理科おじさんの部屋:第84回


●第83回は2007年3月14日(水)でした。

 

スピーカーをつくろう!

 

前回、本物のスピーカー単体をラジオの出力で鳴らしてみました。

 

 スピーカーをものすごく単純化した概念図はこんなものでしょう。

 

とにかく、コイルと磁石があればよいのです。そうしてコイルに音声電流を流せば、コイルの磁力線は変化し、磁石と相互作用しあって、コイルなり磁石なりが振動し、空気を震わせて音が聞こえるわけです。

 

★じゃあ、やってみよう!!

 

1:まずは、コイルを巻きます。2mほどのエナメル線をフィルムケースに巻きつけてコイルにします。銅線がバラバラに震えてはまずいので、4カ所ほどセロテープを巻いてしっかり束ねます。

 もちろん、銅線の両端は数cmずつ出しておき、サンドパーパーでエナメルをはがします。

2:ラジオの出力をコイルに入れます。

    この段階ではコイルを持っている指先には何も感じません。

3:直径4cmほどのドーナツ型のフェライト磁石と合わせて持ちます。

    アレッ、震えてる!

 

骨伝導音を聞く!

「コイルと磁石を頬の骨に押しつけてごらん。どうだい?聞こえるかな?」

 かなりビックリしたような、妙な感じのようでしたが、「聞こえる」との返事。

 「顎の骨でもいいんだよ。聞こえるでしょ。」「ウン、聞こえる

 というわけです。

 

このできごと、実は「(伝)導音」を聞いているのです。

鼓膜を通さず、音の振動が頭蓋骨を通して、直接内耳に伝わっているのです。

空気中から外耳→中耳→内耳と音が伝わっていく経路を「気導音」といいます。

 自分が話す自分の声を聞くときは、気導音と同時に、骨伝導音も聞いているので、自分が出した自分の声は、気導音と骨伝導音の両方が重なったものです。

 録音された自分の声を聞くと、なんだか自分の声ではないような気がしますね。これは、気導音だけを聞くことになるからです。他人が聞く自分の声はすべて気導音ですから、こういう声を人は聞いているのだな、と思って下さい。

こんな話をしたらU君、こんどはコイルと磁石のセットをおでこにもつけてみました。ナルホド。普通あまりやらないけど、原理的に聞こえるはずですね。

「聞こえるかい?」「ウン、聞こえる」

確立された原則はどこでもいつでも成立する、というのが理科の大原則・醍醐味です。

 

!!ここで、実験を一つ!!やりました

口を開いて、上下の歯が接触しないようにします。

爪の先で、上の前歯と下の前歯を、同じような強さでコンコンコンと叩いてみましょう。(箸やスプーンの柄でもいいですよ。)

音の大きさや響き、音の成分(高い音や低い音のどちらがより強く聞こえるか、という意味です)などをじっくり聞き分けてみて下さい。

   違いがありますね!

 上の歯は頭蓋骨に直接つながっていますから、上の歯を叩いた音は直接内耳に到達します。

 ところが下の歯は顎の骨に生えているので、音の経路は途中で「顎関節」を通ることになるのです。

 関節では骨と骨が直接ぶつかるということはなく、軟骨や膜が間にはさまっています。ここで音は減衰するとともに、音質も変化するのです。

 簡単な実験ですが、自分の頭蓋骨と顎関節とが意識できますでしょ。面白いですね。

 

携帯電話やヘッドセットなどで、この骨伝導音を利用した商品があります。

 うるさい場所で、耳からは騒音が入ってきても、骨伝導という別経路で相手の声が聞けるというわけです。

また、外耳や中耳の損傷などによる「伝音性難聴」の人でも、内耳が正常なら、この骨伝導音を利用した補聴器で音を聴くことができます。

 残念ながら内耳に起因する「感音性難聴」の場合は、骨伝導音でもむずかしいでしょう。

 

 

◆なんでもスピーカー!!!

