01

★自己紹介

 プリント2枚配布。プリントの内容をゆっくり解説。プリントには書かなかったが話したことをいくつか下に記す。

 

*私の行動に「急ぐ」という言葉はない。

 ・遅れそうになったら走ればいい、というのは健常者の思い上がりといえるかもしれな  い。走れないものがいるということに思いを馳せてほしい。

 ・目の前で青になった信号しか渡らない。

 ・自分が急がなければならないような状況にならないように、自らをコントロールする。  授業にも5分前には準備室を出る。急ぐことの無いように。

  出勤する、人と会う、旅行する、などいろいろの局面で、私は1時間くらいの余裕を  見ながら行動する。

 ・待たされるのはいい。待たせるのは苦痛だ。

 ・数分でホームを変えて乗り換える列車を「接続」しているといわれても、それは無理だ。 ・集団で行動すると、健常者たちは常に「走ればいい」という留保を持って行動する。私  はそれにはついて行けない。危険で危険で仕方ない。

 ・物理的に「走れない」

 ・私が転べば、将棋倒しを起こす。故に、

*私は単独行動者である。

 ・電車のホームで降車した人の流れの中に巻き込まれるのは、極度の恐怖をもたらす。  みんなが行過ぎてから、最後尾をトボトボと一人行く、のが私の選択である。

  ドアを出た正面が階段だというような場所には乗らない。危険だから。

 ・親しい友人とでも、複数行動するのは嫌だ。自分の行動原則を守りきれないから。肉  体的な行動を越えて、これは、私の人生の哲学になった。私は単独行動者である。(オ  レはつるまない)

 ・私は独行する。

*障害があると世界の見え方が違う。ということは、「精神は身体に規定される」というこ  と。

*生物としてのヒトは、生物種としての歴史性、身体性から離れて自由な思考・思索が出  来るわけではない。

  自らを生物から解き放たれた「自由な存在」と思ってしまうという特権的思考にヒトは  陥りやすい。自覚的に自分を見つめていこう。

*私たちヒトは生物であり動物である。

 

 

 

 

 

02

★宇宙と生命

 プリント「宇宙と生命」配布。

 宇宙が生まれ、原子が生まれ、銀河が生まれた。

 物質とエネルギーが流れ、局在化し、流入し流出する「渦」という動的釣り合いの中に 銀河があり、星が生み出されていく

 星はその死に際して新たな元素を生み出していく。

 地球は宇宙初代の星ではない。

 星の死に際してばら撒かれた元素が再度集合したものである。

 われわれは星の子である。

 プリント:「生命の旅150億年」

 プリント:「地球と生命の起源」

 プリント:「宇宙の歴史光が解明」日経新聞

 プリント:新聞記事より。最も遠い銀河を観測。最遠128億光年の銀河。最古の銀河      を確認。宇宙 誕生12億年でもう「骨格」

 プリント:新聞記事より。「ひも」で解く宇宙のなぞ。スターが競演 輪廻転生劇。無      の揺らぎが有を生む。銀河でガス噴出、やがて星に。超新星の輪。銀河くっ      きり。

 未来において太陽が死ぬとき、再び宇宙に旅立つかもしれない。

 その間地球を作り、地表を循環する原子とエネルギーの流れの中に生命は誕生した。

 散逸過程:エネルギーの流入と流出の中に生じる「非平衡」の秩序、それが生命である。

 プリント:「生命と地球の歴史」「生命と地球の共進化」

 プリント:ベルナール渦。散逸構造。

 プリント:生命の誕生。真正細菌、古細菌、真核生物。地球上の元素を循環させながら      命を繋いできた。

 プリント:三つの超生物界

 プリント:「人間のアホウ」守る環境は鳥も人も同じ。

 プリント:宇宙と生命の歴史年表。

 プリント:地球一年暦。

 プリント:「生命のルーツはひとつなのか」日経サイエンス、2000年5月号より。

 プリント:生命の起源探る「化学進化」日経新聞より。(海底熱水孔)

 

 

 

 

 

 

 

 

03

★細胞 = 生命の単位

 図説参照:細胞の大きさ

 ここに接頭辞が出てくるので

 プリント:接頭辞。G、M、k、h、da、d、c、m、μ、n、(Å)など。

 ・細胞の発見:フック1665年「ミクログラフア」に発表。

  コルクの観察。通常死んだ細胞壁を観察した、といわれるが、実は生きた植物細胞も  観察していた。

 プリント:「ミクログラフィア」の復刻本のコピー3枚。フックの顕微鏡の原図がある。

  「Cell」という語の初出場所。細胞の大きさの見積もり。生きた植物細胞の観察。  「ジュースに満ちている」と表現している。

 ついでにプリント:有名な図版「ノミ」のエッチング。「これなんだか分かる?」とい  う問いかけに、猫や犬を飼っていてノミを知っている生徒もいるが、知らない生徒も  多い。私の昔話、子どもの頃ヒトノミに食われた話し。パンツのゴムのあたりに食い  込んでいて捕まえにくい。爪の間にはさんでつぶすと「プチッ」と音がする。畳をあ  げてDDTを撒いたものだ。など

 ついでにプリント:ミクログラフィアの図版から。アリ、ダニ、ハエ、ボウフラなど。

  ボウフラについても「なんだか分かるかい?」と問いかけると、知らない生徒も多い。

 ノミのついでにプリント:「ノミの跳躍力」日経サイエンスから。

  あらかじめ筋肉を引き伸ばしておき、バネとして使っている。

 

 細胞説:1838年シュライデンが植物について、1839年シュワンが動物について。

  「すべての生物体は細胞を単位につくられている」

 プリント:細胞説。ウイルヒョウは「あらゆる細胞は、細胞から生まれる」という生物  発生原則を唱える。”omnis cellula e cellula”

 プリント:フック、ブラウン、顕微鏡、細胞説。

 プリント:似顔絵、シュライデン、シュワン、フック、ゴルジ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

04

★幾何光学の基本(凸レンズについてのみ)

 プリントを用いて。

 代表光線

  作図の原則

   光軸に平行な光線は焦点へ向かう。

   焦点を通った光線は光軸に平行に。

   レンズ中心を通る光線は直進。

  ・物体が焦点の外側にあるときは「倒立実像」

  ・物体が焦点の内側にあるときは「正立虚像」

  ・天体望遠鏡、地上望遠鏡、顕微鏡の原理

 プリント:1/a + 1/b = 1/f :エクセルによるグラフ。

 プリント:顕微鏡の光学系の正確な図。光学顕微鏡の光線の挙動と電子顕微鏡の電子線      の挙動を並べて比較。

 波というものは、波長程度以下の物体は越えていってしまう。

 光も波である。およそ400nm〜700nm。10−7mの桁。1000倍に拡大す ると10−4m=0.1mmの桁。

 光学顕微鏡では、.約2000倍が限界。

 電子は粒子としても、波としてもふるまう。電子を高電圧で加速して光の代わりに使う、 これが電子顕微鏡。レンズはコイルでつくる磁界。テレビのブラウン管の根元を見たこ とはないか?電子銃があり、そこから出る電子線を走査線として画面上を走査するため のコイルがある。電子線が波としてふるまうとき、その波の波長は可視光に比べると非 常に短い。そこで倍率が上がる。

 加速電圧1500キロボルト、分解能1〜2オングストローム(10−10m)、乾板上の  倍率30万倍に達する。(マイペディア)

 真空中なので生きたままでは観察できない「生きたイカではなくスルメをみているので はないか?」

 電子線があたると、生体組織は変性する。「焼いたスルメのコゲを見ているのではない か?」

 電子顕微鏡で観察するときは何を見ているのかを常に意識しなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

05

★細胞の構造

 プリントの空欄を埋めながらストーリー的に進める。

 ・細胞は生きた個体であって、外界と内部を仕切って独立して「生きる」。

  細胞膜 = 仕切り:固定的な膜ではなく、物質を内外でやり取りできる膜。

  せっけんという分子は一つの分子中に「水になじむ」(親水性)部分と「水をはじく」  (疎水性)部分がある。そのため、水と油のような性質の異なる物質の「境い目」で  働く。これを界面活性剤という。

  油脂を分散させる:洗濯、マヨネーズ・・・(油と水の境い目で働いている)。

  シャボン玉は水の膜。水と空気の境い目にせっけん分子が並んで膜を安定化する。そ  の結果、薄い水層をはさんでせっけん分子の二重膜ができている

  ・細胞膜を作るのは「リン脂質」という界面活性作用のある分子。疎水性の部分が二  本足になっていることがせっけん分子とは違っているが。

  そのリン脂質分子でできた「脂質二重膜」が細胞膜の基本構造である。

 

 ・核:「遺伝情報」を収めた領域。

  生物が親から子へ代々伝えていく、「遺伝情報の総体」の1セットを「ゲノム」とい  う。このごろよく聞くね。ゲノムがそのまま「遺伝子」であるとはいえないようだ。  遺伝子と言うのはたんぱく質をつくるための情報などが記された部分であって、具体  的な働きをもつ部分のことなのだが、ゲノムの中には、どういう働きをしているのか  分からない部分や、進化上で必要だったのかもしれないが今は使っていない部分など  も多くあるようだね。

  動植物などの個体では、両方の親から1セットずつもらって、2セットを持っている  のが普通。生殖のために、生殖細胞で1セットに減らして、受精によって2セットに  復活させる。

  ゲノムは具体的には細胞分裂のときによく見えるようになる「染色体」という構造の  中にある。染色体の数は生物によってそれぞれ異なっている。ゲノムという1セット  が何本の染色体で構成されるかわからないので普通「n」で表現する。

   ・・・ 親の個体 → 親の生殖細胞 → 子の個体 ・・・

   ・・・  2n  →    n   →  2n  ・・・

  「ヒトゲノム解析完了」という話を聞いたことがあるだろうか。ヒトのゲノムは化学  分子の30億もの並びで構成されている。その中で、遺伝子として働くのはおそらく  約3万2千個ということになったようだ。この遺伝子の数は他の動植物と比べて、と  ても多い、とはいえない数である。「人間は生物界で最も優れた生物なのだから、他  の生物に比べて遺伝子は圧倒的に多いに違いない」と信じられてきたのだが、そうで  もないようだ。(あんまり思い上がらないほうがよさそうだね。ヒトとチンパンジー  の遺伝子の差は1%くらいとかも言われています。ヒトがヒトになるにはどのような  変化があったのでしょうね。)

  ところでその3万くらいの遺伝子から作られるたんぱく質は10万(あるいは20万)  種とも言われるのだけれど。エッ?どうやってつくるんだろう?

  ゲノムを「読む」ことはできたが、遺伝情報の働きの全体像はまだまだわからないこ  とだらけ。むしろ分からないことは増えていくというべきだろうね。

  全ての生物で、この大事な遺伝情報はDNAという化学物質でできているのだが、こ  れをそのまま使って傷がついたりしたら大変だ。使うときはコピーを取って使う。核  の中でコピーを取る。コピーにはmRNAと言う名がついているが今はくわしくは説  明しない。mはmessengerのm。伝令RNAと訳されているが、要はDNA  のコピーです。

  このコピーを外に運び出したり、核に必要なたんぱく質などを運び込むために「核   (膜)孔」がある。

 プリント:核膜孔について。単なる孔ではないのです。機能的な孔であって選択的にし  かものを通さない。凄い仕組みだ。

  このmRNAという遺伝子のコピーからたんぱく質をつくるにはリボソームというタ  ンパク質合成装置が必要なのだが、リボソームはRNAとたんぱく質の複合体なので  す。このリボソーム用のRNA(rRNA)をさかんに作っているのが「核小体」と  いう構造で、これは光学顕微鏡でも見える。

 

 ・リボソーム:これが上でも言った、たんぱく質製造装置。

  浮遊しているリボソームは、細胞内で使うたんぱく質をもっぱらつくる。

  小胞体にくっついたリボソームは、分泌などに関わるたんぱく質をつくっている。

  小胞体の表面にくっついてたんぱく質を小胞体の中へ作りこんでいく。

 ・ゴルジ体へ輸送

  ゴルジ体では作りたてのたんぱく質を整えたり、糖などで修飾したりする。

  つくりたてのたんぱく質は本来の形をしていないこともある。そこで、ちゃんとした  働きができるよう形を整えてやるたんぱく質などというものもある。社交界にデビュ  ーするお嬢さんの介添えをシャペロンというのだそうだが、それになぞらえて「分子  シャペロン」という。

  ゴルジ体 → 細胞膜へ。分泌、細胞膜の補充。

  ゴルジ体 → リソソームへ。消化酵素。

 

 ・リソソーム:外界からの物質の取り込み。消化。

 

 ・ミトコンドリア:細胞のエネルギー工場。

  ミトコンドリアはダイナミックに活動する装置。

  蚕の繭、俵のような一定の形で孤立したものではなく、ネットワークを構築している。 プリント:ミトコンドリアの電子顕微鏡写真

 プリント:「ミトコンドリア・ミステリー」「ミトコンドリアの謎」

 ・葉緑体:光合成装置。植物のみ。

 ・中心体:分裂装置の起点。動物のみ。

 ・液胞:植物によく発達。

★細胞の構造(まとめ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

06

★細胞を構成する元素

 CHONPS(チョンプス)と覚えてください。もちろんこれは主要元素。生物は他にもいろいろな元素を使っていますが、メインはこの6つです。

 

★有機化学の基本の基本

 有機化合物:生物を作っている物質で、「生命力」の介在によって作られる物質と考えられていました。従って生命体にしか作れない、人間には作れない物質だと考えられていて、有機体(organism)にしか作れない物質ということでorganic compound(有機物)と呼ばれたわけです。

 ところが、ドイツの化学者、ウェーラー(フリードリッヒ・ウェーラー、1800〜1882)は1828年、水溶液中でシアン酸アンモニウムを熱すると尿素に変化することを発見し、生体外でも有機化合物を合成できることを示したのです。この業績でウェーラーは「有機化学の父」と呼ばれています。

 現在は、有機化学は、炭素化合物の総称ということになっています。ただし、一酸化炭素や二酸化炭素などの炭素数の少ない化合物は除いて考えます。

 

さて「有機化学」です。

★炭素は原子番号6ですね、ということは陽子が6個あり、電子も6個あるわけです。この6個の電子のうち2個はK殻に入り、残り4個がL殻に入るわけです。(最外殻電子が4個)

 最外殻には8個の電子が入れるわけですが、4個の電子ということになると、4個を失って陽イオンになったり、逆に4個を得て陰イオンになったりすることはむずかしいのです。そこで、4個の電子一つ一つが他の原子からの電子と共有結合をつくって、計4対の共有結合を作ることが炭素の基本的な結合の様式です。

 4個の電子がそれぞれ空間的に対等であるときには、原子核を重心とする正四面体の頂点方向にそれぞれの電子が分布する配置になります。

 そこで、それぞれが水素(H)と共有結合を作った場合、CH4 という正四面体型分子ができます。これがメタン(CH4)という物質です。東京ガスが供給する「天然ガス」は約90%がメタンですから、毎日メタンのお世話になっているのですね。今度台所でメタンの燃焼を観察してください。

プリント:東京ガスのパンフレットから。LNG(液化天然ガス)の特徴。

 

さて、炭素同士も共有結合を作れるので、そのために鎖状に長くつながった分子を作ることが可能です。これは他の元素にはない炭素特有の性質です。

 炭素の個数を頭につけて書くと、

1:メタン、2:エタン、3:プロパン、4:ブタン、5:ペンタン、6:ヘキサン、

7:ヘプタン、8:オクタン、9:ノナン、10:デカンとなります。

プロパンガスも燃料用ガスとして使いますね。使い捨てライターのなかでチャポチャポしている液体はブタンが主成分です。ガソリンの「オクタン価」というのはもちろんこのオクタンと関係があるのですが、ま、調べてみてください。エンジンのノッキングのしやすさの目安になる数値です。

 英語には数を表す「数詞」というものがあるので、これを知っていると何かと便利ですので、プリントを見てください。日本語では、ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ、むぅ、なな、やぁ、ここ、とお、という数詞がありますね、知ってるよねぇ。

 プリント:数詞。mono,di,tri,tetra,penta,hexa,

      hepta,octa,nona,deca、uni,oligo,

      poly

 プリント:「数4と5の谷間」

 炭素同士の共有結合が単結合だけのグループを「アルカン」(パラフィン系炭化水素)といます。二重結合が入った場合「アルケン」、三重結合が入った場合「アルキン」といいますが、差し当たって、二重結合・三重結合というものがあるということだけ思い出しておいてくれればいいでしょう。

 プリント:単結合・二重結合・三重結合のイラスト。

 プリント:アルカンの名称と融点・沸点。EPAとかDHAの話。グラフ。

 プリント:炭化水素骨格の一覧表。

 

 炭素と水素でできた部分を「骨格」としましょう。

アルカンなどは鎖状の骨格です。(枝分かれなどもありますけどね。)その他、炭素が輪になった骨格の環状化合物(シクロヘキサン、シクロペンタンなど。シクロはcyclo,輪のことです)。炭素6個が正六角形に輪をなしているベンゼンを基本とする芳香族化合物というのもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

07

★さて、骨格にくっついて、骨格の持つ性質にさらに「独特の性質を与えるグループ」というものがあります。性質・機能を与えるグループということで、Functional group といいます。これを訳して「官能基」というのですが、今の日本語では「官能」というのは、あんまりいいイメージの言葉ではなくなってしまいましたね。

 広辞苑を引くと

かん‐のう(官能)@感覚器官の機能。また、一般に生物諸器官のはたらき。A俗に「感覚」「感官」と同意に用い、特に性的感覚をいう。「―を刺激する」

 今はAの意味のほうが強くなってしまいましたね。でも、@の意味も使われているのですよ。たとえば、食品会社で新しい食品を開発したとしましょう。社員や、社外のモニターに依頼して、歯ごたえ、噛み心地、香りの具合、味の具合など、実際に食べてもらって食感を報告してもらうのですが、これを「官能テスト」といいます、@の意味ですね。

 官能基よりも今は機能基とでも訳したほうが良いのではないでしょうか。電卓の「ファンクション・キー」は一つのキーに複数の「機能」を割り付けるためのものですね。数学で「関数」というものを勉強したでしょ。ある入力に対して一定の出力を返す、数学的な「働き=機能」のことですね。f(x)=x なら、入力を二乗した値を返すのですし、f(x)=2x なら入力を2倍した値を返すのですね。中国ではfunctionという英語を音写して「函数」という漢字を当てたのだそうです。今の日本では「函」という字が使えないので「関数」になったのです。

 function は 働き、機能のことです。

 

では、化学物質の性質における「働き」とは何でしょう?

