『ルヴァン』の酵母 『ルヴァン』のルヴァン(酵母)を見せてもらいました。
もともとはレーズンから起こしたものですが、全粒粉を足しながら、
ずっとずっと種継ぎを続けてきたものです。


ちょっとなめさせてもらうと、意外にクセがない。
酸味もほとんど感じられない、とっても素直で若々しい感じのする酵母です。

そう言えば、近頃の『ルヴァン』のパンは割と”食べやすい”という印象を持つのは私だけでしょうか?

私の記憶の中での「ルヴァンのパン」といえば、クンクンと鼻をくっ付けて匂いをかいだだけでつばが出てきちゃうような、”旨そうなにおい”がプンプンしてて、実際焼き立ては鼻なんかつけなくても、袋に入ったパンを持って歩くだけでみんなが振り返るくらいの匂いを放っていました。
口に入れると舌の味蕾がキュッとひきしまるような酸っぱさが広がり、噛みしめるほどにじわじわ〜っと口中の唾液を吸い出されるような深ぁい味わいがあって、飲み込んだ後までそれが続いて残っているような、そんなパン、なのです。
ちょうどやんちゃだった甲田さんのように、クープが「ンガッ!」と開いてて、そんじょそこらの包丁では歯が立たないような、凶器として使った後に食べてしまえば完全犯罪が成り立つんじゃないかなんて思えちゃう、そんな野趣あふれるものでした。(言い過ぎ?)


強烈な個性を持っていた「ルヴァンのパン」は、時代とともに”洗練されてきた”という言い方は、私にはちょっと聞こえが良すぎるような気がします。

パンは全く同じレシピであったとしても、つくり手の個性を微妙に反影するもの。
最近の「ルヴァンのパン」の、ちょっとおしゃれでお行儀の良い風情は、若いスタッフ達のフレッシュな感性の影響でしょうか?
はたまた甲田さんの人柄がまぁるくなってきたことの表われでしょうか・・・?

種の更新がはやくなったことも関係していると思いますが、これは『ルヴァン』繁栄のあかしとして捉えることもできるでしょう。
素直な味わいのパンは多くの人に受け入れられやすく、天然酵母パン支持者の裾野を広げるには必要な要素でもあります。
それでもやっぱり、一口食べた時に「あ、これルヴァンのパンだ。」とわかる個性は、ずっとずっと持ち続けていってほしいと思います。

もともと”クセモノ好き”な私の嗜好を基準にする訳にはいかないけれど、あの『ルヴァン』ならではの野趣がうすれていってしまうのは、ちょっと物足りないような、淋しい気がしてしまうのです。
きれいに焼かれたルヴァンのパンたち


巣立っていくスタッフの卒業製作「カンパーニュ」 今思えば、当時のパンは”粗けずり”であったかも知れません。

そして今が”洗練”の時であるとするならば、この先、更に年月を重ねて”円熟”していったときには、いったい「ルヴァンのパン」はどんな味わいを見せてくれるのでしょうか。

「ルヴァンのパン」の一ファンとしては、10年後、20年後がとっても楽しみなのです。




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