日本消費者連盟関西グループ発行「草の根だより」2004年9月号掲載記事から
2004年8月9日、大阪府原子炉問題審議会が開催されました。任期切れに伴う審議会会長等の選出や京大原子炉の放射能監視報告が行われた後、原子炉の変更許可申請の事前了解が議題になりました。
京大原子炉は、現在、93%濃縮ウランを燃料としており、核拡散を心配するアメリカが使用済み燃料を引き取っています。1999年から過去5回、毎年返還輸送が行われており、今年(2004年)も9月頃に使用済み燃料31体の輸送を行うとこの日説明がありました。この引き取り契約では2006年3月までに高濃縮ウランを使い切ることになっていて、次回・最後の輸送は2007年に60体の輸送が予定されています。
その後は20%濃縮ウランに切り替えれば、運転継続が可能ですが、変更許可申請が必要で、申請に当たっては使用済み燃料の処理方法を記載しなければなりません。20%濃縮燃料をアメリカは引き取らないと宣言していたため、処理方法がありません。昨年の審議会では、説明に当たった京大教授が「私も熊取在住であり、熊取においておくとは書きたくない。」と表明。変更申請ができない状況にありました。
ところが、この1年の間に、アメリカが使用済み燃料の引き取りを5〜10年延長する見込みがついたというのです。そこで、燃料を20パーセント濃縮に変えるための変更許可申請を行うことにし、その事前了解を審議会に求めたのです。しかし、アメリカの方針変更はあくまで見込みのため、仮にアメリカの方針変更が行われない場合は、許可が下りても燃料の製造に入らないとも説明されました。
また、変更許可申請の審査に2年、燃料製造に1年はかかるため、93%燃料が使えなくなる2006年4月に間に合わず、一旦休炉になります。運転再開できた場合の運転期間は、アメリカが引き取りを行う時期に合わせ、できれば2020年までは運転したいとのことでした。
審議会の質疑では、黒田まさ子府議(共産)が過去の休炉の実績と2007年から10年延長だと2017年になるためなぜ2020年なのか質問しました。これに対しては「熱交換器の水漏れなどの修理で1年半止まったことがある。」「アメリカと交渉し、もう3年ぐらいは延長できるのではと考えている。ダメな場合は廃炉になる。」との答えでした。
審議会は、全員一致で変更許可申請の事前了解を可決しました。
ちなみに、昨年(2003年7月16日)の審議会では、休炉になるとの説明に、貝塚市長が「国の政策であり、なんとかならんか」、熊取町長が「地元にはメリットがない。地域振興も頭に入れて対応してほしい」などと意見を述べました。
また、小谷みすず府議(共産)の「廃炉費用はどこまで含むのか。廃炉の場合でも国に責任を」という質問には「研究者として廃炉にした場合の研究はしている。廃棄物の区分けもできている。スソキリせずにドラム缶詰めにし、六ケ所での処分単価をかけて試算すると
100億円になる。コバルト60の半減期から10年ぐらい置いておいて解体することになる。廃棄物に国が責任を持たないなら、独立行政法人京都大学としては、原子炉は要らないと交渉している。国会で平野博文議員が質問したところ『大学から要求されたら最後は国がみざるをえない』と答弁されている。」との答えがありました。
京大1号炉は運転開始から約40年が経過し、老朽化しています。いつまでも動かし続けることはできないでしょう。
京大原子炉1号炉は2006年2月23日、42年間の高濃縮ウランによる運転を終了して、停止しました。
約2年間の休止期間は定期検査が継続中という扱いになるそうです。しかし、20%濃縮燃料による運転では最大熱出力が現在の5MWの5分の1程度にしかならず、これからの研究に本当に役に立つのか疑問です。
日本消費者連盟関西グループ発行「草の根だより」2007年10月号掲載記事から
現在休止中の京大原子炉(KUR)は、20%濃縮ウランの燃料を用いた運転再開を目指しています。
使用済み燃料の処理方策のめどがなければ運転をすることができませんが、アメリカは2016年5月までに発生した使用済み燃料を2019年までに引き取るという方針を2004年12月に示しています。そこで、京大は2006年2月にアメリカと契約を結び、2016年3月までの運転を計画しました。このための原子炉設置変更申請も2006年12月28日付で文部科学省に提出されています。
中越沖地震を受けて、府議会自民党議員団は、8月2日、次の要望を大阪府に行っています。
| 先日の新潟県中越沖地震によって、万全の地震防災対策が施されているはずだと当然視されていた柏崎刈羽原子力発電所での火災の鎮火に相当手間取り、さらに放射性物質を含んだ水が漏れ、一部は海に流出する事故が発生した。原発自体が断層の真上に立地していた事実も判明し、原発の安全性に対する住民の不安感、不信感が高まった。大阪府内にも研究用として京都大学の原子炉実験所が熊取町に設置され既に40年が経過し老朽化も進んでいる。商業用の原子炉とは規模が異なるものの放射性物質を扱うという意味では、原子炉の防災体制に対する周辺住民の不安感は大きいものがある。今回の教訓も十分に活かし、周辺の断層の精密な調査や原子炉の再点検など、原子炉実験所の地震防災対策を徹底するよう、国への申入れや府の危機管理対策に知事は万全を尽くすこと。 |
