女子アナ牝犬調教2

3

 翌日も彩は、普段通りの生活で仕事をこなしていた。売れっ子アイドル女子アナの彩は、レギュラーのおめざめテレビを毎朝勤めると共に、様々な司会やレポートなどをしなければならない。
結城と共演している番組の収録まで数日があり、それまでは、結城と顔を合わせる機会はない。
バーに置き去りにして帰った後、結城からは、その後なんの連絡もなかった。
彩は、そのことにほっとしているのか、不満なのか自分でもわからなかった。
結城が、言ったことがまるで的外れならテレビ業界には、よくいるセクハラ男として、無視すればすむことだし、いままではそうしてきた。
しかし、結城があのバーで指摘したことは、恐ろしいほどに彩の心の奥底に眠る願望を言い当てていたのだ。そのことが、彩に重くのしかかり結城を拒否することができない。真実であることを知っているのは彩だけだが、結城は当て推量で言っているのではなく確信を持っていることが彩を落ち着かなくさせていたのだ。
やがて、否応なく結城と共演する番組の収録の日がやってきた。

「おはようございます」
彩は、スタジオ入りすると、いつもの明るい笑顔でスタッフに挨拶しながら、目では結城を探した。
<いたわ・・>
結城は、いつも通り、スタジオの隅のイスに座り、周りに誰も寄せ付けない雰囲気を漂わせながら黙然と読書をしている。
彩は、つかつかと結城に歩み寄りわざとらしいほど明るく挨拶した。
「おはようございます。結城先生」
結城は、無表情で本から顔を上げ、彩を見上げてぶっきらぼうに
「ああ。おはよう。松島君」
とだけ言うと、また本に視線を戻した。
<何?気取っちゃって!言うことはそれだけなの?>
思わずカッとなる彩だったが、ここで声を荒だてればスタッフから不審がられるだけだと思い直し、作り笑顔で結城に背を向けた。
その日の番組は、最近起きた猟奇的なSMカップルの無理心中事件を取り上げていた。
「それにしても、このカップルの行動は不可解ですね。わたしたちには、理解できないSMの世界にはまってしまった異常な心理とでもいうのでしょうか?」
彩は、台本に書かれた通りのセリフを言いながら、いつもの営業スマイルで隣の結城を見た。
「理解できないのではない。理解しようとしないだけだ。自分の心の奥底にあるものを直視するのが恐ろしいだけなのだ」
「ど・・どういうことでしょうか?」
台本にない結城のセリフにとまどいながら、彩は、尋ねた。
「人は、皆このカップルのようになりうるということだ。しかしそれを認めたくないので変態だの異常だのというレッテルを貼って自分とは違うと自分に言い聞かせているのだ」
「つまり、人はみなサディストにもマゾヒストにもなりうるということですね」
絶句する彩の横から、男性アナが余計な口をはさんだ。
「その通りだ。特に強くそういう行為を嫌悪してみせたり、道徳を振りかざす手合いは自己否定のために無意識に強い否定的な態度になる」
「そ・・そうですか・・では、次の話題・・」
うつむいて動揺を隠しながら、彩は、横でサングラスの奥から結城の鋭い目が自分を見つめていることを意識せずにはいられなかった。

番組が、終わりまたスタジオの隅の席に座った結城の側に彩は、歩み寄った。
「結城先生、あまりセクハラがすぎるんじゃありませんか?このままなら訴えますわよ」
かわいい顔を紅潮させと前に立って抗議する彩を、結城は例の無表情で見上げた。
「なんのことかな?」
「しらばっくれて・・さっきの収録の話です!台本にないようなことを言って、わたしを動揺させようとしたでしょう?」
「自意識過剰じゃないかな?私は君など意識していない。心理学的に正確なことを言っただけだ」
「そんな・・!」
ことさらに自分を無視するような結城の傲慢な態度に彩は、強い憤りを感じながら相手を非難する言葉がいつものように出てこないことを感じて立ちすくんだ。
「・・・ところで今夜も、あのバーに行かないかね?」
「結構です。また結城先生のいやらしいSM談義なんか拝聴する気はありませんわ」
「談義ではないな・・実践というべきだろう」
「・・・・・・・・」
「残念なことだな・・生涯で初めて・・そしておそらく唯一自分の本当の性的願望をかなえられるチャンスを逃すのは・・しかも完全な秘密を守る形で・・」
「な・・なんのことだかわかりませんわ。これ以上先生の妄想におつきあいするはありません!」
クルリと背を向けて足早に離れる彩の背中に、また低く重みのある結城の声が届いた。
「今夜もあのバーで待っている・・興味があれば来たまえ・・かならずすばらしい夜になるだろう」