 

−OH、−CHO、−COOH、−NH などが基本的な官能基ですのでこれくらいは知っておいてください・

 

1:−OH:ヒドロキシル基といいます。hydrogenとoxygenからできているからですね。−OHがくっつくと、骨組みが何であっても「アルコール」という物質群になります。骨格によって少しずつ差はありますが、−OHは親水性が強いとか、−OHは独特の化学反応をするとか、−OHはアルコールという共通の性質を与えるのです。

 CHOHはメタノール。COHはエタノール。どちらもよく水に溶け、火をつけるとよく燃え、後で説明しますが酸化されやすいなど、共通の性質をもちます。でも、メタノールは有毒、飲んだら失明したり死にます。エタノールはお酒の成分。大量に飲めば中毒死しますが(一気飲みで死ぬ人が絶えないね)、適量なら酔います。

 プリント:メタノール混入の酒。「メチル柿事件」など。

 

2:−CHO:アルデヒド基といいます。「アルコールからヒドロジェンを「デ」した物質」という命名です。「デ」とは「取り去る」ということを意味しています。つまりアルコールから水素を取り去った物質という意味ですね。

  ホルムアルデヒド(HCHO):メタノールから水素を取り去った物質です。これは毒物。ホルムアルデヒドの水溶液をホルマリンといいます。動物のホルマリン漬け標本というのはホルマリンの毒性で標本が腐らないのですね。子どものころ採集した昆虫の胸のところへホルマリンを注射して殺したものです。ホルムアルデヒドが防腐剤、建材などから発散して、シックハウス症候群、シックスクール症候群、化学物質過敏症を起こすとか、アレルギー、アトピー、ぜんそくなどを悪化させるというようなことをこのごろ良く聞きますよね。

  アセトアルデヒド(CHCHO):お酒を飲んだときに先ず生じる物質です。飲んですぐ赤くなったりドキドキしたりするのはアセトアルデヒドのせい。二日酔いの原因物質でもあります。二日酔いのオジサンの吐く息が臭いのはこのせい。熟柿臭というんだけれど、熟しすぎた柿なんて知らないかもねぇ。毒物には違いない。

 

3:−COOH:カルボキシル基といいます。carbonとoxygenからできているということでしょう。このグループついた物質群をカルボン酸といいます。有機物の世界で「酸」といったらまずこのカルボン酸です。

  ギ(蟻)酸(HCOOH):アリ蟻を集めて「蒸留」すると抽出できるらしい。子どもの頃、アリを指先の皮膚の厚いところへ食いつかせて遊んだことありませんか?(反応ないなぁ)。アリがお尻から噴射する臭い液体の成分。ヒトのようなでかい生物には効き目はなくてただ臭いだけだけれど、同程度の大きさの昆虫たちには強い毒ガスとして働きます。パタっと倒れたりするよ。

  酢酸(CHCOOH):食酢の成分だけれど、純粋な酢酸は危険です。皮膚につくと炎症を起こしたりしますよ。酸っぱいのは水素イオンの味。

  n−酪酸(らくさん)CH(CH)COOH: 牛乳の腐ったにおいというのだが、牛乳を腐らせたことのある人はいないだろうな。(私は生徒のいたずらのおかげで牛乳が腐った事件と言うのを経験したことがあるよ。)「酪」というのは牛や羊の乳に関係する言葉だからね、バターやチーズにもわずかな臭みがあるはず、その匂いでもある。銀杏(ぎんなん)のにおいに近いといってもいいかな。

  i−吉草酸(イソきっそうさん)CH(CH)COOH:汗臭さのもと。蒸れた靴、蒸れたTシャツ・・・などを想像してみてください。昔、i−吉草酸を使った実験をやったあと、同僚の独身教師が家に帰ったら母親に「あんたまた靴下かえてないんでしょっ!!早く脱ぎなさい!!」と叱られたそうです。汗でぬれたジャージをロッカーに入れたまま夏休みに入って、9月、扉を開けたら臭気でノックアウト、なんてのは願い下げだ。

 

4:−NH:アミノ基といいます。アミノ酸はこのアミノ基とカルボン酸が一つの分子の中にあるので「アミノ・酸」。くわしくは後ほど。有機物で塩基性を示す、つまり、水素イオンを受け取れるというと、まずはこの「アミノ基」です。

 

 

 

 

08

★前回の授業で、「酢酸というのは色素の酢酸カーミンにでてくる酢酸と同じですか?」という質問がありましたので調べてみました。ついでに、ホルマリンについて最近見かけた新聞記事も載せておきました。

 

プリント:アセトカーミン、カーミン、ボラックスカーミン、「養殖ふぐにホルマリン」

 酢酸カーミンというのはこれから勉強するけれど、細胞の核・染色体の染色に使うので有名なのですが、カーミンという色素を、45%というかなり濃い酢酸に溶かしたものです。

 ここまでは知識として知っていたのですがね、カーミンが「サボテンに寄生するエンジムシから採取精製された赤色色素」というのを見て、私の頭の中で「カチッ」と音がしましたね。「これはコチニールじゃないか!」とね。食品添加物の授業をしたときに、コチニールについては結構勉強したのですよ、大分昔ですがね。コチニール色素というのは天然着色料として食品添加物として使用されています。夏のアイスでピンクのものがあったら多分コチニール。成分表示を読んでみてください。当時のプリントもあるんですが今回はインターネットで調べた結果をプリントにまとめましたので、読んでみてください。

 

プリント:コチニール色素について、2枚。昆虫の色素ということで嫌われがちですが、まあ昆虫由来だからどうのこうのということはありません。由来の問題ではなく、その物質としての性質を議論すべきです。「植物由来は優しい」なんて思わないでくださいよ。植物毒はシビアですよ。日本でもカイガラムシはいるんでして、つぶすと指先が赤くなったりしますから、赤い色素は持っているんでしょうね。

プリント:赤い色の歴史 染料昆虫コチニール(3枚)

 コチニール色素の主色素がカルミン酸だったとはね。コチニールとカーミンとそれぞれ別に知っていたのですが、それが頭の中で「ああそうだったのか」と一体化しました。この「ああそうだったのか」という知的快感が理系人間の特権的喜びとでもいましょうかね、好奇心を原動力にして、知的探求を続けてきて、「ああそうだったのか」に出会ったときは何ともいえないですねぇ。今回のは、巨大な喜びとまではいえないけど、実に楽しかった、質問してくれてありがとう!。

 さて、今日の本題です。

★有機物における酸化還元反応

 諸君は1年生のときに酸化還元反応について、化学の授業で学んでいますので、おさらいをしておくことにしましょう。酸化・還元の定義には3つのレベルがあります。

 

         酸化

 A                  A

    @ O  A H  B e

 B                  B

         還元

1:酸素のやりとり:これがもともとの酸化還元の意味です。金属が酸素と結びついて酸  化され酸化物となる。酸化物は炭や水素に酸素を奪われてもとの金属に戻る。「元に  還る」ので還元ですね。

2:水素のやりとり:これが有機化学では大事。生物の体内で行われるエネルギー獲得反  応も「水素を奪うという酸化」(脱水素)で行われます。水素を奪われることが酸化、  水素と結合することが還元、です。

3:電子のやりとり

  酸素原子を得るということは、自分がその酸素原子に電子を奪われてしまうこととほ  ぼ同じです。このとき酸素原子の方は電子を得て酸化物イオンになっています。

  逆に、水素原子を得るということは、自分がその水素原子から電子を与えられるとい  うこととほぼ同じです。水素原子の方は電子を失って水素イオンになっています。

  これを統一するのが、電子のやりとりによる酸化還元の定義です、電子を失うことが  酸化。電子を得ることが還元です。(電池というのは酸化還元反応の際の電子のやり  とりを電流として取り出すのでしたね。思い出しておいてください。また電気分解も  電流を流すという形で、電子を押し付けたり電子を奪い取ったりして物質の変化を引  き起こすのでした。)(電子の授受がはっきりしない場合でも酸化数という概念を使  うと酸化還元の判定ができるのでした。これは有機化学のほうではあまり使わないの  で今回は省略しておきます。)

 

 生物で扱う物質変化は大きくな意味で有機化学に属します。有機化学では水素の授受による酸化還元がわかるようになってください。具体例で話しましょう。

 お酒を飲んだときにおきる変化を考えてみます。お酒の成分のエタノールに注目するとこんな変化が起きています。

 エタノール  →  アセトアルデヒド  →  酢酸  →  二酸化炭素+水

       酸化          酸化    酸化

       脱水素         脱水素

 飲酒するとまず、アルコール脱水素酵素というものがエタノールに作用してアセトアルデヒドを生じます。

     COH → CHCHO + 2H

次に、アルデヒド脱水素酵素が働いて酢酸が生じます。

     CHCHO + HO → CHCOOH + 2H

酢酸はさらに酸化され、最終的には二酸化炭素と水になります。

 

 エタノールは少量なら健康にもよいらしいが、多量に飲めば急性中毒を起こすし、長年飲みつづければ肝臓に負担がかかって異常を生じる。毒性のあるエタノールをまず分解するべく肝臓は働きその際エネルギーが発生するので、他の炭水化物や脂肪などは貯えにまわされがち、太るよ。(酸化の話ではないのだが、酒にまつわ話を二つ。いびきをかく傾向のある人がお酒を飲むと、のどや舌を支える筋肉がゆるんでしまって、舌の根がのどに落ち込んで激しいいびきをかいたり、睡眠時無呼吸症候群というやつをおこしやすい。またアルコールは睡眠中の脳を興奮させてしまうのでね、脈拍が上がり、眠りを浅くする作用があるのですよ。寝る前に一杯きゅっとあおってぐっすり寝よう、というのはダメ。かえって睡眠の質が劣化しますよ。気分的には心理的なストレスが和らぐかもしれないので、まったくダメとも言い切れないが、不眠症対策にナイトキャップを、というのはやめておいたほうがいいな。)

 

 一般化すると、

   アルコール →(酸化)→ アルデヒド →(酸化)→ カルボン酸

 

 もし、「アルコール」だからといってメタノール(メチルアルコールともいう)を飲むと、体内で同じように酸化の経路にのることになる。するとどうなるだろう?

 メタノール →(酸化)→ ホルムアルデヒド →(酸化)→ ギ酸

という変化をたどることになる。その結果、ホルムアルデヒドやギ酸の毒性で、失明したり、死亡することになる。

 

プリント:エタノールの代謝、酔いの毒性学、メタノール中毒、メタノールの毒性

プリント:メタノールの代謝、なぜ失明するか。

プリント:動物はどうやって「明るい」「暗い」を見分けるのだろう、カロチンとビタミンA

 網膜で光を見るためにはレチナールというアルデヒド型の分子(視物質)が必要なのです。ビタミンAを二つに切るとレチノールというアルコール型の分子が生成し、このレチノールというアルコールを酸化してレチナールにするために、眼にはアルコール脱水素酵素が豊富にあるわけです。そのためにメタノールを飲んだときも眼でホルムアルデヒドが生成してしまい、死なないまでも失明することがあるわけです。

 前に配布したプリントに「メチル柿事件」というのがありました。私の幼いころの事件でかすかに記憶があります。渋柿の渋抜きに焼酎をつかうのはごく普通のことなのですがね、戦後のもののない時期、「アルコールなら同じだろう」だったのかなぁ、安い工業用メタノールで渋抜きをやったわけだ。で、その柿を食べた人が死んだりしたのです。

 レモンやローズの香料分子の間に、酸化と還元で結ばれた面白い相互関係がありますので、プリントを見ておいてください。

プリント:香料

 ゲラニオール(バラの香り) →(酸化)→ シトネラール(レモンの香り)

              ←(還元)←

 

 ゲラニオールの二重結合 →水素添加(還元)→ シトロネロール(バラの香り)→(酸化)→シトロネラール(シトラス様香気)

 

アルデヒドは刺激臭があったりするのですが、香水の香りに甘い香りだけだとべたーっとした香りになってしまうので、アルデヒドの刺激臭をわずかに加えて、きりっと引き立った香りを作ったりもするようですよ。自分で調合する香水セットなどもあります、覗いてみてください。

 

09

★細胞を作る物質

 ・宇宙では水素が圧倒的

 ・地殻はケイ素(Si)とアルミニウム(Al)の酸化物が主体

 ・生物では水(HO)、たんぱく質(CHNOS)、ATPやDNA、骨でリン(P)

  ということでCHONPSを覚えてください。

プリント:生元素と有毒元素

 

★たんぱく質:20種類のアミノ酸から作られる

 まず、アミノ酸。

R−CH−NH  Rのところは何が来るか分からないので文字で代表させておく

   COOH

一つの炭素原子にアミノ基とカルボキシル基がついているのがアミノ酸。20種類あるが人間はそのうち7種類を自分で作れなくなってしまったので、食物から取り入れなければならない。これが必須アミノ酸。

 二つのアミノ酸のアミノ基とカルボキシル基から水が抜けて(脱水)縮合してアミノ酸がつながると、ジペプチドといい、このときの−CO−NH−というつながりを、ペプチド結合(化学ではアミド結合)という)。

 さらに、アミノ酸が数個から十数個ペプチド結合でつながったものをオリゴペプチド(オリゴ=少)という。(百個以内というような人もいるけどね)。(オリゴ糖という言葉も思い出しておこう。糖の単位が数個から十数個つながった水に可溶だが消化できない食物繊維、飴なんかの成分表示を読んでみよう、多分出てくるよ)。

 このオリゴペプチドにも生物の体内で働きを持つものがあって、「生理活性」をもつ、という。ペプチド型のホルモンもあるね。

 さらにさらにつながって。いっぱい(poly)つながったのがポリペプチド = たんぱく質、なのです。

 カイコの吐く絹はたんぱく質です。中心部がフィブロインというグリシン・アラニン・チロシンが多いたんぱく質で、その外側をセリシンというセリンが多いたんぱく質が覆っています。とても優れた繊維なので、これを人工的にまねて作ったのがナイロン。ポリアミド繊維といいます。引っ張りや破断にとてつもなく強いケブラーや耐火温度が高いノーメックスもポリアミド繊維です。

 ところで、遺伝情報の総体としてのゲノムの中に、具体的な遺伝子があるわけですが、遺伝子の内容というのは、実はたんぱく質をつくるためのアミノ酸の並びを書き記してあるのです。コピーを取って、核外へ運び出して、リボソームがくっついて、そこに書かれた情報どおりにアミノ酸を繋いでいくとたんぱく質ができるわけです。

 一次構造:この一列の並び(アミノ酸配列といます)。

 二次構造:水素結合によって形成されるたんぱく質の部分的な規則的繰り返し構造

      αラセン(α helix)、βシート構造などです。

 三次構造:たんぱく質がさらに三次元的に折りたたまれてつくる特有の立体構造。

 四次構造:複数のたんぱく質(あるいはポリペプチド)が組み合わさって一つのたんぱく質ではできない機能を発揮することがある。ここのポリペプチドをサブユニットという。

例:ヘモグロビン:αサブユニット2個とβサブユニット2個からなっている。

 たんぱく質では「形」が大事。高熱にさらされたりして、たんぱく質が変性したときに、形を元に戻すたんぱく質がある。HSP(ヒート・ショック・プロテイン)という。

 このたんぱく質は、普通のときでも、作りたてのたんぱく質の形を整える仕事をしているらしい。社交界にデビューする若い女性を介添えする「シャペロン」になぞらえて「分子シャペロン」という。

 

プリント:たんぱく質のまとめ

プリント:αラセン、βシート、たんぱく質の形

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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生徒実験:裏返しのシャボン玉

プリント:裏返しのシャボン玉に従って

 細胞膜のモデルになっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★糖

 「炭水化物」とも。C12 はC(H) のように見えるので、炭「水化」物。

・定義しようとするとやっかいなのですが・・・

 鎖状の構造をとっているときアルデヒド基(−CHO)(もしくはケトン基(C=O)) とヒドロキシル基(アルコール(−OH))を持つ物質です。

・炭素数が3なら三炭糖:例:グリセルアルデヒド、一番簡単な糖。

 4なら四炭糖:例:エリトロース。これを還元するとアルコールになって、エリトリト ール。(糖アルコールと呼びます)清涼飲料水の 甘味料に使われてます。成分表示を よく読もう。

 5なら五炭糖:例:キシロース。これを還元すると、キシリトール。虫歯になりにくい 甘味料ということで有名ですね。

 例:リボース・デオキシリボース。これはDNA・RNAの成分として重要。

 6なら六炭糖:例:グルコースなど。生物の直接のエネルギー源として重要。

・糖の名前の語尾は「オース」

 

プリント:炭水化物を見ながら。

単糖:グルコース、フルクトース、ガラクトース:い分子式はずれもC12。分子   式が同じで異なる物質であるものを「異性体」といいます。

・グルコース(ブドウ糖):生物が利用する主なエネルギー源。六員環や鎖状の構造で存在。

・フルクトース(果糖):最も甘い糖。六員環、五員環、鎖状の構造で存在。

・ガラクトース

 

二糖:単糖ユニット二つが双方のヒドロキシル基からの脱水で結びついた糖。

・スクロース(ショ糖、砂糖)。グルコース + フルクトース。

  花蜜(スクロース)が蜂の消化酵素で分解されるとグルコースとフルクトースの混合物  になり、甘味が強くなる。これが「蜂蜜」です。

プリント:「はちみつをつくってみよう」を参照。ショ糖を酸と共に熱しても加水分解し     て、グルコースとフルクトースに分解します。

  でんぷんをグルコースに分解して、グルコースをフルクトースに転換する酵素を働か  せると「ブドウ糖果糖液糖」ができます。清涼飲料水の成分表示を必ず読もうね。必ず  出ています。ブドウ糖が多ければブドウ糖果糖液糖、果糖が多ければ果糖ブドウ糖液  糖です。

同じプリント:果糖ブドウ糖液糖について。参照。

  このごろ砂糖が「迫害」されているようで悲しい。真っ白なものは「漂白されて」い  て「自然」じゃないとか、色つきのほうが「自然」に近い、とか思ってらっしゃる方  がいるのでしょうかね?それはまるっきりの冤罪だよ。砂糖の白いのは、純度の高い  無色透明な結晶が細かくなっているから。漂白なんかするわけないでしょが、まった  くもう。カロリー関係でも、砂糖が悪いわけじゃない、おいしさに負けて、食べ過ぎ  る人間が悪いのです。砂糖からミネラルを取ろうなんて思わないほうがいいよ。ミネ  ラルはまた別のもので取ればいいじゃないの。このあたりのことは

プリント:砂糖について

プリント:すぐに役立つ「砂糖」の基礎知識。参照。

 