まずは歌う猫缶

さて、わが家の猫たちが食べた缶詰の空き缶をもらってきました。その底にコイルを置き、磁石をのせます。缶は鉄製なので磁石でくっついてしまいます。

↑後ろに見えているラジオの出力をコイルに流します。がしゃがしゃと大きな音を立てて音楽が流れ始めます。

 強く押さえつけると、高い音が強くなり、キンキンした感じの音になります。押さえつける力を緩めると、音が伸びやかというのかまろやかになり、結構、低音が響くようになります。

 耳に当てたり離したり、いろいろ変えてみると音の聞こえもずいぶん変化します。

 これはかなり面白い!

 

続いては、全くの話「なんでもスピーカー」!!

↑Uおじさんが用意した品々。左から2番目の猫缶を上で使いました。

歌うミニバケツ歌うサイダーのアルミ缶歌うコーヒー豆の空き缶・・・が並んでいます。

右はゴミ箱。「歌うゴミ箱」用。

 ゴミ箱の底にコイル・磁石セットをくっつけると、これはかなり本格的なスピーカーです。いい音がします。

 で、当然やりたくなるのが、ゴミ箱をかぶってみること。で、ちゃんと洗っておきました

 頭のまわりじゅうから音がするのです。これは「変!」。不思議な体験です。超「サラウンド」音?かなぁ。

ストーブの上に乗っているのはステンレス製のケトル。空っぽにしておきました。これも「歌うケトル」になります。

ストーブ自体も歌います。ストーブ全体から音が出ます。「歌うストーブ

缶が乗っている「板」がありますね。これは合板の板です。これにコイル・磁石セットをくっつけると板全体に音が響いて面白いものです。

 「歌う板」ですね。

 全体が鳴り響いているのですけれど、目をつぶって耳だけで音源の位置を探ってもらうと、かなり確実に当たります。

この「歌う・・・」シリーズのトリは、写真右後のドア。ドアを開けて、コイル・磁石セットを当てると、ドア全体に音が響きます。「オー」という感じ。

 「歌うドア」でした。

U君は壁にもコイル・磁石セットをくっつけてみましたが、これはちょっとダメでした。うまく振動してくれないようです・

 

それぞれに個性的な音を出します。同じラジオの出力を、同じコイル・磁石セットに入れて聞いているのですが、「音質」というものはそれだけでは決まらないということがとってもよく分かります。音を響かせるものの材質、形などで大きく変化するのです。

 

モーターもスピーカー?

理科の面白さは、原則がどこでも通用することです。「コイルと磁石のセットに、音声電流が流れれば振動して音が出る」のですね。

 

 「ねぇU君、モーターってどんなつくりだった?コイルあるよね?」「ウン、磁石も」「じゃぁ、スピーカーになるねぇ」

 磁石とコイルがあれば基本的にはスピーカーなんですよね。モーターの中身は、コイルが巻いてあって、両側を磁石がはさんでいました。

というわけで、モーターにラジオの出力を入れてみました。かすかに音がします。あまり響きません。耳を寄せたり、頬の骨にくっつけたり、モーターの軸を歯でかんだりすると、音が聞こえます。「歌うモーター

発電機ももちろん全く同じ。発電機の出力端子に逆にラジオの出力を入れると、「歌う発電機」の出来上がり!

 

 

次は、イヤホンの分解

壊れて音の出なくなったイヤホンがあります。耳に入れる部分を分解してみましょう。何がどうなっているでしょう?

↓耳穴にフィットさせるゴムのふちがあったのですがボロボロになっていたので壊しはずしてあります。

 ネジなどで組み立てたものではありませんので、破壊的に分解しなければなりません。ラジオペンチ、ペンチ、ニッパー、ドライバー、ピンセット、ナイフなどを使って、慎重に壊していきます。ただ力まかせに壊したのでは、中味がどうなっていたのか分かりません。こういう破壊的分解はおじさんの得意とするところ。結構力を入れなければなりませんし、相手は小さいし、危険といえばかなり危険な作業ですので、おじさんが壊しながら要所要所をU君に手伝ってもらい、壊すべき「ポイント」を探しながら分解を進めます。

 外耳道に向う側の金属の網の内側には紙製の膜がありました。それをはずして、境目にナイフを入れてこじり、開いたところが

↓これ

コードから来た銅線が中に入っていくところです。

 

