林伐採によって付近一帯が乾燥化したために起こっているのです。

■森林破壊の原因

◆先進国による商業伐採と乱開発

 1960年代以降、とくに先進国の人たちによって建築用資材として、あるいは紙を作るための商業伐採が行われてきました。また、工場建設・農地化・リゾート開発・換金作物栽培のための乱開発などによって、森林破壊がますます加速しています。

◆無計画・無秩序な焼畑農業

 焼畑農業といっても、以前行われていた「伝統的焼畑農業」のことではありません。伝統的焼畑農業とは、「ある一定の区画を焼いて農地にして数年耕作した後、今度はとなりの区画を焼いて農地とし、そして数年後にまたそのとなりを焼き・・・・元に戻ってきたときには見事に森林は再生している」というような計画的な焼畑農業です。
 ところが、いま森林を破壊し続けているのは、スラムや農村から追いやられた貧困に苦しむ人々が行っている焼畑なのです。森林が回復しないうちに、再び焼き払うため再生が不可能になってしまいました。つまり、原因は無計画・無秩序な焼畑農業にあるのです。

◆牧草地にするための先進国による焼畑

 無計画な焼畑は、先進国によっても行われてきました。たとえば、かつてハンバーガー用の肉を作るために、アマゾンや中央アメリカの熱帯林を大規模に焼き払い、牛の放牧地に変えてしまいました。
 ただし、熱帯林を放牧地に変えたとしても、10年もたたないうちに土がやせたり、流出したりして、牛を育てることができなくなります。そのために、安い肉を確保し続けようと、次々に熱帯林を焼き払うことになるのです。

◆エビの養殖

 タイやマレーシアの河川の河口付近には、マングローブという塩水でも生きていける植物帯が広がっています。ここでマングローブとは、海岸沿いの海水と淡水が混じりあう場所に生育する植物の総称で、熱帯や亜熱帯に100種類ほどあるといわれています。とくに熱帯には60メートルを超える大木が育っています。ここではエビの養殖が行われており、とくに日本へ大量に輸出しています。
 養殖を数年間続けると、海水中の栄養分がなくなり、やがてエビが採れなくなります。そのために、養殖場を広げなければならなくなります。こうして、次から次にマングローブが消えていくのです。

◆ダムの建設

 ダムの建設も森林破壊の原因になっています。ダムが建設されるのは、大きな保水能力がある森林地帯です。ところが、この自然のダムである森林地帯が切り崩され水没し、巨大な人工のダムが建設されています。
 しかも、ダムの上流では建築材や紙をつくるために、大量の森林が伐採されたり、手入れされない人工林の荒廃が進んでいます。このため上流で降った雨が、むき出しになった土砂を洗い流してダムに流れ込んでいます。今、多くのダムが大量の土砂で埋まりつつあるのです。
 また、もともと森林地帯であったダムの水には栄養分が多く含まれているため、藻が異常繁殖したり、赤潮が発生したりしています。

■森林破壊が解決すると・・・・

◆森林の働きが戻ってくる

 森林破壊が止まると、以下のような森林本来の働きが復活します。

@生態系を育む

 森林は、地球全体の生態系を育むための重要な役割を担っています。
 森林の中では微生物、昆虫、鳥、小動物、大型動物が食物連鎖(実際は食物連環、食物網)の中で共生しています。これらの生命は森林がなければ生きていけません。また、森林からの栄養が川を伝って海に流れ込み、沿岸地域の魚介類を育てます。海の生物は森林が育てているとも言えるのです。
 反対に、サケなどが川を遡上してくることで、海の栄養が山間部に運ばれ、森林の生態系を育みます。鳥や昆虫も海から山に栄養を運びます。森→川→海→川→森・・・・。大いなる循環。この意味で、森と川と海は一体として考えることが大切なのです。

A土をつくる

 落ち葉や倒れた木を微生物が分解することで、栄養豊かな腐葉土ができます。1立方センチ、つまり角砂糖1個くらいの土の中には微生物、昆虫、小さなミミズなど10億くらいの多種多様な生命が存在しています。この意味で土は生きているといえるのです。
  
B土を保つ

 樹木の根は土をしっかりつかんで放しません。森林には多数の樹木が集まっていて、その地域全体の土が雨などで流出するのを防いでいます。

C水を保つ(保水能力)

 樹木は常に根、幹、葉に水を蓄えるので、降った雨はすぐに下流に流れ出しません。そのために、森林地帯は「緑のダム」と呼ばれています。もし森林がなければ、降った雨があっという間に海に流れてしまい、飲料水など淡水資源が確保できなくなります。
 また、森林破壊が大規模になれば、葉から蒸発する水分や雨の核となる微粒子が不足します。森林がなくなれば、雨そのものが降りにくくなるのです。

D空気を浄化する

 樹木は二酸化炭素を吸って酸素を出します。つまり光合成(炭酸同化作用)を通じて呼吸をしているわけです。これは、森林がなくなると二酸化炭素が増えて、酸素が減るということを意味します。二酸化炭素が増えると地球温暖化につながります。
 また、木の葉は大気中から二酸化炭素を吸うとき、同時に空気中の窒素酸化物や硫黄酸化物などを吸って周囲の環境を浄化してくれます。とくに広葉樹では、広い葉の表面にある気孔に窒素酸化物、硫黄酸化物などの有害物質を取り込みます。工業地帯や自動車道路の周囲の森林は、大気汚染を浄化してくれるのです。

 このほかにも、森林には「紫外線を吸収する」「人間の心を癒す」「木造建築の材料になる」という人間にとって便利な働きもあります。

◆自然災害が少なくなる

 保水能力や地盤が強化されるので、土砂崩れ・地滑り・洪水などの自然災害が起こりにくくなり、地震の被害も軽減されるでしょう。また植林などで砂漠が減少すると、砂あらしの被害が軽減することが期待できます。さらに乾燥地帯が減少し、山火事のリスクが小さくなります。

■森林破壊が止まると、他の環境問題も解決に向かう!

