理科おじさんの部屋:第98回
●第98回は2007年8月7日(火)でした。
★夏休み中ですので、午前9時ごろに来てもらいました。
●最初の1時間ほどは「昆虫特集」(朝のうちでないと暑すぎます。)
U君とUおばさんと二人で近くの多摩川河川敷へ虫採りに。帽子をかぶって、虫よけスプレーを吹き付けて、おでかけ。
(Uおじさんは「かかしさん」。左足が不自由なので歩き回るのは苦手ですし、まして草むらの中を歩き回るのは完全にお手上げです。おうちでお留守番のUおじさんです。)
東京都とはいえこのあたりは、多摩川の河川敷のおかげでその気になれば昆虫は豊富なのです。
(気付かない人は、「やはり都会には自然がない」と言うかもしれません。「眼力」がものをいいます。Uおばさんの「昆虫眼力」はすごいものです。傍目には「孫の虫採りに付き合わされているおばあちゃん」としか見えないでしょうけれど、とんでもない、虫見つけ名人なのです。虫採りの技だけだったらUおじさんの方が上だとは思いますが、もう動きまわりませんので、口先だけになりました。)
小一時間の虫採りで、ポリ袋や飼育ケースにいっぱいバッタ類をとってきました。基本的には「カマキリのえさ取り」なのです。現在のカマキリの大きさを考えて、食べられるくらいの大きさのショウリョウバッタやイナゴなどが「良い」えさです。カマキリに感情移入していると、「これはみずみずしくっておいしそうな虫だ」とか「ばさばさしてまずそうだなぁ」とか思ってしまうようになります。
さっそく収獲をカマキリたちに分配してやります。
(苦手な人は下の写真をスキップしてください。)
ショウリョウバッタ

↑むさぼり食うカマキリ。
★今日のメインは「虹の実験」です。
●散水器を伸ばして、道へ出ます。虹は背景が黒いほうが見やすいので、まず道路を濡らして見やすくします。
実験の時刻は10時半近くです。太陽はかなり高く昇っています。
1:まずは、単純に、虹!
写真 1