↓反対側はこんな具合。

 左が強力な「磁石」です。右は透明な薄膜にくっついたコイルです。差し込んだ細いドライバーで半分形が歪んでいますが、本来丸いコイルです。

 この透明膜が「コーン」なのでしょう。透明薄膜は少しひねりをかけたような模様があって、適度な張力で張ってあるのだと思います、音質をよくするために。

 

↓壊さなかった方のイヤホンと、中から出てきた磁石とコイルです。大きさの関係を見て下さい。

 耳に入る部分の「柄」のような部分には、中空の管がついています。音を響かせる工夫でしょうね。

 

↓取り出した、強力小型磁石と自作のコイルで「歌う猫缶」を構成してみました。

 小さな磁石なので、おじさんとしてもちゃんと音が出るかどうか危ぶんだのですが、だいじょうぶ!

 かなり大きな音で音楽が流れてきます。音もクッキリしていて予想以上に素晴らしいスピーカーができました。

 

ところで、U君はこのコイルを作っている銅線がものすごく細いことに気付いて、なんとかほぐしてみようとしはじめました。1本取り出せても、引っ張ると切れてしまうのでやっかいです。

↑なんとか1本だけ、マイクロメーターに挟んだところ、太さ「0.06mm」でした。「髪の毛のような太さ」といってよいと思います。細いですねぇ

(ちなみに、コードの中の銅線は0.09mmのものが束ねてありました。)

猫缶にイヤホンの磁石をくっつけて、コイルとセットでU君にあげました。自分の家でもできると思います。

 

というわけで、今日はここまで。

 


●毎週水曜日にやっている理科おじさんの部屋ですが、来週21日は春分の日で休日。その次の水曜日はもう春休みの最中になります。

 ということで、今年度、U君5年生の年度はこれでおしまい。

2年間で84回もやったんですね。高校で週1回の授業を「1単位」といいますが、1単位の授業はいろいろ行事などもあって、年間30時間くらいになります。

U君は「理科おじさんの部屋」という1単位の授業を2年間にわたって修得しました。おもしろかったね。

来年度、6年生になっても続ける予定です。遊びのネタはまだまだ尽きません。楽しいですね。

ほとんど毎回、何か実験のような遊びのようなものを工夫してきました。Uおじさんは教師時代、「すべての授業にひとつでもよいから必ず『もの』を持ちこもう!」という実践を長く続けました。今、退職してここにきて、再び『もの』と密着した理科遊びを楽しめることを本当に嬉しく思っています。

 

★来年度もまたヨロシク!いっぱい遊びましょう!

 


[ちょっとオマケ]

イルカの耳について(骨導音の話)

「驚異の耳をもつイルカ」森満 保 著、岩波科学ライブラリー95、2004年1月20日 第1刷発行

この本はとてつもなく面白いです。全部紹介したくなるほどですが、骨(伝)導音についてだけちょっと紹介しましょう。

 

第2章

 ・・・

 テープレコーダーには、当然ながら気導音だけが録音され、骨導音はまったく含まれていない。それで、自分の声が他人の声のように聞こえるのである。

 このことは、イルカにとっては大問題である。イルカは、自分の探査音(骨導音+水導音)が餌にあたって反射音(水導音)となって返ってくるのを頼りに、餌を捕っている。もし探査音と反射音が異なった音色に変わってしまうと、エコーロケーションそのものが、まったく不可能になってしまう。

 イルカは、この骨導音を完全に切り捨てない限り、餌は捕れないことになる。そのためには、耳全体を頭蓋骨から切り離さなければならない。哺乳類の中で耳が頭蓋骨から遊離している動物は皆無である。はたして、イルカの耳は頭蓋骨と遊離しているのであろうか、極めて興味深い重大な問題である。

 

第3章

 ・・・

 イルカは、耳が頭蓋骨から遊離しない限り、理論的にエコーロケーションは不可能であると前章で述べたが、実際にカズハゴンドウの頭蓋骨のCT・X線写真を撮ってみて、図9に示すように、確かに中耳と内耳が一体となって頭蓋骨から完全に遊離しているのを確認したときには、非常に驚いた。

