ー書評ー

高尾山の魅力再発見して

朝日新聞(東京版)3月24日朝刊




佐野さんは北海道苫小牧市出身。父親の転勤の都合のため、子どものころに南アフリカに住み、趣味で父親の一眼レフカメラを借りて、野生のシマウマやシロサイなどを撮影し続けた。帰国後は静岡や愛知に住んだ後、高校入学を機に八王子市に引っ越した。
「撮影を続けたい」との気持ちから市内の私立高校から通信制高校に編入。北海道に出かけ、泊まり込みでリスやナキウサギの撮影を続けた。
20代にかけてはアルバイトを続けながら再びアフリカにわたり、チーターなど野生動物の撮影旅行を繰り返した。
そのうち佐野さんは地元八王子の自宅のすぐそばにある高尾山は、都心に住む人にも身近に感じる山で、しかも自然が豊かで、被写体としてふさわしいと感じ、北海道やアフリカと並び、出版を予定する写真集のテーマの一つにすえた。
都心から約50キロ離れ、約599メートルと決して標高は高くはない高尾山。寒冷地帯を代表するブナをはじめ、約1300種類の植物が生息して、自然の宝庫であることを改めて知った佐野さんは、いつしか、高尾山の自然保護団体のメンバーとしても活動していた。
佐野さんは04年から、自宅から徒歩5分ほどの高尾山に登り、写真集の出版を前提にした撮影活動を開始。約3年で1万点ほどを撮影。その中から、山頂近くのイヌブナの芽吹きや早春に沢の近くに咲き乱れるタカオスミレやモリアオガエル、カワセミの活動の様子など、約80点を選び、解説文も交えてまとめた。
「北海道やアフリカにも自然が豊かでいいところはあるが、東京に住み続けながら高尾山のような足元の自然を振り返る努力も大切なのでは」と佐野さん。展覧会では写真集のうち約20点を展示している。

渋谷で写真展 あすまで開催

写真集の注文は「高尾山の自然をまもる市民の会」(042・662・8115)。写真展は午前9時。渋谷宇田川町11の「モンベルクラブ渋谷店」(03・5784・4005)で。入場無料。

 (朝日新聞より)


ひと

写真集で東京・高尾山の魅力を訴える動物写真家
佐野 高太郎(さの こうたろう)さん
東京・八王子市に両親と暮らす。35歳

2007.3.9 しんぶん赤旗

 「珍しい種類じゃない見慣れた花や動物でも、高尾山を強く物語るものがある。水を吸う力が強いムラサキケマンが、葉に夜露の玉をたくさんつけていたのに出合って、そう感じました」
 千数百種の植物、五千種の昆虫がすむ高尾山(東京都八王子市)の自然を追った写真集『高尾山 ちいさな山の生命(いのち)たち』(かもがわ出版)を出版しました。「佐野高太郎の視点」シリーズ第三弾。蛇滝や琵琶滝など高尾山の豊かな水脈と、生き物とのかかわりを表現しました。
 1981年から2年間、南アフリカで暮らしました。草原を疾走するチーターに魅せられ、動物写真の撮影にのめり込みました。帰国後もアフリカヘ撮影に通い、97、98年には、英BBC放送のワイルドライフ写真賞を、連続受賞しました。
 高尾山に引かれたきっかけは、友人に誘われ、参加した2003年の「天狗フェスティバル」。ジャーナリストの辰濃和男さんが「土をつくるミミズと、土をセメントで固め、自分たちだけの道路をつくる人間と、どちらが賢いか」と問いかけたのに衝撃を受けたといいます。「それからずっと考えてきましたが、写真集で答えを出せました」
 高尾山はいま、国が圏央道トンネル建設の強制収用手続きに踏み出しました。市民らのトンネル差し止め訴訟は春に判決の見通しです。
 「定規で線を引くようにトンネルで山に穴を開けるのは生き物に対して恥ずかしい。水脈が切られれば山が枯れ、山の魅力が失われることに気づくべきです」と話します。

[文・写真 川井 亮]


