地震のエネルギーと余震


地震の余震について少し考えてみました。

 

 下の文章は気象庁のホームページからダウンロードした文章です。下線は私が引いたものです。この下線部で、「順調に減衰の経過をたどって」いると述べていますが、「順調」とはどのようなことなのかを少し考えてみたいと思います。


   平成16 年(2004 年)新潟県中越地震について(第19 報)

10 月23 日17 時56 分に新潟県中越地方にマグニチュード6.8 の地震が発生しました。この地震直後から、23 日に3回、4日後の27 日には1回のマグニチュード6以上の強い余震をはじめ多くの余震が発生しています。このように今回の余震活動は、比較的規模の大きい余震を伴っており、内陸に発生した過去の地震の余震活動と比較して活発な部類に属しています。このところ、余震は北東―南西方向に延びる約30km の範囲内で発生しており、若干のゆらぎを示しながらも全般として順調に減衰の経過をたどっており、マグニチュード6以上の余震の発生確率も減少しつつあります。これらのことから、余震活動がこのまま推移した場合、ところによって震度6弱や6強になるようなマグニチュード6以上の余震が発生する可能性は、少なくなってきているとみられます。しかしながら、今後とも、ところによって震度5弱や5強になるようなマグニチュード5以上の地震が発生する可能性は高く、少なくとも今後1ヶ月程度は、警戒する必要があります。損傷している家屋などは余震により倒壊するおそれがありますので十分注意してください。地震の揺れが大きかった新潟県を中心に東北地方南部・関東地方北部・長野県にかけて、このところ続いた大雨や今回の地震で地盤が緩んでおり、崖崩れなどが発生しやすくなっていますので厳重に注意してください。

報道発表資料 平成16 年11 月1日10 時00 分  気象庁

 

 次のグラフも気象庁のホームページからコピーしたものです。

1本の棒の長さは、1時間の余震回数です。地震は本震であれ余震であれ、地殻にたまった歪みエネルギーの放出です。本当は余震の強さ=余震で放出されるエネルギー量、で話をするべきなのですが、大雑把なところで許してもらうとして、余震の回数をエネルギーの放出量として話を進めます。すると、1時間あたりの余震の回数という量は、「エネルギーの放出速度」ということになります。

「ある量の変化するスピードが、そのとき存在するその量に比例する」というとき、数学的にこれを解くと、指数関数的な変化が得られます。

 のとき

 こんな式は無視してください。理系人間はどうも式が書きたくって仕方のないものです。

でも、この式をエクセルに書き込んでグラフを作ると、次のグラフになるのです。

  さてどうでしょう。上と下、似ていませんか?もちろん余震のグラフは凸凹があるのですが全体としてみてください。ある程度似ているでしょ?「余震がだんだん減っていく」ということ自体は当たり前として、どんな減り方をするか感覚的に捕らえていたでしょうか。毎日一定の割合で減っていく、つまり直線的な減り方をする、というのが普通の感覚かもしれません。でも違うようですね。

 

 

 

 熱いコーヒーの入ったカップを考えてください。だんだん冷めていきますよね。どんな冷め方をするでしょう?実は、ニュートンの冷却法則という法則があるのです。「物体の温度Tが単位時間内に変化する割合は、現在の物体の温度Tと物体を取り囲む周囲との温度差に比例する」というのです。

        

Tがコーヒーの温度で、Tは外気温です。すると温度変化の曲線は指数関数になりまして  という形で温度が下がっていくのです。

 

ところで、この過程は、少し観点を変えると、コーヒーカップからの放熱速度は、その時々のカップ内の熱量(外気温と等しくなるまでに放出できる熱量)に比例する、と読み変えられます。

さてでは地震の話に戻りましょう。震源域には歪みエネルギーがたまっています。これは「熱い」状態です。余震はこの「熱い」エネルギーの放出過程です。つまり、余震によって「地震が冷めていく」のです。ですから、大雑把にはニュートンの冷却法則が成り立つはずです。ですから、余震回数のグラフが指数関数的に変化するのが「順調」な過程なのだと思います

 

 

 

 

 

 

 左のデータも気象庁のホームページにあります。これをグラフ化すると下のグラフの棒グラフになります。グラフ化のテクニック上、日付が入れられませんでした。左端の棒が10/23です。縦軸は余震回数です。このグラフも、毎日の地震エネルギーの「冷め方」を示しています。

ここへ、近似曲線の追加というオプションで指数近似をしてみました。凸凹はありますが、全体として指数関数の形で減衰していくのが分かります。もし、こ                     の曲線より余震回数が下回ると、「冷却過程が順調ではない」つまり「エネルギーがたまったまま放出されていない」ということになります。その分は後で放出されるのでしょう。ですから、危険だ、ということになるのです。気分は悪いのですが、余震が起こって、エネルギーが放出されていくほうが安全へ向かう方向なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放射性の原子が放射線を出して別の原子に崩壊していくときも、同じ議論が成り立ちます。原子が崩壊する速度は、そのときの原子の数に比例するのです。ですから原子数は指数関数の形で減少していきます。このとき、ある時間がたったら、初めの量の半分になる、という時間を「半減期」といいます。これをTとしておきます。

T後に半分、では、つぎにまたT経ったらどう減るでしょう?なくなってしまいますか? いいえ、また半分の1/4になるのです。またT経つと1/8です。

半減期の10倍ほどの時間が経つと約1000分の1程度に減ります。(2の10乗=1024)。

 

 

 

 

 

 

地震の話でも気象庁の人はそういうところを見ているのではないでしょうか。地震エネルギーの半減期を推測しているのではないでしょうか。

冒頭の気象庁の発表の文章で「少なくとも今後1ヶ月程度は、警戒する必要があります」という文章は、「地震というものは滑らかな出来事ではないから揺らぎが大きく、震度5以上の地震が発生する可能性はまだまだあるけれども、1ヵ月程度も経てば、『地震のエネルギーがほぼ冷え切る』だろう」といっているのだと思うのです。

 地震は熱いコーヒーが冷めるのとは違って、不連続でむらの大きな出来事です。確定的なことは後になってみないと分かりません。学者の後知恵とそしらないで下さい。事の性質上そうならざるを得ないのですから。出来事が進行中は、被害が大きくならないように、最も悪い状況を想定してブレーキをかけるような発表しかできません。気象庁のそのあたりの苦渋は汲み取りたいものです。

 当事者になったらこんなのんきなことはいってられない、ということは確かなのですが、いつ自分が大震災に出くわすかわからないのが日本に住む人間の宿命です。そのようなときに、自分がおかれた状況を少しでも正確に把握して冷静に事に当たるために、頭の隅っこに、地震が冷めていく様子など思い描くことができたらよいのではないでしょうか。と、思って、こんな文章を書いてみました。

 

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