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女の子の好きな人形のひとつであるバービー人形には、車いすのお友達がいる。名前を「ベッ
キー」という。ベッキーは、3種類の設定で作られている。@お友だちとのおしゃべりを楽しむ女 の子として(写真1)、Aスクールフォトグラファー(写真係として学校内の写真を撮っているうち に、腕をあげて学校での写真撮影をすべて任されるようになったことから、この名がついてい るようだ)として(写真2)、Bパラリンピックの金メダリスト(車いすマラソンに出場)として(写真 3)の顔をもつ。写真の腕もよければ、スポーツもできるとは、何とも芸達者である。 ![]() ![]() ![]()
子どもたちは人形遊びを通して、車いすの人形が他の人形とともにその場にいることをあた
り前のように感じ、車いすに親しみを感じていけるようになることは、まさに障害理解の最初の 段階で最もねらいとしていること(障害理解の第1段階:障害者が存在していることを知り、ファ ミリアリティを高めること)である。しかし、ただ人形を与えれば子どもたちが自然に車いすの人 形を好きになるわけでも、愛着をもてるようになるわけでもない。ここで、子どもたちにベッキー の人形を与えてどのように遊ぶかを観察した結果を紹介したい。
幼稚園の年長の女の子5人を1グループとして、グループに車いすのベッキー1体と障害のな
いバービー人形4体の計5体の人形とブラシやコップ、カバンなどの小道具を渡して、自由に 遊んでもらった。子どもたちは、最初のうちは、ものめずらしさから車いすに関心を示したが、 しばらくすると飽きてしまう(写真4)。それは、車いすの人形がどのような生活をしているのか が想像できないためである。そもそも人形遊びは、人形に自分を投影し、なりたい自分になっ てみたり、母親がすることをまねしてみたり、おしゃれをしてみたり、空想の世界を冒険してみ たりすることに楽しみがある。それは、その人形がどのようなことができるのか、どんな生活を しているのかについて想像できることによる。しかし、車いすの人の生活を子どもたちが思い 浮かべることはむずかしく、考えられるのは他者に車いすを押してもらっている姿である。それ だけでは、本来の人形遊びの楽しさを味わうことができず、子どもにとっては車いすの人形に 愛着をもって遊ぶことはできない。
しかし、人形で遊んでいた子どもたちに車いすの人がどのようなことができるのか、どのよう
な工夫をしたら自分と同じように生活できるのかを伝えたところ(写真5)、遊び方がまったく変 わるのである。車いすの人もおしゃれをしてデパートに行くという設定にしてみたり、食事を作っ て食べるまねをしてみたりするなど、人形遊び本来の楽しみを感じられるようになる(写真6)。 ![]() ![]() ![]() どの年齢の低い子どもの障害理解を深める上でとても有効な材料であるが、子どもにただそ のようなおもちゃを与えれば効果があるというわけではない。そのおもちゃに関連する障害に ついて、子どもが具体的にイメージできるように、ある程度の情報を大人が伝えていかなけれ ばならない。特に子どもたちの中には、障害のある人は何もできない、人に手伝ってもらわな いと生活できないと思い込んでいるケースが少なくない。そのため、「何もできない人」ではな く、「工夫をしながら自分たちと同じように生活している人」という認識がもてるように大人が介 入していく必要がある。
ただし、非常に残念なことに、車いすのベッキーは、限定商品のために生産が終了しており、
日本国内だけでなく、どの国に行っても手に入りづらい状況にある。ベッキーのようにおしゃれ でかわいい障害に関する人形がもっともっと出てこないかと願っているところである。ついで に、多くの子どもが手にすることができるように、求めやすい値段であってほしい。
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