冷却水の流し方


 

●昔の教科書の指導書のコピーが手元にあります。

「リービッヒ冷却器に下から水を流すのはどうしてだろうか。逆にすると冷却水が管内にたまらずに流れてしまい、冷却効果がわるくなる。」

●ある参考書から。

「リービッヒ冷却器に流す水は必ず下から上へ流す。逆にすると、冷却器に水がたまらず冷却効率がわるくなる。」

●下に、そういう図を描いて見ました。上から下へ水を流す図です。

Aで示されるように、冷却器の途中までしか水が入らず、冷却効果がわるくなる、というのでしょうか?

 経験的には、上から水を流しても、流量をちょっと調節したりすれば、Bの位置付近まで水面を上げることは大して難しくもありません。

蒸留器というものは、必要な器具を用意して、全体をゆるく位置あわせをしてから、細いガラス管などに無理な力がかからないように注意しながらきちっと組み立てるものです。

 ゆるく位置決めするときに、冷却管を立てて水を「下から」流し入れて、冷却管内の空気を全部追い出しておき、それから蒸留装置全体を組み上げれば済むことです。上から水を流しても、管の中に空気が残って水がたまりきらず、そのために冷却効果が落ちる、というようなことは簡単に回避できる単純な技術的問題です。

水がたまらず」というようなことは、冷却という技術そのものにとっての本質的なことではないのではないでしょうか?

 

●蒸留装置の冷却管は「熱交換器」です。熱交換器という観点で考えなければなりません。

 

●FFストーブというものを多分ご存知でしょう。

概念的には上の図のようです。

外気を使って燃料を燃焼させます。燃焼によって、暖かいけれども汚れた空気ができます。

これを、外へ向かって流しながら、逆向きに外から入ってくる冷たい空気と熱伝導性の良い隔壁を境にして接するようにします。

こうすると、熱の交換が行われて、理想的な場合、冷たかった外気は燃焼排気と同じ温度まで暖められて室内に取り入れられ、暖かかった燃焼排気は外気温まで冷却されて排出されることになるのです。

 あくまで理想的な場合ですが、熱を全く無駄にすることなく、清浄な暖気で暖房ができるわけです。

このように、互いに反対向きの向かい合う流れの間で、熱交換をするシステムを「向流熱交換器」といいます。

向流熱交換システムは、とても熱効率のよい熱交換システムです。

 

●さて、蒸留装置の冷却管に戻りましょう。

上の図のように、冷却水を上から入れた場合は、冷却水と高温蒸気が同じ向きの流れになります(並流といいます)。この場合、理想的に熱交換が行われた場合でも、出口での温度は、冷却水と高温蒸気の最初の温度の「間」でしかありえません。

 また、蒸気と冷却水が接触を開始するときは温度差が大きく熱交換の効率もよいでしょうが、先へ進むに従って、温度差は減少し、効率が落ちていきます。

下の図のように、冷却水を下から入れた場合は、向流熱交換器になります。効率よく熱交換が行われた場合、蒸気は冷却水の初めの温度近くまで冷やすことができます。

 熱交換は管の全長にわたって行われ、管を有効に利用しますので、効率も高くなります。

 

●どう考えても、短い冷却管の中で、しかも、熱伝導率の非常に悪いガラス壁を介して、熱交換を効率よく行うには、向流熱交換しかないだろうと思います。

 これが、下から冷却水を入れるということの本質的な意味ではないでしょうか。

 

実際、日常的に蒸留を行っていた経験では、冷却管に流入してくる蒸気物質の沸点がどの程度のものなのか、流入してくるスピード(量的スピード)はどのくらいなのか、蒸留器につきっきりで監視する必要があります。

もし、冷却管に入ったすぐのところで液化してしまったり、場合によっては固化してしまうような場合、冷却水の流入速度を絞って、液化ポイントを少し真ん中あたりにずらしたり、冷却管内で固化してしまうことのないようにします。

逆に、なかなか液化せず、冷却管の出口から「ユラユラ」と蒸気が気体のまま流れ出てくる場合は、冷却水の流量を増やして、液化ポイントを上にあげます。(もし、リービッヒ冷却器のような直管では液化まで持ち込めない場合、もっと効率のよい冷却管があるので、冷却装置を変えます。)