◆地球温暖化

 二酸化炭素の吸収能が増大するため、温室効果が抑制されます。また蒸散作用が活発になって気化熱を奪うので、森林地域の気温が下がります。
 都市部で森林が増加すると、ヒートアイランド現象が軽減されます。また、ビルの屋上を緑化することで付近の気温が低下し、冷房に使うエネルギーの節約になり、ビル風による被害が減少します。
 また人工林の育成・保全のために間引き材や間伐材が出てきますが、これらを木質バイオマス燃料として活用すれば、石油などの化石燃料の使用を削減することができます。
  
◆水資源の危機

 保水能力が増大し、洪水が起こりにくくなるだけでなく、地下水の涵養量が増加します。また腐葉土層が自然の濾過装置となり、伏流水や湧き水の水質が向上します。
 結果として河川の水量が増加し、断流(河川水がなくなり、中・下流域で河床が干上がること)が起こりにくくなります。これは水量の増加や流速のアップによって、河川の自浄能力が向上することを意味します。
 森林によって土砂の流失が少なくなると、ダムの寿命が長くなり、浚渫(ダムに沈んだ土砂の除去)のための費用が安くなります。さらにマングローブが復活すると、周辺の水質が改善します。 

◆大気汚染と酸性雨

 葉の気孔に大気汚染物質を吸収するので、空気が浄化されます。除去される物質が硫黄酸化物や窒素酸化物の場合は、酸性雨の被害を軽減します。ただし落葉広葉樹の場合は、汚染物質は落葉することで除去されますが、針葉樹は樹木そのものが酸性雨の影響を受け、枯死してしまう可能性があります。
 スギ林やヒノキ林をきちんと管理し保全することで、花粉の過剰飛散がなくなり、花粉症が軽減されます。

◆オゾン層破壊

 オゾン層破壊物質であるフロンを気孔が吸収し、除去してくれます。また樹木は紫外線を吸収するので、皮膚がん、白内障、免疫低下など、オゾン層破壊に起因する人体への影響を軽減します。

◆ゴミ・廃棄物問題

 森林破壊の保護対策として、木材の有効活用(資源生産性の向上)が図られ、紙のリサイクルが進むと、原料となる木材チップの使用量が減少します。これは結果として「ゴミや廃棄物の減量」につながります。ちなみに日本は、木材チップの世界全体輸入量の70%を占めています。

◆生物種の絶滅、食糧問題、飢餓問題

 森林には、植物、動物、昆虫、微生物などの多様な生物が生息し、網の目のように生態系のネットワークが広がっています。とくに熱帯林では、地球上に存在する生物種の半分以上が生息しているといわれています。森林破壊をくい止めることで生物種の多様性が保たれ、ひいては生物種の絶滅も自然変動の範囲内に収まるでしょう。
 またFAO(国連食糧農業機関)によると、表土の厚さが1ミリ増えるごとに農業生産力が2〜5%増加するそうです。アフリカでは、これまでの土壌流出で農業生産力が10%ほど落ちており、飢餓問題も深刻化しています。森林破壊をストップさせることで、土壌が復活し、農業生産力も回復に向かうことになります。ただし熱帯地方では、土壌が1センチ回復するのに数百年かかると言われています。

■どうすれば「森林破壊」が解決するの?

◆エコ・リュックサックを意識しよう!

熱帯林では、同種の木は互いに距離を置いて生えています。たとえば同じ種類の木を1千本確保するためには、300〜500ヘクタールも探し回らなければなりません。この際、1本の木を伐採するために、運搬道の造成などで多くの木が道連れになります。
 このような、目に見えないところで発生している環境負荷を「エコ・リュックサック(正しくは、エコロジカル・リュックサック)」と呼んでいます。木製の椅子に環境負荷という「目に見えない巨大なリュックサック」が掛かっているというイメージです。
 必要とする木だけを選択的に伐採し、そこに苗木を植林すれば森はやがてもとの状態に戻ります。しかし、多くのの樹木を道連れにすると再生が困難になり、森林地帯の生態系、保水能力、土壌、光合成の能力などが、私たちの想像を超えて失われていくのです。
これから木製品を購入する際には、エコ・リュックサックを意識して「その製品がどこからきたのか」、「環境配慮がどのようになされているのか」などを選択基準にしていただきたいと思います。

 木製品を選択する際の道しるべとして、FSC(森林管理協議会)による「森林認証制度」があります。森林認証制度は、きちんと管理されている森林を「認証」し、その認証林から生産された木材やその木材でつくられる製品に「FSCマーク」をつけて幅広く流通させようという制度です。もう少し詳しく言うと、森林が「持続可能な森林経営」の基準通りに管理されているかを、独立した第三者機関が評価・認証する制度です。
 ここで「持続可能な森林経営」とは、「現在だけでなく将来の人々も森林を有効利用できるよう成長量に見合った量のみを伐採し、土壌、水質、野生動物等の生態系への影響にも気をつけて森林を管理すること」です。
 2003年5月現在、FSC(森林管理協議会)の会員は66カ国、561機関で、認証林は55カ国490カ所(約3700万ha)に及んでいます。日本には8カ所の認証林があり、WWF(世界自然保護基金)ジャパンが窓口になっています。
 認証された「FSCマーク」製品を選択することで、森林を破壊して生産された木材製品の使用を避け、世界中の森林の保全に貢献するひとつの方法です。
 ちなみに、人工林を保全する際に出てくる間伐材を使った製品につけられる「間伐材マーク」も普及しています。

◆日本の林業を復活させよう!