◆さて、虹はどこにできるのでしょう?
ホースを持って、あっちへ水まき、こっちへ水まき。どっちに虹が見える?
「太陽の反対側にできる!」
●そう、太陽を背に受けているときにできます。
道路に映った自分の影を見てみます。自分の頭の影と実際の自分の頭を結ぶ線を後ろに延ばしていった方向に太陽がありますね。
そうして、自分の頭の影と頭を結ぶその線を中心にして、取り囲むように虹ができているのですね。
●この虹のことを「主虹(しゅにじ)」といいます。
ふつう「虹が出た!」というときにみんなが見ているのは、この主虹です。
◆虹の色の並び方はどうかな?
「外側が赤くて、内側が青い」
●「虹の七色」といいますが、7色には見えませんね。3色か4色くらいかな。その間の色にも名前を付けると5色とか7色になります。
標準的にはこういいます「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫(菫(スミレ))」。英語なら「red, orange, yellow, green, blue, indigo, violet」です。
実際には、光の色は連続的に変化しています。でもそれでは「言語によるコミュニケーション」がとれませんので、いくつかの部分に分けて命名し、その名前を使うことによってコミュニケーションを行っているのです。
◆水流を振ってごらん、水滴の流れが上や下、右や左へ動いたとき、虹も一緒に動くのかな?
「虹は動かない。虹の続きが見えたり消えたりするけれど、虹そのものは動かない」
◆じゃあ、おじさんがホースを持ってじっと動かずにいるから、U君おじさんの周りをまわりながら虹を見てごらん。
「虹が動く。ついてくるみたい。」
立ち止まって、頭だけ左右に動かしてごらん。
「やっぱり、虹が動く」
●そうなんですね。水流は絶え間なく動き、変化するのですが、虹は動かずにそこにあります。つまり、個々の水滴が色を持っていて、移動していってもその色が変化しない、というようなものではなく、ある特定の位置に来た水滴はいつもある特定の同じ色を目に送ってくるということなのです。
●一方、虹を見る目が移動すると、その目と太陽を結ぶ線が移動して、その線を中心にして取り囲んでいる虹も一緒に動いてしまうのです。
虹は目の位置が決まると、その位置での虹が見える、目を別の位置に変えると、別の位置での虹が見えるのです。
言い方を変えると、十人の人が一緒に虹を見たとき、「一つの虹を十人で見る」のではなく、「十人がそれぞれ自分の虹を見る」のです。
何かの物、たとえば一頭の象を十人が一緒に見るとき、象は一頭です。決して、十頭の象がいるわけではありません。ところが、虹ではそうではないのです。
ということは、虹というのは普通に私たちが見ている「物」ではないようですね。
一人一人が別々に見る「現象」であって、個々の人に個々の虹が見えているのです。でも、言葉では「虹を見た」といって、同じ経験を共有したつもりになれるのです。
●今回の実験では、U君、Uおじさん、Uおばさんの3人で実験をやりましたから、3人がそれぞれの虹を見ていたのです。
☆オマケ:物体を左右両眼で見ると左右の目にうつる像は少しズレ(視差)を生じます。このズレを脳が処理して、このズレから立体感を生みだします。両眼視による立体視、ですね。これを利用して、左右の目に立体視用の情報を別々に送り込めば、脳内で立体感が生まれます。いろいろな立体視技術がありますね。今はそれには立ち入りません。
ここで問題にしたいのは、虹を両眼で見たときのことです。虹は物体ではありませんので、左右の目も、それぞれの虹を見ます。ですから、それぞれの目は、それぞれの目の前に虹を見ていますので、立体視を生む「視差」がありません。ということは、虹を見ても立体感(遠近感)はないのです。虹をつくる水滴、水流には立体感がありますが、そこに生まれる虹には立体感がないのです。こんなことも、虹を見たときの視覚経験の不思議さを生んでいるのかもしれません。
飛行中の飛行機の窓から、雲や虹を2回撮影し、雲や景色を立体視できる写真を撮ったとします。この2枚の写真を並べて立体視すると、雲や景色は立体的に見えるのですが虹はその位置が決められません。雲の立体写真集でそういう写真を見たことがあります。私の推測が当たっていたので、とてもうれしく思いました。
2:虹が2本ある!
写真 2

◆ちょっと木陰の暗い方に虹を作って、上の方まで見てごらん。
「虹が2本ある!」
●今まで見ていた主虹の上の方に、もう一本虹があります。これを「副虹」といいます。
◆副虹の色の並び方はどうなっているの?
「主虹と逆だ。外側が青っぽくって、内側が赤い。」
●屋外で雨あがりなどに見る虹では、主虹しか見えないことも多いのです。また、虹は1本という常識を持っていると、2本目があっても気づかないこともあります。
ですから、はっきり副虹を見るチャンスは意外と少ないでしょう。
この実験のように、きちっと作ってしまえば、見落としようもなく副虹も見えます。
●副虹の色の並びについては後で考えます。
写真 3

