ことの始まりは2006年6月15日、中部電力浜岡5号機の低圧タービンで異常振動が発生し、原子炉が自動停止したことでした。中部電力は同月23日に、羽根1本がタービン軸から脱落し、タービン下部に落下していることを確認しています。
これを受けて、原子力安全・保安院は、同月30日になって中部電力に引き続きの調査を指示するとともに、同型のタービンを使用している北陸電力に点検計画を策定して点検することを指示したのでした。北陸電力は、7月4日になってようやく点検計画を策定、2号機の停止作業に入りました。(翌日に停止)
6月23日の点検結果で既に設計ミスが疑われ、直ちに志賀2号機も止めるべきでしたが、保安院は即時停止の指示を行わず、北電の対応もあまりに遅いものでした!
特に、原子力安全・保安院の点検指示は、6月29日に行われた電力各社の株主総会が終わるのを待っていたのではないかとの疑惑が生じます。
低圧タービンは1つの原発に3台あります。一つのタービンには、右図のように計12段、総数1568枚の羽根がついています。点検の結果、脱落やひび割れは第12段の羽根だけに発生していることが分かりました。第12段の羽根は3台のタービンを合わせると840枚ですが、浜岡では663枚(約8割)に、志賀では258枚(約3割)にひび等が見つかりました。浜岡5号も2005年1月、志賀2号はわずか3ヶ月前の2006年3月15日に営業運転を始めたばかりの新鋭機ですから、異常と言う他ありません。
また、沸騰水型原発のタービンは炉心で沸騰した蒸気が流れてくるところで、点検作業も被曝労働であることを忘れてはいけません。
問題は、ひび割れが1分間に1800回という高速回転している羽根の根元に発生していることです。ひび割れが破断すると高速回転の遠心力で羽根は吹き飛ばされます。タービンのカバーや建物の壁さえも突き破ってミサイルのように飛んでいく場合があり、タービンミサイル事故と呼ばれています。この段の羽根一枚の重さは約9キロあり、人身事故や他の機器を破壊する大惨事になる可能性があります。

1971年に関西電力海南火力発電所で実際にタービンミサイル事故が発生し、破損した羽根等が最長380mも飛散し、火災を引き起こした記録が残されています。
また、タービンカバーに開いた穴から蒸気=冷却水が流出し、炉心溶融事故につながりかねません。浜岡5号では幸いカバーを突き破りはしませんでしたが、生じた金属片は約20キロとされており、衝撃の強さがうかがえます。すぐに止めなければいけないのはこのような理由からです。
9月12日、中部電力は事故原因について、細かい振動の発生による金属疲労が原因との調査結果を公表しました。負荷が小さくなった時にタービン内を流れた蒸気は羽根の後ろで渦巻きを作り、一番後ろ(第14段)とその手前(第13段)の羽根に振動を与えることが以前から知られています。そのため、13段、14段の羽根には金属疲労を防ぐための補強が行われていました。
ところが、タービンの大型化に伴って羽根を長くしたことにより、その影響が第12段の羽根にまで及んでいたことが事故後の解析で分かったというのです。事故直後から疑われたとおり、十分な解析や実機テストを行わなかった設計ミスであることは明らかです。
浜岡5号、志賀2号ともに定格出力135万キロワット級。それまでの改良沸騰水型(ABWR)は110万キロワット級でしたがスケールアップが図られました。先行してこのクラスで作られた柏崎刈羽6・7号機のタービンは米GE社製で、大型化したこの規模のタービンを日立製作所が作るのは初めてでした。メーカーの技術力がこの程度であることは、衝撃です。
日立製作所の丸彰執行役常務は「当時の一般的な知見では想定外の事象」と記者会見で述べていますが、そのような言い訳は通用しません。想定外だから事故がおきても仕方がないのでしょうか。また、大型化に伴う「想定外」は低圧タービンだけだとどうして保障できるのでしょうか。
一から設計をやり直し、実機テストも繰り返して、低圧タービンを作り直す必要がありますが、2年以上かかるそうです。そうなれば長期停止は避けられません。
そこで、中部電力と北陸電力は足並みをそろえて、10月27日に報告書を国に提出し、タービンを作り直している間、問題の12段目の羽根を取り外し、蒸気の流れを整えるための回転しない整流版を取り付ける応急措置を施して運転再開するというのです。中電と北電は、整流板は原発・火力で使用実績があると言っていますが、規模が違えば「想定外」のことが起きると教えてくれたのが今回の事故だったことをもう忘れているようです。
整流板の設置には国の審査も必要ですが、安全性を軽視した小手先の対策での運転再開を許すのかどうか。石川県の態度も重要なカギを握ります。
志賀2号の低圧タービンの点検停止中に高圧タービンで、金属粒約900個が見つかりました。(9月28日発表)
こちらのほうは10月12日に調査結果が発表され、高圧タービンに流れ込む蒸気の上流側にある主蒸気止め弁の製造時にショットブラスト作業で使用した金属粒が残っていたものとされています。北陸電力もメーカーも施工管理ができず、試運転から営業運転に至るまでの間にも点検できなかったことになります。
金属粒はたまたま高圧タービンで見つかりましたが、蒸気と一緒にさらに下流側に流れた可能性もあります。北陸電力は流れ込んだ可能性のある機器を開放検査するとし、10月27日に約900個を発見、さらに給水加熱器でマーキングペンが紛れ込んでいたのを見つけたと公表しています。異物がもしも原子炉にまで還流していたら燃料棒を破損し、大事故の誘因になることさえ考えられます。
徹底した検査が必要です。
(能登ピースサイクル報告集掲載文)