 ・・・

 中耳と内耳が一体となった骨を鯨石と呼んでいる。

 ・・・

 鯨石は、頭蓋骨から聴神経、蝸牛水管や網状の結合組織により風鈴のように吊り下げられた状態であり、左右の耳は頭蓋骨とはもちろん、お互いにも独立して振動することができる。

 ・・・

 しかも、頭蓋骨の振動による骨導音も避けられるので、自分自身の探査音と、餌からの反射音の両方を、純粋に水導音のみに分離して聞くことも可能となり、エコーロケーションの性能はさらにハイレベルになれたのである。イルカは人のようにテープの声を聴いて不思議がることはないのである。さらにまた、第4章で述べる、強大な探査音による蝸牛の毛細胞の障害を免れることもできるという、非常に大事な利点も生まれたのである。

 鯨石こそは、イルカの耳の特異性の最たるものといえる。

 

第4章

 ・・・

 イルカの呼吸孔近くに左右対になった空気嚢(鼻嚢)があって、交互に空気を出し入れすることで、空気嚢近くの弁を振動させ、超音波を出していることが報告されている。

 ・・・

 空気が漏れないように呼吸孔の蓋をしっかり閉じておけば、同じ空気を出し入れして、いくらでも続けて探査音を出せるし、空気嚢の出口の弁(笛舌)を顔面神経で調節すれば、周波数を変えることもできる。

 ・・・

 イルカの探査音は非常に強大である。・・・

 ・・・

 耳は本来、音を聞くためのものであるが、ある程度以上の音では、蝸牛の毛細胞が振動しすぎて壊れ、難聴になる。・・・。一度壊れた毛細胞は絶対に再生しないので、音響による難聴はまったく回復の望みがないことである。

 イルカは、自分の探査音で難聴になる恐れが十分にある。空気嚢から出された探査音は、頭蓋骨を骨導音となって伝わり、蝸牛の毛細胞を破壊しうるほどに強大だからである。

 しかし、前章で述べた鯨石のことを思い出して、安心していただきたい。頭蓋骨に伝わった探査音は、鯨石まで強大なエネルギーを持ったままで伝わることはない。硬い頭蓋骨と鯨石の周囲にある空気との境界、その空気と鯨石との境界の二回の反射で、ほとんど無音のレベルにまで減弱されてしまうからである。

 イルカは、特異な鯨石となった耳のお陰で、音響性の毛細胞障害の心配なしに、いくらでも大きな探査音を出し続けて、腹いっぱいの餌を捕ることができるのである。

(以下略)

というわけです。感激的にすごい仕組みですね。

 

実はUおじさんは、コンクリートを破壊する工事のそばで騒音を我慢して仕事を続けたために、左耳が上でいう「音響性の毛細胞障害」になってしまい、軽度の難聴になりました。左耳は、人の声程度の周波数の音に対する感度がガタ落ちなのです。その結果として、音源の定位が甘くなった、雑音の中から目的とする声だけを抽出して聴くことができなくなった、といった状態になっています。教室という騒音の満ちた空間で、質問されてもその声だけを聞き取ることができなくなってしまい、教職最後の年は辛い思いをしました。教壇に立つ資格を失ったということですから。(自動車の運転中の会話もできにくいです。)

音楽をヘッドホンで聴くこともなくなりました。スピーカーから出てくるまとまった音としてしか聴く気がありません。

会話もかなり「耳が遠い」状態でしょう。特に、内緒話やひそひそ話のような、子音で語られる声はほとんど聞き取れません。ちゃんと子音と母音がセットになった声で話しかけてもらわないとダメです。テレビなどでも、きれいに聞き取れる発音をしている人と、全然聞き取れない発音の人がいることがよく分かりますよ。

とまぁ、余談でしたが、イルカの耳ってすごいですね。イルカ・ショーを見るチャンスがあったらこんなことも思い出してください。

 


 

◆最近、感じるところを少し。

 

昨年(2006年)12月27日の朝日新聞に、鶴見俊輔さんと徳永進さんの対談が掲載されました。その中で鶴見さんがこんなことを書いておられます。

[鶴見俊輔さんと語る]生き死に 学びほぐす : 対談相手 徳永 進さん・医師(12/27)