・マルトース(麦芽糖):グルコース + グルコース

  でんぷんをマルターゼという酵素で分解すると、二個ずつに切るのでマルトースがで  きます。麦芽の酵素で分解してできる、ということからの名前でしょう。

プリント:「ふしぎからはじまるサイエンス」参照。

  でんぷんをマルトースに分解して煮詰めたのが水飴です。甘味は砂糖の飴よりも弱い  ですね。江戸時代の絵にも市中で飴を売り歩く飴売りの姿がありますが、今の飴より  は甘くなかったことでしょう。それでも砂糖は高価な貴重品だったと思われるので、  すごく甘く感じたと思うよ。

・ラクトース(乳糖):グルコース + ガラクトース

  哺乳類の母乳に含まれる糖。赤ちゃんは当然これを消化できるが、日本人などは大人  になると分解する酵素を失う。「乳糖不耐性」といって、牛乳を飲むと下痢をしたりす  る人がいるでしょ、あれです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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オリゴ糖(少糖):単糖が数個から十数個つながった糖。甘味は弱いが、消化されにくく、腸内細菌の栄養になるものもあり、水溶性の食物繊維などとして飲料や菓子などに利用されています。「大量に摂取すると下痢を起こすことがある」などと表示されているはずですよ、何せ消化されないものだからね。繰り返し言いますが、食品の成分表示をよく読もうね。いろいろと面白い情報が載っているんですよ。

 

多糖:でんぷん、グリコーゲン、セルロースなど。(ペクチン、キチン、ヒアルロン酸、マンナンなども多糖の仲間です)

 

・でんぷん:グルコースの多糖

 単糖や二糖のところではあまり問題にならないのでいいませんでしたが、グルコースにはα型とβ型とがあるのです。(プリント参照)水溶液中で鎖型を介して行き来しています。輪が鎖型に切れたときに端っこがくるっと回って反転して、また輪になるということをしているわけですね。多糖に結びつくときにはこの違いが重要になります。

 アミロース:α型のグルコースの多糖で、ラセン構造になります。このラセン構造の中にヨウ素分子を巻き込んだ複合体は青紫色に発色します。これが「ヨウ素でんぷん反応」というやつですね。とても敏感な反応で、微量のヨウ素の検出にでんぷんを使ったり、微量のでんぷんの検出にヨウ素が使えます。こういうのを相互検出反応といいます。アミロースの鎖が短くなると、色は赤っぽくなります。

 アミロペクチン:枝分かれが多い。グルコースの輪から−CHOHというのが立ち上がってますね。ここのOHのところから枝がでます。家庭科で学んだと思うけれど、アミロペクチンがほぼ100%の米をモチ米といい、アミロースが20%程度含まれる米が、うるち米というのですね。アミロース含量が多いと、パサついた米になるといいます。(インディカ米というのかな)

 

・グリコーゲン:肝臓や筋肉に多く含まれる「貯蔵用の燃料」です。グルコースを貯蔵するのに、グルコースのまま貯えたのでは細胞が「砂糖漬け」になってしまいます。(いずれ浸透圧の勉強をしますが、浸透圧というものは分子の個数で決まるものなのです。)多数のグルコースをためこんだのでは浸透圧が高くなってしまいますが、グルコースをつないで、分子量は大きいけれど分子の個数は少ないという形で貯蔵すれば浸透圧の問題を回避できるのです。また、貯蔵用なのですから、必要なときにすぐそこからグルコースが取り出せなければなりません。そこで、極度に枝分かれの多い形でグルコースをつなぐのです。「端っこ」が多く生じているので、必要が生じたときは外側から多数の酵素が同時にグルコースを切り離していけばよいわけですね。

 

・セルロース:β型のグルコースが裏表になってつながっていきます。その結果でんぷんとは違って直鎖状の長い分子になります。植物の細胞壁など、植物における主な構造体となります。人間はセルロースを木材や紙、木綿・麻などの繊維として利用してきました。

 普通の動物はセルロースを分解する酵素(セルラーゼ)を持っていません。シロアリは腸管内に寄生している微生物がセルロースを分解してくれるので木材が利用できます。ウシなどの反芻動物は胃にセルラーゼを分泌するバクテリアなどを持っているのですね。このバクテリアは植物食動物にとって動物性の食料としても働くのです。動物を殺すのが嫌だといって、植物食にこだわるベジタリアンという方々もいらっしゃいますが、たんぱく質の摂取には工夫が要りますよ、なにせヒトという生物の胃や腸内にはセルロースを分解してくれる菌はいませんからね。

 

プリント:α−グルコースとβ−グルコース、でんぷんのラセン構造、ヨウ素でんぷん反     応

ピリンと:でんぷんとグリコーゲンは貯蔵用燃料である、セルロースとキチン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★脂質

 「油脂」はグリセリンと脂肪酸のエステルです。(「油」は液状のあぶら。「さんずい」がありますもの。植物のあぶらでしょう。「脂」は動物のあぶら。常温で固体が多い。生物は自分が生きて活動する温度で液体のあぶらを使うわけです。植物は常温で液体でないと使えません。哺乳類は体温が高いですから体温レベルで液体ならいいわけで、常温にすると固まっちゃうんですね。)

 さて、細かく見ていきましょう。

まず、グリセリンは3価のアルコール。一つの分子の中にアルコールのOHが3つあるのです。脂肪酸は炭素が十数個もつながった鎖状の分子の端っこにCOOHがついてカルボン酸になっている分子です。そして、アルコールとカルボン酸から水がとれて二つの分子がくっつくことをエステル結合というのです。

  R−COOOH + HO−R’ → R−COO−R’ + H

   カルボン酸   アルコール      エステル

                    「−COO−」この結合が、エステル結合。

 

 HC−OH    HOOC−R      HC−OOC−R

  HC−OH  + HOOC−R2      HC−OOC−R2  +3H

 HC−OH    HOOC−R      HC−OOC−R

 グリセリン     脂肪酸          エステルとしての油脂

 

・この反応を右へ進むのを「エステル化」、逆に左に進むのを「ケン化」といいます。

・植物油は二重結合が多く、常温で液体のものが多い。(サラダ油、天ぷら油)

・動物の脂は二重結合が少なくて、常温で固体のものが多い。(ラード、ヘット)

・植物油の二重結合に水素を反応させて二重結合を減らし(水素添加油、略して水添油といいます)、固体化してマーガリンを作ります。「植物原料だから体に優しい」というのはウソでしょうね。いい加減「植物は優しい」神話・幻想から脱出しましょうよ。(日経サイエンスの記事で二重結合を減らしたマーガリンはかえって健康に良くないという話も出てましたよ。)プリント:ヘルシーな食事の新しい常識:日経サイエンス 03.4

・せっけん:油脂をアルカリの存在下にケン化するとできます。結果として脂肪酸のナトリウム塩が生じます。これが「せっけん」ですね。使用済みの食用油を持ち寄って石鹸を作っているお母さんはいませんか?いらっしゃったら作り方を聞いてみてください。せっけん分子は、炭素の鎖の部分は疎水性、カルボン酸のイオン化した部分は親水性です。このような、一つの分子内に疎水性の部分と親水性の部分がある物質を界面活性剤(サーファクタント、surfactant)といいます。「境い目で働く物質」という意味です。油と水の境い目で働くのがせっけん。洗濯で油汚れが落とせるのはこのおかげです。界面活性剤の働きとしては、洗浄作用、食品(マヨネーズ)などの分散作用、化粧品、医薬品など、限りなくあります。

・細胞膜はリン脂質という界面活性物質でできています。グリセリンのOHの二つに脂肪酸がエステル結合し、もう一つのOHには、リン酸が結びついているのです。2本足のせっけんのような形の分子です。この分子が疎水性の部分を内側に、親水性の部分を外側に向けて、二重膜を形成しているのが細胞膜です。これを、「脂質二重膜」といいます。

 先日やった「裏返しのシャボン玉」の実験を思い出してください。裏返しのシャボン玉は細胞膜のモデルになっているのですね。

・肺では、肺胞という小さな袋の表面で空気と血液の間で酸素や二酸化炭素をやり取りしています。肺胞の膜は非常に薄く、まるで「シャボン玉」のようなものです。ただの水ではシャボン玉がつくれないように、肺胞をちゃんと膨らませておくには「肺サーファクタント」という界面活性のある物質が必要です。細胞膜の成分と似たリン脂質の一種です。胎児はまだ呼吸の必要がないので、肺サーファクタントを生産していません。そのため、未熟児で生まれてしまったとき、昔は肺サーファクタントがなくって肺が広がらず、呼吸できずに亡くなる赤ちゃんもいたようです。今は、人工の肺サーファクタントを使って肺を広げてあげられるようになりました。赤ちゃんの「産声」というのは、それまでつぶれていた肺を、肺サーファクタントを使って思いっきり広げて空気を吸い込み「空気呼吸を始めたぞ!」という宣言でもあるのです。このとき、胎盤のほうへ向かっていた血液循環を肺循環に切り替えるということもやっています。赤ちゃんがやっているとてつもない大仕事のことを思うと、生きるってすごいな、と私はジンとしてしまいます。

・「ロウ(蝋)」という物質は炭素数の多い長い鎖のアルコールと、炭素数の多い長い鎖のカルボン酸のエステルです。

 ミツバチの巣からハチミツを採取したのちに、巣を熱湯に入れて圧搾して採るのが「ミツロウ」です。炭素数が16のパルミチン酸と炭素数14のミリスチルアルコールのエステルが主成分です。ロウソクや光沢剤に利用します。

 ハゼノキの果皮から採った脂肪を「木ロウ」といいます(Japan wax)。主成分はパルミチン酸のグリセリンエステルです。ですから「ロウ」という名前だけれど化学的には油脂なのです。採取したままのものを生蝋(きろう)、漂白・脱色したものを晒蝋(さらしろう)といって、ロウソク・マッチの製造、器具の艶つや出しなどに用います。

 羊毛から採れる「ラノリン」という「あぶら」は、普通「あぶら」といっていますが、これは「ロウ」です。植物性のカルナウバロウというのも有名です。

 マッコウクジラの頭部などから採れるロウを「げいろう」(鯨蝋)といいます。主成分はパルミチン酸と炭素数16のセタノールとのエステルです。

・体に吸収されにくい油ということで「ジアシルグリセロール」という油を主成分にした食用油が売られています。これは、油脂がグリセリン(別名グリセロール)と3個の脂肪酸のエステル(トリアシルグリセロール)なのに対して、2個の脂肪酸とのエステルなのです。どうして吸収されにくいのか、理由は知りません。

・比較的分子量の小さいエステルには特有の香りを持つものが多くあります。エステル香料といって、食品添加物や化粧品などにも使われています。安いお菓子に天然の果実の香料なんか使ってられないでしょ。安いお菓子の香料にはエステルが多いですよ。商品名「サロメチール」という鎮痛剤の香りおよび鎮痛成分はサリチル酸メチルというエステルです。このサリチル酸メチルは「ウィンターグリーンオイル」という名前で食品にも使われています、さわやかなミント系の香りです。その他多数の話は、省略。

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★核酸

4種類の塩基と、炭素数5の糖(リボースまたはデオキシリボース)と、リン酸が結合してできた単位を「ヌクレオチド」といいます。このヌクレオチドが、リン酸と糖の間で多数結合してできた鎖状の高分子化合物を「核酸」といいます。

核酸 ・・・−リン酸−糖−リン酸−糖−リン酸−糖−リン酸−糖−リン酸−糖−・・・

          塩基    塩基    塩基    塩基    塩基

 細胞の核の中にある遺伝情報の本体であるDNAの場合は糖としてデオキシリボースを使っています。(DeoxyRiboNucleicAcid)。デオキシリボースにはOHが三つあって、そのうち二つはリン酸とつながって鎖を構成。もう一つは、塩基と呼ばれる物質とつながっています。ですから、分子内にもうOHはなくなっていて、これがDNAの安定性を増すことになっているようです。

 遺伝子のコピーに使われるRNA(RiboNucleicAcid)は糖としてリボースを使っていること以外はDNAと同じです。リボースには4つのOHがあるので、鎖を作って塩基とつながっても分子内にOHが一つ残るのですね、これがRNAの化学的な不安定性の原因でしょう。

・外側にリン酸が出ているので核「酸」です。

・核酸に使われる塩基には窒素原子があって水素イオンを受け取れる分子ですので塩基で す。(ブレンステッド・ローリーの定義だね)

・核酸塩基にはプリン塩基とピリミジン塩基の二種類があります。

・プリン塩基:環が二つ:アデニン(A)、グアニン(G)(痛風の人が気にする「プリン体」 はこれです。)

・ピリミジン塩基:環が一つ:シトシン(C)、チミン(T)(RNAではウラシル(U))。

・プリン塩基とピリミジン塩基が向き合うとその間に水素結合ができる。

 ・TとAでは二本、CとGでは三本の水素結合ができる。

 ・水素結合は常温の水分子の熱運動で切れたりくっついたりする程度の強さだけれど、  たくさん並べば結構強くなります。

 ・TとA、CとGが向き合う形で二本の鎖がらせん状に巻き合って「DNAの二重ラセ  ン」ができるのです。

・「DNAの二重ラセン」の概念は1953年にワトソンとクリックが発表したものです。今年は50周年にあたります。(私は55歳。私の世代は「DNAの二重ラセン」に感動し、その発展を見てきた世代です。今年、2003年ヒトゲノム完全解読が宣言されました。君たちは、ゲノムを自由に読んで使っていく世代なのでしょう。君たちの活躍が楽しみです。)

・二重ラセンは外側に糖とリン酸の鎖が長く連なり、内側にはしご段のように塩基のペアが並んでいます。この塩基分子の「並び」が遺伝情報の本体なのです。

・4種類の塩基分子の「並び」が遺伝情報です。異なる4種類のものから3つ選んで並べる順列は64通りあります。三つ組み暗号(トリプレット暗号)といって、塩基3つの並びでアミノ酸一つを指定しているのです。

・アミノ酸は20種類ありますから、塩基の組み合わせのほうが多くなります。異なる三つ組みが同じアミノ酸を指定したり、「読み始め」「読み終わり」などをしめす三つ組みも存在します。こういう「冗長性」が生物の特性ですね、安全性を高めることになります。

・DNAの遺伝情報は「大事」なものなのでそのまま使ったりはしません。必要な遺伝子をRNAにコピーして(mRNA)、核の外に送り出して、外でたんぱく質作りを行います。

・遺伝子のコピーであるmRNAにリボソームがくっつき、三つ組みを端から読み取って、対応するアミノ酸をつないでいくと、たんぱく質は一次構造にしたがって伸びていきます。αラセンやβシートなどの二次構造はほぼ自動的に形成されていきます。補助たんぱく質などもあって、三次構造が作り上げられていき、さらに四次構造に発展するものもあるわけです。

・DNAからたんぱく質をつくる、この流れを「セントラル・ドグマ」といって、すべてがこのとおりであるわけではないのですが、大筋としては、今も正しい概念です。

 

・細胞分裂の際に遺伝情報を2倍に増やして娘細胞に分けるときや、DNAからmRNAにコピーをとるときには、TとA、CとGが必ず向き合うという性質が使われます。

・「DNAの二重ラセン」は片側に遺伝情報が書き込まれています。その片側が決まればTの相手はA、Cの相手はGと必ず決まるわけです。これを「相補性」といいます。

・DNAを複製するときには、オリジナルの2本鎖を開きながら、それぞれに相補的な鎖を作っていくわけです。

・RNAにコピーをとるときは、遺伝子の情報が書かれている場所の二重鎖を開いて、そこから相補性によってコピーを作るわけです。(ただしこの場合、アデニン(A)とペアになるのはウラシル(U)です)。

・なんという巧妙な仕組みなんでしょうね!いろんなことが分かってきましたが、まだまだ分からないことのほうが多いのです。

・「DNAの二重ラセン」は水素結合で互いに結びついているわけですが、たくさんの水素結合は常温では比較的強いけれど、熱運動が激しくなると切り離されます。DNAの研究になくてはならない方法であるPCR法(ポリメラーゼ・チェーン・リアクション法)ではこの性質が使われています。DNAを90℃くらいに熱して二重鎖を開きそこからコピーを人工的に作ってDNAを2倍に増やす、また2倍、また2倍、と増やして、10回繰り返せば1000倍に増える、というようにして微量のDNAを増やして研究するのです。もし、二本の鎖が共有結合で結びついていたら結合が強すぎて、こういうことはできなかったでしょう。

・また、細胞分裂に際してDNAを複製したり、たんぱく質を作るためにコピーをとるときも、水素結合なので、比較的簡単に二本鎖を引き離して一本にし、相補性を用いて複製することができる。これも共有結合だったらできないことです。

・DNAは、生物の遺伝情報という非常に「保守性」が大事な情報を担う安定したものであると同時に、いつでも使うことができなければならない、という、相反する要請に応えるものすごい分子なのです。

プリント:ヌクレオチドと核酸

図説生物 p.14,15 p.108,109

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★顕微鏡実習

 顕微鏡の使い方

 スケッチの仕方

 つくしの胞子の検鏡

プリント:顕微鏡の各部の名称、操作手順・諸注意の確認

プリント:スケッチについて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★顕微鏡実習:原形質流動の観察:ムラサキツユクサのオシベの毛を用いて。

プリント:原形質流動の観察

プリント:ムラサキツユクサの花のデジタルカメラ写真(見るべきものがどこにあるか分からない生徒が多いので。)

プリント:過去の生徒のスケッチをコピー(どのようなものが見えるのかイメージを作らないと、見れども見えずになってしまう生徒が多いので。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17   ゴキブリ一齢幼虫を授業に連れて行く

★細胞膜の構造と働き

細胞膜の構造

・生命の基本単位としての細胞は「自己」を外界から独立させなければならない、と同時に、外界とエネルギーや物質のやり取りを行わなければ生存できない。(隔絶されたら生きてはいけません。エネルギーと物質の流れの中にのみ生命は存在しうるということを確認しておきましょう。)

・外界からの自己の独立と、外界との物質およびエネルギーのやりとり、という相反することを実現するのが、「細胞膜」です。

・細胞膜を構成する基本は、リン脂質。グリセリンに二つの脂肪酸がエステル結合し、もう一つには、リン酸が結びついています。

・リン脂質は界面活性を持つ分子です。これが疎水性の部分を中に親水性の部分を外に向けて、二重膜を形成します。「脂質二重膜」といいます。

・この膜だけでは柔らかすぎたり、不安定なこともあるので、脂質部分にコレステロールが入ると、膜が硬くなります。(膜の流動性の変化というほうが正確かな。)