つまり、臨機応変に冷却管の「熱交換器としての能力」をコントロールする必要があるのです。そのコントロールが、水を下から入れる向流型の場合は簡単に実現できるのです。水道のコックに手を置きながら、蒸留装置を監視したものです。

 

結論:

「リービッヒ冷却器に流す水は必ず下から上へ流して、効率のよい向流熱交換を行わせる。逆にすると、並流となり、熱交換効の効率がわるくなる。」

 


 

「向流」の概念について、他分野で見かけた話をいくつか紹介しましょう。


日経サイエンス1973.04.22

体温の高い魚F.G.カーレイ:すべての魚が冷血とは限らない。マグロなど高速で泳ぐ魚は,体温を水温より高く保っている。

 

筆者コメント:生物体内の向流熱交換の話に驚き、また、感動しました。以来、「血合い」を食べる時はこのことを思い出すようになりました。血合いはおいしいです。


「ウォーレス 現代生物学(下)」R.A.Wallace、J.L.King、G.P.Sanders著、東京化学同人、1992年

578ページから、部分引用。

クロマグロは我々が以前考えていたような”冷たい魚”ではない。実際に、最も冷たい海水中でも体内の温度はほぼ32℃にまで達しうる。

答えの大部分は、クロマグロの循環系の構造に隠されている。クロマグロの頭部と暖かい体内に発する動脈は、冷たい外表から戻ってくる静脈と平行に走っている点で、動・静脈が互いに独立の経路にある他の魚(冷血の硬骨魚)と大きく異なる。クロマグロの特殊な能力は、これらの平行に走る血管の間で起こる向流熱交換(countercurrent heat exchange)による。身体の深部からの暖かい血液は、体表から戻る冷たい静脈血とすれ違うときに熱を奪われるので、深部の熱が末端に届くことはない。

クロマグロには色の濃淡で2種類の筋肉が観察される。暗筋は高温域(体表より10℃程度も高い部分)にみられ、平行な動静脈を含む豊富な血管網のため暗く見える。この血管網は奇網rete mirabile. 驚くべき網の意。)と呼ばれ、向流熱交換と保温はここで行われる。奇網の配置により、泳ぎに用いる筋肉は相対的に高温で活発に保たれる。クロマグロ(と他の動きの速い捕食性の魚の多く)が非常に冷たい水中で速く泳げるのはこのためである。


「ウオーレス 現代生物学(下)」の580〜581ページから部分引用。

ヒトは他の動物と同様に図36・4のような向流熱交換で体温を調節することができる。単純に血液の経路を変えることで非常に効果的に温度操作をしていることに注目されたい。

向流熱交換は隣接して平行な血管を逆向きに流れる温かい血液と冷たい血液の間で行われる。熱交換は経路全長にわたって起こる。

図36・4のキャプション

 向流熱交換はヒトの末梢でよくみられる。たとえば腕で、太い動脈と静脈は筋の深部で隣接して走る。腕が冷たくなると、冷たい血液は深部の静脈を通って戻り、そこで動脈と向流熱交換を起し、体内の温度を維持する。静脈にはもう一つ皮膚の下を走る経路があり、腕が温まると血液は皮下の静脈に戻って皮膚からの放熱を増大する。

 

筆者コメント:我々ヒトも向流熱交換をしているのですね。しかも、熱いときと寒いときで切り替えが効くようです。冬場手足が冷え切っても、体幹部の温度を保てれば、生き抜ける、ということなのでしょう。手足の指などを凍傷で失いながら生還した山男たちもいます。これは動物としてのヒトの「向流熱交換」能力のおかげです。


奇網」について、岩波「生物学辞典」第4版から引用。

奇網 [ラ rete mirabile  英 mirabile net  仏 réseau admirabile  独 Wundernetz ] 同義語:奇驚網、怪網。

