| I. 輸入権の必要性 RIAA並びにIFPIは、日本の著作権法に輸入権を設けることは重要だと考えており、できる限り速やかにこの輸入権をレコード生産業者に適用するという提案を、真摯に支持します。 著作権の守られた著作物が著作権所有者の同意なしに日本市場に輸入されると、日本のエンターテインメント産業にマイナス効果がもたらされますが、そのマイナス効果は輸入権を導入することで解消できます。以下の意見は日本における輸入権の必要性を詳細に分析したもので、輸入権が国内市場にもたらすであろう影響について説いたものです。 1. 並行輸入は必要とされる音楽産業の製造・配給体系を弱体化させる 通常認識されていることですが、音楽を録音し製品化することへの投資には、相当なリスクが伴います。消費者の関心を寄せるものとしての録音された音楽というのは、必需品と贅沢品の中間に位置し、その市場は定期的ではありながら個人の裁量により変動のある消費によって支えられています。 消費者に認められるアーティストの育成と録音物の生産はレコード会社の繁栄にとって欠かせないものですが、同等に重要なのは、その会社の自国における売り込み、配給、販売の能力です。信頼性の高い安定した効率のよい配給形態なくしては、音楽産業が必要な市場を維持することは不可能なのです。 従って、市場への生産物の流れを管理する力は、必要とされる製造・配給体系を維持するためには不可欠なのです。逆に言えば、管理の及ばない、日和見主義的な輸入による市場のひずみは、産業の基盤を弱体化させると当時に、長期的な問題解決にもなりません。何故なら、並行輸入は外部の経済的要素に左右され、国内の価格体系とは相容れないものであり、国内市場への影響は大きく変動し、音楽ビジネスが持つ不確かさを著しく増加させる可能性があるからです。 2. 並行輸入は製品のマーケティング及びプロモーションへの便乗を可能にする レコード産業というのは、複雑で予測不可能なビジネスです。全ての録音物の中で、世界中で「ヒット」となるのに必要な要素を持っているものはほんのわずかで、それこそ、そのような製品に分類されるのは発売される全タイトルの5%もありません。しかし、これら「ヒット」の売上はレコード産業の全売上高の約70%にのぼり、売れなかったタイトルの損失をほぼ補うことができます。この売上の内かなりの額は、最終的に成功するか否かにかかわらず、新しい国内アーティストの発掘や所属アーティストへの投資、そして新たな市場開拓にも投入されます。 並行輸入をおこなう業者や小売店は、並行輸入されたアルバムを販売し、国内レコード会社のマーケティング努力、プロモーション努力に便乗し、音楽文化のさらなる発展には何の貢献もしません。こういった業者や小売店は売れているタイトルだけを選ぶ上、レコード産業におけるマーケティング主導権、コストのかかる投資、商品配給の成果を利用するのです。レコード会社と、レコード会社と協力する配給業者及び小売店は、自国の市場に見合った(そして自国の市場から見返りがあることを見越した)方法でプロモーションとマーケティングに投資をします。彼らは国内のパートナーと手を結ぶので、国内の広告及びプロモーション分野を育てることにつながるのです。 翻って、並行輸入業者は成功したマーケティング及びプロモーションの実りある部分のみを享受するだけですが、こうしたマーケティング及びプロモーション効果は、日本の並行輸入業者以外の者による成果、あるいは他の市場での売れ筋商品から派生したものなのです。こういった枠組は、公平な競争にも豊富で幅広い創作物の配分にもつながりません。 3. 並行輸入は独立した各小売店ではなく国際展開している小売チェーンに優勢をもたらす 並行輸入販売による体系的な利益搾取がもたらすものは、大型の、たいがいの場合国際展開している小売チェーンの拡張で、それは小さな独立した小売店のマーケット・シェアの犠牲により成り立つものです。これは、国際網を持つ大型小売業者は他の市場ですでにチャートに入っているタイトルを視野に入れ、物価の安い国々でそういったタイトルを大量に仕入れ、通貨変動を利用する態勢が整っているという事実に基づきます。 他の市場での経験からも判ることですが、録音物の並行輸入に対する管理を解除すると、大型小売業者の利益につながり、独立小売店がチェーン店に取って代られる基盤を作ってしまうことになります。 