―北海道 リスとナキウサギの季節―
佐野高太郎著

東京都多摩動物公園 飼育係
森田 喜之


 北海道の冬の動物たちの写真を撮る作業は、想像以上の困難が伴います。
 撮れないかも知れない写真を、撮れるはずだと信じて雪の坂道をふだんの6倍もの時間をかけて登り零下30度の中で何時間もじっと待ち、そのくりかえしを何日も何日もつづけてはじめて新しい事実が確認され、すごい作品ができあがります。
 洞察力と好奇心、忍耐力、体力の限界、そんなすべてが1葉の写真に凝縮され2月の純白の世界の中のナキウサギがぼくたちのまえに現れました。
 食べ物の欠乏する冬のために貯食したエゾリスが、雪をかきわけそれを掘り出すシーンに動物の能力の不思議を感じます。エゾリスは、1mもの雪の下からドングリやらクルミやらの貯蔵物質を探し出して食べるといわれていますが、一面の銀世界の中で何を目印にして埋めた場所を特定するのでしょうか。
 ぼくは、中央アルプスと南アルプスでオコジョに出会ったことがありますが、出会いはいつも1頭でした。これはオコジョが単独生活者だからです。オコジョを複数で見られるなんて思ってもいませんでした。オコジョの群れの写真は貴重な記録だと思います。
 動物たちの持つすごさや愛らしさがいたるところにあふれている写真集です。それは佐野さんの動物に対する愛情が表現されたものだからだと思います。読むという点でも観るという点でも、十分に価値のある1冊です。

定価[2600円+税] かもがわ出版


佐野高太郎さんのお話とスライドショー(4/15)に行ってきました

雪子 F. Grasing

 写真集「北海道 リスとナキウサギの世界」が出るのが楽しみでした。 北海道という大地も好きだし、その住人の動物たちにも興味がありましたから。 この写真集、内容の充実のため、発売が一年くらい延期されると聞いたときはちょっとがっかりもしましたが、やはり待っただけの価値のある
作品がぎっしり詰まっていました。
 どの写真も野生の動物との距離があんなに近くなるなんてうらやましいと思うものばかり。それはただ物理的な距離だけではなく心の距離でもあるのだと感じました。

 4/15日にその佐野高太郎さんのお話とスライドショーがあると知り、これは是非!と浅川市民センターへ出かけました。体育ホールにて、大きなスクリーンに映される写真は、ひざの上で見る写真集のものとはまた違って見えて面白かったです。追加の撮影だけでも7か月かかったということでしたし、写真集に使った写真の他にも何百、何千という数の写真があるではないかと思っていましたから、本には出ていない写真も見られて大変嬉しく思いました。

 今回はリスとナキウサギ、キツネ、オコジョ、モモンガというキツネをのぞけばかなり小さな動物たちの世界。その小さいものたちの住む世界に入って、彼らに受け入れてもらって写真を撮っていらした高太郎さん。そのお話も、受け入れてもらうために気をつけることや、撮影のときにも彼らの逃げ道をあけておいてやるようにすることなど、動物の身になって考える姿勢が印象的でした。これは高尾でも同じことですね。
それぞれの動物の立場に身を置いてはじめて野生動物の豊かな表情を撮ることできるのだと感じました。

 いつだったか北海道での撮影もかなり終わったころでしょう、高尾で偶然、高太郎さんにお会いしました。その時にトムラウシで出合った7匹のオコジョのことを伺いました。そんなに沢山いるのを見るのは珍しいそうですが、その時の嬉しそうな表情とお話は、こちらまでオコジョに出合ったような気分になれる、興奮が伝わってくるものでした。確かに写真を見るとこちらに向かって駆けてくる様子が、彼らの好奇心に満ちたなまなざしがわかります。
 私自身も野生動物とそういう出会いの経験は、ほんの少しですがあるので、そのときの心の昂揚はわかる気がします。「撮ろう、撮ろう」とか「見よう、見よう」としていないときに動物たちが現れてくれたり、よい表情をしてくれたりする、というのには本当に同感です。

 シマリスの背中の表情、ナキウサギの笑っているような、なんともいえない「世間ずれ」していない顔、、、個々の動物たちの魅力、自然の厳しさと優しさ、そして野生に生きるものの強さ、美しさ、、、そんな魅力がたっぷり味わえたひとときでした。北海道でも残念ながらまだ、大規模林道など無駄な開発行為が問題になっています。動物の身になって環境を考える、という意味でもこういう写真集や催しがひとつのきっかけになってくれるとよいと思います。
 次に出版される高尾山の写真集も大変楽しみです!!