写真2と写真3の両方を見てください。
◆なんだか主虹と副虹の間は暗くないかい?
「主虹の内側は白っぽくて明るい。主虹と副虹の間は暗くて、向こう側が透けて見える。それで、副虹の外側も少し白っぽくて明るい。」
●副虹の存在ですら非常にポピュラーとは言いがたいのですから、まして、その2本の虹の間や外側などのことは、普通の人にはほとんど知られていないでしょう。
今は高校の物理でも虹を扱うチャンスはほとんどないし、昔から知られている「虹という現象」について学ぶチャンスがないのはとても寂しいことです。
●新聞などでも注意していると「虹が出た」という写真を見ることは結構あるものです。そういうときに主虹のすぐ内側を見てください。
白く明るいはずです。この原因はあとで少しお話しましょう。
●主虹と副虹の間が暗いことは昔から知られていて名前もあります。「アレキサンダーの暗帯」といいます。(「アレクサンダーの暗帯」とも。)
●そしてまた副虹の外側は少し白っぽいのですね。
●アレキサンダーの暗帯の位置にある水滴が太陽光を受けて送り返す光は目に入る方向からそれています。ですから、この部分からは光が来ない=暗い、ということなのです。
4:過剰虹
◆主虹の一番内側は紫っぽいよね。で、さらにその内側に、もう一回、色がぼんやり見えてないかい?
「左の方の下に、なんだか赤っぽい色がついているような気もする」
写真 4

写真 5

●写真4と5を見てください。肉眼では主虹の左の方の下側あたりに、何となく暖色系の色がぼんやり見えました。白っぽい筋として見えることもあります。
デジカメの写真ではほとんど見えませんね。これは「過剰虹」といって、説明はしませんが、出来事としてこんなこともあるんだ、と知っておいても悪くはないでしょう。
5:では室内に移って実験しましょう。
----------(主)虹のできる原因-----------
◆色のない太陽光線から、なんで色が出るんだろうね?
写真 6

↑2階の部屋の窓際で、U君が正三角柱のプリズムを日の当るところで持っています。プリズムの向きをうまく調整すると↓
写真 7

↑虹が出ました!(二つに分かれているのは、ホップが伝って上がってこられるように窓の外に張ってある紐の影が入ってしまったためです。)
●この実験では、プリズムの面にどんなふうに光が当たっているのか、いまひとつ明瞭ではありません。そこで、この実験↓

机のふちのところで斜め上むきにレーザーポインターの光をプリズムに入れています。その赤い光が「なんと!」プリズムから下向きに出てきて白い紙に当たっているではありませんか!ものすごく曲げられています。
この様子を、おおざっぱに図にしたのが下の図です。(この図では、角度と屈折率の関係などはいい加減です。こんな風に曲がるという「概念図」ですのでご承知おきください。)

●レーザーポインターの場合は赤一色だけれど、太陽光線にはいろいろな色が含まれているんだ。そうして、色ごとに屈折率が違うんだね。赤い光は屈折率が小さくて曲がりにくい。紫の光は屈折率が大きくて大きく曲がる、という性質があるんだね。
そのようにしてできたのが、写真7の「色」なんだよ。こういうのをスペクトルというんだ。
●これはもう事実として受け入れてもらうしかありません。確かにそうなっています。
●ところで、太陽光のように、「無色の光」のことを「白色光」という言葉で呼ぶことを知っておいてください。
☆オマケ:私たち地球上の生物は、「私たちの太陽」の光を受けながら進化し、生きてきました。ですから、太陽の光は「当たり前に存在するもの」「特徴のないもの」として受け入れています。そのために私たちは太陽光を、無色だ、白色光だ、と表現しています。SFがかってしまいますが、(私たちにとって)青い星であるシリウスのそばで生まれ進化した知的生物が私たちの太陽系や地球にやってきたら何と言うでしょう?「なんとここの太陽は赤いのだ!」というでしょうね。その宇宙人はきっと自分たちの太陽の光を「無色だ、白色光だ」と考えているに違いありません。ですから、シリウスより赤い光を多く含む私たちの太陽はずいぶん赤い星だ、と考えるはずなのです。
どんな生物も、「自分たちの太陽の光を白色光と呼ぶ」はずです。
白色光とは「太陽光に含まれる光の波長分布と同じ波長分布をもつ光」のことです。
★大事なこと! 白色光は屈折するときに、成分として含んでいるいろいろな色の光に分かれる。
(普通の反射の時には分かれません。)
●太陽光線(白色光)から虹が生まれる(色が分かれる)ということは、水滴での屈折が重要らしいということがわかりました。
●実は、「理科おじさんの部屋:第8回、9回」で、光の屈折自体はもう扱っています。下のページをご覧ください。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/8th/sci_8.htm
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/9th/sci_9.htm
●このときは、光の進む道が曲がることだけを実験で勉強しました。今回は色のことまで発展しました。
◆水滴での屈折というものがどのようなものなのか、これは図を描くのが難しいので、資料をコピーしてU君に見てもらいました。
(この他にも、いろいろな資料を使いましたので、最後に一覧にしておきます。その番号で引用先を示します。)
★まずこの図1を見てください。(文献3から引用)