 日本は世界でも有数の森林国です。国土の約67パーセントが森林で、これは「森と湖の国」と呼ばれるフィンランドの約70パーセントに次いでいます。また日本の森林蓄積量は約35億立方メートルあり、毎年7千万立方メートルずつ蓄積量が増加しています。しかし、実際に伐採されているのはそのうちの3分の1程度にすぎません。
 このように日本は十分な森林資源がありながら40年ほど前から輸入を始め、現在では80パーセント以上を輸入に頼っている世界最大の木材輸入国になっています。平成13年の木材自給率は18.4%にまで落ち込んでいます(平成14年『森林・林業白書』)。
 国産の木の価格は、50年間も育てたスギの木で1本2千円くらいにしかなりません。平成14年のスギ立木価格は昭和55年の24%で、昭和31年の水準です。この間、山で働く人の給料は逆に1.5倍くらいに増えており、経営的にも林業が成り立たなくなっているのです。
 日本の森林は急な斜面にあり、林業事業者ひとり当たりの森林も小さいのが特徴です。このため木を育てたり、伐り出したり費用がかさんでしまいます。これでは価格の面で、平坦で広大な森林から大きな機械で木を伐り出す外国に太刀打ちできません。
 また、南洋材の価格には、木そのものの値段、森林再生コスト、生態系の回復コスト、地域の自給自足を破壊したコスト、などが含まれていません。南洋材は巨大な「エコ・リュックサック」を背負っているのです。この意味で、南洋材は「安いのではなく、安くしすぎている」と言えるのです。
 
 このような状況の中で、日本の林業が成り立たなくなってしまったのです。当然、林業従事者の離職や高齢化が進み、林業就業人口は1994年の11万人から2000年の6万7千人にまで減少し、また65歳以上の割合は24.7%となっています。
 日本の林業を復活させると自ずと海外からの木材の輸入が減り、地球規模で起こっている森林破壊を減速させることができるのです。

◆日本の林業を復活させるために

@輸入木材の価格を引き上げる

 エコ・リュックサックを考慮しないのは、再生責任を果たしていないということです。南洋材が安いのは、「再生責任」を考慮することなしに価格が設定されていたからです。
 商品の価格を決定する方法として、従来は「販売価格=コスト+利益」で表される「コストプラス法」が多く採用されています。しかし、環境配慮の観点からいえば、「販売価格=コスト+再生責任費用+利益」でなければなりません。
 南洋材にこれを適用するのです。大量伐採すると1本当たりコストは下がりますが、同時に全体の「エコ・リュックサック」が増えています。当然のことながらその分「再生責任費用」が増大することになり、南洋材の価格は上昇します。
 その結果、国産材の競争力が増し、南洋材の需要が減ることになります。また伐採しても「再生責任費用」を植林に充てることで、森林の再生が進むことになるでしょう。
 
A国産材を使った家に住む

 法隆寺の例をあげるまでもなく、日本の木造建築の技術は極めて高水準です。最近、木造建築が見直され、木造住宅に住みたいという人が増えてきています。木材は、軽量の割には強度が大きい、加工しやすい、保湿性や湿気の調節作用がある、断熱作用や遮音効果に優れている、紫外線を吸収する、など優れた特長があります。また心を癒すという心理的効果もあり、木造住宅にふさわしい材料といえます。
 さらに木材をつくる時に使うエネルギーは、鉄をつくる時の80分の1、アルミニウムのわずか340分の1です。鉄やアルミニウムのかわりに木材を使うと、二酸化炭素削減したことになるのです。木材は、二酸化炭素を吸収してできており、その中に二酸化炭素を固定しています。つまり、木材を燃やしたり腐らせてしまわない限り、二酸化炭素が空気中にもどることはないのです。「街に木造住宅を数多く建てれば、その街は森林と同じ働きをしているということになる」と言われるゆえんです。
 家を壊しても、使っていた木材はリサイクルできますし、最後には石油のかわりにバイオマスエネルギーとして活用することができます。
 このように木造住宅は環境にやさしく、しかも国産材を使うと林業の振興にもつながり、まさに一石二鳥です。皆さんも家を建てる際、ぜひとも検討してみてください。
  
B大都市の臨海部に大規模な森林をつくる

 バブル崩壊以来、大都市の臨海部では工場の閉鎖や大規模プロジェクトの縮小や廃止が相次ぎ、広大な遊休地が生まれています。この遊休地を大いに活かす方法として、大都市の臨海部に大規模な森林地帯を造成するのです。
 森林の育成と同時に、地下に完全クローズドシステム化された工場を建設します。この工場で使用する原料の調達は、すべて地上の森林からです。計画的に間引き材、落葉などを回収し、アルコール(バイオマス資源)や化成品・医薬品・食品の原料として使用するのです。
 ここに集う企業(工場)群は、国連大学が提唱して話題になっている「ゼロエミッション構想」による連携を結ぶことが不可欠です。
 ここで「ゼロエミッション」とは排出ゼロ(廃棄物を出さない)という意味です。簡単にいえば、「A社の出した廃棄物をB社の資材・原料として使い、B社の出した廃棄物がC社の資材・原料となり・・・・という企業連携をとり、廃棄物を環境に放出しない生産プロセス(システム)を構築すること」です。工業だけでなく農林水産業などとも連携し、地域で廃棄物ゼロを目指す取り組みを「地域ゼロエミッション」といいます。
 林業は山仕事というイメージがありますが、臨海部でも充分成り立つはずです。この「地域ゼロエミッション」は、街の活性化だけでなく、多くの雇用を生み出す原動力となることでしょう。