 血管が一度に多数に分枝して形成された血管網。それが再び単一の血管に合流する場合は双極奇網(bipolar mirabile net)、それに対して合流しない場合は単極奇網(unipolar mirabile net)という。狭義には奇網は双極奇網を意味する。また動脈か静脈の一方だけからなる場合を単性奇網(rete mirabile simplex)、両者からなるときは複合奇網(rete mirabile duplex)という。脊椎動物においては腎糸球体をはじめ、うきぶくろの赤斑、偽鰓などで、無脊椎動物ではナマコ類の腸間膜などで見られる。


ツルはなぜ一本足で眠るのか  適応の動物誌」小原秀雄、林壽郎、柴田敏隆ほか著、草思社刊、1984

 この本の10〜12ページに、中川志郎さんの「水鳥 二つの体温を巧みに調整」という文章があります。部分引用します。

・・・。この水鳥たちは、一つの体に、二つの体温をもっているのだ。すなわち、全体としての体温は、40度から41度という高温が通常なのだが、もうひとつ、外部に露出され、雪や氷に直接接触する部分、つまり、足の部分の体温はそれよりもはるかに低く、つねに外温に近い低温に保たれているのである。・・・。

 この水鳥たちの体の中には、実に巧妙な熱調整器が組み込まれていたのである。それは、この鳥たちの脚と胴をつなぐ関節の付近にある”ワンダーネット”と呼ばれる器官だ。これは、細い血管−動脈と静脈が、網の目のようにこまかく組みあわされた網状組織である。

 ここで、実に巧みな熱交換が行われる。すなわち、このワンダーネットの中を通るとき、足の先の方からもどってきた冷えた血液は、近くに組み合わされている動脈の温かい血液によってあたためられてから、体内にもどり、逆に、温かかった動脈血は、熱を奪われて冷え、冷たい血液となって、足の方に運ばれていくのである。かくして、この水鳥たちは、つねに体の体温を高く保ち、雪や氷に接する足の体温を低く保つことができるのである。・・・。

・・・。鳥には、もうひとつ、このワンダーネットにおとらぬ熱調整器が体内に組み込まれている。それは、気嚢と呼ばれる薄い膜でつくられた呼吸器官のひとつで、通常、少なくとも九個備わっている。

 ・・・飛行中に信じがたいほどの筋肉の活動を伴う。・・・この筋肉活動は、当然のことながら、大量の熱を発生し、体の新陳代謝をはやめる。この熱量は大変なもので、適切な熱調整が行われなければ、鳥は、このためだけで死んでしまうほどだ、といわれる。・・・。気嚢は、一対の肺に連結されており、飛行中、この中に、外気をとりこみ、この薄い膜面から水分を蒸発させることによって、膨大な気化熱を放出して、体温が上昇しすぎるのを調整しているのである。いうならば、これは、強力な空冷エンジンということができよう。・・・。

 

筆者コメント:上の話は、差し当たってカモやツルについての話です。おそらく他の鳥でも同じなのだと思います。

 「ワンダーネット」といってしまうと「不思議なネット」「すてきなネット」という語感がしますが、「wonder」よりも、「marvelous」の「驚くべき」というような意味のようです。

 奇網は別に熱交換に特化したものではありません。たとえば、キリンがあの高い位置にある頭を、水を飲もうと地面まで下げたら、血圧は一体どうなってしまうのか?いろいろな仕組みが備わっているのですが、「奇網」も一役果たしているらしいですよ。

 また、医学的には、古い歴史があるらしく、下のような記述を見つけました。ガレノスまでさかのぼって、「心の座」というような考え方をされたらしいですね。

http://www.jcr.or.jp/news121/121_6.html から引用。

Rete mirabile:

 ドイツ語では“Wundernetz”,日本語では「怪網」あるいは「奇網」がこのラテン語rete mirabileに当てられている。reteは「網」の意である。

 Galenus(130−210 AD)は霊魂,言いかえれば「心」は脳に存在し,それはある種の霊気,精神精気によりもたらされると考えた。脳底に形成されている網状動脈叢rete mirabileこそが脳に到達した動脈血内の生命精気から精神精気を生成し,これを脳室のなかに吹き込む。血液とは混じらない純粋な精神精気は脳室にたくわえられるが,神経にそって運ばれて,身体の高次の諸機能を営む。Galenusには硬膜に囲まれたこの網状叢が精神精気の生成に必要な,怪しくもすばらしい,自然がしつらえた仕事部屋に思えた(二宮陸雄 ガレノス霊魂の解剖学 平川出版1993)。


