ベナール対流

水平な液層を下から熱し,または上から冷やして上下の温度勾配を与えるとき,温度勾配が小さければ下から上へ熱伝導が行なわれるだけであるが,温度勾配がある臨界値を超えると,液層はほぼ正6角形の細胞状の渦領域に分れて,中心部では上向き,周辺部では下向きの流れが生じる現象(図)

この現象はベナール,H.がはじめて実験的に研究した(1900)のでベナール対流とよばれ,細胞状の渦をベナール渦という.その理論はレイリーによってはじめられ(1916),現象を支配する無次元数としてレイリー数Raが導入された.Raが臨界値RRacをわずかに超えた状態では4〜6角形のほぼ同じ大きさの細胞が一面に現われるが,Raが増すと細胞は1列に連なって平行な帯状の構造をつくる.この帯状構造は交互に逆回転するロール状の渦からなり,RaがRacの10倍程度になるまでは安定に保たれるが,それ以上になると崩壊して対流は乱流状態になる.

[岩波 理化学事典第5版から]

 

 ●流体の粘性に関わることですが、このような現象は液体に限らず、気体でも起こります。本文中で指摘したように、広い海面が一様に太陽光で熱された時、ベナールのセルが生じます。上昇気流の所に雲が発生し、その雲の規則的な配列として衛星写真などで見ることができます。そのような一様性が崩れた時に、大きな積乱雲群が発達して台風の発生につながることもあるのでしょう。

●地球全体規模で考えた時、赤道付近が高温、極付近が低温、という温度勾配が生じるわけで、赤道から極へ向かう大気の大きな対流・循環が発生するはずです。ですが、大気層の厚さが薄いために、この対流は一つの流れで実現されるわけではありません。赤道付近で上昇した空気がそのまま極まで流れて行くことはできません。熱帯付近、温帯付近、極付近と三つに分かれて対流が起こります。日本が温帯の風に支配される気候下にあることはよく知られています。海洋だけではなく陸もあり、さらに地球の回転も加わって複雑な気候の構造が生まれてくるわけです。地球に流入し流出していくエネルギーの流れの中に地球の気候が生まれるのです。

 

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