C山村に人を呼び戻す 

●山村に誇りを持とう

 前述のように、林業従事者の離職や高齢化が進み、林業就業人口が減少しています。年間6000人が離職しているということです。これ以上の離職や森林の荒廃をくい止めるために、魅力いっぱいの山村づくりが各地で始まっています。
 ここで大切なことは、山村は「すでに魅力いっぱいの場所である」ということを、自覚し、誇りを持つことです。
 ありがたいことに、美しい自然に囲まれた地域から、地球環境問題についての講演依頼を数多くいただきます。「こんなに緑が多くて、美しい川が流れるところでも地球に思いを寄せる人たちがいるなんて、嬉しいな」と思うこの頃です。地元の人は、「この美しい自然を未来の子供たちに残したい」と異口同音におっしゃいます。私としてもこの言葉を聞くたびに、地球環境の実態を正しく伝える大切さを実感しています。
 ところで、地元の人たちと話を進めるうちに、必ずと言っていいほど「開発」という言葉が出てきます。「美しい自然を残したいという思い」と「開発が遅れることで周辺地域から取り残される不安」とが交錯しているのだそうです。「周辺地域はリゾート開発によって人が集まり、どんどんにぎわいを増しているのに、この地域では人を集めるものが何もないので、さびれるばかり。自然を残したいという意欲も揺らいできます」。これが代表的な声でしょう。
 私は、「そうですか。多くの人が集まると活気が出てきますからね」と受けとめる一方で次のような話をします。
「いくら立派な建物があったとしても、都会に住む私にとってはいつも見慣れた光景で、珍しくも何ともありません。最近、リゾート施設の経営が危うくなっていますが、こんなことがひとつの原因かもしれませんね。何もないことこそ、それだけで素晴らしい価値があります。自然がそのまま残っているということですからね」と。つまり、これからは「何もない」ということが大きな魅力のひとつになるのです。

●自然の残してくれた大プロジェクト

 さて、もし東京や大阪に1000メートル級の山並み、美しい水の流れる渓流、珊瑚礁が輝くマリンブルーの海などを造るとしたらどれほどのお金がかかるでしょうか。おそらく数兆円以上、というよりも実現不可能でしょう。こう考えると、何もないように見えて、実は「大自然が巨大プロジェクトをはるか昔に完了してくれていた」ということが分かります。私たちは、いまさら「開発」に頼らなくても、自然の残してくれた大プロジェクトを思う存分活用すればよいのです。
 ちなみに、『開発』は本来仏教用語で「かいほつ」と読むそうです。本来は、「如来を信じる心が起こること」「真実の智慧が起こること」などを表す言葉ですが、意味を広げて「その土地やその人の特長を活かしきる」という意味で使われていたそうです。
 現在使われている「開発」は本当は「乱開発」と呼ばれるべきもので、「乱開発」によって、土地が根こそぎにされていることは衆知の通りです。私たちは、その地方特有の自然を活かした、本当の意味での「開発」と、自然を根こそぎはぎ取り、巨大な建造物にとって変わらせる「乱開発」とを混同しているように思います。
 私は都会に住んでいますが、「以前は自分たちの都合でリゾート開発を推し進め、今さら自然を守れと言うのは虫がよすぎるのではないか」と思うようになりました。実は、これも地方に行けば必ず聞こえる本音です。いったん、破壊された自然は、元通りに復元することはほとんど不可能なのです。しかし、「あきらめずに可能な限り自然を復元すること」そして「残された自然を大切にすること」は、未来に向けての私たちの責任ではないでしょうか。

 これからは、何も手を加えられていない素晴らしさを求める人が増えてくるでしょう。彼ら・彼女らは、自然を愛し、美しい自然を未来に残そうとする人たちです。多くのリゾート地のようにゴミのポイ捨てに悩む心配もないでしょう。「開発が遅れていてよかった」と喜び、「何もないこと」に感謝できる時代がすぐそこに来ています。
 私たち人間もすべての飾りをはずすことで、「自然のままの魅力」を発見できるかも知れませんね。
 地元の人々が、山村の魅力を自覚して誇りを持つと、子供たちが未来に希望を持ちます。そして、若者が帰ってきます(Uターン)。都会の人たちを引きつけます。定住者も増えるでしょう(Iターン)。自ずと、林業も活気を帯びてくるのではないでしょうか。
 ここまでの話は、あまりにも脳天気ですか。でも、すでにこの動きが始まっています。たとえば全国森林組合連合会は、林業への就業相談会「森林(もり)の仕事ガイダンス」を開催しています。都市部からのUターンのほかIターン希望者からの相談も広く受け付けています。2003年度の新規就業者は約2200人に上り、このうち9割がサラリーマンなどからの転職者(失業者を含む)となっているそうです。

◆森に行こう!

 最近、とくに都会では、人と人、人と自然などの「つながり」が切れ、いじめ・犯罪・差別などが大きな問題になっています。地球環境問題も「つながりが切れていること」が大きな原因でしょう。この切れてしまっている「つながり」を修復することで、地球環境問題だけでなく、多くの社会問題が解決に向かうのではないでしょうか。
 つながりを修復するには、「思いやりの心」を育てることです。そして、「思いやりの心」を育てるには、自然に触れるのが一番だと思います。
 山奥の森林や渓流の中で「自然の景色や音」と戯れると、心からの安らぎが得られ、「思いやりの心」が甦ってきます。また、時には、突然の雷雨や暴風、逆巻く激流、猛獣の雄叫びに震えながら自然に畏怖するのも、「思いやりの心」を体感することになるでしょう。
 年に何回かは、このような体験をしたいものですね。
 うれしいことに、地方だけでなく都会に住む人も「一緒になって自然を大切にし、破壊されたところを復元しよう」という動きが活発になってきました。その一例として、エコツアーや植林ツアーが数多く実施されています。皆さんも、一度参加してみてはいかがでしょうか。

 とは言うものの、都会に住んでいる私たちは、しょっちゅう山村に出かけるというわけにはいきません。でも街をよく観察すると、里山・鎮守の森・公園・学校などに、森とは言えないまでも案外多くの木々と生態系が育っていて、そこに数多くの「いのち」を見つけることができます。
 生命を思いやるということは、「いのち」に気づくということです。生きとし生けるもののわずかな動きや、かすかなささやきに気づくこと。地球の声に耳を傾けること。これが「真のやさしさ」、「本当の思いやり」というものではないでしょうか。

◆世界の森を育てよう!