ツルはなぜ一本足で眠るのか  適応の動物誌」

 この本の174〜176ページに、柴田敏隆さんの「鳥 高高度飛行ができる肺の秘密」という文章があります。部分引用します。

・・・。驚くことに、鳥のなかにはヒマラヤの上空を越えて渡りをするのがいる。1976年9月〜10月、日本イラン合同マナスル遠征隊のメンバーは、マナスル氷河に沿って、ネパール側からマナスルの上空を越えてインド方面へ渡りをするツルの群れを、七日間に延べ3000羽ほど観察した。・・・

・・・鳥を抱いてみると温かく感じることからもわかるように、かれらの体温は、空を飛ぶという激しい運動にそなえて、エンジンをつねにアイドリング状態にしているようなものだから、哺乳類よりも数度も高く保たれている。・・・

・・・。鳥の肺には気嚢という空気を貯めておく袋がいくつか付属している。この気嚢は、肋骨と胸骨の動きに連動して、ふいごのように肺へ空気を送り込んだり、逆に肺から空気を吸い上げたりしている。そのため鳥の肺には、息を吸うとき、吐くとき、どちらの場合でも空気が流れ込むようになっているのである。

 だから、鳥の肺には、袋の中に新鮮な空気と汚れた空気が出入りするような哺乳類の肺とはちがって、つねに新鮮な空気が”一方通行”で流れている

しかも、このとき空気と血液は対向して流れているために、ちょうど過給器(ターボチャージャー)をつけたように効率的に酸素をとり入れることができるようになっている。

 さらに、気嚢は肺に空気を送るだけではなく、血管のように枝分かれして体のすみずみまで張りめぐらされており、末端は中空になった骨の中にまで延びている。

 気嚢は、羽毛をまとったために、それを濡らすような汗を出して体温調節をするわけにいかなくなった鳥たちにとって、空気を体中に循環させ、直接、体を冷やすための大切なクーラーの役目を果たしているのである。

 いってみれば、水冷式の人間に対して、鳥は空を飛ぶために軽くコンパクトにできる空冷式のエンジンを選んだのだといえるかもしれない。

 

筆者コメント:中川志郎さんの話でも、気嚢は冷却装置として紹介されましたが、ここで更に不思議な話が出てきました。

 ひとつは、気嚢がフイゴのように働いて、肺の中を空気が一方通行で流れるという話。

 もうひとつは、肺での空気の流れと血流の向きが「対向」しているということ。

 この二つです。

 「向流熱交換」の話をいろいろ探っているうちに、今度は「向流物質交換」というのが出てきました。


「ウオーレス 現代生物学(下)」の487ページから部分引用。

他の脊椎動物の呼吸系では、肺の空気の出入り口が一つなのに対し、鳥類は空気が肺を一方向に流れるという特徴を持つ。(図29・17)

鳥類では空気が肺を流れる方向と血流が逆向きなため、向流交換(crosscurrent exchange)が起こる。向流交換は酸素と二酸化炭素の交換効率を著しく高めるが、これは酸素濃度の低い高い空を飛ぶために不可欠である。

図29・17のキャプション

 鳥類の発達した呼吸系には前・後気嚢が含まれ、肺と空気を受け渡しして、肺内の空気量を調節する。空気は他の空気呼吸する動物のように出入りするのではなく一方向に流れるため、逆方向に流れる血液と空気の間で向流ガス交換が起こる。奇妙なことに鳥の肺は吸気のときは縮小し、呼気のときに膨張する(ここでは誇張して描いた)が、これは空気の体への出入りよりもむしろ、気嚢の収縮と膨張を反映している。

 

筆者コメント:書籍中の図と、図の説明を読んで、筆者なりの図を描いてみました。黒い矢印は肺や気嚢の収縮・膨張を表し、白い矢印は気体の流れの向きを示しています。血液はもちろん肺を流れているのですが、血流の向きだけを外に描いておきました。