雪子 F. Grasing


その他の書評・記事



北海道新聞

写真集「北海道 リスとナキウサギの季節」を出した
佐野高太郎(さの・こうたろう)さん


 北海道でおなじみの動物たちの写真約百点からは、動物と撮影者との何ともいえない親密な距離感が伝わってくる。
 抱えたフキを熱心にかじるエゾリス。真冬の雪原で高山植物の枯れ草に前足を伸ばすナキウサギ。エゾシカがじっとカメラを見つめる。今にも鼻先がレンズにくっつきそうだ。
 「中には数十センチまで近寄って撮ったものもある」という。そのために、何時間も雪や森の中に立ち、自らが自然と同化するのを待つ。それから、シャッターチャンスを狙う。ぎりぎりの接近が、野生動物の素顔を切り取ることに成功している。

野生の魅力にフォーカス

 苫小牧市出身。小学四年生のとき、父親の転勤に伴い、南アフリカの小さな港町に移住した。ここでの二年間が将来を決定付けた。
 月に一、二回は家族で国立公園に入り、夜明けから日没まで野生動物を見て回った。「動物園の動物は“囚人”。しかし自然の中では違う。殺されることもあるけれど、どの動物も自由に生きていることに感動した」。そして「野生動物専門の写真家になりたい」と決意した。
 帰国後、東京都内の高校に入学したが、一年で中退。カメラを手に、生まれ故郷の北海道を目指した。十八歳で自動車の運転免許をとると、車内で寝泊まりしながら、道内の四季折々の自然を撮りためた。
 転機が訪れたのは、二十六歳のころだ。「自分の写真に行き詰まりを感じた」ため、南アを再訪。約四年間、日本との間を往復しながら、国立公園の中で野生動物を撮り続けた。
 二○○四年にデビュー作「チーターがいる砂漠」を出版した。獲物を倒し、顔を血まみれにして食べるチーター。「チーターを撮ったら一番。そう思えるくらいになった」
 今回が第二作。二十代前半の約五年間の作品に、昨年撮った新作を交えて構成した。

 現在、東京都八王子市の高尾山のふもとで両親と暮らす。実は、写真集刊行は地元の自然保護グループの支援で実現した。第三作は、高速道路工事のため、急ピッチで自然破壊が進む高尾山をテーマにする予定だ。「草花や霜柱、紅葉など、目の前で消されようとしているささやかな自然にフォーカスしていきたい」。三十四歳。

(かもがわ出版 二七三○円)

東京社会部 中原洋之輔

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2006.3.5 朝日新聞

3部作仕上げは高尾山

南アフリカ・北海道
野生の魅力写す

八王子 佐野さん 来年出版

 佐野さんは北海道苫小牧市の出身。10歳の時に父親の転勤のため南アフリカ共和国にある現在のクワズールー・ナタール州に移り、現地の学校に通った。趣味で父親の一眼レフカメラを借りて写真を撮っていた。
 車に乗ったまま野生動物を観察できる動物保護区があり、月に数回、家族と訪れた。チーターやシマウマなどが自然の中で生活していた。中でも絶滅の危機にあったシロサイの姿に佐野さんは感動し、シャッターを押し続けたという。
 2年後に帰国した佐野さんは、静岡や愛知県を経て高校入学時に八王子市に移った。北海道の野生動物の写真を撮りたいと思い、私立校から通信制高校へ編入。ラジオを聴いて勉強しながら、北海道へでかけて撮影を続けた。
 20歳前半には軽自動車を寝泊りできるように改造。知床・羅臼町などに1カ月前後滞在してエゾリスや生きた化石と呼ばれるナキウサギなどを撮影した。20代後半からは活動拠点を南アフリカに移した。
 野生動物のシャッターチャンスを逃さないため、食料をまとめ買いして車にこもり、早朝、動物が車に近づいたところを撮影するという。生活費はトラックの運転手や引越し業者のアルバイトなどで稼いだ。
 2、3年前から都内のギャラリーなどで個展を開くようになり、出版プロダクションから作品集の出版話が舞い込んだ。
 出版した2冊は「KARAHALI チーターがいる砂漠」と「北海道 リスとナキウサギの季節」(かもがわ出版、税別2600円)。思い出深い南アフリカや北海道の約5万点にのぼる作品から厳選した。専門家の解説文も添えられている。
 さらに佐野さんは「たくさんの自然が残る地元の高尾山を見直したい」と考え、高尾山の草花や昆虫を加えた3部作シリーズにすることを決めた。
 3作目は今秋までに撮影を終え、来年2月に出版する予定だ。
 佐野さんは「野生動物はとても楽しそうに生きているのが魅力的だ。それを写真を通じて思いきり表現したい」と話す。



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