 ・・・

 戦前私はニューヨークでヘレン・ケラーに会った。私が大学生であることを知ると、「私は大学でたくさんのことをまなんだが、そのあとたくさん、まなびほぐさなければならなかった」といった。まなび(ラーン)、後にまなびほぐす(アンラーン)。「アンラーン」ということばは初めて聞いたが、意味はわかった。型通りにセーターを編み、ほどいて元の毛糸に戻して自分の体に合わせて編みなおすという情景が想像された。

 大学で学ぶ知識はもちろん必要だ。しかし覚えただけでは役に立たない。それをまなびほぐしたものが血となり肉となる。

 徳永は臨床の場にいることによって、「アンラーン」した医者である。アンラーンの必要性はもっと考えられてよい。

 

また、今年(2007年)1月23日に大江健三郎さんは[定義集]という月1回の連載で、鶴見さんの「学びほぐす」をうけて、こんなことを書かれました。

[定義集]「学び返す」と「教え返す」 人はいかにまなびほぐすか

 ここで私が「学び返す」「教え返す」と、こなれていない訳し方をしたもとの言葉は、unlearnとunteachです。・・・

 ところが昨年末本紙に載った、ホスピスケアを持つ診療所の徳永進医師と、鶴見俊輔さんの対話を、両氏中間の年齢の者として、切実かつ心をうたれて読むうち、鶴見さんがunlearnをまなびほぐすと見事に訳していられるのに出会いました。

 ・・・

 そこで、やり直しを始めた、それは学んできたものを忘れる、unlearnすることからだ。するとそれにこたえて、おれに学んだことが正しくなかったと教えてくれる、unteachしてくれる若い連中が出てきた・・・・・・

 unlearnの、鶴見さんによる定義は、次のようです。《大学でまなぶ知識はむろん必要だ。しかし覚えただけでは役に立たない。それをまなびほぐしたものが血となり肉となる。》

 そして、まなびほぐしたものの積極的な働きの例が示されています。しかし、まずどのようにして、人はまなびほぐすか、unlearnするか? 私が対の言葉として覚えているunteachという単語を辞書で見ると、そのための手がかりがつかめます。《(人)に既得の知識(習慣)を忘れさせる、(正しいとされていることを)正しくないと教える、……の欺瞞性(ぎまんせい)を示してやる。》(リーダーズ英和辞典)

 私は、教育の現場で働くという経験を(ほんのわずかな期間しか)していません。そこで、他の人間に教えることでありがちな過ちをおかすことこそ少なかったけれど、教えた相手から過ちを指摘されて、苦しく自己修正することはなかった。それをやるように、教えている相手から逆に励まされるということもなかった・・・・・・

 ・・・

 

辞書から

The American Heritage Dictionary of the English Language: Fourth Edition.

unteach

1. To cause to forget or unlearn something. 2. To teach the opposite or contrary of (something previously taught).

 

 

unlearn = 学びほぐす」の方がある意味で理解しやすい概念だと思います。型通りに学んだことを、一旦破棄して、自分の中に再構築していく、ということに近いのだと思っています。

では「unteach」ってどんなことなんだろう?上に引いた大江さんの文章からは unteach は他動詞であって、「人」(他者)の中の既得概念をひっくりかえして忘れさせ、本当の意味を考えさせていくこと、のように読み取れます。

あるいは、学ぶ側からのフィードバックを得ること、も含まれているのでしょう。

最近私が思うのは、他者に対してではなく、自分自身に対してアンティーチが起こっているような気がするのです。アンラーンもアンティーチも、自分自身の中に起こること、ではないか?と考えています。

自分自身の中に自分自身を破壊する他者を持つこと、それによって自分自身に対して常にアンティーチを行うこと、それが同時にアンラーンでもあり、「教える」という行為の本質なのではないか?

「教える」という行為は、他者に対してなされる行為のように普通考えますが、実はそうではないようです。「教える」という行為は自分自身に対してなされることのようです。その過程が表出されることを普通は「教える」といっているのでしょう。

 自分自身がよって立つところの基盤を常にひっくり返し、掘り返し、不安定化し、自分自身の中にアンティーチを引き起こすことこそが教育なのではないか、と、教壇を去った今、私は考えています。

 

無用の饒舌でした。笑って見過ごしてください。