 いかがでしょうか、非常に単純化した模式図なのですが、イメージをつかんでいただけたでしょうか。

酸素と二酸化炭素の受け渡しというガス交換でも、「向流」で行うと効率が高くなるのですね。

鳥のヒマラヤ越えでは、アネハヅルのヒマラヤ越え、が有名です。NHKで1996年でしょうか、放送されました。人間は空気のボンベを背負っていかなければならないようなところを、自分の筋力で飛翔し越えて行くのですから、低温・低酸素に対する極限の能力というべきでしょうね。

 

下のホームページに、アネハヅルのヒマラヤ越えの写真があります。

http://www.nhk.or.jp/daishizen/fbangumi/daiidou.html

http://spaceinfo.jaxa.jp/spacef/cosmic/materials/advanced/chapter1/1_1/1_1_1_a.html 

http://www.ecology.bio.titech.ac.jp/takeuchi/HV.html

http://www.eco-stream.jp/chikyuu_himalaya.htm


 

向流ガス交換」のもう一つの例を見つけました。「魚のエラ呼吸」です。

 

CD−ROM「世界大百科事典」第2版によると

「魚類では,呼吸運動によって起こるえらの表面の水流の方向と,えらの毛細血管内の血流の方向とが逆になっていて,ガス交換がきわめて効率よく行われることが知られている。」

 

「ビジュアル 生物」東京法令出版、2003年版

 「えらうす板」において、「水流と反対向きに血液が流れることで、効率のよいガス交換が行われている(向流ガス交換)」とあって、イラストレーションと概念的なグラフが載っています。

 

http://croissan.hp.infoseek.co.jp/watching15.html で分かりやすいイラストレーションを見つけましたので、引用します。

 

●筆者のコメント

 先に鳥の肺では空気の流れが一方通行だということが分かりましたが、魚でも鰓での水の流れは一方通行で向流です。

ところで、水中にはどのくらい酸素があるのでしょう?

 空気が十分に溶け込んだ(飽和した)水を考えましょう。温度は20℃とします。

理科年表によると、「20℃での酸素の溶解度は0.031」とあります。

 この数値の意味は、

「20℃で、1気圧の気体が水の1cmに溶解する時の容積を、0℃、1気圧の時の容積に換算した値である。ただし単位はcmとする」

ということです。

1気圧の空気を密閉容器に封入したとしましょう。そして、何らかの方法で窒素を全部取り除いてしまったとしましょう。すると、空気の20%が酸素なのですから、この密閉容器に残った酸素の圧力は0.2気圧ということになります。(これを酸素の分圧といいます)。

 

 1気圧の空気が完全に水に飽和した時の酸素の量を考えるには、0.2気圧の酸素がどれだけ溶けるかを考えればよいのです。

1気圧で0.031cmですから、0.2気圧ならその5分の1、0.0062cmですね。

 1cmの水に対しての値ですから、1Lの水に対してなら1000倍して、6.2cmです。

 ただし、この値は、0℃に換算してあります。むしろ今はそのまま20℃での体積が知りたいですから、換算しましょう。

結局、20℃で、1気圧の空気が水に飽和した場合、水1L中の酸素の量は、6.7cm(20℃での体積)です。

空気そのものでは、空気1L中の酸素は約200mLですので、比較してよいかどうか分かりませんが、吸入量あたりではすいぶん少ないですね。

この「希薄」な酸素を取り入れて活動するために、エラでは効率が高い向流物質交換を行っているのです。酸素の利用率は80%に達するのだそうです。

 

金魚を飼うとき、丸い鉢型の容器は最悪です。水の体積に比して、空気との接触面積が非常に小さいからです。せめて、直方体の水槽を用意してください。

 飼育個体数が少なければ何もしなくても何とかなるとして、個体数が多いときは、エアポンプで空気の泡を送り込む「エアレーション」をして、水中の溶存酸素量を常に飽和近くに保ってください。

生物の進化史上、動物が上陸したという出来事は大変なことだったのですね。空気中の豊富な酸素を利用することができるようになって、活動能力が飛躍的に高くなったのです。