理科おじさんの部屋:第50回


第50回は、2006年6月14日(水)でした。(いつのまにかもう50回なんですね。時の経つのは速いものです。)

 

以前(第44回で)、浮沈子を作ったことがありますね。そして先週は「減圧による沸騰」でした。

 おじさんの頭の中で、この二つが衝突しました。

 

普通の浮沈子は、浮いていた浮沈子を、圧力を上げて沈ませます。

 じゃあ、沈んでいた浮沈子を、圧力を下げることで浮かび上がらせることもできるのではないだろうか、と。

 

(普通の)浮沈子の原理は、下の図の左から右へです。

・浮沈子はギリギリのところで浮かんでいます。(図の左)

 

・ペットボトルをつぶすと、水の体積は変わりませんが、空気が圧縮されて圧力が増大します。

・空気の圧力が上がると、その圧力は水の中にも伝わって、浮沈子内の水面を押し、浮沈子内の空気を圧縮します。

・浮沈子の中の空気が縮むので、受ける浮力が小さくなり、浮沈子は沈みます。

 

今度は図の右の、浮沈子が沈んだ状態を出発点にとって見ましょう。ペットボトル内の圧力のもとで、浮沈子の中の空気の体積が決まっていて、浮力が重力より小さいので沈んでいます

・空気の圧力を何らかの方法で小さくします(減圧する、といいます)。

・小さくなった圧力は水の中に伝わり浮沈子の中の圧力も下がり空気が膨張し、浮力が大きくなって浮いてきます。(そのはずですよね)。

 

★やってみよう!

方針

1気圧のもとでギリギリ沈んでしまうような状態の浮沈子をつくります。

 この状態から、何らかの方法でボトル内の空気の圧力を下げることができれば、浮沈子内の空気が膨張して、浮沈子は浮いてくるはずです。

エアエンジンカーをつくった時のポンプは、ペットボトルの口のサイズとネジの規格が一致させてありました。あれを使えばペットボトル内の圧力を下げられるでしょう。

もちろん、ヴァキュテナーも使えます。

 

 

実験1:ペットボトル内にギリギリのところで沈んでしまう浮沈子を作ります。

浮沈子として、今回は使い終わったボールペンのキャップを使ってみようと思います。

洗面所の洗面器に水を張り、ボールペンのキャップの中の空気の量を調節して、ギリギリのところで沈んでしまうように浮力調整をします。

うまく調整できたら、水を満たしたペットボトルを寝かせ、浮沈子内の空気が逃げないように注意しながらペットボトルに入れます。

ペットボトルを立て、上のほうに10cmくらい空気が入った状態にしておきましょう。

エアエンジンカーの時のポンプの吸出し側をキャップにつなぎ、ペットボトルにしっかり栓をします。

さぁ、ポンプで空気を引き抜いて見ましょう。

 写真左が開始前の状態です。底に沈んだボールペンのキャップはオレンジ色がついています。ボトルの右がポンプです。

 写真右が減圧したところ。水面にキャップが浮いてきました。

 

やったね!理屈どおりになりましたよ。(これが理科のおもしろさですね。)

名付けて「減圧浮沈子」です。

多分「減圧浮沈子」というのは、あまり例がないのではないでしょうか。ペットボトルを握るとか、大型メスシリンダーに浮沈子を作ってゴム膜を張って押して圧力を増したり、掌を貼り付けて押して圧力を増すというように、普通は「加圧浮沈子」ですよね。逆転の発想でした。

 

浮沈子を検索すると「ういてこい」という名前があるらしいことが分かります。

今回、U君と作ったこの「減圧浮沈子」こそが、この「ういてこい」という名前にふさわしいといえる、とUおじさんはちょっと自慢なのでした。

 

実験2:ポンプで空気を引く代わりに、ペットボトルの口を、自分の口で吸ってみたらどうなるでしょう?どのくらいの大変さで、浮沈子が浮いてくるでしょうか?

これは、ちょっと意外なことになりました。Uおじさんにとって、ペットボトルの口をくわえて、自分の口をポンプにしてボトル内の空気を抜くというのは、さしてどうということのない作業なのです。

唇と、舌の奥をのどに貼り付けたところと、この2カ所を「弁」のように働かせて、口の容積を変化させてポンプにし、肺をまったく使わずにボトルの空気を排気できます。

口の容積を最小にして、舌をのどの奥に貼り付け、唇を開き、口の容積を大きく変えると、ボトル内の空気が口に入ってきます。

 唇側を閉じ、舌をのどから離し、口の中の容積を小さくして口の中の空気を鼻の方へ送り出してしまいます。

 この動作を繰り返せば「口ポンプ」でボトルの空気を減圧できるのです。肺を使う必要はまったくありません。

 