 最近、多くの日本人がこれまでのことを反省して、「世界の森林を守ろう!」「砂漠や森林伐採地に植林しよう!」と、中国やアフリカにボランティアで植林に出かけています。
 かつて日本が伐採した荒れ地や砂漠地帯を緑化しようと、大変な努力が始まりました。最近各地から植林成功の知らせが届き始めており、うれしい限りです。
 また国内では、前述のように「国産材の家に住んで熱帯林の破壊を止め、世界の森を育てよう!」という動きが出てきました。
 このように、希望につながる変化のきざしが現れてきました。私たちは、自分自身が森林再生の主役であることを自覚し、これらの運動に参加したり、応援したりすることが必要ではないでしょうか。

◆うれしいお知らせ・・・・熱帯林の成長率が倍増!

 英国王立協会は、2004年の2月11日付の機関誌で「アマゾン流域の熱帯林はこの数十年間で成長率がほぼ2倍に増加したとする論文を」掲載しています。その中で、スコットランドの研究者は「アマゾン流域で熱帯林の成長率が枯死率をやや上回り、森林面積が拡大していることから、これが地球の温暖化を遅らせている可能性があると」強調しています。
 統計の取り方や考え方、また森林の定義の違いによって反論も出てくると思いますが、違法伐採や森林の放牧地への転用が減ってきていることは事実のようです。森林保護のための積極的な行動が、実を結びつつあることの証明だと思います。私たち一人ひとりの実践が「緑の地球」を復活させるのです。

◆ビジョンを描きましょう!

 この章を参考にして、「森林破壊問題」が解決している状況をビジョンに描きましょう。もちろん内容は自由です。絵と文章で表現するのがベストですが、文章だけでもかまいません。文章は「〜が・・・・になっている」というように、すでに実現しているかのような表現にしてください。完成したらしばらくそれを眺め、ワクワクした感覚を味わってみてください。

                                                              2004年7月25日掲載。

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第3章 水資源の危機

■水資源の危機とは?

 地球上のあらゆる生命を育んできた「水」。水は有限で貴重な資源です。いま、その水が「水不足」と「水質汚染」という2つの大きな問題にさらされています。実は「水不足」と「水質汚染」は関連しているのですが、ひとまず分けて考えてみましょう。

◆水不足の現状

@干ばつと渇水

 数十年前から干ばつや大規模な渇水が頻繁に起こり、砂漠が拡大したり、農作物が収穫できなくなったりしています。このためアフリカや東南アジア地域などで、極端に食糧が不足し、飢餓を引き起こしています。
 また河川が干し上がり、黄河などでは中流域や下流域で流れが途絶える「断流」がしばしば起こっています。

A巨大な湖が消滅

 中央アジアにある「アラル海」は世界で4番目に広い湖でしたが、40年前に比べて面積は38パーセント、水量は16パーセントにまで激減してしまいました。水の蒸発に伴って塩分濃度が1960年の6倍にも達し、ほとんどの魚が姿を消したため漁業が壊滅してしまったのです。

B地下水の枯渇

 近年、農業用水や工業用水の需要の増大に伴って、地下水が大量にくみ上げています。その結果、至る所で地下水位が低下しつつあり、淡水資源がどんどん失われています。とくに地下水が補充されない(涵養されない)「化石帯水層」では、枯渇の危機が迫っています。

C水をめぐる紛争が起きている

 南アフリカ共和国、イラク、インド、ユーゴスラビアなどで、紛争が起こっています。とくににインドでは、カーナタカ州とタミル・ナドゥ州をまたがって流れるコーベリー川からの灌漑用水の分配をめぐり、両州の住民が激しく対立して推定で50人が死亡しています。

◆水不足の原因

 地球上には膨大な量の「水」が存在していますが、陸上の生物が使える淡水は0.8%と言われています。しかも人間が飲料用など比較的簡単に使える淡水は、0.007%というごくわずかな量なのです(1997年の国連発表による)。
 昔の人間は、水は森をつくり、土をつくり、そしてその恩恵で人類は食糧をつくり、文化を育んできたということを知っていました。しかし、最近は「水は地球の限りある共有資源である」ということを忘れている人が増えてきているようです。
 そのために、次のような原因で水不足の問題が世界中で起こっています。。

@灌漑

 灌漑とは、田んぼや畑に水を引いてきて土地を潤すことです。昔は、灌漑用水としては川の水が使われていました。ところが、灌漑の規模があまりにも大きくなってしまい、多くの川が干し上がってしまったのです。
 過剰な灌漑が行われている背景には、私たち日本人の暮らしが大きく関わっています。
日本は世界中から食糧(食料)を輸入しており、農林水産省の「食料自給率レポート」よると、平成14年度の食料自給率は40%(カロリーベース)、穀物自給率はわずか28%(重量ベース)です。
 食料を生産するには水が必要です。この意味で、日本は大量の水を輸入しているともいえるのです。消費国(輸入国)でそれを作っていたとしたら必要であった水資源量を「仮想水(ヴァーチャル・ウォーター)」と呼びます。
 総合地球環境学研究所の沖助教授は、「トウモロコシで1キロあたり1.9トン、小麦粉で2.0トン、精米後の米 で3.6トンの水を利用している。もし、これらをエサとして使って日本で家畜を育てた場合、鶏肉でも4.5トン、豚肉で5.9トン、牛肉では何と21トンの水を利用していることになる(いずれも1キロあたり)。牛丼1杯食べるのは、2トンもの水を利用しているのと同じ」と報告しています。

A水消費量の急増

 工業化の進展による工業用水や、都市化による生活用水の急増によって、世界の年間水消費量は1950年以降3倍以上になりました。1900年から現在までには6倍も増えています。この間に世界人口は3倍になっているので、水の利用量は人口増加の2倍以上のペースで増加していることになります。
 一方で1970年以来、世界人口が18億人増加したため、世界のひとり当たりの水供給量が3割以上減少しています。また生活排水や工場廃水で汚れてしまって、利用できる水が少なくなっていることも水不足に拍車をかけています。