・さらに膜を裏打ちする繊維状のたんぱく質も存在します。

・脂質二重膜は薄い油の膜で内側を包んでいる形になっているので、電荷を帯びたイオンなどは透過できませんが、親油性の分子は比較的透過しやすいという性質を持ちます。

・膜にはいろいろな種類のたんぱく質(たんぱく質に糖の鎖がついたものもある)が埋め込まれています。膜たんぱく質といいます。

 ・細胞の「顔」としてのたんぱく質。細胞が相互に相手を認識したりするときの標識に  なります。

 ・物質交換の「トンネル」としてのたんぱく質。(受動的に分子を通す「穴」や、積極  的に輸送する「ポンプ」もある)

 ・情報伝達を仲介するたんぱく質。ホルモンを受容して細胞内にシグナルを送ったり。  隣接する細胞同士で情報をやりとりしたり。

 ・細胞同士の結合や、細胞の外の構造と接着するためのたんぱく質。

 など、いろいろあります。

プリント:細胞膜の構造

プリント:細胞膜の電顕写真:埋め込まれたたんぱく質が見える。脂質二重膜が暗・明・暗の「三重構造」に見える

プリント:細胞膜の構造(分子レベルの形など)

プリント:細胞膜の膜たんぱく質、裏打ちたんぱく質

 

細胞膜の働き

・エンドサイトーシス・エキソサイトーシス

(「エンド(endo)」は「中へ」の意味。「エキソ(exo)」は「外へ」の意味。)(聖書の「出エジプト記」は英語では「エキソダス」(Exodus)です。)

・外界との境界である細胞膜で包んで外界とのやり取りをする働きのことです。

・外界のものを細胞膜をへこませながら包み込んで細胞内部へ取り込むのがエンドサイトーシス。

・細胞内の膜に包まれた内容物を、細胞膜に融合させて外へ送り出すのがエキソサイトーシス。

・細胞内消化:エンドサイトーシスで外部のものを細胞内に取り込み、消化酵素を包み込んだリソソームと融合させ小胞内で消化し、不消化物はエキソサイトーシスで排出する。・「細胞内」消化とはいっても小胞内は実は「外界」なのですね。細胞は外界と独立を保たねばなりません。やたらと外界を内部に入れてしまうわけにはいかないのです。

・小胞体で作られた分泌用のたんぱく質が、ゴルジ体を経て、小胞に包まれて運ばれ、エキソサイトーシスで分泌される。

・エンドサイトーシスばかりやっていると細胞膜が切り取られるばかりで減ってくるでしょ、逆にエキソサイトーシスばかりやってると細胞膜がだぶついてくるでしょ。そこで、空っぽの袋を作って、膜を補充したり、膜の回収したりもします。

プリント:細胞の核と膜系の細胞内細胞内小器官(3枚)

プリント:ミルク シャボン玉貫通(日経新聞)。シャボン玉に落とされた牛乳の滴がシャボン膜を透過する写真。これは、シャボン膜に包まれて透過するので、エンドサイトーシスのモデルになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★細胞膜の透過性

 ・酸素分子、窒素分子など無極性で小さな分子は透過できる。

 ・水分子や尿素分子など極性はあっても小さな分子は透過できる。

 ・たんぱく質、グルコースなど大きな分子は透過できない。

 ・小さくても、イオンは透過できない。

 

・水の透過性について

濃度の異なる水溶液が、溶質は通さないが溶媒は通すような性質の膜=半透膜をはさんで接するとき、溶媒の水分子が薄い溶液から濃い溶液へ、「浸透]する。osmosisといいます。このとき、濃い側をピストンで押さえて、浸透をちょうど食い止めるのに必要な圧力を「浸透圧」という。

 

 

 

 

 

 

 

薄い側を純粋な水として、半透膜を介して溶液Aと接するとき、このときの浸透圧を「溶液Aの浸透圧」という。

 

・脱線だが。浸透を食い止めるのに必要であるより大きな圧力を加えたらどうなるだろう?濃い溶液の側から薄い溶液の側へ溶媒である水分子が押し出されるのですよ。これを「逆浸透」といいます。海水から純水を製造するのに、蒸留による方法もあるけれど、逆浸透圧法(RO法。Reverse Osmosis)というものもあるのです。離島や砂漠で既に実用化されていいます。

プリント:新聞広告:東芝海水淡水化プラント。

     沖縄県北谷町の沖縄県海水淡水化センター。逆浸透法。

プリント:「技」の位相:海水淡水化。逆浸透法。渇水の島を救う「薄膜しぼり」の真水     災害時にも強い味方

 

・細胞が生きる環境は普通、細胞の外側が薄い溶液で、内側が濃い溶液です。細胞膜は半透膜ですので、当然、絶えず水が細胞内に浸透してきます。どのように対処すべきか。これは生きるうえで大問題なのですね。いずれお話します。

 

・浸透圧(Osmotic Pressure)を圧力Pで書きたいのですが、慣用的にPに対応するギリシャ文字のΠ(パイの大文字)で表します。

浸透圧(Π)は溶液のモル濃度(c)に比例し、絶対温度(T)に比例します。

      Π ∝ c・T 

これを等式になおすと

      Π = c RT

となります。不思議なことにRは気体定数なのです。(「モル濃度に比例」というのは、半透膜を透過できない粒子の「個数に比例」ということです。モルとうのは個数で考える物質の量でしたね)。

計算例:生理的食塩水を0.9% 食塩水とし、体温を37℃として計算してみましょう。

 塩化ナトリウムは溶液中でナトリウムイオンと塩化物イオンに電離しています。電荷の違いはあるけれども、半透膜を透過できないということにおいては同じなので、モル濃度を2倍に扱う必要があります。

R(気体定数)=0.0821

37℃=273+37=310K

 

0.9 % 食塩水 = 0.9gNaCl/100g食塩水

= 9gNaCl/1000g食塩水

≒ 9gNaCl/1000ml水

=(9/58.5)[mol/l]

Π = 2×(9/58.5)×0.0821×(37+273)=7.8[atm]

・赤血球を純水に入れた場合、水の浸透を食い止めるには、7.8気圧必要です。

・赤血球自身では耐え切れずに破裂してしまいます。これを「溶血」といいます。

・生理的食塩水では赤血球に変化がありません。こういう溶液を「等張液」(isotonic solution)といいます。

・生理的食塩水より濃い溶液に入れた場合は、赤血球は細胞内部から外部へ水が浸透して出て行くので、収縮してしまいます。この場合も赤血球は機能を失います。

 まとめると、

      低張液(hypotonic solution)では 溶血 する

赤血球は  等張液(isotonic solution)では  変化なし

      高張液(hypotonic solution)では 収縮 する

 

・「ナメクジに塩」:ナメクジの体表は人間のような陸上生活に適応した皮膚ではないので、体外の濃食塩水が高張液で、体内の水分を吸い出されてしぼんでしまう。砂糖でもできる。

・「塩もみエステ」がはやったことがあって、濃い食塩水で水が吸いだされて部分ヤセができる、とうたっていたが、これは誤り。ヒトの皮膚はそれほどやわではないよ。

・点滴(輸液):水を点滴したら溶血を起こしてしまう。等張液である生理的食塩水濃度で点滴しなければなりません。栄養点滴で、大量の栄養を与えようと、濃い栄養液を点滴するわけにもいきません。(大静脈に入れる中心静脈栄養では、一挙に大量の静脈血で希釈されるので多少濃い液が使えるのだそうです)

・スポーツ・ドリンク:プリントを見てください。「アイソトニック・ドリンク」と書いてあります。手術を終えた医師が、喉を潤すために点滴用の生理的食塩水を飲んだ、と聞いた医薬品会社が開発したという話もあります。

プリント:アクエリアス、ポカリスエットなどの実物のコピー

     新聞記事「水分 運動中はたっぷり補給を」(この記事の中にも「水中毒」の     記載あり)

ごく普通の体調の大人が飲んでも吸収に大した違いはないのですが、夏の炎暑で大量の汗をかいたときなどに熱中症を避けるには有効です。スポーツ時の水分補給は重要です。

乳幼児が下痢をしたときなどは、真水では吸収が悪いので、等張飲料は有効です。下痢の時には水分補給が大事ですよ。

乳児用の等張飲料が売られているようですが、これはそのまま飲むためのものです。体に良い飲料水だからといって、これでミルクを溶いて与えてはいけません。濃くなってしまって、高張液になります。赤ちゃんとしては濃い食塩水を飲まされているようなものです、のどが渇いて仕方ないでしょう、こんなことをされては、体に悪いですね。

・飢餓にさらされた幼児も同じ。ユニセフなどで、水に加える塩類・糖類を援助をしています。

プリント:ユニセフの広告:経口補水療法(95年)

     天声人語:経口補水塩(92年)

・ベビースイミングなどで赤ちゃんが真水を飲みすぎた場合に「水・中毒」ということがおきることがあります。「水中の毒」ではありません。水に中毒するのです。血液が薄くなってしまって、低張液となり赤血球が膨らんでしまい、最悪の場合命に関わります。泳ぐ前後で体重を量るなどして、どのくらい水を飲んだのか注意することが必要です。

プリント:ベビースイミング。「水中毒」など注意して。

・ゾウリムシやアメーバなどは体内に浸透してくる水をせっせとくみ出しています。このための細胞内器官を収縮胞といいます。

・アユやサケ、ウナギなど海と淡水域を行き来する魚は浸透圧調節に特別の仕組みを持っています。これはまた別の機会に。

・ウミガメの産卵のとき陸に上がってきた母ガメが産卵中に涙を流すように見えますが、あれは目のところにある塩類腺から濃い食塩水を排泄して浸透圧調節している姿なのです。

・料理で「振り塩」という技がありますね。塩で水を吸い出して、味を引き出すのです。

・調理用に商品名「ピチット」というシートが売られています。これは、ポリビニルアルコール膜の袋に、濃い水飴を包んだものです。これで、生の魚を包んで半日くらい置くと、水分が吸いだされて、血なまぐさくなることなく味が濃くなり、塩をふったわけでもないので塩辛くもなりません。肉も調理前にこれで包んでおくとおいしくなるそうです。

プリント:「ピチット」商品外箱のコピー

・植物の場合:細胞が細胞壁で囲まれているので動物細胞とは少し事情が違います。

等張液で細胞が変化しないのは同じですが、溶液の濃度を少しずつ濃くしていくと細胞の水が外へ出て行きます。細胞が縮み始めますが、細胞膜が細胞壁から分離するかしないかの限界の状態を「限界原形質分離」といいます。これ以上濃くなると、細胞は収縮し「原形質分離」というできごとが起こります。

・「青菜に塩」の状態はこれですね。サラダのキャベツの塩もみも同じです。

・梅酒をつけるときに、焼酎と氷砂糖を入れますね。粉の砂糖を使って最初から濃い砂糖液に梅が浸ってしまうと、梅の表面が硬くなってしまって内部のエキスが出てこなくなるのだそうです。氷砂糖は溶ける速度が遅いので、まず焼酎のエタノールで、アルコールに溶けやすい成分が抽出され、その後に濃くなってきた砂糖液で中から水溶液成分が吸い出されるのだそうです。

・食品の保存方法に「砂糖漬け」があります。あまりに砂糖が濃いので、腐敗菌が浸透圧に負けて繁殖できなくなるわけです。

・食中毒で有名なボツリヌス菌が、ハチミツのなかで砂糖漬けになって活動できずに休眠していることがあります。大人がハチミツを食べて多少のボツリヌス菌が腸に入っても大人は丈夫ですからなんともないのですが、赤ちゃんにハチミツを与えると、腸が弱いのでボツリヌス菌による中毒を起こすことがあります。天然の甘味料は体に優しい、とかいって赤ちゃんの離乳食にハチミツを使わないでください。純度の高い(=不純物の少ない)砂糖を使うのが安全ですよ。

・等張よりも薄くなると細胞内に水が浸入してきます。細胞が膨らんで細胞膜が細胞壁を押します。これが膨圧。細胞壁は丈夫なので、膨圧に対抗して膨圧と同じ大きさで細胞を押し縮める方向に押し返します。(作用反作用の法則)

・膨圧は数気圧から数十気圧に及び、植物の体を支える力として、重要です。(植物には骨がないからね。)

・切花がしおれる、オジギソウに触ると葉が閉じる、などの運動には膨圧が関係しています。

・細胞に水が浸透しようとする浸透圧と、膨圧の反作用として膨圧と同じ大きさで細胞膜を押し返す圧力、の差が、細胞に水が浸透しようとする実質的な圧力になりますがが、これを「吸水力」といいます。(「実質浸透圧」とでも呼ぶべきではないかと思いますが。)

浸透圧 − 膨圧 = 吸水力

従って、浸透圧と膨圧が等しくなったところで吸水力がゼロとなり吸水(水の浸入)は止まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★細胞膜の選択透過性

・受動輸送:膜の両側の濃度勾配に従って、濃度の高いほうから低いほうへ物質を輸送すること。水が高いところから低いところへ流れるのと同様に、自然な方向の輸送なのでエネルギー消費を伴わない。

 ・単純拡散:細胞膜を通って。

   酸素分子、窒素分子など無極性の小さな分子は細胞膜を濃度勾配に従って透過・拡   散することができる。

   水や尿素などの分子は極性はあるが小さな分子なので細胞膜を濃度勾配に従って透   過・拡散することができる。

   脂溶性分子(エタノール分子など)は多少大きくても同様に透過・拡散できる。

      [グルコースのような大きな分子や、電荷を持つイオンは透過できない]

 ・促進拡散:チャンネルと呼ばれるたんぱく質が細胞膜に埋め込まれていて、そこ    を通って特定の物質が透過する。

    グルコース・チャンネル:このチャンネルはランダムに開閉していて、グルコ      ースの濃い側でグルコース分子がはまり込み、濃度の薄い側へ開いたときにグ     ルコース分子が放出される。(グルコース1種類のみを運ぶので、ユニポート     という)。

    ナトリウム・チャンネル:普段は閉じた通路で、必要に応じて開く。そのときナ     トリウムイオンは濃い側から薄い側へ流入する。

・能動輸送:濃度勾配に逆らって、濃度の低いほうから高いほうへ物質を輸送する。水を低いところから高いところへ汲み上げるようなものなので、エネルギーを消費する。そのエネルギー源は、ATPという分子です。

 ATP(Adenosine triphosphate)とは

  アデノシン(アデニン(核酸塩基)+リボース(糖))+リン酸〜リン酸〜リン酸

細胞内の「エネルギー通貨」 といわれます。使い勝手の良いエネルギーの「小銭」と考えてください。「〜」のところを「高エネルギー結合」と呼ぶのですが、莫大なエネルギーが放出されるわけではありません。

 例え話でいうと。寒さに震えているときに、ダイナマイトをもらいました。火をつければ莫大な熱エネルギーが放出されるわけですが、死んでしまいます。ナイフで削って小さくして火をつければ、エネルギーが小出しに使えますね。(グルコースの大きなエネルギーの約半分を38個のATPに小分けにして持たせたものです。)江戸時代の小判や10万円金貨は価値は高いが使いようがないでしょう。100円玉なら使い勝手がいいですね。 熱運動のエネルギーの凸凹を圧倒的に無視できるような大きなエネルギーを放出するわけではありません。熱運動のエネルギーの凸凹を乗り越えていける程度の大きさのエネルギーと考えたほうがいいでしょう。

プリント:輸送たんぱく質

 

 

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★能動輸送の例

ナトリウム−カリウムポンプ

 膜内外を貫通するたんぱく質が、ATPのエネルギーを消費しながらナトリウムイオン3個を外に運び出しカリウムイオン2個を細胞内に運び込むというポンプです。濃度勾配に逆らうのでATPのエネルギーを消費します。ATPのエネルギーを使って直接輸送していますので、一次能動輸送といいます。(NaイオンとKイオンの流れの向きが逆になっているので、アンチポートといいます。)

プリント:イオン濃度は細胞内と細胞外で大きく異なる

プリント:運搬体たんぱく

 ATPのエネルギーをを消費して作り出される濃度勾配はエネルギーを貯えているといえます。揚水発電というのを知っていますか?夜間の余剰電力で発電機をモーターとして運転して下のダムの水を上のダムに汲み上げます。昼間電力が不足するときに上のダムから水を下のダムに落として発電します。つまり、電気エネルギーを水の位置エネルギーに変えて貯えておく方法なのです。

 同じように、ATPのエネルギーを消費して作り出したナトリウムイオンの濃度勾配はエネルギーを貯えているわけです。この貯えられたエネルギーを利用するのが

 

グルコースポンプ

 細胞外の高濃度のナトリウムイオンが濃度勾配に従って細胞内に流入することを利用して同時にグルコースを濃度勾配に逆らって運び込むのがこのポンプです。貯えられたエネルギーを利用しているので、二次能動輸送という。(ナトリウムイオンとグルコース分子の流れの向きが同じなので、シンポートといいます)。

 

プリント:小腸吸収上皮におけるグルコース運搬

 小腸の吸収上皮細胞では、まず、ナトリウム−カリウムポンプで濃度勾配を作ります。それを利用して、腸管内のグルコースを細胞内に運び込みます。細胞内から体内へは(毛細血管側へ)濃度勾配に従ってユニポートでグルコースを送りこみます。

(腸管内は「外界」です。やたらなものが体内に勝手に入ってきてはなりません。腸管内という「外界」へ消化酵素を分泌し、分子を細かくし、必要なものだけを体内に取り込むのです。吸収上皮細胞は一列に並んでいるのですが、細胞の隙間から物質が「体内」へ漏れてはいけませんから、細胞結合という方法で互いに密着しています。「コラーゲンを食べて皮膚に張りを」などはウソですよ。コラーゲンはたんぱく質、アミノ酸に分解して吸収するのです。食べるヒアルロン酸もナンセンスなウソですよ。)

 

 

 

 

 

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★中間テスト

 

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★細胞分裂

 体細胞分裂:細胞の自己複製。遺伝情報を母細胞から娘細胞に正確に伝えなければなら       ない。

 減数分裂 :生殖細胞を作るための分裂。次世代への遺伝情報の正確な伝達・保存、と       同時に遺伝的な多様性を生み出す遺伝情報のシャッフルという二つの使命       を持つ。生殖母細胞から生殖細胞(卵・精子)を作り出す過程で行われる。

 

 DNAはヒトの場合一つの細胞当たり2mにもなる長い糸状の分子です。(プリント:2mのすごさ)。これをヒストンという球状タンパク質に巻きつけ、それをコイルに巻き、更にコイルに巻き上げていったものが、染色体といいます。通常の状態での細胞では核の中には染色体の構造は見られません。分裂時に太い糸状から、棒状の形にまとまって見えるようになります。このときのパターンを「核型」といって、生物種に特有なパターンを持ちます。

 核型は、生物種に特有の数と形があり、重要な情報をもっています。ただし、これは、すでにDNAを2倍に増やし、分裂の時にのみ観察される形であることを忘れないようにしてください。教科書・図説などで、いつもこの核型の写真を見るので、これが「常態」であって顕微鏡でいつも見える思ってはいけません。

プリント:黒谷の染色体。核型。黒谷さんの著書の表紙。

 黒谷さんという女性科学者は少女時代に「虫愛ずる姫君」だったそうで、昆虫好きの私は黒谷さんのファンなのです。黒谷さんが実習で作った自分の核型の写真を紹介します。つくり方は次のプリントに載せておきました。細胞分裂を途中で薬品で停止させてつくるのです。

 黒谷さんはもちろんヒトですから、ヒトとしての染色体数23対、46の染色体が写っています。2n=46(n=23)というように表現します。遺伝情報のワンセットを「ゲノム」といいますが、ヒトの場合そのワンセットは23本なのです。これを母方からワンセット、父方からワンセットもらい、2セットを持つわけです。生物種によって、ワンセットが何本か分かりませんので、ゲノム、ワンセットを構成する染色体の本数をn本と記号で表しておくわけです。体細胞はツーセット持つので2n、生殖細胞はワンセットしか持ちませんからnです。さて、ヒトでは、

 1番〜22番までの22対を「常染色体」といいます。

 23番目はX染色体とY染色体という名前がついています。これは「性染色体」といって性を決定する染色体です。

 ヒトの場合、XXならメス、XYオス、となります。黒谷さんは女性ですからXXを持っていますね。

 Y染色体の上にオス化をスタートさせる遺伝子が乗っています(SRYと呼ばれる遺伝子です。)これが発生途中で働くとオスになり、この遺伝子の働きかけがないとメスになります。生殖細胞を作るときには2セットを1セットに減らすのですが、このときXXを持つメスがつくる卵子では必ずXを持つことになります。他方、XYであるオスがつくる精子では、Xを持つ精子と、Yを持つ精子ができます。卵子が、Xを持つ精子と受精するとXXとなって子はメスになり、卵子がYを持つ精子と受精するとXYとなって子はオスになるわけですね。(栄養をたくさん持っていて運動性を持たない生殖細胞を卵といい、卵を作る性をメスといいます。栄養をほとんど持たず遺伝情報だけを持って運動性があって泳いでいく生殖細胞を精子といって、精子を作る性をオスというのです。ヒトの場合、生物としてはこれでいいのですが、「社会性動物」としては「性」について混乱が生じているようですが、今は生物の時間なので、割り切っていきましょう。)

プリント:ヒトの染色体を調べる技術。クイズ:核型分析に挑戦!