 その夜。
冷たい雨がそぼ降る銀座の裏通りを、顔を隠すようにコートの襟を立てた彩が足早に歩いていた。
<いったいどういうつもりなのかしら・・>
彩は、自分に対してか、結城に対してかわからない曖昧な言葉をつぶやきながら、あのバーのある階段を降りていった。
「いらっしゃいませ」
と落ち着いたあの初老のマスターの声が出迎えた。
「さあ。どうぞ。コートをお預かりします」
中年の女が、冷たい笑みを浮かべてツカツカと歩み寄り、入り口でまだためらって立ちすくむ彩からなかば強引な感じでコートをはぎ取った。
「あの・・・結城先生は?」
彩は、店内を見回し、結城の姿を捜したが見あたらないことに軽い失望を感じた。
「だいじょうぶ。先生はさっきから奥の部屋であなたをお待ちですよ。さあどうぞ」
すべてを見透かすように冷たい笑みをうかべて女は先に立って彩を奥の壁際に歩いていった。
「え?奥の部屋って・・?」
彩は、不審そうに店内を見回した。入り口のドア以外ドアは、見あたらない。
「ええ・・ここよ」
女が、壁の一部を押すと、クルリと隠し扉が開き奥への通路が現れた。奥に続く薄暗く狭い廊下と、手前と突き当たりにドアがある。
「こんなしかけが・・・」
驚く彩に、女は微笑して
「ええ。ここから奥は会員専用のプレイルームよ」
「プレイルーム?」
「そう。女奴隷を調教するための訓練室よ」
「・・・・・・」
「さあ。先生が控え室でお待ちよ。手前の部屋よ。さっさと行きなさい!」
「は・・はい・・」
名前も知らないバーの女に、命令口調で強制されても、彩は、なぜか反発を覚えるよりも先に従順に返事をしてしまいおずおずと薄暗い廊下に歩み入った。
手前の鉄のドアをノックする。
「待っていた。入りたまえ」
という結城の落ち着いた声が部屋の中からかすかに聞こえた。
彩が重い鉄のドアを開けると、そこは、ロッカーがいくつか並びその横の棚には、皮の首輪や鎖、ロープなど知識のない彩にも、SMの道具と分かるものや、なんの道具か検討もつかないものまで所狭しと置かれている。
結城は、部屋の中央に置かれたテーブルを前に座っていた。
「やはり来たな。待っていた」
 結城は、彩を見てかすかに唇をゆがめて笑った。
「残念でした。わたしは、別に先生の思うような目的で来たわけではありませんわ」
「ほう?私が思うような目的とは何かね?」
「それは・・・・そんなことより、ここはなんですか?会員というのはなんのことです?」
「このバーの会員、性奴クラブの会員のことさ」
「性奴クラブ?」
「女性を調教し、性の奴隷として仕立て上げることに喜びを感じる者のクラブ」
「つまり、変態のサディストのクラブっていうことですね」
「サディストだけでは、クラブは成立しない。奴隷となるマゾヒストがいなければな」
「それで、わたしにマゾの奴隷になれと?おあいにくさまですね。わたしにはそんな気はぜんぜんありませんわ」
彩は、かわいい顔をつんと上向かせて冷たく言った。
「では、なぜここに来たのかね?用もないのに?」
結城は、揚げ足をとるわけではなく冷静な口調で言った。
「それは・・・」
「君は、こことそしてわたしの話に興味があるんだろう。だからこそここに来た。君は自分の性癖を満足させてくれる存在を求めているのだ」
「そ・・そんな・・話・・・でたらめです」
「彩・・」
結城は立ち上がり、彩の背後に回るとやさしく肩に手を置いた。
ビクッと震えながら、彩はその手を振り払うことができなった。
「恐れることはない・・・私にすべてをまかせるのだ。君の立場もわかっている。安心して私の言うとおりにすればいいのだ」
「せ・・先生」
いつも強気の彩が、結城の前ではなぜか催眠術にかかったように逆らうことができなった。
「いいね。松島君。これから会員たちに君を紹介する。そこでこのクラブの説明をする。参加するかどうかは君の意志なのだ。強制はしない」
「わ・・わかりましたわ・・」
「よろしい。では、来たまえ。性奴クラブの会員を紹介しよう」
結城は、ドアを開けて、彩をさらに奥の部屋へと誘った。
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