B乱開発による水源の消滅

 リゾートセンターやゴルフ場を造るために、保水能力の大きい森林を伐採したり、湖や川を埋め立てたりしたため、至るところで乱開発による水源の消滅が起こっています。また都市化のために、水田がどんどん工場や住宅地に変わると同時に、そこにあった水も消えてしまいました。
 道路をアスファルト化したり、川の護岸をコンクリートで固めてしまったので、雨水や川の水が地下に流れ込まなくなったことも大きな理由です。
 川は山と海をつなぐ血管のようなものです。川にダムや可動堰を造ることは血管を細くしたり、ふさいでしまうということ。つまり、いのちの循環を断ち切ることになるのです。

C地球温暖化

 国連は、「地球温暖化によって@干ばつの被害が増える、A日本を含む温帯アジアでは多くの河川で流量が減る、B山岳氷河の体積が2050年までに25パーセント減り、2100年には氷河からの水の流出量が現在の3分の2になる」と予測しています。
 地球温暖化は異常気象の頻発化をもたらします。雨については「降るときは集中豪雨、降らないときはまったく降らない」という極端な状況が発生しています。
 森林破壊によって森林の保水能力そのものが減少してきています。そこに集中豪雨が降ると、森林や土壌の浸透水量(保水能力)を軽くオーバーしてしまい、あふれた雨水はあっという間に海に達してしまいます。
 一方、雨が降らないと河川が干し上がります。さらに、気温の上昇で山岳氷河や豪雪地帯の積雪量が減ると、雪融け水も減少します。このように地球温暖化は、淡水資源の減少を引き起こしているのです。

◆水質汚染の現状

 国連が2000年11月に発表した報告書によると、現在、安全な飲み水が不足している人は世界で10億人以上に達し、およそ25億人が適切な衛生サービスを受けていない状況です。また、予防できるはずの水系感染症が原因で、毎日1万から2万人の子供たちが死亡しているということです。
 またWHO(世界保健機関)も、世界の50%の人に対して衛生設備が未整備で、途上国における病気の80%は汚れた水が原因とし、「その結果、8秒に1人の割合で子供たちが水に係わる病気でなくなっている」としています。
 たとえばインドやバングラデシュの農村地帯の人々は、猛毒のヒ素で汚染された地下水までも飲んでいます。その数は数百万人にも上るといわれています。

◆水質汚染の原因

 川や湖などの水域には、入ってきた汚れを浄化する能力があります。これは微生物や水生生物の働きによるもので、これを自然浄化作用とか自浄作用と言います。しかし、「浄化する」といっても限界(自浄限界)があり、それを超えると、次から次に入ってくる汚れがどんどん蓄積することになります。
 日本やアメリカなど経済成長を重視する国では、大量生産・大量消費が美徳とされています。また最近は途上国も「先進国に追いつけ追い越せ」と、飛躍的に経済を成長させようと頑張っています。
 このような社会は、大量廃棄を前提にして成り立っておいます。その結果、大量の廃棄物が、煙として、スクラップとして、また汚水として排出され、河川、湖沼、海洋、地下水などを汚染し、生態系の破壊や健康被害をもたらしているのです。

@河川

 家庭からは、トイレの汚水と生活廃水と言われる台所やお風呂の水が排出されます。
 トイレからの汚水は、下水処理場や浄化槽である程度処理されますが、生活廃水は、多くの地域でまったく処理されずに河川にたれ流されているのです。
 また、上流にダムを建設することによって、水質が悪化することがあります。ダムを造ると水の流れが止まってしまいます。水は流れていないと十分な酸素が溶け込まなくなります。さらに、ダム湖には上流から運ばれてきた栄養分たっぷりの土砂が沈んでしまいます。そうなると自浄作用では対処できなくなり、水質が悪化してしまうのです。

A湖沼

 湖沼は陸地で囲まれているために、湖水が海のように大量には入れ替わらない「閉鎖性水域」になっています。湖沼は、自然の状態でも周囲の山林から落ち葉などが流れてきて、リンや窒素が蓄積しています。ここに生活廃水にが流れ込んでくると、たちどころに自浄能力を超えてしまいます。
 たとえば、合成洗剤に含まれるリンや窒素、油や生ゴミに含まれる有機物によって栄養過多の状態、つまり富栄養化が進んでいます。富栄養化が進むと(過栄養化)、藻やアオコなどが大量に繁殖して湖面が緑色に染まったり、真っ赤な赤潮が発生することになります。そして、それらが大量の酸素を消費して湖水が酸素不足となり、魚など水に棲む生物が死んでしまうのです。

B海洋

 海の汚染は、海流に乗って地球全体に広がります。石油が大量に流出すると薄い油膜となって海をおおい、広範囲の生態系を破壊することになります。
 また、大気中に放出された有害物質も、やがて河川や雨を通じて海に入ってきます。工場の煙や自動車の排気ガスも酸性雨などに混じって、やがては海を汚染してしまうことになるのです。

C地下水

 有機塩素化合物は比重が大きくて表面張力が小さいので、地面にこぼれると短時間で地下水脈に到達します。たとえばアメリカの「シリコンバレー」の地下水から、約100種類の化学物質が発見されています。
 シリコンバレーと同じようなことは、日本でも頻繁に起こっています。今でも、電気工場の地下水から、発ガン性のある有機塩素化合物が、環境基準の1万倍前後という高濃度で検出されています。
 最近は灌漑による地下水の汚染も発生しています。過剰な汲み上げで地下水の水位が下がれば、空洞部分ができてそこに空気(酸素)が流れ込んできます。地下水中には酸素がほとんど溶け込んでいないので、ここに酸素が入ってくると酸化力が高まります。そうなると、水に接している土や鉱物が酸化され、毒性のヒ素酸化物などが水に溶け出てくるのです。インドやバングラデシュのヒ素による汚染は、これが原因といわれています。

■水資源の危機が解決すると・・・・

 水が不足すると自浄作用が働かなくなり、水質汚染が進行します。また、水質汚染が進むと、利用できる水が少なくなります。私たちは、大量に水を消費していると同時に、大量の廃棄物で水を汚染しています。このために、水不足と水質汚染が同時に進行し、しかも著しく加速されているのです。
 これをプラスの方向に考えると、「水不足が解消すると水質汚染が改善され、水質汚染が改善すると水不足が解消する」と言えます。では、「水不足や水質汚染が解決すると何が起こるか」を具体的に見てみましょう。