プリント:核型分析のクイズ用の模式図と写真。

プリント:クイズ:核型分析に挑戦!解答。

プリント:染色体1本のアリ:キバアリ:2n=2。メスでは2本、オスでは1本しか染     色体を持たない。

     ウチダザリガニ:2n=376。多分、世界一。

プリント:各種哺乳類の染色体コレクション。ヒト、チンパンジー、ゴリラ、ニホンザル、ラングール、ベルベットモンキー、リスザル、メガネザル、レムール、ウマ、タヌキ、フルーツコウモリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★細胞周期

  分裂期(M期)(Mitosis)

  

  G1期(Gap)

  

  S期(Synthesis)

  

  G2期

  

  

・G1期では、細胞を成長させ、次の分裂に充分な大きさが確保できたかチェックします更に、DNAが完全であるかどうかチェックします。損傷があるようなら、修復を行い、修復が完了しない限り先ヘは進ませません。これをG1チェックポイントといいます。

・S期では、DNAを複製して2倍にします。DNAの合成を行うのでSynthesis期なのです。DNAの二重ラセンをほどきながら、それぞれの糸に対して相補的コピーを作ります。

・G2期では、複製したDNAの完全性についてのチェックを行います。G2チェックポイントといます。

・ゴーサインが出たら、M期へと進行していきます。

 もし、生きていてもいいが分裂させてはまずい状態であるなら、分裂期へ入らずにただ生き続けるとか、さらに重大な事態であるならば(がん化の可能性など)、細胞の自己消滅プログラムを始動させてアポトーシスへ向かうこともあります。

 

・幹細胞はひたすら細胞周期を回りつづけて、新たな細胞を生み出しつづけます。たとえば、造血幹細胞。

・神経細胞などは細胞周期を回らず、特定の機能に分化して、その仕事を続けます。

・分裂期を終えて、細胞周期を抜け、休止期(G0期)に入り、分化した機能の活動をし、また細胞周期に戻ってくるような細胞もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★分裂期(核分裂)

プリント:体細胞分裂の模式図

前期(prophase)

  染色体の凝集が始まり、太い糸状から棒状へと変化していく

  核膜や核小体は見えなくなる

  動物では、中心体が二分して両極に移動していく

  紡錘糸が出現し紡錘体が形成され始める

  ここで見えるようになった染色体は、S期で複製され2倍になったものである。互い  に相手のコピーの関係にある2本の染色体を染色分体といい、動原体のところでつな  がっている。

  母方、父方のそれぞれの対応する染色体を相同染色体という

  1対の相同染色体は2本の染色体からなり、1本の染色体は2本の染色分体からなる

中期(metaphase)

  染色体が赤道面に並び、動原体に紡錘糸が付着して紡錘体が形成される

  (紡錘:糸を「紡ぐ(つむぐ)時に使う錘(おもり)」という話をする。「眠れる森の美  女」の話などを知っている生徒もいる。ラグビーボール型でもよいか。)

  M期チェックポイント(スピンドル(紡錘体)チェックポイント):染色体が赤道面に  配列し、紡錘糸がすべての染色体に正しく結合しない限り、娘細胞への分配が進行し  ないように抑制される。うまく紡錘糸がつかないとそこで停止してしまう。

プリント:引っぱって始める細胞分裂。現代化学 1998.12

後期(anaphase)

  各染色分体は紡錘糸に引かれて両極へ移動していく。紡錘体は細長くなる。

  紡錘糸はチューブリンというタンパク質が重合してできた微小管

  動原体に結合した微小管は、紡錘体極のところで脱重合して短くなり、このことによ  って染色体が極へ引き寄せられる。

  紡錘体極同士を繋ぐ微小管もあり、この微小管は赤道面付近で重なり合っている。こ  の重なり合いの部分がすべって微小管が長くなって、極同士は遠ざかる。

終期(telophase)

 核分裂の仕上げと、細胞質分裂が行われる

  移動した染色体は,形が崩れて細長くなり、もとの分散した状態に戻る。小胞体から  核膜が形成され、核小体も現れ、間期の核の状態に戻る。紡錘糸は消失する。

 細胞質分裂

  動物細胞では、赤道面にくびれが生じ、細胞をくびり切って二分。このくびり切りは、  アクチンフィラメントとミオシンフィラメントでできた収縮環が、筋肉の動きと同じ  フィラメント同士の滑りによって収縮して行われる。

  植物細胞では、ゴルジ体由来の小胞が赤道面に集まってくる。この小胞には細胞壁の  材料であるセルロースや糖タンパク質などが含まれ、小胞同士が融合して細胞壁を作  る。真ん中から伸長した細胞壁がもとの細胞壁に到達すると細胞の二分が完了する。

以上で、分裂を終了する。

 

プリント:細胞は分裂して増える。細胞周期の調節。

プリント:細胞分裂のしくみ

プリント:染色体、核型。相同染色体、染色体、染色分体。G1チェックポイント機構。

プリント:ムラサキツユクサ根端分裂組織の分裂。英語での図。

プリント:イモリの肺上皮細胞の分裂像

プリント:死後も行き続ける細胞 HeLa細胞。無限に分裂する培養細胞。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★単細胞から多細胞へ

単細胞生物は「生きること」のすべてを、細胞1個でこなしている。

プリント:ゾウリムシの構造、細胞口から細胞肛門へ。

プリント:食胞:ポスターカラーを食べさせられたゾウリムシの写真

プリント:収縮胞。衝突したときの回避行動。ゾウリムシの学習

プリント:ゾウリムシの接合、性

プリント:「汚水にみられる原生動物 ゾウリムシの生態観察」 2枚

プリント:「淡水中にみられる原生動物 アメーバ」 2枚

 

多細胞生物は、多数の細胞が「分化」(diffrentiate)して分業体制で生きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★群体

単細胞から      群体                群体     多細胞へ

 クラミドモナス   パンドリナ            ボルボックス

 単細胞の藻類    分化の程度は低い         分化が進む

           それぞれ体細胞分裂して群体を作る 光合成

                            卵・精子(有性生殖)

                            娘群体を作る(無性増殖)

                            細胞単独では生きていけな                            い

現在のクラミドモナスが突然群体を形成するということはないし、パンドリナが群体であることをやめて単細胞に戻ってしまうこともない。進化の結果としての、現在の単細胞であり、群体なのです。ただ、進化の途中を推測させるものとしてみてください。

 

プリント:単細胞生物から多細胞生物へ(穴埋めプリント)

プリント:地球の生き物たち

プリント:細胞群体。ニハイチュウ。センチュウ。

 

真核細胞では鞭毛と繊毛は同じ構造:9+2構造:繊維のすべりが「しなる」運動を生ずる

プリント:鞭毛。鞭毛の屈曲の機構。

  ゾウリムシ、上記の藻類、ミドリムシ、人の呼吸器の繊毛によるゴミの排出、輸卵管  における卵子の輸送

原核細胞の鞭毛は「モーター」による回転

プリント:細菌の高速回転モーター:水素イオンの流入を動力源とする

 

 これから多細胞の植物・動物の世界を学んでいくわけですが、「系統樹」が大切です。(オリエンテーリングのときの「地図」のような役割です。)ごく大雑把でよいので頭の中に入れておくか、折につけこのプリントを見てください。いつも見られるところに、はさんでおいてください。

プリント:動物と植物の系統樹(分類と進化を含む生物界の地図)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★組織と器官

 多細胞生物では生きるための仕事を分担しています。そのために細胞は形や働きが異なったものになっていきます。これを、分化という。同じような形と働きを持った細胞が集まって、「組織」をつくります。さらに、いくつかの組織が組み合わさって特定の働きを持つ「器官」を構成します。

 植物の組織は分裂組織と永久組織。

    器官は根・茎・葉⇒栄養器官と、花⇒生殖器官

 動物の組織は上皮組織・神経組織・筋組織・結合組織。

    器官は、例えば口・食道・胃・小腸・大腸などの各器官に四つの組織があり

    器官系として消化系などがあり

    器官系を統合して個体が生きてゆく、のです。

 

プリント:植物の組織と器官。(穴を埋めながら)

・植物の組織

  分裂組織:頂端分裂組織:茎頂と根端で分裂を続ける組織→縦方向の成長

       形成層:茎や根の中にあって分裂を続ける組織→横方向の成長

       コルク形成層:茎が肥大すると割れ目ができる。これを埋めるために二次              的に生まれてくる分裂組織

  永久組織:表皮系、維管束系、基本組織系

・植物の器官

  栄養組織:葉、茎、根

  生殖組織:花(種子)

 

 葉:クチクラ、孔辺細胞:気孔を構成する。気孔は、酸素、二酸化炭素、水蒸気の出入   りをコントロールする→表皮系

   柵状組織、海綿状組織→基本組織系の柔組織

   葉脈→維管束系

   (クチクラというのは表皮細胞が分泌したクチンという油のようなものとロウが蓄   積した層のことです。透明で強く、植物体の保護、水分発散の防止などの作用をし   ます。動物にもクチクラがあり、硬いたんぱく質からなり、昆虫などではよく発達   しています。脊椎動物でもうろこを形成するものもあり、人間の毛髪などにもクチ   クラがあるわけです。英語の綴りはcuticle,キューティクル。シャンプー   の広告などで聞くでしょう。)

 茎:維管束系

    師管(篩管、ふるいかん)。生きた細胞でできています。縦に二分裂して一方が     核を失い師管細胞となり。、もう一方は核のある伴細胞となって師管細胞の維     持をすします。細胞の上下に「師板」という穴の開いた隔壁が存在し上下の細     胞がこの穴を通して連絡しています(穴の開いた板なので「ふるい」なのです     ね)。葉で作られたグルコースやアミノ酸などを下へ送る。

    師管では陽圧になる。:アブラムシが口器を師管に差し込んでいるときに、口器    を切断。陽圧なので、切断された管から師管液が出てくる。アブラムシは口器を    差し込めば、師管液が入ってくる。ストローでジュースを吸うように吸う必要は    ない。切断された管に染み出してくる液滴を毛細管に吸入して分析すると、溶質    の約90%はスクロース、その他に糖、無機栄養素、ホルモン、アミノ酸も溶け    ている。(いい気分で汁を吸っているのに口を切られてしまうなんてカワイソウ    だなぁ)

 

    道管。死んだ細胞でできています。細胞が上下の隔壁を失い、1本の管となって     います。根から吸い込んだ水を上へ送ります。

    導管では陰圧になる:樹径自記成長計を用いて、木の幹の直径の変化を測定。蒸    散が盛んなとき(昼)には、木部にかかる張力によって、実際に幹が縮むことを観    測。

プリント:陰圧になる道管、陽圧になる師管

 

   形成層:分裂を続けて、茎を太くする。木本では年輪ができる。

    双子葉植物:維管束は輪状に並び、形成層がある。

    単子葉植物:維管束は散在しており、形成層がない。(「プロレスラーのマスク」          みたいな断面図)

 

   根:根冠:根端分裂組織(成長点)、根毛

     根から茎への維管束の移行:根では木部と師部が交互に並ぶ。茎では木部と師     部が集まる。

 花:これは、被子植物の生活環、生殖・受精のところでやりましょう。

 

プリント:植物の組織と器官・英語版

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★顕微鏡実習:ヒヤシンスの根端分裂組織における、体細胞分裂の観察

プリント:対細胞分裂の模擬実習。こんな分裂像が見えるはずだよと示唆しておく。

 

★教卓上にボルボックスのいるビーカーを置き、肉眼で観察。初めての生徒多い。

 

 

29

★動物の組織と器官

プリント:動物の組織と器官(穴を埋めながら)

動物の組織は四つ。

・上皮組織:保護上皮(単層、多層)、繊毛上皮、腺上皮、吸収上皮、感覚上皮など

・筋組織:横紋筋(骨格筋)力は強いが疲労する

     平滑筋(内蔵筋)力は弱いが疲労しにくい

     心筋(横紋筋)疲労しにくい

・結合組織:繊維性結合組織(コラーゲン)、脂肪組織、血球(赤血球、白血球、血小板)、      骨組織(骨髄、ハバース管、造血幹細胞、骨細胞、破骨細胞)、軟骨組織など

・神経組織:「ニューロン」(単位):細胞体、樹状突起、神経繊維(軸索)、髄鞘、シナ      プス、神経末端

 

・器官

 例:小腸

   結合組織:しょう膜で包まれる。血管、リンパ管が巡っている。

   筋組織:縦走筋、環状筋:ぜん動。内容物を撹拌し送る。

   神経組織:自律神経が入っている。

   上皮組織:粘膜上皮、分泌上皮、吸収上皮がある。

  小腸自体に多数のひだがあり、ひだの上に柔毛がある。更に柔毛の上皮細胞に微柔毛  がある。小腸の内面の表面積は約200uにもなるという。

プリント:ラットの小腸の微柔毛の電子顕微鏡写真

プリント:「腸は考える」より。小腸の吸収上皮細胞は陰窩で分裂によって生まれ、柔毛先端へ送られていく。寿命は約3日。基底顆粒細胞(パラニューロン)の話。ヒト、ゴキブリ、ヒドラに同じ形状・機能の基底顆粒細胞が存在する。腸の内容物の「味」を感じ、その情報を発信している。「腸は考える」「人も昆虫も変わりませんね」藤田・宇尾。

 

 

 

 

 

 

30          職員室で捕まえたヤモリを授業に連れて行く

★代謝

プリント:物質代謝、エネルギー代謝の概観図

 生物は動物も植物もグルコースなどの「異化」でエネルギーを取り出す。(酸化)

  そのエネルギーを生命活動のエネルギーとして使う。

  そのエネルギーを使って、「材料」から生体物質を作る。これを「同化」という。

  窒素固定、窒素同化、タンパク質合成・・・

  「材料」は動物は食料から、植物は根から獲得する

  代謝過程で生じた老廃物(二酸化炭素・水・尿素・・・)は排出する.(Excre  tion)

  植物も呼吸をし、二酸化炭素や水を排出していることを忘れないように。

  異化の材料をどうやって獲得するか。

   動物の場合:食料として。(食べて排出するのは、Egestion。)

   植物の場合:光合成植物では、光のエネルギーを使う炭酸同化(還元)によって。

         化学合成植物では、化学反応(酸化)のエネルギーで炭酸同化(還元)         を行って

 

物質やエネルギーの流れの中で、生命活動を行い、秩序を維持し続けるのが生命。

この過程を「代謝」という

 複雑な分子を小さな分子に変えていく過程でエネルギーを得るのが:異化

 エネルギーを用いて小さな材料分子から複雑な生体分子を作るのが:同化

 

ATP:生物が生命活動をするときに使うエネルギーの具体的な形としての分子。

 adenosine tri phosphate→ATP

 adenosine di phosphate →ADP

(p.34参照)

 核酸塩基のアデニン+五炭糖のリボース ←これをアデノシンという

 アデノシン+P〜P〜P ←これがATP

 「〜」の結合を「高エネルギー結合」といい、

   ATP → ADP + P + 7〜10[kcal/mol]

  のエネルギーが放出される

 [cal]は使わず[J](ジュール)を使うのがこれからの流れ。

   1[cal]= 4.2[J]

 7〜10kcalというのは「莫大」なエネルギーではない。

 「高エネルギー結合」という言い方は、「生化学地方」独特の表現というべきでしょう か。

 例え話:でこぼこ道を、でこぼこを無視してつぶしていくローラー、という感じではなく、でこぼこを感じながら乗り越えていく自転車、という感じでしょう。ここでいう「でこぼこ」とは常温で水分子が動き回り絶え間なくランダムに衝突してくる熱運動のイメージです。突き当たってくる水分子の熱運動など無視して圧倒的なパワーで反応を進めていく、というよりは、熱運動にふらつきながらも多少上回るパワーで出来事を進めていくのがATPのエネルギーと考えたほうが良いでしょう。場合によっては、熱運動のエネルギーを利用し、コントロールするのにATPを使うこともあるようですよ。(筋肉の運動についてそういう説が出ています。)

 凍えているところへ、ダイナマイトをもらった。ダイナマイトに火をつければ膨大な熱エネルギーが得られるが、爆発で死んでしまう。ナイフで削って少しずつ火をつければ暖が取れる。10万円金貨や、小判を持っていても、自販機は使えない。100円玉、500円玉なら使い勝手が良い。ATPは「エネルギー通貨」、しかも「小銭」」考えたほうが良い、こんな例え話もしましたね。

プリント:ATPについて。ATPの結晶。

生体内の化学反応

 大豆たんぱく質を塩酸でぐつぐつと煮るとアミノ酸に分解されることはされるのですが、十時間もかかります。(この分解液は塩酸酸性なので、炭酸水素ナトリウム(重曹)で中和すると食塩が生成して塩味となり、これを「アミノ酸醤油」といって流通したことがあるのだそうです、戦後のもののない時代にね。)

一方、大豆を食べた場合、

 大豆たんぱく質は体温(38℃程度)の穏やかな反応条件下で数時間もすればアミノ酸に分解されます。実に穏やかな反応条件で、短時間で化学反応が進むのはなぜでしょう?