図 1
球の中心と太陽と目、の3点で決まる平面で水滴を半分に切った断面上で考えます。
(見づらいですが)「1」と番号のついた光線はまっすぐ中心に向かう光線で、中心を通って反対側に行き、そこで反射して同じ経路を帰ってくる光線です。
この直径をはさんで上下に対称ですから、下は省略です。
●上へ向かって光線に2〜12まで番号が振られています。12番の光線は円の接線より少しだけ内側の光線と考えてください。
●入射する時に1回屈折し、水滴内で1回反射し、もう1回屈折して出てくる光線が描かれています。
●光線8あたりが一番外側になり、光線6,7も9,10もそれより内側に出てきます。そして、光線7,8,9の辺りにたくさんの光線が集中していることがわかります。
★下の図は文献1からの引用です。

図 2
●この図2は図1と基本的に同じことを表現しています。オリジナルの図では狭い間隔の平行線で入射光が描かれていましたが、コピーの時につぶれました。
その結果、かえって、出てくる光がどこに集中しているかが見やすくなったかもしれません。
やはり、一番外側の光線から少し内側に入ったあたりに集中することがわかります。
☆オマケ:入射した光がすべてこの経路に沿って出てくるとは考えないでください。入射時に反射が起こり、反射時には水滴の外へ漏れ(全反射ではないということです)、射出時にも反射が起こります。
ですから、ここに描かれた光線の経路は「主虹」を説明するための選ばれた経路です。
また、多くの光が失われていますので、出てくる光はかなり弱い光になります。空にかかる虹は、空に鏡を置いて太陽を見るような明るさはありませんね。
これが虹のうっすらとしたはかなさの原因の一つでもあります。

図 3(文献1)
●図3のように、太陽光を仰ぐ角度をδとすると、δは赤色端の光で約42度、紫色端の光で約40度となります。
このように、2回の屈折と一回の反射により、白色光は約41度の周辺の内側に分散して出てくることになります。
★図2,3は、平面内での出来事ですが、実際には、水滴には光線に垂直な断面全体に太陽光が入射します。すると、出てくる光は円錐状に出てくるはずですね。
それが下の図4です。

図 4(オリジナル)
このように円錐状に出てきた光線のうち、 瞳の大きさ分しか受け取っていません。ずいぶんわずかな光しか受け取っていないことがわかるでしょう。
水滴にあたった光は基本的にこの円錐内にあります。(屈折や反射のときに出て行った光は別として。)これがあとで大事なことになります。
★ではこの様子を少しだけ見てみましょう。
写真 8

●写真8の状況を説明しましょう。窓からかなり急な角度で(高い位置に太陽があるという意味です)太陽光が入り、床に当たっています。
その陽射しの中にアクリル製の球(直径約5cm)と、アクリル製の円盤(直径約5cm、厚み約1.5cm)を置きました。
アクリル球は水滴のモデル、アクリル円盤は球の中央付近を取り出したモデルです。
●さて、壁に映った光を見てください。アクリル球は肉眼で見たよりずいぶん凹凸がありますので、美しい曲線とは言いがたいですが、放物線のような楕円の一部のような曲線を描いています。U君に手伝ってもらって壁に白い紙を貼ってもらいました。少しは見やすくなったと思います。
●これはどういうことなのでしょう?