で、U君はこの「口ポンプ」ができず、肺で吸おうとして苦しくなり、咳き込んでしまいました。

慌てたおじさんは、U君にやってもらうことはやめて、自分でやって見せました。Uおじさんの「口ポンプ」でボトルの中の空気を抜いていくと、浮沈子は確かに浮き上がってきます。手でポンプを引く時は楽々なのに、口でやると結構大変なものでした。

 

[後日談]Uおばさんに「口ポンプ」をやってみてもらいました。そうしたら、できませんでした。やっぱり、肺から空気を引こうとしてしまうようです。

 Uおじさんの理科教師としてのスキルのなかに「口ポンプ」のようなものがあったかどうか、はっきりしないのですが・・・。あえてあてはまるかな、といえば、中和滴定などで液体の体積を正確に測り取る「ホールピペット」を、おじさんたちの世代では口で吸っていましたから、これなのでしょうかねぇ?

 

実験3:ヴァキュテナーに水を入れ、この水の中にやはりボールペンのキャップを使ってギリギリで沈む浮沈子を作ります。

ヴァキュテナーのポンプで中の空気を引き抜いて見ましょう。どうなるかな?

 ちゃんと浮いてきました。「減圧浮沈子」です。

 

↑キャップのアップなのですが見えるでしょうか?左では空気の体積は小さく、右では膨張して大きくなっています。

 肉眼でははっきり分かるので、U君は「おぉ〜」と納得していました。

ペットボトルはあまり強く減圧するとつぶれてしまうので、適当なところでおさめましたが、ヴァキュテナーは大丈夫。

 思いっきり圧力を下げていくと、キャップの中の空気はどんどん膨張して、キャップから一部分が抜けてしまうこともあります。そうなった上でいったん1気圧に戻し、再度ポンプを引くと、こんどはなかなか上がってきてくれません。いろいろ、遊んで試してみました。

減圧浮沈子で遊んでいるうちに、ヴァキュテナーの容器の内面に小さな泡がつくようになりました。これは、水道水に溶け込んでいた空気が、減圧によって溶けきれなくなって、泡として出てきたものです。

前回、お湯を沸かすときは初めに水温が上がって水に溶けきれなくなった空気が細かい泡として出てきました。水に対する気体の溶けやすさは、温度が低いほど溶けやすい、圧力が高いほど溶けやすいということがよく分かります。

 


 

洗面所、ペットボトル、という組み合わせで、やってみたかったことがもうひとつあります。

 最近ちょっと、はやりのようになっているのですが、ペットボトル内の「竜巻」というものです。

ただし、おじさんはへそ曲がりですから、単純に「竜巻ができた、すごいなー」にはしたくないのですね。

オリーブオイルの空き瓶があります。まずは、これを材料に使いましょう。

 

実験4:

まず、この空っぽのびんに水をいっぱいにしてください。(ここで最初の「アレ、変な感じ」を体験しましょう。)

水が一杯になったらびんをさかさまにしてください。(2回目の「アレ、変だなぁ」です)。

この瓶の中の水を全部捨ててください。(どうでしょう、うまくいきますか?)

もう一回、びんを水でいっぱいにしてください。

今度は、びんを斜めにして、中の水を注ぎだすようにしてみましょう。どうなるかな?

また水を満たします。今度もやはり逆さまにして水を抜くのですが、今度は水が少し抜けたところで瓶の口と底を持って、底のほうをぐるぐる回します。すると、瓶の中に「竜巻」ができると思います。

竜巻を鑑賞しましょう。

さて、竜巻ができたとき、水が全部流れ出すのに必要な時間はどうなりましたか?

 

最初の「アレ、変な感じ」というのは、水道の蛇口に瓶の口を近づけて水を入れようとすると、うまく水が瓶の中に入っていってくれなくて、ただ溢れるだけになってしまうことなのです。

↑この写真を見てください。実はこの瓶の口はプラスチックの仕切りで、すごく小さくなっているのです。

 ですから、ここへ勢いよく水を流し込もうとしても、中の空気がうまく抜けてくれませんので、水は入っていきにくいのですね。

 水流を少し細くして、瓶を蛇口からかなり下の方へ離し、水流がこの口の真中を通り、空気は脇の切れ込みから出て行くようにすると、スムーズに水が瓶の中に入っていきます。

 

2回目の「アレ、変だなぁ」というのは、下の写真の出来事です。

 瓶の中の水の量には関係なく、瓶を逆さまにしても水が出てこないのです。いっぱい入っていても、少なくても同じ。

 やはり、口のところが狭くなっているので、水の表面が引き合う力(表面張力といいますが)によって、出口のところで水面が膜状になって、落下の圧力に抵抗して水が落ちてこられないのです。

 