 化学反応の速さを速くし、それ自体は反応の前後で変化していないような物質を

  「触媒」(Catalyst)といいます。

 

今、 A + B → C + D    という化学反応があったとします

 

 

 

 

 

 

 

 山の上のダムに溜まった水は低いほうへ流れるのが安定ですが、ダムを乗り越えなければ流れ落ちることはできません。

 私たちの体や、紙にも絶え間なく酸素分子が衝突していますが、体も紙も発火しません。これは室温での酸素分子の運動エネルギーでは活性化エネルギーを越えることができないからです。ライターで紙に火をつけると、激しい熱運動で衝突し活性化エネルギーを越えるようになるので燃えはじめます。燃えると熱が放出され、激しい衝突が維持され、燃え続けるようになるのです。

 触媒は活性化エネルギーを低くすることによって反応速度大きくしているのです。例えていえば、ダムの壁に穴を開けたようなものです。

2H    2HO + O2   (過酸化水素水の分解反応)

 オキシフルを買って放っておけば1年位もかかってゆっくりと進行していく反応です。小学校の理科でやったのではありませんか?二酸化マンガン(正式には「酸化マンガン(W)」といいます)を少量加えると、直ちに反応が進んで酸素ガスがブクブク出て、これを集めてマッチの燃えさしや線香を入れるとパッと炎が上がるという実験ね。

 傷口に塗るとブクブク泡が出て消毒されるのですね。しみるけど。酸素ガスになる前の原子状酸素が強い酸化力を発揮して消毒するのです。つまり、生体には酸化マンガン(W)と同じような働きをする物質があるのです。

 このような生体内で働く触媒作用を持つ分子を「酵素」といいます。酵素はたんぱく質です。過酸化水素の分解に際しては、カタラーゼという酵素が働いてます。

 ある歯科医が、歯の治療で過酸化水素水を患者の歯茎に塗ったところ泡が発生しなかったため、このことから「無カタラーゼ症」という遺伝子病が発見されたと聞いたことがあります。ただ、過酸化水素を処理できる酵素は他にもあるので、生活に支障のないことが多いそうです。

 生物体内では酸素を使ってエネルギーを獲得していますが、酸素を使う限り必ず「活性酸素」が発生してしまうことはやむをえません。過酸化水素も活性酸素の一種なので、生体は、発生する過酸化水素を直ちに分解するべく、カタラーゼを持っているわけです。従って、体中どこにでもカタラーゼは存在するのです。肝臓(レバー)を使った実験がよく行われるため、カタラーゼは肝臓に存在すると思い込んでしまうことがありますが、肝臓のみに存在するのではないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★酵素の働き

酵素はたんぱく質です。たんぱく質というものは

  一次構造:アミノ酸の並び

  二次構造:αラセン、βシート:分子内の構造

  三次構造:分子の形

  四次構造:複数分子が集まって一定の形をとって働く

こういう特性がありました。

酵素はたんぱく質であり、特定の形をとる、ということから、酵素の性質が現れてきます。

 1:酵素は自分の形に適合する特定の形を持つ分子と結びつくことによって反応を媒介   する。

   酵素が結びつく相手のことを「基質」といいます。基質と酵素は「鍵と鍵穴」のよう   な関係にあるのです。このような、特定の基質とのみ結びついて反応を媒介するこ   とを酵素の「基質特異性」といいます。

    アミラーゼはアミロースをマルトース(二糖)まで切る。

    マルターゼはマルトースをグルコース(単糖)に切る。(枝きり酵素というのもあ    りますが今は省略)

   酵素の名前 = 基質の名前 + 語尾「アーゼ」(−ase)

    アミロースに働くからアミラーゼ

    マルトースに働くからマルターゼ

    洗剤の「アルカリプロテアーゼ配合」というのは、アルカリ性で働くたんぱく質    (プロテイン)分解酵素という意味ですね。

 

 2:たんぱく質には「変性」という現象が存在します。変性とは、たんぱく質の形が不   可逆的に変わってしまって働きを失うことです。

    熱変性:調理では「煮る」「焼く」といった操作で食材のたんぱく質を変性させ    て消化しやすく、またおいしくしていますね。

    酵素では変性してしまったら働けなくなるのです。ですから「最適温度」という    ものが存在します。動物では体温程度。60℃を超えると大抵「失活」します。   (活性を失うということです)。(DNAを大量複製する方法であるPCR法で使    われるDNAポリメラーゼという酵素は、好熱菌のもので、90℃位でも失活し    ません。)

    図説:酵素と無機触媒の温度依存性のグラフ参照

 3:酸による変性。調理では「酢でしめる」という操作があります。pHが変化すると、   たんぱく質の側鎖のカルボキシル基やアミノ基の電離状態が変化し、結果としてた   んぱく質自体の形が変化して変性してしまうのです。

   従って、たんぱく質である酵素には「最適pH」が存在します。

   口で分泌され中性付近で働くアミラーゼ、胃で分泌されpH2程度で働くペプシン、   十二指腸で分泌される炭酸水素ナトリウムで中和されてから弱アルカリ性側で働くトリプシンなど。

   図説:最適pHのグラフ参照

 

酵素は基質と結びついて働くということから、基質濃度と反応速度のグラフ、酵素濃度と反応速度のグラフを見てください。

  基質濃度が十分高い場合→反応速度は酵素濃度に比例する。基質が不足すれば頭打ち。

  酵素濃度が十分高い場合→反応速度は基質濃度に比例する。酵素が不足すれば頭打ち。  頭打ち状態での速度は、酵素濃度に比例。

 そう難しいことではないのですが、グラフから情報を読み取るということは大切なので納得できるまで考えてください。

 

・酵素が単一分子でなく部品を持つことも多い。

  ホロ酵素(酵素全体)=アポ酵素(たんぱく質部分)+補酵素(比較的小さな部品。  非たんぱく質部分)  という関係にあります。

  ビタミンには補酵素として働くものも多い:図説:補酵素の表参照

   ビタミンB2(リボフラビン)→FAD、FMN→脱水素酵素

   ニコチン酸→NAD、ADP→脱水素酵素

   パントテン酸→CoA→アシル基転移酵素

    NAD、補酵素A(CoA、Coenzyme A)は知っておくと良い。後でま    た出てきます。

 

プリント:主な酵素とその働き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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実験:トラウベの実験

 0.3[mol/l]の硫酸銅水溶液を200mlメスシリンダーに入れて配布

 フェロシアン化カリウム(黄色)(ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム)結晶を配布

 メスシリンダー中で反応、5分毎に成長をスケッチ

 約30分でメスシリンダー上部に到達するものあり

 K[Fe(CN)] + 2Cu2+ → Cu[Fe(CN)

                     これが半透性の膜を形成

 内部が濃いので水が浸透。内圧が上がる。水圧との関係で上のほうで破れる。流出した 液とまた反応して膜を作る。この繰り返しで、おおよそ上のほうへ成長していく。この 「成長」をとらえて、細胞のようだとして「トラウベの細胞」とも呼ばれる実験です。

 

33 

// おまけ:30時間目の授業でヤモリを連れて行ったので。//

プリント:ヤモリの足の吸着力は原子間力。

 

★消化器官

1:細胞内消化:アメーバ、ゾウリムシ、カイメン・・・

   細胞の中に直ちに外界の物質を入れてしまうわけにはいかないので、外界を切り取  って食胞の中に閉じ込めて取り込む。食胞の中へ(=外界へ)消化酵素を分泌して消  化・吸収する。

2:細胞外消化(肛門がない):ヒドラ(内胚葉・外胚葉のニ層性生物)。プラナリア。

3:細胞外消化(口から肛門へ。「管」状の生物)

  発生のときの原口が成体の口になる動物群を、旧口動物(軟体動物、節足動物など)  という。

  原口が成体の肛門になり、口は新たにつくる動物群を新口動物(脊椎動物など)という。

 

プリント:ヒトの体は「管」である。ドーナツである。

  口から取り入れ(Ingestion)肛門から排泄する(Egestion)    生命活動に伴う廃棄物の排出はExcretion

 

・教科書第2部序章。レオミュールが行ったトビでの胃の働きの話。1752年ごろ。穴の開いた金属容器に肉を入れ、トビに飲み込ませる。数時間後金属容器を吐き出させると肉が溶けていた。「消化作用は胃液と肉片との間で行われる化学反応である」

プリント:「胃学」のはじまり(「胃は悩んでいる」より)

プリント:ウイリアム・ボーモント(Newton 2003.8)(このプリントは実     際には、学期末に追加したもの。)

・ボーモントの実験:1820〜30年代。事故で胃に穴が開いてしまった青年アレクシスの胃で実験・観察。

 口:アミラーゼ:中性付近で働く。胃に入れば酸性になって働きが止まるのになぜここでアミラーゼが必要なのか?食べたものがでんぷん質であることが舌に感受されるのではないだろうか?味が分からなければ何を食べているのかまったく分からない、危険だし、食欲もわかない。(砂は食えない。)

 胃:ペプシン、リパーゼ(リポ+アーゼ=脂肪を分解する酵素)

  胃での胃酸(=塩酸)の分泌について

   HO + CO → H + HCO

  細胞内では電離度の低い弱酸しか扱わないようにしないと危険です。プロトンポンプ  で水素イオンを汲み出すと、外部で塩化物イオンとペアになって塩酸=強酸となりま  す。炭酸水素イオンのほうは十二指腸で胃液の中和に使われます。

プリント:「胃は悩んでいる」より。胃液の分泌について。

 ヘリコバクター・ピロリ:尿素からアンモニアを生成して胃酸を中和し胃の内部で生き ることができるようです。胃潰瘍の原因と考えられるようになってきました。ピロリ菌 の除菌が有効だそうです。

 

 すい液:トリプシン、キモトリプシン、ペプチダーゼ、リパーゼ、アミラーゼ

 胆汁:胆汁酸。脂肪の乳化(界面活性作用)

 腸液:ジペプチダーゼ、マルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼ

 消化酵素の活性化:たんぱく質分解酵素は細胞にとって危険な分子です。ですから不活 性の状態で分泌されて、必要なところで活性化されて働きます。

  ペプシノーゲン → ペプシン

  トリプシノーゲン→トリプシン  など

  「ゲン」は「gen」ですね。元素名の「Hydrogen」=水をつくるもの、   「Oxygen」酸をつくるもの、などの「gen」と同じ意味です。「〜をつくる  もの」(generateの意味)

  血液凝固の繊維性たんぱく質はフィブリンといいますが、傷ができたら直ちにふさがなくてはならないけれど、やたらなところで固まって血管をふさいでしまっては危険ですね。そこで、血液中にはフィブリノーゲンという形で溶かし込んでおいて、必要なときには活性化して凝固させるわけです。危険なものの取り扱いについての生体の安全システムはすごいですね。

 

プリント:食物吸収・消化プロセス:英語版。

 

 

 

 

 

 

 

 

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★呼吸

 ガス交換(外呼吸)                    動脈

       →肺静脈(動脈血)→ (左心房)→ (左心室)   →→→→

  肺(肺胞)   肺循環        心臓      体循環  体組織

       ←肺動脈(静脈血)← (右心室)→ (右心房)   ←←←←

                              静脈

 

 ・・・右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→体組織→大静脈→右心房 →・・・

 

 肺胞は「ブドウ状」だがプチプチ固いものではない。コップに盛り上げた泡のようなもの。水の表面が縮もうとする力(表面張力)でつぶれてしまう。界面活性剤が必要。肺サーファクタントという(p.23参照)。体内でまだ肺サーファクタントを生産していない未熟児が救えるようになりました。胎児の時代は胎盤への循環をしていて、肺循環をバイパスしていたのが、出生して「産声」をあげると、循環を切り替える。一大事業を新生児はしなければなりません。(出産時に産道で体に加えられる強い刺激が産声を上げる引き金になるのだそうです。帝王切開でその刺激なしに外界へ出てきてしまった新生児には、医師がわざと強い刺激を体に加えて産声を誘発するのだそうです。)

 

 ・酸素の運搬:ヘモグロビン

  グロビンたんぱく質のα鎖2つとβ2つが組み合わさって四次構造をとります。それぞれのグロビンたんぱく質にはヘムがある。ヘムはポルフィリン環の真ん中に鉄イオンを周囲の窒素原子からの配位結合でとらえた形をした平面型分子で、鉄イオンのところで酸素分素を捕まえる。(ポルフィリン環については光合成の項を参照。ポルフィリン環は植物のクロロフィルにも使われ、このときは中心のイオンがマグネシウムである。)

  ヘモグロビンが酸素を捕まえる能力は周囲の酸素濃度に比例するわけではない。一つのヘムが酸素と結合すると、ヘモグロビンの四次構造に変化が起き、より酸素と結びつきやすくなる。酸素濃度の低いところでは、その逆の傾向を持つ。

  その結果として、酸素濃度−酸素飽和度グラフは、比例の直線グラフではなく、S字型の「解離曲線」を描くことになる。

  通常、「酸素分圧」を使用するが、これは酸素濃度と考えてください。

  胎児と母体の解離曲線を比較すると、母体のヘモグロビンの酸素飽和度が低い状況でも、胎児のヘモグロビンの酸素飽和度は高い。子宮は母体にとって一つの臓器であり、ここだけに特別酸素を豊富に送るということはできないのです。胎盤内に放出された母体の血液から、胎児は自分のヘモグロビンを使って酸素を吸収しなければなりません。このとき胎児ヘモグロビンの特性によって、低酸素濃度の血液から酸素を獲得することができるのです。(「血を分けた子」というのはウソだよ。血は決して混じらない。)

  出生後、新生児は胎児時代のヘモグロビンを急速に分解して、成人ヘモグロビンの生産を始めますが、このとき分解されたヘモグロビンのヘムから生じたビリルビンが「新生児黄疸」を引き起こします。生理的なものなので長びいたりしない限りあまり心配は要りません。

  大人でも、赤血球は寿命が来ると分解され、ヘムはビリルビンとして胆汁の成分として分泌され、便の色となります。何を食べても大体同じような茶色系の色の便が出るのはそのためです。もし、ビリルビンが血液に乗って循環してしまうと黄疸となり、肝臓の機能の障害が疑われます、これは危険な状態です。(黄疸のときは白目も黄色くなるよ。ミカンの食べすぎで、カロチン色素過剰となり、皮膚が黄色味を帯びてしまうことがある(実は子供のころ私はそうなった。)このときは白目はちゃんと白いので、分かる。)

 

 ・二酸化炭素の運搬

  二酸化炭素は血しょう中に溶け込み、赤血球の中の炭酸脱水酵素の働きで炭酸になる。

   CO + HO ⇔ HCO ⇔ H + HCO

  炭酸水素イオンは血しょう中でナトリウムイオンとペアとなる(炭酸水素ナトリウム)

  水素イオンはヘモグロビンと結合して運ばれる。

  肺胞では逆向きの反応で二酸化炭素が排出される。

  血しょう中の炭酸水素イオンの存在は、血液のpH緩衝作用に重要である。(血液の  pHは厳密に保たれていて、そう簡単に変動はしません。アルカリ食品・酸性食品と  いう話は無意味です、信じちゃいけません。バランスの良い食事をしましょう、位に  受け流してください。)

  「過換気症候群」では呼吸のし過ぎで二酸化炭素を排出しすぎて血液のpHに変動が  起こりそうになるのです。このときは口に布や紙袋を軽く当て、自分の呼気を大目に  吸わせると、二酸化炭素が増えて、収まります。(夏の合宿などで出会うかもしれな  いので、知っておくと良いよ。)

プリント:動物の呼吸器官

 

ここまでは「ガス交換」としての呼吸の話でした。ここからは「呼吸」の意味が変わります、注意!

ここからの「呼吸」とは、

 炭水化物、たんぱく質、脂肪などから化学反応でエネルギーを取り出すこと、です。

 

 取り出したエネルギーはATP(アデノシン三燐酸)に貯えられます。(エネルギーの小銭、通貨でしたね。)

 何からエネルギーを取り出したのか、その対象を「呼吸基質」といいます。

プリント:呼吸基質と呼吸商

  生物がガス交換としての「呼吸」をしたときに、どれだけの酸素を吸収し、どれだけの二酸化炭素を排出したかを測定してその比をとると、体内でエネルギーを取り出す過程としての「呼吸」で何を主な基質として用いたかの推定ができます。

  放出される二酸化炭素量と酸素量の比を「呼吸商(RQ)](Respiratory Quotient)といいます。

 炭水化物ではRQ=約1、脂肪ではRQ=約0.7、たんぱく質ではRQ=約0.8

 草食動物のウシと,肉食動物のネコのRQの違いははっきりしてますね。

  でんぷんを多量に持つコムギの発芽と、油脂を多量に持つトウゴマの発芽のRQの違 い、コムギでんぷんとごま油ですものね、納得してしまいますねぇ。

  マクロな測定から、生物体の内部で起こっている化学反応について情報が 得られる というところが面白いですね。

 

 酸素を使わずにエネルギーを取り出す過程を「嫌気呼吸」といい、酸素を使ってエネルギーを取り出す過程を「好気呼吸」といいます。

  「好気」は英語で「aerobic」、エアロビクスは本来、有酸素運動のことでな のです。エアロビクス運動の後に息を切らせているのはおかしなことですね。

  「嫌気」は英語で否定の「a」をつけます。「anaerobic」です。短距離走は アネロビックな運動であり、筋肉に酸素負債を負わせるので、太い筋肉を必要とします。 マラソンはエアロビックな運動なのでモリモリの筋肉の選手は少ないでしょ。筋肉の酸 素負債だけで42.195kmを走りきるのは無理です。走りながら酸素を使った代謝 によってエネルギーを得ているのですね。ですから体重も減るのです。途中でカロリー 補給も認められてますよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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★呼吸はエネルギーを取り出す過程

エネルギーを取り出すというのはどういうことなのでしょう?