◆干ばつや渇水が少なくなる

 水資源が充分に回復すると、干ばつや大規模な渇水が起こりにくくなります。そして水不足による農作物の不作が回避でき、アフリカや東南アジア地域などの食糧問題や飢餓問題が解決の方向に向かいます。
 ただし人口の増加がしばらく続くので、水の利用効率を大幅に高めることが必要です。そのためには、先進国が持つ「水の循環利用技術」や「浄水技術」をすみやかに途上国に移転することが不可欠です。

◆河川の水量が回復し、浄化能力が向上する

 河川の水量が回復すると、黄河などの断流が少なくなり、河川を利用した船舶移動が可能になります。また農業用水や飲料水が河川から供給されるので、地下水を涵養量の範囲で使用できるようになります。
 また水量の増加は、汚染物質に対する希釈倍率のアップと流速が増すことによる溶存酸素の増加を意味します。その結果、自浄能力が向上し、河川の水質が改善されます。

◆湖沼の水量と水質が回復し、塩分濃度も低下する

 河川から流入する水が増加するので、湖沼の水量が回復します。すると、自浄作用が向上し、水質が回復すると共に富栄養化が起こりにくくなります。また塩分濃度も低下し、淡水に生息する魚介類や水生生物が戻ってきます。「アラル海」のような大きな湖では、漁業が復活します。

◆地下水の汚染が止まり、水位も上昇してくる

 有機塩素化合物などの管理が強化され、地下水の水質が次第に回復します。ヒ素などの有毒物質の濃度も下がるでしょう。
 また汲み上げ量が涵養量を下回るよう制限されるので、水位が上昇してきます。

◆水をめぐる紛争が回避される

 かつて国連は、「20世紀の戦争は主に石油を原因としていたが、21世紀の政治的、社会的戦いは水をめぐるものになろう」と予想していましたが、「世界中で淡水資源を分かち合うことが合意され、実行に移されているので、少なくとも水を巡る紛争が回避されるだろう」と宣言することになるでしょう。

■水資源の危機が止まると、他の環境問題も解決に向かう!

◆地球温暖化

 水不足が解消すると、森林の活動が活発になるため二酸化炭素の吸収量が増大します。また蒸散作用が活発になって気化熱を奪うので、気温が下がります。これらの効果により、地球温暖化のスピードが減速し、気候が安定します。
 都市部で森林が増加すると、ヒートアイランド現象が軽減されます。
  
◆森林破壊

 河川の水量が増し水質が改善されると、サケなどの遡上が復活し、上流にある森林に海の栄養が運ばれます。また森林地帯の乾燥化が抑制され、森林火災が自然の範囲内にまで減少します。さらに、いのちを育む水資源が豊富になることで、森林生態系の多様性が保たれます。

◆大気汚染と酸性雨

 水不足が解消し森林(とくに落葉広葉樹)が増加することで、大気汚染物質の吸収量が増え、空気が浄化されます。除去される物質が硫黄酸化物や窒素酸化物の場合は、酸性雨の被害を軽減します。フロンが除去されると、オゾン層破壊を抑制します。

◆ゴミ・廃棄物問題

 水資源を保護するために、工場などで徹底した水の循環利用が図られます。このとき汚染物質の量が変わらないとすると、結果として汚水の濃度が高くなってしまいます。そこで、投入する資源量を最少化すると共に、廃棄する不要物の量をゼロに近づける「ゼロエミッション」化が促進されます。これにより資源生産性が高まり、廃棄物量が大幅に削減されます。
 また家庭では、水を汚さないために「食べ残しや飲み残しを流さない・・・・食べ残し・飲み残しをしない」「生ゴミを堆肥化する」などが実践され、結果としてゴミの排出量が削減されるでしょう。

◆生物種の絶滅、食糧問題、飢餓問題

 すべての動植物は水がなければ生存できません。水問題の解決は、そのまま生物種の絶滅問題の解決に直結します。当然のことながら、食糧問題や飢餓問題を解決する大きな要因になります。

■どうすれば「水資源の危機」が解決するの?

◆水のありがたさを実感しよう!

●阪神・淡路大震災と私・・・・コップ1杯の水

 震災からもう10年近くになります。被災地に住む私にとっては、絶対に忘れることのできない体験でした。幸いこの世に生を許されましたが、「この体験をみんなで分かちあい、大いなる智慧に育てなさい」と言われているように思います。そこで、この場を借りて、驚き、恐怖、絶望の体験から学んだことを振り返ってみることにします。

★大震災発生!

 平成7年1月17日午前5時46分。すさ まじい揺れで目が覚めました。突き上げてくる縦揺れ、そして横揺れ。頭で覚えただけの防災知識は全く役立たず、ただ振り落とされないようにベッドにしがみつくだけでした。
 部屋中に散乱する本、CD、食器・・・・・・。どこからどう手をつけていいか途方に暮れながらも、「生きていて良かった」と思わず感謝したのを覚えています。

 兵庫県南部を襲った大地震は、死者6千名以上という大惨事となりました。人的被害だけでなく、ビルや家屋の倒壊、高速道路・鉄道高架の崩壊、防潮堤の陥没や亀裂など、物的被害も甚大でした。私の自宅(兵庫県尼崎市)の近くでは山陽新幹線の橋桁が2ヶ所で落下しており、地震の発生があと20分遅れていたら始発のひかり号が巻き込まれていたことを思うと、背筋が凍ります。

★身にしみた水の大切さ、ありがたさ

 この地震では、水道・電気・ガスといういわゆるライフライン(実際は、パイプラインなどのモノですが)がズタズタに寸断されました。とくに、生命にとって重要な水が途絶えて、極めて深刻な問題を引き起こしました。飲料水がない、トイレが使えない、お風呂に入れない、火事が消せない・・・・など、水の大切さ、ありがたさを身にしみて感じた方も多いのではないでしょうか。
 こんな中で、「水」について数多くの気づがありました。 いくつかあげてみましょう。
 
