2002年7月30日
三輪素麺
この7月にいわゆるJAS法が改正された.骨子を抜粋すると,
次のようなことである.
| 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律 の一部を改正する法律について 平成14年6月 農林水産省 T 趣旨 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(以下 「JAS法」という)については、最近の食品の偽装表示の 多発を踏まえ、消費者への情報提供及び実効性確保の観点か ら、公表の弾力化及び罰則の強化の措置を講じることとする。 U 概要 1 公表の弾力化 消費者への迅速な情報提供を図る観点から、必要なときに公 表することを可能とするようにする。(現行の「指示に従わ ない」場合の公表の規定を削除) ※現在のJAS法では、指示以前の時点では、相手方の同意 がない限り公表できない。 2 罰則の強化 指示を遵守すべき旨の命令に違反した場合の罰則を、次の とおり大幅に強化する。 @懲役なし→1年 A罰金個人50万円→100万円 法人50万円→1億円 |
この全文は農水省のサイトで閲覧できる.一連の食品表示の偽装
事件によって失われた消費者の信頼を取り戻すべくとられた措置で
ある.内閣府が今年の5〜6月,全国の国民生活モニター2300人に
実施し,29日に発表した意識調査(回答率97.8%)の結果によると,
偽装事件の頻発で「食品に対する購買行動が変わった」と回答した
消費者が76.8%に達している.
『談話室』でも少し触れたが,読売新聞《Yomiuri Online 7/24
19:19》が『三輪そうめん』の偽装表示事件を伝えた.
農水省は24日,デパートやスーパーなどで三輪素麺の販売を全国
展開している奈良県桜井市の製麺業3社に対し,長崎県などで製造
された素麺を『三輪そうめん』と表示する販売を20年以上にわたり
常態化させてきたとして改善を指示し,同時に業者名を公表した.
公表されたのは大手の「池利」「三輪そうめん山本」「森井食品」
の3社であるが,この他にも表示を偽っていた業者があり,読売の
続報によると全部で14社が昨年,奈良県三輪素麺工業協同組合(117
業者)から自主脱退したり,除名処分を受けたりしたという.上の
骨子にある「消費者への迅速な情報提供を図る観点から、必要な
ときに公表することを可能とするようにする」というのは,公表し
ない限り事態が改善されないと判断される相手の時には公表すると
いうことである.実際には,悪質な3社以外の業者名は公表されて
いないが,これは上記の改正JAS(日本農林規格)法の初適用で
あり,これまでとは違うぞという農水省の意気が感じられた事件で
ある.
ところが,である.驚天動地の事態が起きている.奈良県農政課
は残る製麺業者の調査を始めたが,他の中小業者に同様の違反が見
つかっても「改善が第1の目的。それが達成できれば、改正JAS
法の適用や業者名の公表は必要ない。県には行政の裁量権がある」
《Yomiuri Online 7/29 14:56 》として公表しないことを決めたの
である.農水省品質課は奈良県に足並みをそろえるよう求めたが,
県は拒否したという.県の農林部長である増井勲・奈良県副知事は
「家内工業のような零細な業者もおり、改正JAS法をすぐに適用
すると影響が大きい。適用前の啓発が大切ではないか」《Yomiuri
Online 7/29 14:56》と説明した.
高飛車に「適用前の啓発が大切ではないか」とは聞いてあきれる.
啓発してこなかったからこそこうなったのではないのか.恥も外聞
もなく奈良県が農水省に抵抗する理由は何か.偽装表示は他の業者
も常態として行っていると告白したも同然である.これでデパート
等の進物売場から三輪素麺は姿を消すことになるだろう.奈良県は
業界保護のつもりだろうが,県内の伝統ある素麺製造業を結果的に
つぶすことになる.農水省もここで引いては困る.断固として他の
業者についての調査結果を公表し,もし中小業者で偽装表示に手を
染めていない社があるなら,県に楯突いて潔白宣言をするがよい.
悪質業者を市場から退場させ,自社のシェアを拡大する千載一遇の
大チャンスだ.会社の規模が小さくて生産量が少ないなら,希少と
いう付加価値がつく.私が経営者ならそうする.
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