図 5(オリジナル)
●図4に円錐を切る平面を描き加えました。写真8は、この図をほとんど90度近く右に回転させたような状態になっています。
写真8での「壁」が、図5での平面にあたります。円錐を平面で切ると、二次曲線が現れます。赤で示しました。
(詳しいことは省略しますが、円錐を平面で切ると、円・楕円・放物線・双曲線・交わる2直線が現れます。)
図5に描いたような切り方だと双曲線になりますが、写真8では傾きがありますので、楕円の一部になっているのではないでしょうか。
写真 9

もう一度、分光された部分をご覧ください。外側(写真下方)に赤、内側に紫となっています。
●このように傘状に開いたスペクトルのうち、中心部分しか目には入ってきませんから、それを、写真左側の、円盤によるスペクトルで示してみました。

図 6(文献1)
●大げさに表現してありますが、図6の下に紫〜赤がでていますが、これが壁に映った状態で見ているのが写真8,9です。
●このようにして、太陽光線は色に分解され、それを「虹」として見ることになります。
★基本的には、これが主虹のできる原因です。2回屈折1回反射、によって太陽光線から約40度方向に射出される分光された光を見ているのです
◆そうすると〜、図6の「紫 赤」って書いてあるあたりに目をもって行くと、上が紫、下が赤、ということになるね。
主虹の色に順序は実際にはどうだったかな?
「主虹は、上が赤くて下が紫だ」
●そうなんですよねぇ。さて、どうしてでしょう?
●虹というのは一粒の水滴からの光線を見ているのではないのです。
●下の図7を見てください。

図 7(文献1)
個々の水滴では確かに紫が大きく曲がり、赤は曲がりが少ないので、水滴が送ってくる光線は「上が紫、下が赤」となります。
その光線が観測者の目に入るところを考えてください。
水滴が上下にたくさん並んでいる「水滴スクリーン」のようなものを考えます。
すると、上にある水滴アからの光線のうち、あまり曲がらなかった赤が目に入り、より下にある水滴イからは大きく曲がった紫の光が目に届くことになります。
●このようにして、観測者の目に入る光線は、「上が赤、下が紫」になるのですね。
☆めでたしめでたし。以上のようにして、「主虹」ができる原因がわかりました!
☆オマケと確認:虹ってどこに出て、虹の形ってどんな形?
●自分の頭の影を見てください。影と頭を結ぶ直線を真後ろに延長したところに太陽があります。この太陽と反対側の頭の影の位置を「対日点」といいます。
さて、下の図8を見てください。太陽と頭を通る平面を、太陽―頭―対日点という直線を軸にして回転させます。すると、個々の水滴が送り返す光は円錐状でしたから、目から42度付近の方向にある水滴はどれも同じ色を送り返してきます。つまり水滴が作る光の傘とはちょうど逆に、太陽―頭―対日点という直線から約42度に開いた円錐上に虹が見えるのです。
具体的には、太陽を背にして自分の頭の影を探します。眼と頭の影を結ぶ直線から約40度くらい離れたところを探せば、虹が見えるはずです。
●虹の形って、何となく「円の一部」と思っていませんか?
大方はそれでいいのです。上に書いたように、観測者は目を頂点とする円錐の延長を水滴スクリーン上に見ることになります。水滴スクリーンはほぼ平面的だと考えていいでしょう。
水滴スクリーンが太陽光線と直行していれば、垂直の水滴スクリーンに映る虹は円の一部になります。(円錐の底を頂点から見れば円です。)
もし水滴スクリーンが太陽光線に対して傾いていたらどうなるでしょう?その時は、水滴スクリーンは円錐を斜めに切ることになりますので、この場合には、虹は楕円の一部になるでしょう。
太陽光線と水滴スクリーンとの角度の関係で「放物線」や「双曲線」の一部の形をしている場合もあるのでしょうが、それは珍しいと思います。
(このページの終わりで、地面に現れた放物線型の虹のお話を紹介します。)
通常、虹は「円か楕円の一部」の形をしています。そうして、形からはその違いをほとんど区別できません。(よほど極端な表れ方をしない限りにおいて。)