@コップ1杯の水でできること

 とにかく、今までいかに水をムダに使っていたか思い知らされました。蛇口をひねると水が出る。これはまったくの幻想でした。当然のことながら、近所の家も断水中で、誰からも貰えません。トイレをしても流す水がありません。水洗トイレは水がないとトイレではないのです。こんな当たり前のことが水がなくなって初めて気づきました。
 私の自宅には飲料水がペットボトル2本分ありましたが、近くのコンビニエンスストアにはもはや1本もありませんでした。いつ水が出るのか分からないので節約を考えない訳にはいきません。そこでコップ1杯の水で何ができるかを試してみることにしました。すると案外多くのことができたのです。

 歯を磨く+ゆすぐ+歯ブラシを洗う+顔を洗う+残りを飲む。これらのことが、たったコップ1杯の水で可能でした。残りを飲むといっても、コップの下から2センチ程度ですが、ノドを湿らせることができました。やればできるのですね。歯を磨いている間、水を流しっぱなしにしていることがよくあったのを反省しました。

A生活に必要な最小限の水の量は?

 幸いにも実家が断水を免れたため、トイレやお風呂を借りることができました。しかし私には「もったいない」という感情が育ってきており、「いっぱいあるから自由に使ってもいい」という発想が頭から消え去っていました。そこで、いくつかの実験をしてみることにしました。
 私にとって必要最小限の、@歯ミガキの量とその歯をゆすぐ水の量、A顔を洗う水の量、 B体を洗う石ケンの量とその石ケンの泡を洗い流す水の量、Cシャンプーの量とそれを洗 い流す水の量、Dトイレの水量、を調べてみたのです。
 その結果、すべての場合でふだん使っている量は必要最少量よりもはるかに多いことが分かりました。たとえば、シャンプーは普段の3分の1で充分ですし、それを洗い流す水量も何と10分の1しか必要ありませんでした。頭にかけた水のほとんどが、泡に触れずにムダに使われていました。確実に泡を巻き込むように少しずつ水をかければ、そんなに水量は必要ないのです。さらに後になって、髪を短くすることで、水がほとんどいらないことも分かりました。多くの女性がショートカットに変わりました。

B近くに海があるのに「水を下さい」とは?

 テレビで被災地の上空の映像が流れていたときのことです。ある大学のグランドに「水を下さい」という文字が書かれていました。「あそこも水がなくて大変なんだな」と思って見ていると、そのグランドの近くには海が広がっているではありませんか。海水(塩水)は大量にあるのです。そうです。水がないのではなく、飲料に適する水がないということなのです。
 海水は飲料水には適しません。では川の水は?・・・・汚れてしまって飲めません。それでは地下水は?・・・・もし下水管が破損し、地下水に流れ込んでいたら大変です。
 本来であれば、海水は飲めないにしても、川の水や地下水は充分飲用に適するはずです。私たち人間が汚してしまったのです。とくに家庭から出てくる生活廃水や工場からの廃水によって水質が悪化してしまいました。
 また、「雨水を貯めてトイレや洗車などの中水道として使おう」と提案されています。しかし、雨水というのは太陽の熱によって蒸発した水蒸気が凝結した蒸留水であり、本来は水道水よりもきれいな水なのです。私たちが排出した汚染物質が雨水の中に溶け込んだために、トイレなどにしか使えなくなったのです。

 震災によって、これらのことが改めて浮き彫りにされました。これは、生活の便利さを追求し続けてきた結果水を汚してしまい、こんな緊急時にツケとして廻ってきたと解釈すべきでしょう。
 私たちは、このことから何を学んだのでしょうか。少なくとも、水の大切さ、ありがたさについて考える時を持つことが必要ではないでしょうか。

Cこの世は一人では生きられない

 ある時、「水道の蛇口から水が出てくるまでに、ものすごく大勢の人手がかかっている」ことに気づきました。貯水池で働く人、浄水場で働く人、配水管を作る人・埋設する人、マンションを作る人、マンションの高架水槽を設置する人。とここまで来てもまだ水は出ません。最後に蛇口を取り付ける人がいて初めて水が出てくるのです。「こんな当たり前のことになぜ気づかなかったのだろう」と反省したことを今でも忘れません。中国の言葉に、「水を飲む時は、井戸を掘ってくれた人のことを思わねばならない」というのがありますが、本当にその通りですね。
 また、中村天風先生の講演録に「箱根山、篭(かご)に乗る人担ぐ人、そのまた草鞋(わらじ)を作る人」という言葉が良く出てきますが、震災という体験を通じて、「まさにこの世は一人では絶対に生きられない、すべての生きとし生けるものと共生している」ということを実感しました。

◆雪は天からのゴミ

 冬になるといつも思い出すことがあります。
 北海道の美深町(旭川と稚内の間)というところに講演に行ったときのことです。
 何と氷点下29℃。こんな寒さは初めてでした。この温度では少々踏みつけても雪が融けず、まるで砂のような感覚でした。スッテンコロリンと転ぶどころか、摩擦ですべらないのです。また自動車の窓に六角形の結晶がそのままの形でくっつくのを見たとき、涙が出てきました。
 そのとき、気づいたのです。雪は天から降ってくるゴミだということに。辺り構わず、すべてを真っ白にしてしまいます。
 しかし、このゴミは春になると素晴らしい水資源になります。人間の排出するゴミも本当はこうでなければと思いました。事実、ゴミというのは資源そのもの。ぜひとも有効に使いたいものです。
                               
◆ビジョンを描きましょう!

 この章を参考にして、「水資源の危機」が解決している状況をビジョンに描きましょう。もちろん内容は自由です。絵と文章で表現するのがベストですが、文章だけでもかまいません。文章は「〜が・・・・になっている」というように、すでに実現しているかのような表現にしてください。完成したらしばらくそれを眺め、ワクワクした感覚を味わってみてください。

                                                            2004年7月25日掲載。

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