4. 消費者の信用がしばしば並行輸入により損なわれる 消費者の観点からすれば、CDが意味するものは音楽だけではありません。品質標準に則したメディアに入った創作物であり、それ自体、芸術的なデザインと価値を持ったものなのです。これにアートワーク、演奏者、作曲者についての情報、歌詞、音の存在が加わるのです。CDの外観は広告及びプロモーションで提示されたイメージとつながっています。これまでの例でも判るように、並行輸入品は定着した品質標準と商品の外観から外れていることがしばしばあり、その結果、消費者の信用を損なったり、その製品の信頼性への混乱を招いたり、演奏者やその作品への気持ちが萎えたりすることとなります。 これらの懸念事項を視野に入れ、かつプロモーション、商品の分配、広告への資金を出しているのは通常小売店ではなくレコード生産者であるということを考えると、権利保有者に発売後の製品分配における充分な管理をさせることは、ますます必要なことと思われます。そうでなければ、低品質の製品がより高品質で慎重に企画された製品と競合することは避けられず、消費者、権利保有者双方にとっての損失となるのです。 5. 並行輸入は海賊商品の取引を増加させる 並行輸入が防御されないと、海賊商品の取引が増加します。これまでも、並行輸入品を購入したはいいが、結局それはオリジナル録音物からの違法コピーであったり盗品だった、という例が複数あります。こういったことは、初見で合法品と海賊品の区別がつけられない消費者の間で混乱を招き、結果的にレコード生産者の合法販売に損害を与え、また、高品質な製品を提供しているという評判も落とすこととなります。 6. 並行輸入は国内の広告・プロモーション分野、及び国内レコード産業のパートナーにとって不利益である 多くの関連産業が、録音物の国内におけるマーケティングと販売の結果生じるビジネスから恩恵を受けています。こうした産業にはCDの大量生産だけでなく、対象となるプロモーションと製品分配も含まれます。各国それぞれ独自の文化的、経済的、商業的要因が存在し、それらが元となって、いつ、どこで、どういった条件の下に録音物を大量生産、プロモーション、配給するかが決まります。作曲者、演奏者、生産者が投入する労力を、全く異なる経済・市場状況が存在する国々よりの輸入から守る権限が奪われると、創造的共同体に経済的なマイナス効果をもたらすだけでなく、レコード産業の活動に関わる他の産業やビジネスに有害な影響が出ます。国内経済と国内音楽ビジネス育成のため、創作と配給における一連の流れの大部分が日本国内でなされるという保障を得ることが大事で、それにより、国内消費者が海外及び国内アーティストに興味を持つことから生れる「相乗効果」が、国内企業のために最大限に生かされることになるのです。日本で企画、生産(アートワークやジュエル・ケースも含む)、包装、販促、販売されたCDは、低価値で低品質なことがままある他国のものを単に輸入して売るよりも、よりポジティヴな影響を市場に与えます。----そして日本国内のビジネスに関わるより多くの儲けと雇用を生み出すのです。 7. 輸入権は差別なく適用されなければならない RIAAとIFPIはレコード生産業者に輸入権を与える著作権法の拡大を支持します。しかし、委員会の報告書に一部、少々懸念事項があり、適用範囲が日本人アーティストのみというこの法案の再考を促すこととなりそうです。この問題の大部分が、日本市場を弱体化させる不安なしに海外でのライセンス事業を行う力を日本の企業に与えたいという願いから発したということはよく理解できますが、全く同じことが、日本にいる他国の権利保有者にも影響するということを申し上げたいのです。もしレコード会社が、日本のような先進国の市場と、その地域の日本ほど発展していない国々の市場とで違う価格をつける立場にないとしたら、各国の消費力と釣り合った低価格をつける力に限界が出てくることになります。そうなれば、国内の経済的観点から見ても、完全には合理的ではない価格設定ポリシーを持つことになりますが、それはまさに、レコード会社が適切な方法でボーダーを守れないなら「国内的」要素に基づいた価格設定ができないから、なのです。従って、我々は法案の差別的適用に強く警告し、日本国政府にレコード会社の扱う全アーティストに関して、輸入権を与えるよう要求します。 |