図 8(文献2)
この図を眺めて、上のオマケの話を考えてください。
----------副虹のできる原因----------
◆副虹というのはどうやってできるんだろうね?
●主虹の話の時の図3に対応するのが、下の図です。

図 9(文献1)
左から水平に入射する光線のうち、図9のように、入射・射出時の2回の屈折に加えて、反射が一回多く2回反射してでてくる光線が存在します。
δは赤色端の光で約51度、紫色端の光で約54度となります。
●図2のようにたくさんの光線で描いてみると下の図10のようになります。

図 10(文献1)
このように、2回の屈折と2回の反射により、入射した光は約51〜54度の周辺に集中して出てくることになります。
角度の小さな側へはほとんど光は出ません。下の図11に描かれた円錐の外側に光が出ます。内側にはほとんど出ません。

図 11(オリジナル)
●分光について考えると下のようになります。

図 12(文献1)
当然、大きく屈折する紫の光と、あまり曲がらない赤の光の位置関係は上のようになります。眼をそこにもっていってみれば「上が赤、下が紫」ということになるでしょう。
主虹の時と逆ですね。
●主虹の時と同じように、水滴スクリーンを考えると、色の順序がわかります。

図 13(文献1)
上の水滴からは、大きく開いた紫の光が、下の水滴からは、開きの小さかった赤の光が送られてきます。
このように、副虹では観測者の目に入る光は「上が紫、下が赤」となるのです。
ちょっと話を端折りましたが、主虹の場合がしっかり分かっていれば、ほぼ同じような論理ですから難しいことはないと思います。
----------主虹と副虹の間はどうして暗いんだろう?----------
●上の図13を少し描き変えてみましょう。

図 14(オリジナル)
「眼」の位置から、主虹と副虹が見えています。(本当はもちろん水滴の分布に幅があるのですが面倒くさいので、主虹と書いたあたりの水滴群から主虹の光線がやってきて、副虹と書いたあたりの水滴群から副虹の光線がやってくると考えてください。)
さて、主虹と副虹の間の水滴群を「水滴A」で代表させましょう。
●すると、水滴Aからの主虹をつくる光線の円錐に対して「眼」は外側に位置しています。主虹をつくる光線円錐の外側には光が出ないのでしたね。
ですから、水滴Aからの主虹にかかわる光線は目にはほとんど届きません。
●水滴Aからの副虹をつくる光線の円錐に対して「眼」は内側に位置しています。副虹をつくる光線円錐では、円錐の内側には光が出ないのでした。
ですから、水滴Aからの副虹にかかわる光線は目にほとんど届きません。
★というわけで、主虹と副虹の間の位置にある水滴群からの光はほとんど目に届きません。「そこからくる光がない」という状態を「暗い(黒い)」というのです。
その位置にある水滴からは光が来ませんので、背景からの光が目に届くことになります。主虹と副虹の間は暗いし、向こうが透けて見えるというのはこういうわけです。
この主虹と副虹の間の暗い部分を「アレキサンダーの暗帯」というのだということは、先に書きましたね。
◆主虹の内側が明るい、ということは、写真1〜5のどれでもわかります。
その原因を図で説明すると下の図15のようになります。