図:富士山の頂上にダムを作って貯水するとします。現在の海面までの落差3776m。ダムの水を流して発電すれば3776m分の落差のエネルギーが利用できます。もし、海面が2766m上昇したら、山頂との落差は1000mとなってしまい、どう頑張っても1000mの落差ぶんしかエネルギーを取り出せません。

 エネルギーを取り出す過程もこれと同じで、エネルギーの相対的な落差を利用するのです。

 20億年ほど前までは地球上に遊離の酸素分子がなく、我々真核生物のご先祖様も無酸素で有機物を分解する過程でエネルギーを取り出していた。光合成細菌の活動により放出された酸素がこの20億年ほど前の時代からは遊離酸素分子として空気中の濃度もあがり始めた。酸素はその強い酸化力のために「猛毒」物質だったのであり、無酸素で生きてきた生物たちの大絶滅が起こったという。その中で、酸素の酸化力を利用して有機物を二酸化炭素と水にまで分解して大量のエネルギーを取り出せるようになった細菌がいたらしい。真核細胞の祖先はその細菌を取り込んで、細胞内器官として共生し、酸素を利用できるように進化した。これがミトコンドリアの始まりであろうといわれる。(そのまま進化の道筋をたどったのが我々動物の系統であり、更に光合成細菌を取り込んで葉緑体という細胞内器官として共生するようになったのが植物たちである。)(SF話だが、もしフッ素を利用して酸化を行う生物が出現したら、その生物はエネルギー落差がもっと大きくなって、効率の良いエネルギー獲得ができるかもしれないが、フッ素の毒性により、現在の地球上の酸素利用生物は全滅するであろう。)

 我々真核生物は、細胞質基質において無酸素時代のエネルギー獲得法を維持し、酸素を用いたエネルギー獲得はミトコンドリアにまかせている。38億年の進化の歴史が、今現在の我々の細胞の中にも維持されているのである。

 

嫌気呼吸

★解糖系

           ↓2ATPを使用

 グルコース(C6)→→→不安定化→→→分子を二つに分割:ピルビン酸(C3)×2

                  ↓4ATP、2NADH を獲得

 差し引きで2分子のATPを生成:これが解糖系で得られるエネルギーの全量です。

 「NAD」は「水素原子運搬体」と理解してください。水素原子を失った酸化状態がNAD、水素原子を受け取った還元状態がNADHです。(大学では酸化状態をNAD+、Hを受け取った還元状態をNADHと表します。戸惑わないように。)

 「FAD」というものもいずれ登場しますが、NADより少し性能の落ちる水素原子運搬体と理解してください。

 さて、エネルギーが得られるからといって、このまま次々とグルコースの分割を続けるわけにはいかない。生成したピルビン酸が蓄積してしまうことと、水素原子を受け取るべきNADが底をついてしまう。ピルビン酸を取り除くことがこの化学反応を右に進める原動力になるわけだし、NADHを消費して、NADを再生しなければならない。

   そこで

★アルコール発酵

           CO2           NADH2  NAD

 ピルビン酸     ↑    アセトアルデヒド  ↓    ↑   エタノール

CHCOCOOH       CHCHO         CHCHOH

                      還元(アルデヒドの還元でアルコール)

ピルビン酸から二酸化炭素を取り除き、アセトアルデヒドとし、NADHの還元力で還元してエタノールを得る。

 これにより反応系からピルビン酸が取り除かれ、NADが回復して、解糖系の反応を持続的に進行させることができる。

 

[デモンストレーション]試験管中砂糖水を作りドライイーストを入れ、湯につけて50℃程度に保つ。泡が盛り上がり、試験管からこぼれるほどになる。

 ・自宅でドライイーストを使って発酵によってパンを作ったことのある人いませんか?  (約60人中で2,3人いる)

 「これが」ピルビン酸から切り離された二酸化炭素の泡です。試験管中にはエタノール が生成しているはずですが、今日はチェックしません。(実は、この程度の発酵で、ヨ ードホルム反応を試みてもなかなかうまくはいかない。)

 ・ビール、シャンパン、など発泡性のお酒があるでしょ。あれは、この反応です。もち ろん酒造りはアルコール発酵の利用です。

 ・さらに酢酸発酵というのがおきると酢になってしまいます。米酢、ワインビネガー、 柿酢、黒酢・・・

 

★乳酸発酵。筋肉での解糖。

          NADH2  NAD

 ピルビン酸     ↓    ↑     乳酸

CHCOCOOH        CHCH(OH)COOH

            還元

 アルコール発酵と同様にピルビン酸を反応系から取り除き、NADを回復させている。 筋肉内で酸素が不足すると乳酸が生成する。筋肉痛の原因。長距離ランナーが練習中や練習後に血液中の乳酸濃度を測定するのはどの程度の無酸素負荷がかかっているか、筋肉の疲労の度合いはどの程度かを知るためである。

 

 「発酵」と「腐敗」は人間の尺度による。人間にとって有用なものは発酵。アルコール発酵、乳酸発酵、酪酸発酵、プロピオン酸発酵、酢酸発酵。酒、パン、ヨーグルト、チーズ、漬物、食酢、納豆、味噌、しょうゆ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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!!!グルコースを食べよう!!!

 市販の「ブドウ糖」という飴を全員で舐める。袋のコピーをプリントして配布。

プリント:「ブドウ糖」

 

★好気呼吸

1:解糖系でグルコースからピルビン酸まで。

  ATPの生成と、NADHの生成。(収支決算は後で)

2:ピルビン酸(CHCOCOOH)から二酸化炭素を取り除き、残った CHCO(ア  セチル基、アシル基の一種)を補酵素Aに渡す。アセチル補酵素A(アセチルCoA)  の生成。

  補酵素Aは実はパントテン酸。アシル基転移酵素の補酵素。アセチルCoAがつかま  えているアセチル基をオキサロ酢酸に転移させてクエン酸を作る。

 

         CHCOCOOH

           ↓ → CO2, NADH2 ,2ATP

           ↓ ← CoA

         アセチルCoA

           

 オキサロ酢酸(C4)→→→→→→→→→クエン酸(C6)

 ↑                   ↓

 ↑       クエン酸回路      ↓  高エネルギー水素を作り出す

 ↑                   ↓

  ←←←←←←←←←←←←←←←←←←←

 

 グルコース1分子からはピルビン酸2分子ができるので、ピルビン酸以降の経路は2回たどられることになる。

 

 結果として、

  二酸化炭素を6分子放出

  水を6分子消費

  回路一回の回転で4回の酸化(脱水素)

  NADHが8分子生成、FADHが2分子生成

  ATP2分子を生成

 このクエン酸回路の主要ポイントは高エネルギー水素原子の生成にある。

 この回路自体は酸素を必要としていないが、水素運搬体のNADHやFADHが、 酸素を必要とする次の段階によって酸化型に戻されてこないと、回路の進行は維持でき ない。従って、無酸素ではこの回路は停止してしまう。

プリント:解糖系とクエン酸回路の概念図

3:水素(電子)伝達系

 ミトコンドリアの内膜に埋め込まれた一群の酵素群が水素(電子)伝達系。鉄イオンを含んでおり、2価と3価の間を行き来しながら電子を次々と渡していく。

 ミトコンドリアのマトリクス側からNADHやFADHが水素(電子)伝達系にやってきて、エネルギーの高い電子を渡し、水素イオンを生成する。

 

 4H → 4H+ 4e

 

 

      エネルギー落差

 

 

       4e + 4H + O2 → 2H

 

 酸素の強い電子を引きつける力によってこのエネルギー落差が生じている。酸素は危険な分子なので、やたらと活動してもらっては困る、危険極まりない。4個の電子がそろうまで電子を待機させておき、そろったところで、一挙に酸素原子に渡して水に変えてしまうのである。

 高エネルギー電子がエネルギー落差を流れ落ちるとき仕事をすることができる。燃料電池ではまさにこのエネルギーで、外部で仕事をするわけである。

 ミトコンドリアでは、電子がエネルギー落差を流れ落ちていくときに、そのエネルギーを使ってマトリクス側から膜間腔へ水素イオンをくみ出している。すると、膜間腔での水素イオン濃度はマトリクス側に比べて100倍以上も濃くなる。この濃度差を次にATP合成酵素が利用する。ATP合成酵素は、内膜に埋め込んだ軸に、3つのユニットが結合したモーターのような格好をしている。膜間腔からマトリクス側へ濃度勾配にそって流れ込む水素イオンの勢いが、このモーター構造をしたATP合成酵素を回転させ、その回転の際にADPに無機リン酸を結合させてATPを作っているのである。

 我々の体は60兆個の細胞でできているという。その細胞の全てで、今、現在、ATP合成酵素がクルクルと回っているところを想像してみてほしい。すごいことだねぇ〜。

 1日に100kgを超すATPを我々は作っているそうだ。想像してみて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

37

★好気呼吸のまとめ

プリント:水素(電子)伝達系のエネルギー概念図:電子はエネルギーの落差を落ちて水素      イオンをくみ上げるという仕事をし最終的に酸素 分子に渡される。

     ミトコンドリア内膜に埋め込まれた水素(電子)伝達系の図

 

プリント:ATP合成酵素のイラスト。水素イオンの流入で回転するモーターのイメージ。

     酸素分子に電子を1個ずつ渡すと危険な活性酸素が生じてしまうので、4個ま     とめて酸素分子に渡す。

     活性酸素とはどんな分子か。

   O + e → O

    + e + 2H → H

   H + e− + H → HO + H

   HO + e− + H → HO        

計  O +4H + 4e− → 2H

 

プリント:生物の回転モーター。回転の分解写真。

     インターネットで動画が見られる。私の手元にも置いてあるから見に来てもよ     い。

プリント:燃料電池の概念図

     燃料電池のエネルギー的概念図:外部回路に電気的な仕事。

     電子伝達系のエネルギー的概念図:水素イオンをくみ上げる。

    類比に注目!「ミトコンドリア電池」は可能か?

 

好気呼吸の総決算

  T:解糖系     C12→2C+4H     +2ATP

  U:クエン酸回路  2C+6H→6CO+20H +2ATP

  V:電子伝達系   24H+6O→12HO       +34ATP

       C12+6O+6H→6CO +12HO+38ATP

  グルコース1molから計38molのATPをつくる

  グルコース1molの完全燃焼では686kcalを発生

  ATP1molが8kcalとして

  686/(38*8)=0.44

  エネルギー効率44%:これは非常に高い効率である。

 

◎クエン酸をなめる[全員で]

  クエン酸の分子式、構造式、3価のカルボン酸。

  クエン=枸櫞:マルブシュカンの漢名

プリント:牧野からマルブシュカンとブシュカンのイラストなど

プリント:「コウジ黒酢」の広告から:「クエン酸がクエン酸回路を活性化する」というのは     ウソ!

プリント:スーパーのパンフレットから:「水」の不思議を科学する!

     「体の中でできる水:300ml」

     これは代謝水

     カンガルーネズミと代謝水:カンガルーネズミは水を飲まなくても好気呼吸に     よって生産される水で生きられる。

     1日2000kcalを消費しすべてがグルコースの好気呼吸からまかなわれ     たとすると

686kcal:2000kcal=6molHO:xmolH

x=17.5molHO=315gHO(代謝水。生きる限り水を作る。)

生きることの本質は「うんち」ではなくて「おしっこ」とか「あせ」にあるようだね。おしっこが出なくなったら、命は終わりに近いのかもしれない。

この2000kcalがATPに由来するとして

2000/8=250mol  ここでATPの分子量は500

250*500=125000g =125kg

毎日、体重を越える125kgものATPを作っては使い、を続けているのです。

プリント:燃料電池:「携帯」の持ち 水素パワーで数倍に。パソコンや電話に「燃料電池」     小型容器のアルコールで。

     家庭用コジェネシステム。携帯電話。燃料電池自動車。携帯液晶テレビ。ノー     トパソコン。デジタルカメラ・ビデオカメラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

38

 動物も植物も「呼吸」によって生きるためのエネルギーを得ていることは、大事なことなので確認しよう。呼吸は動物、植物は光合成、と考えてしまいがち。植物も呼吸します。

 動物も植物もミトコンドリアを持っており、クエン酸回路、水素(電子)伝達系を使って好気呼吸を行いATPを合成していることにおいては同じです。進化の過程で、真核生物の先祖は先ず、ミトコンドリアの先祖を獲得した。その後に植物の系統は分かれていったのでしょう。

 ただ、呼吸の基質をどうやって得るかについては異なってきます。

動物は従属栄養であり、他の動植物を食べることによって呼吸基質を得ているが、植物は光合成によって自ら必要な呼吸基質を生産しているのである。これを独立栄養といいます。

炭酸同化

 化学反応(酸化)の過程で得られるエネルギーを利用して、二酸化炭素を還元して有機物 を作るのは、「化学合成」

 光のエネルギーを用いて二酸化炭素を還元して有機物を作るのは「光合成」

窒素同化

 無機窒素化合物(アンモニア、硝酸イオン、亜硝酸イオンなど)からアミノ酸を合成する のは「窒素同化」

空気中の窒素ガスからアンモニアを合成するのは「窒素固定」

 

・光合成

1:地球に降り注ぐ太陽光線のエネルギー分布(グラフ)

  陽の表面温度は6000度位なので、それに応じたエネルギー分布がある。この光の 中で進化してきた我々地球上の生物にとっては、太陽光線のエネルギー分布を持つ光を 「白色光」と感じる。もし、もっと表面温度が低くて我々にとって「赤」っぽく見える 星の惑星上に進化した生物ならそのエネルギー分布をもって「白色光」と感じ、我々の 太陽の光を「青」っぽい、というであろう。シリウスのような表面温度が高くて我々に とって青っぽく見える星の惑星上の生物なら話が逆転する。

  さて、地表面に降り注ぐ光のうち、我々ヒトが視覚に利用している光を可視光という。 可視光より波長が短い側に紫外線がある。この紫外線は、大気上層のオゾンで吸収され、 かなり強度を弱めて降り注いでいる。紫外線はエネルギーが強く、細胞内にあって遺伝 情報を担っている分子であるDNAに吸収されるとDNAを傷つけるので、非常に危険 である。

  一方、可視光より波長の長い側には赤外光がある。全ての物体はその温度に応じた波 長の赤外光を放射する。地表に降り注いだ光で地表面が暖まり、その温度に応じた赤外 光を放出したとき、赤外光を吸収しやすい物質が大気中にあると、赤外光を吸収して熱 が宇宙空間に放散されることを妨げてしまう。これが温室効果である。

2:光合成の作用スペクトル

  アオミドロのような細長い藻に、プリズムで分光した光をあてる。さらに、酸素を好 むバクテリアを入れておく。すると、バクテリアが酸素の濃いところ、すなわち、光合 成が活発に行われているところに集まってくる。これによって、藻類が何色の光を用い て光合成を行っているかがわかる。(1882年、エンゲルマンの実験)

  白色光を分光して、各波長に対して光合成速度をプロットしたものが作用スペクトル。 植物が光合成に利用している光が分かる。

3:クロロフィルの吸収スペクトル

  クロロフィルa,bなどの色素の吸収スペクトルを取ると、それが作用スペクトルと よく一致する。これにより、クロロフィルが実際に光合成色素であることが分かる。

  クロロフィルの吸収スペクトルや、光合成の作用スペクトルでは、紫や青、赤が吸収 され、緑や黄は吸収されない。我々が植物は緑だ、と見ているのは、植物が利用しなか った色を見ているのであることに注意。光と色の関係では、白色光から何かの色の光が 吸収されると、反射・透過光はその補色になるということを覚えておこう。

  植物は「優しい」ので、目に優しく快い緑の光を我々に贈ってくれている、などとは思 い上がりである。植物の廃棄物(光)を我々は見ているのである。

 

プリント:葉緑体

・葉緑体:かつて進化の途上ですでにミトコンドリアを獲得していた真核細胞の先祖が更に光合成能力を持つバクテリアを取り込んで共生関係に入ったのであろう。

 細胞側の膜と葉緑体側の膜の二重膜で包まれている。

  葉緑体の中の

  座布団のような膜状構造物→チラコイド

  チラコイドが積み重なった構造→グラナ

  チラコイドなどを浮かべている液体基質→ストロマ

  という

チラコイド膜上での反応

  チラコイド膜には、「光化学系T」「光化学系U」「水素(電子)伝達系」「ATP合成酵素」 などが埋め込まれている。

 ・まず、光を受けた光化学系Uの中心部分で電子が励起されて本来の位置から飛び出し、 正の電荷を持った孔が残される。励起された電子がそのままもとの正孔に戻ったのでは 何も起こらない。

 ・光化学系Tでも光を受けて電子が励起され正孔が残る。

 ・光化学系Uで励起された電子は光化学系Tに生じた正孔に向かってエネルギーの落差  を落ちていく。これが電子伝達系である。(呼吸の電子伝達系とよく似ている。)エネ  ルギー落差を落ちるのであるから仕事をすることができるが、この場合は、ストロマ  からチラコイド内腔へと水素イオンを汲みこむことにこのエネルギーは使われる。

  濃度が高くなった水素イオンはチラコイド内腔からストロマへと流入していくがこの  水素イオンの流れを利用してATPが合成される。呼吸のATP合成酵素とまった   く同じであって、回転運動しながらATPを合成する。ミトコンドリアの先祖と葉緑  体の先祖は違う生物であるはずだが、同じ酵素群を持っているということは、実に不  思議なことだと思う。生物というものの不思議さに打たれる。

  ・さて。光化学系Uで残された正孔はどうなるのか?この正孔は電子を引き込む力が   非常に強く、安定な水分子から電子を引き抜いて水分子を酸化することができる。

   2HO → 4e + 4H + O

   これによって正孔は埋められる。ここで発生する酸素分子こそが、光合成で植物が  製造する酸素である。我々が呼吸している大気中の酸素も、植物が水を酸化して放出  したものである。

   他方。光化学系Tで励起された電子はどうなるのだろうか?この電子は水素イオン  に渡されて、水素原子をつくる。(高エネルギー水素)ここでの水素原子運搬体は

  NADPHという。

   光合成における水素原子運搬体はNADPという。呼吸ではNADであった。植物  は反応系によって水素原子運搬体を使い分けている。両者が混用されてはまずいので  あろう。NADにリン酸が一つついた分子がNADPであるが、補酵素としてNAD  Pを使う酵素はリン酸がついたことによる分子の形の違いを認識してNADがもしあ  っても使わず、NADPを使うのである。

 

ここまでをまとめると。

 光化学系T、Uで光のエネルギーによって電子が励起される。

 光化学系Uに生成した正孔によって、水分子が酸化され酸素分子を生ずる

 光化学系Tでは励起された電子によって水素イオンが還元されNADPHを生ずる

  →還元力を作り出す。

 光化学系U→Tへの電子の移動の際のエネルギー落差が、水素イオン濃度の落差に転換 され、この落差を用いてATPが合成される。→光合成に必要なエネルギーを作り出す。

 エネルギー図の形から「Zスキーム」と呼ばれる

プリント:Zスキーム。電子伝達系

 

   2HO → 4e + 4H + O

   4e + 4H+  → 4H(2H

 トータルでは水の電気分解と同じ出来事が起こっていることに注目!