これを受けて、知事は、熊取町の原子炉施設については、以前から、安全性の確保や老朽化した施設の更新について要望を受けている。他人事でなく、このような施設がどのような事態になっても安全に運営ができるよう、今一度、足元を見直す作業はしっかりしていく。」とコメントしています。
8月21日の大阪府原子炉問題審議会でも、この点が議論になりました。
| 小松久(府議・共産) | 耐震報告はいつ頃の予定か? |
| 京大 | 年度内に結果を出したい。 |
| 長田公子(府議・公明) | 地震、火災への対応は? |
| 京大 | 震度5弱で対策本部立ち上げ、6弱で自動参集。自主消防を持っていて、訓練している。 |
| 小川たか子 | 職員は近所に住んでいるか? |
| (原子炉対策民主団体協議会) | |
| 京大 | 周辺の2市1町が多い。官舎もそば。 |
| 今井豊(府議・自民) | 熊取近辺に未知の活断層は? |
| 京大 | 上町断層も問題になるかもしれないが、中央構造線が原子炉の真下まで来ているという話もある。中央構造線断層帯が原子炉の真下で動くマグニチュード7.8を対象として評価を行う。未知の活断層があったとしても、これより大きな影響は与えない。短いしゅう曲もあるため、どう扱うか検討中。 |
しゅう曲とは、横からの力が加わり、地層が曲がりくねるように変形する現象のことです。隆起や沈降を起こすため、原子炉にとっては非常に危険です。また、マグニチュード7.8を想定するということは評価できますが、中央構造線断層帯が真下まで来ているということであれば、このまま運転再開せずに廃炉にすべきなのではないでしょうか。
今年の原子炉問題審議会には、初めて「熊取アトムサイエンス構想」なるものが議題にあげられ、その骨子案が示されました。「熊取町に、公学民連携により、医療、産業、防災など国民生活に貢献する原子力科学の研究・教育・情報の拠点形成が期待」されるとして、
1.
粒子線・放射線の学際的研究や教育・情報発信に関する拠点的位置づけ
2. 人材育成の推進
3. 研究支援及び産学連携の促進
4.
原子力科学に関する普及教育・情報センター
を求められる機能としています。
このため、町、府、京大、産業界、関係省庁の有識者で検討・協議組織を立ち上げるとしています。
審議会では、推進を働きかけてきた熊取町長が「感慨深い」と賛意を示し、共産党の府議が「原子力アレルギーの払拭」という説明に「敵味方をつくる」と難色を示す発言を行いました。
原子炉実験所の生き残りをかけた構想が今後どうなるのか監視していきたいと思います。
2006年12月28日付で文部科学省に提出された燃料の低濃縮化に関する原子炉設置変更申請は、2008年2月22日に承認されました。承認に先立ち、原子力委員会及び原子力安全委員会への諮問、答申も行われています。今後、京大は燃料製造を行い、運転再開を目指すものと思われます。
しかし、2006年9月に改定された原発の耐震設計審査指針に基づくバックチェックはまだクリアしたわけではありません。
大学の持つ研究用原子炉の休廃止が相次いでいる。
川崎市にある武蔵工業大学の炉は八九年に冷却水漏れ事故をおこして以来、長期停止してきたが、今年五月に廃炉が決定した。横須賀市の立教大学炉も一昨年に運転を停止し、昨年九月に解体届が文部科学省に提出されている。京大炉とあわせてこれら三炉は、いずれも六一年から六四年にかけて運転を開始して約四十年。老朽化が進行しており、安全性の問題とともに、使い勝手からも廃止は当然とも言える。
経費のかかる原子炉を維持することは私大にとっては負担であったし、来春から独立行政法人に移行し自己責任を迫られる京大も事情は同じである。
休廃止の原因は、バックエンド問題によるところも大きい。米国製の高濃縮ウラン燃料を用いている研究炉は、核拡散防止の観点から使用済み燃料を米国に引取ってもらっている。〇六年三月までに使い切り、〇九年までに返還することが条件とされていて、使用済み燃料を独自で処分することができない以上、この期限を越えての運転は現実的に不可能なのだ。
しかし、休廃止しても問題が解決するわけではない。米国への使用済み燃料の輸送は、専用港を持つ原発と違い、港までの住宅密集地を抜けて行わなければならない。将来、解体撤去が考えられているが、放射性廃棄物の処分方法は決まっておらず、多額の費用がかかる。運転停止後の維持管理、安全性確保にも万全が尽くされなければならない。
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