さて、瓶の水を捨てようとして瓶を振ってみます。水面が乱れると空気が入り水が出る、また振ると空気が入り水が出る。

 空気が入ることと水が出ることが交互にしか行われないので、瓶を空っぽにするには随分時間がかかります。

 

続いて、瓶の底を回したときはどうなるでしょう?瓶の口のところから瓶の内部に「竜巻」ができて、ぐるぐる回ります。

 竜巻は「空気の細い管」です。ですから瓶の口のところでは、空気は竜巻の内側を通って瓶の中へ吸い込まれ、水は竜巻の空気の管の外側を回転しながら落ちていきます。空気が入ることと水が出ることが同時に行われるようになるのです。

 

実験5:同じ実験を1gのペットボトルでやってみましょう。

この場合はただ逆さまにしてもゴボゴボと水は出て行くことは出て行きます。

ただ逆さまにして水を流しだしたときと、底を回して竜巻を作った場合とで、ボトルが空になるまでの時間を比べてみましょう。

ただ逆さまにしただけのときは、約15秒。竜巻を作った場合は、約8秒でボトルが空っぽになりました。

圧倒的なスピードですね。約2倍も速くなりました。

 

実験6:ほかのボトルでも試してみましょう。

実際に試してみたのは、しょうゆのボトルです。口が一回り大きいのです。

これが、実にダイナミック。逆さまにするとゴボゴボッと水が抜けますが、竜巻を作ってやると、「爆発的な勢いで」と形容したくなるような勢いで水が抜け、ボトルの口の下に水の膜が竜巻状というのかな、外にまで渦ができるのです。

しかもあっと言う間に水が抜け落ちてしまいます。これはスゴイです。

 

まとめ

ボトルの中の水が外に出るためには、出た分の水と同じだけの体積の空気がボトルの中に入らなければなりません。この出入りを狭い口のところで行うわけです。

口がすごく細いと、放っておいたらまるっきり水は出ません。

細くてもゆさぶったり、ある程度の太さがあるときは、水が出るのと空気が入るのが交互に行われます。

竜巻ができると、口のところで水が出るのと空気が入るのが同時に行われるようになり、非常にスムーズに、速く、水が抜けていきます。

竜巻ができるということには、こんな意味もあったのですね。

(細い口を通して、水を入れるときも同じです。口いっぱい水流が太くいと、水が入ろうとしても空気が出てくれないのでうまく入っていけません。少し水流を細くして、空気がうまく抜けるようにしてやらなければならないのですね。)

 


 

ところで

びんやボトルの中の竜巻はどうしてずっと回っていられるのでしょう?

重さがあって粘っこい水面の渦は、放っておけばすぐに止まってしまいます。

お風呂で、水面からてのひらをす〜っとお湯の中に沈めてください。水面に渦ができると思います。

 この渦、ずっと回り続けますか?

渦ができたら、渦の下、10〜20cmくらいのところのお湯を強く斜め下へ「かき下げて」みましょう。

 うまくいくと、渦を保ったり、渦を成長させたりすることもできますよ。

渦を保つには、エネルギーが必要なのです。お風呂の渦は、手でかくという形で渦にエネルギーを供給できます。

 

びんやボトルの中の渦=竜巻にエネルギーを供給しているのは何でしょう?

エネルギー源は、実は水の落下なのです

竜巻渦の外側を水が回転しながら落下していき、それによって空気を吸い込むのです。重力によって働く一種のポンプのようですね。

渦が持続する時には、必ずどこかから渦にエネルギーが供給されているはずです。そのような「眼」で、いろいろな自然の渦なども観察してください。

 

例をひとつ

自然界の大きな渦=台風も、渦を保つにはエネルギーが必要です。

 温かい湿った空気がエネルギー源です。温かい湿った空気を作るのは太陽です。南の海で、強い太陽光が、海水を暖め、たくさんの水蒸気を蒸発させます。この水蒸気が激しい上昇気流を作る原動力となり、大きな積乱雲を作り、たくさんの積乱雲が巨大な集合を作って渦巻いているのが台風です。

台風が北へ流されてくるときも、海面が温かくて水蒸気が大量に供給されると、台風は衰えることなく、場合によっては発達しながら流されてきます。

今年の台風シーズンにニュースや予報をよく聞いてください。台風は、大陸に上陸したり、日本列島に上陸したりすると急速に衰えます。陸地では湿った空気の供給がなくなるからなのです。エネルギーの供給を断たれれば、台風という渦は衰えていくのです。

つまり、間接的ですが、台風は太陽のエネルギーで発生し、成長し、持続するのですね。

 


 

★さて、ヒキガエルも大きくなりました。立派なヒキガエルでしょ。

 実際の大きさは↓

 U君が手に乗せて遊んでいます。かわいいですね。

 

 

★今日はここまで