 燃料電池の燃料としての水素の製造などで、人工光合成が注目されている。

 正孔による酸化と、高エネルギー電子による還元は二酸化チタンの「光触媒」の働きの中 心でもある。半導体に光を照射して水素を得る反応が研究されている。

プリント:可視光で水を完全分解できる光触媒。太陽の光で水素できた!

プリント:酸化チタンに光を当てると水を分解できる。それって葉緑素に似てない?:光     触媒発見・開発者の藤嶋さんの著書より。

プリント:人工光合成:植物の知恵借り水から水素できた!

     無限のエネルギー源に。効率アップが次の課題。葉緑体にミニ発電機。電子の     バケツリレー 新しい電池にも応用。

 

 

 

 

39

★(葉緑体)ストロマでの反応

 ・送られてくるもの:12NADPH、18ATP

 ・外気から気孔を通して取り入れられた二酸化炭素COは、炭素数5個のリブロース  ビスリン酸(リブロースという糖に2個のリン酸がくっついたもの)に結び付けられ、  炭素数6個の中間体を経て、炭素数3個のホスホグリセリン酸2分子を生成する。

 ・ホスホグリセリン酸はNADPHによって還元されてグリセルアルデヒドリン酸に  なる。(カルボン酸からアルデヒドへの還元)

 ・グリセルアルデヒドリン酸は一方ではいくつかの化合物を経て再びリブロースビスリ  ン酸になり、再び二酸化炭素を受け取る。この回路反応を「カルビン・ベンソン回路」  という。

 ・グリセルアルデヒドリン酸は他方では糖の合成に回されグルコースなどを作る。

  ホスホグリセリン酸からグルコースにいたる反応過程は、呼吸における解糖の逆運転  に他ならない。

 ・6分子の二酸化炭素の固定によってグルコース1分子を生成し、この際、18分子の  ATPと12分子のNADPHが消費される。

 

  12HO → 6O + 24H         (チラコイド)

  6CO + 24H → C12 + 6HO(ストロマ)

  6CO+12H→C12+6O+6HO (トータル)

プリント:カルビン・ベンソン回路。糖の合成と解糖系は逆経路。

プリント:好気呼吸と光合成はエネルギー的にも化学反応的にも互いに逆の関係にある。

プリント:木漏れ日を拾って生存(新聞)。

     葉緑体の光定位:強い光では光を避ける

     植物 生命維持の知恵:強い光から葉緑体避難:壊死を防ぐ(活性酸素)(新聞)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

40

 光合成速度(二酸化炭素吸収量で測定)と光の強度のグラフ

  マイナスの「吸収量」って何ですか?放出ですね。

  ・補償点:呼吸による二酸化炭素の放出と、光合成による二酸化炭素の吸収がつりあ   ったポイント。これより弱い光の下では、呼吸による二酸化炭素の放出が大きくな   ってしまうわけです。

 ・光飽和点:これ以上光が強くなっても光合成速度が増加しない光の強さ。

 

 ・陽樹(陽生植物)と陰樹(陰生植物)のグラフの読解

  陰樹の方が、光の強度の低いところで生存可能

  湿原から極相林への遷移の話

 

                          陽樹

 

                         陰樹

 

 

 

 

    A B C   D

  Aでは:両方とも成長できず

  Bでは:陰樹は成長できるが、陽樹は成長できず

  Cでは:陽樹も成長できるが、陰樹も成長できる

  Dでは:両方とも成長できる

  結局、陰樹の方が暗いところでも成長できる

 

・限定要因

 光合成にかかわる条件:光の強度、二酸化炭素濃度、温度

 光合成速度を限定する主因、その要因で速度が決定される。(ボトルネック)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリント:ヘムとクロロフィル。ポルフィリン。ポルフィリン生合成。ポルフィリン症。

     ヘム分解。ビリルビン。便の色。フィトクロム。

プリント:イギリス国王と吸血鬼についての生化学

     フェオフィオチン、フェオフォルビド:アワビの中腸腺(猫の耳が落ちる)

プリント:光で病巣をたたく(ポルフィリン症、光力学療法)日経サイエンス2003.4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

41

★期末テスト

 

 

42

★C3植物

 前回までで学んだ通常の光合成を行う植物を「C3植物」という。下図のようにCOを受け取ってできる最初の化合物が炭素3個なので。C3植物は植物の90%以上を占め、食糧として重要な、イネやコムギもC3植物である。

           CO

           

 リブロースニリン酸――→(C6中間体)――→ホスホグリセリン酸(C3)

           ※1

 ※1のところで働いている酵素は

ribulose−1,5−bisphosphate carboxylase/oxydase

略してrubisco = ルビスコと呼ばれる。

 ルビスコが働くこのカルビン・ベンソン回路は、地球上が無酸素で、まだ酸素発生型の光合成が行われるようになる前に作られた反応回路であるらしい。そのため、ルビスコは二酸化炭素を捕まえる部位が、完全に二酸化炭素に特異化していない。他の分子がこの部位に二酸化炭素と拮抗して入り込むことはその時代にはなかったのであろう。

 ところが、酸素発生型の光合成が発展し地球上に酸素が充満してくると厄介なことになってきた。光化学系で作り出される酸素分子が、二酸化炭素と拮抗してルビスコに結合してしまうのである。酸素分子がルビスコに取り込まれた場合、光呼吸という過程が起きる。この過程は酸素を取り込んで有機物を酸化し二酸化炭素を生成する過程なのであるが、エネルギーを消費してしまうのである。(ATPもNADPHも消費する。)

 このため、光が強くなりすぎると光合成の効率が上がらなくなってしまうのである。 また、ルビスコは30℃をこえる温度では働きが落ちる。

 そこで、太陽光が強く、暑く乾燥した気候に適応した光合成が生まれたものと思われる。

 

★C4植物

 これをC4植物という。COを取り込んで最初に生成する化合物がオキサロ酢酸という炭素4個の化合物だからである。

 

 

 

 

 

 

 

                   CO

                 

葉肉細胞:ホスホエノールピルビン酸     オキサロ酢酸     リンゴ酸

                   ※2            

          ATP                   

================================原形質連絡============================

                          ピルビン酸

維管束鞘細胞:                          

                                  CO

                                 

                            カルビン・ベンソン回路

 COを取り込みホスホエノールピルビン酸(PEP)と結合させ、オキサロ酢酸(C4)にする。(※2のところで働く酵素はPEP carboxylase = PEPc という酵素)

 PEPcはCOとの親和性がルビスコより強く、極めて低濃度のCOとも結合することができる。

 COは葉に入るや否や吸収され、濃縮されてカルビン・ベンソン回路に渡されるので、カルビン・ベンソン回路はCO濃度に依存せずに常にフル回転することができる。

 COを濃縮する、生化学的ポンプ(ブースター)付き光合成といえる。

 C4植物でのCOの同化は、C3植物よりエネルギー消費が大きい。しかし、温度が上がってルビスコのCO親和性が落ちるにつれて、光呼吸を排除できることによる効率上昇がエネルギー消費を補って余りあるものとなる。

 C4植物にはトウモロコシなどが入っており(その他、マツバボタン、ハゲイトウ、エノコログサ、サトウキビ、ススキ、アワ、キビ・・・)、C4植物の光合成をC3植物に導入できないかの研究も行われている。

 

★CAM植物

 砂漠などの太陽光が強く、暑く、乾燥する気候で生育するサボテンや、ベンケイソウにはC4植物のもう一つの現れがある。

 ベンケイソウの科名であるCrassulaceae から Crassulacean Acid Metabolism (ベンケイソウ型酸代謝)という光合成システムである。CAM植物という。

 

デモンストレーション:ハカラメ

  園芸の方で「ハカラメ(葉から芽)」という植物があるがこれがセイロンベンケイソウで  ある。

 

 C4植物ではCOの取り込み・濃縮を葉肉細胞で、カルビン・ベンソン回路を維管束鞘細胞で、と空間的に分担し、その間を原形質連絡でつないでいた。

 CAM植物では、COの取り込み・濃縮活動とカルビン・ベンソン回路による有機物合成を、時間的に分担している。

 CAM植物の生育環境では昼間に気孔を開いてCOを取り込もうとすると、乾燥のため、水分を失う危険性が高い。乾燥に耐えるため、葉は肉を厚くして相対的に表面積を少なくしてはいるが、昼間に気孔を開くわけには行かない。

 そこで、夜間に気孔を開いてCOを取り込み、ピルビン酸からリンゴ酸にして、これを液胞に貯える。

 昼間は、気孔を閉じ、液胞内のリンゴ酸からCOを取り出して、カルビン・ベンソン回路に供給して有機物合成を行うのである。

 

プリント:C4植物とCAM植物

プリント:CAM植物の葉の組織内のpH変化(インターネットから)

 葉の組織をガラス棒でつぶし、出てきた液を万能pH試験紙で測る。液胞そのものを測 ったのではない。

             9:30   12:30   15:30

 セイロンベンケイソウ   3     5     6

 アサガオ         7     7     7

  リンゴ酸は2価のカルボン酸、COを取り除いたピルビン酸は1価のカルボン酸。  多少の酸性度の違いはあるかもしれないが、1価のカルボン酸ならpH4位にはなる  のではないか。少し疑念がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

43

★いろいろな炭酸同化

 カルビン・ベンソン回路に水素とエネルギーをどのように供給するか。

プリント:いろいろな炭酸同化。独立栄養と従属栄養。

1:光合成(酸素発生型):光のエネルギーで水分子を酸化し、酸素ガスを発生すると共に  還元剤としての水素をつくる。光化学系TとUの二つの力を組み合わせで実現。

  高等植物、藻類・・・進化の過程で後から登場。安定な分子である水を酸化することは  大変

2:光合成(酸素非発生型):光のエネルギーで硫化水素を酸化して、水素原子を作る。副  産物として単体硫黄を生じる。

  緑色硫黄細菌、紅色硫黄細菌など

3:化学合成

  酸化反応のエネルギーを使う。水素源は特定しにくい

  亜硝酸細菌:2NH+3O → 2NO+4H2HO + Energy

  硝酸細菌 :2NO+ O → 2NO         +E

    (二つまとめて硝化細菌とも)

  硫黄細菌 :2HS+O →2S +2HO         + E

  硫黄細菌 :2S+3O+2HO → 2HSO      + E

  鉄細菌  :4Fe2++O+4H → 4Fe3++2HO  + E

  水素細菌 :2H+O → 2HO            + E

 

 上記のような生物は独立栄養という。生態系の生産者である。「太陽食」の生物。それに対して、動物などは既成の有機物を摂取して自分の必要な化合物に組み替える。このような生物は従属栄養という。

 

★海底の熱水噴出孔付近の生態系について

 動物であるチューブワームが体内に硫黄細菌を共生させ、硫化水素を供給して化学合成によって有機物を作ってもらって生息している。(消化管も肛門もない)。「地球食」の生物。チューブワームは動物であって従属栄養なのであるが、この熱水噴出孔付近の生態系においては、生産者の役割を果たしている。

プリント:チューブワームについて(5枚)

 

 

 

 

 

 

 

 

44

・窒素同化

植物が必要としている十大元素

 C,H,O,P,K,N,S,Ca,Fe,Mg(See Hopkin's Cafe. Mighty good.)

 CはCOから。Hは水から。他は地中から水溶液の形で。

植物は窒素源として、アンモニウムイオン、亜硝酸イオン、硝酸イオンが得られれば、それを使ってすべてのアミノ酸を自らつくることができる。亜硝酸イオン、硝酸イオンの場合は還元してアンモニウムイオンにする。このアンモニウムイオンからアミノ基をつくり、有機酸と結合させてアミノ酸をつくる。アミノ酸はたんぱく質や核酸、ATPなどのエネルギー関連物質、ポルフィリン化合物などの原料となる。

 普通の動物ではグルタミン酸さえ摂取できれば、そこからアミノ基を転移させて、必要な20種のアミノ酸を自分で作ることができる。ヒトの場合、成人ではロイシン,イソロイシン,バリン,スレオニン,リジン,メチオニン,フェニルアラニン,トリプトファン

8種類のアミノ酸は自分では合成できないので、食物から摂取する必要がある。必須アミノ酸という。(幼児の場合はこれにヒスチジンが加わる。ネズミなどでは別にアルギニンを,鳥類ではグリシンを必要とする。)

 

・窒素固定

植物といえども、空気中の窒素分子を利用することはできない。窒素固定を行う代表として根粒菌を覚えておいてほしい。根粒菌はマメ科植物の根に共生して、グルコースや有機酸の供給を受けながら、空気中の窒素を還元してアミノ酸を作り、植物体の側に返すという関係にある。

 休耕地にマメ科植物を植えて、土にすきこむという農法が行われてきたのはこういう理由による。

 N+8[H]+16ATP → 2NH+H+16(ADP+P)

(参考)人間が空気中の窒素からアンモニアを作るには「ハーバー・ボッシュ法」という方法がある。窒素と水素を、鉄触媒のもと、200〜300気圧・500℃という過酷な条件で反応させて作る。根粒菌の窒素固定が人間の手によって実現できれば、革命的なことになる。

 植物は、空気中の炭素以外は、土中の水溶液を根から吸い上げて生きている。例えば、水田のイネが、土中の養分を吸い上げてコメを稔らせたとしよう。それを収穫し、都会へ送り、都会の住民はそれを食べて、排泄する。排泄物は下水を通して海へ捨てられてしまう。これでは、水田の土中の無機イオン類は減少するだけである。何らかの形で必ず無機イオン類を土に供給しなければ、イネは生きてゆけない。「施肥」は必要不可欠である。農業の本質はこのような「地力の収奪」であることは認識しなければならない。どう対処するかの問題である。地球上の人口問題、食糧問題、などどのように解決していけばよいのであろうか?

プリント:窒素同化。窒素固定。

プリント:窒素固定と農業。肥料の3要素。

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★生態系

 「自然」という語の三つの意味

◎無機的自然:地球環境そのもの。宇宙的存在としての地球そのもの。生物の存否など無 関係に存在しつづけ変化しつづける。生命に対して「優し」くはない。

◎生物的自然:無機的自然と対抗しながら細菌・植物・動物などが生存圏を広げてきた。 今なお、極地や高山などでこの二つの自然のせめぎ合いが進行している。この「自然」も 決して人間にとって「優しい」ものではない。

◎牧場的自然:人間が自分にとって有益であったり、無害であったりする動植物を選択的 に存在を許している空間。この「自然」では、有毒な植物は排除され、昆虫類もほとん ど排除され、「愛される」鳥などが選択的に存在を許されて愛でられる。ここでは「自 然は優しく」「植物は優しい」。「地球に優しく」などというスローガンはこのレベルの イメージでしかない。問題は人類、ヒトという絶滅寸前の生物種の問題である。ヒトが 絶滅するのを防ぐにはどうしたらよいのか、という考え方をするべきである。

  この自然をもって「自然」と勘違いし、キャンプなどに出かけてフレンドリーな自然 を期待していると、手ひどいしっぺ返しを食らう。自然はけっして人間に優しくはない。

 

・炭素の循環(略図)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 単純な循環なら、COは再び酸化されて戻されるので、COは減らず、酸素は増えない。生産者が死んで地中に埋設され循環から抜け出したということが大事。地球の大気に酸素が増え二酸化炭素が減ったというのはこの作用による。石油・石炭などがそれ。これを今燃焼させて使っているのであるから、CO増加の問題は、同時に酸素減少の問題であることを認識しよう。「地球の肺」と呼ばれる森林が日々消滅していっている。

 地表を循環する炭素の量は限られたものであるので、生物はこれを使いまわしている。今、私の体を作っている炭素原子が、かつて他の生物の体を作っていたということはおそらく100%確かなことである。

ここでは、海での循環は省略したが、海中の生物が二酸化炭素を炭酸カルシウムの形で循環から取り除いたという効果も大きい。石灰岩は基本的に大部分は生物由来である。

 

・窒素の循環(略図)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・無機窒素イオン(亜硝酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン)などの流失の問題。

 富栄養化による赤潮の発生や、無酸素水の問題、

 都市の「排泄」の問題(下水道)。循環を断ち切る行為。

 農業・牧畜などと富栄養化、施肥など、人間の行為と汚染。

・いずれの場合にも「分解者」の存在を忘れないように。分解者がいなければ、地表はた だちに死骸と排泄物で埋め尽くされていく。

・「落ち葉浴」などというものが優しい自然に親しむ行為などと宣伝されていますが、そこには分解生態系の生物たちがごっそりそこにいることを認識しているのでしょうか?昆虫が嫌い、クモもダニも嫌い、ミミズも嫌い、でも植物は優しいからその落ち葉にまみれると気持ちいい、などと、あまりにも身勝手ではありませんか?ダニまみれになるくらいのことは覚悟してくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

・エネルギーの流れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽から流入して、生産者から生態系に配られ最終的には熱として散逸していく。

 エネルギーの流れの中で生命は自己を組織化し、「秩序」を維持している。このような「非平衡」状態のエネルギーの流れを、散逸系といいます。エネルギーの流れのないところには生命は原理的に存在し得ません。

 

 

プリント:創造者:炭素循環をつかさどり水を保ち地球の呼吸と代謝を支える

     分解者:物質を循環させ植物を助けるさまざまな微生物の高い代謝能

プリント:効果的な有機物施用。人口圧力が土壌を劣化させる、人類に持続可能な21世     紀はあるか。略奪的な農耕文化。土壌崩壊は文明崩壊。環境問題は土壌問題。

プリント:地下生物圏研究が本格始動、海に陸に生命起源の謎に迫る

プリント:「地下生物圏」を探れ。坑道の深度125mに実験室