図 15(文献1)
●主虹の下の水滴群からの光は分光されているのですが、それが観測者の目に入る時には混ざってしまうのですね。全部の色が混ざると「白色光」になってしまうのです。
そのために、主虹の下は白く明るくなります。そこの水滴群からの光がたくさん目に入りますので、背景からの光も届かないわけではないでしょうが、相対的に弱い光になってしまうので、背景は隠されて見えにくくなります。
●副虹の外側についても、図が逆さまになるだけで、議論は全く同じになります。ですから、副虹の外側も、やや白っぽく明るくなります。
これについては、写真2,3を見てください、よくわかると思います。
★ずいぶん長い議論をしました。屈折すると光が分かれる、光によって屈折率が異なる、この二つだけで基本的な議論を組み立てたつもりです。
ゆっくり読めば必ず分かります。
◆最後に、ひとつ、思いついた実験をお目にかけましょう。虹をつくる光線の経路を観察する!
●小さなシャーレに薄いせっけん水を入れました。レーザーポインターの光をシャーレに入射すると、光の経路が見えます。
●写真10は、主虹をつくる光線の経路=屈折・反射・屈折の経路をほぼ観察できていると思います。
左上に紙の上に入射するレーザー光線が見えています。1回屈折を経て入射した光は強く赤く輝いています。反射の際に外へ出てしまった光も見えます。ですから、反射後の光線はあまり明るくありません。そして、2回目の屈折を経て外に出たはずの光は紙を光らせるほどの強度がありませんでしたので見えません。でも、多分これで、主虹をつくる光線の経路になっていると思います。
写真 10

●写真11は副虹をつくる光線の経路につもりなのですが、いかがでしょうか。
2回目の反射光が見えているようです。ですから、屈折・反射・反射・屈折、という副虹をつくる光線の経路といって、まあ間違いということはないでしょう。
2回目の屈折光はもう全然見えません。
写真 11

★結構、じっくりと長時間の実験と観察になりました。夏休みならではのことです。
楽しかったね。
●参考文献について。
・文献1と文献2を今回メインに使いました。とてもわかりやすい説明です。
・文献3は虹以外にも太陽光にかかわるいろいろな現象の話が載っていて、とても面白い本です。文献2に載っている図は、この文献3を参考にしたようだな、ということが伺われます。
・文献4は現在も手に入る本だと思います。物理的にさらに高度な話も出ていますし、一方、神話・伝説などにも詳しくて、虹のすべて、という本です。お勧めします。
・文献5は、高校物理の参考書です。昔の物理はずいぶんいろいろなことをやったものです。Uおじさん自身は、物理・化学・生物・地学を全部5単位で勉強した世代です。(スゴイでしょ。)
「〜〜精義」といえば「何でもありの参考書」として、私たちの世代には有名な参考書です。(物理精義と化学精義を持っています。)
参考文献
文献1: 東京理科大学の「SUT BULLETIN 2.1999」の64ページから67ページ。
「自然界の虹」片桐 泉
文献2:「数学セミナー」2000年5月号。64ページから67ページ。
「虹にまつわる数学 虹曲線は二次曲線」真島秀行
文献3:「太陽からの贈りもの 虹、ハロ、光輪、蜃気楼」Robert Greenler著、小口高・渡邉堯 共訳、丸善株式会社、平成4年発行
文献4:「虹 その文化と科学」西條敏美 著、恒星社厚生閣、1999年初版発行
文献5:「物理精義 上巻」吉本 市著、培風館、昭和35年 三訂版
32ページ:光の分散、虹
◆虹に関するネット上の資料は大量にありますが、ちょっと読んでみてお勧めできるサイトを下に載せておきます。網羅はしていません。チョイト見、で見つけたものです。
http://www.asahi-net.or.jp/~cg1y-aytk/ao/rainbow.html
・「天空博物館」の一部です。素晴らしい説明や写真があります。
http://www.shokabo.co.jp/sp_e/radio/familiar/rainbow/rain-p.htm
・「宇宙スペクトル博物館」の一部です。虹のできる仕組みが簡略に描かれています。
http://www.ne.jp/asahi/tokyo/nkgw/gakusyu/hadou/rainbow/rainbow-1.htm
・「中川のビジュアル物理教室」の一部です。高校程度の数学・物理で詳しい解説がなされています。
私の説明が定性的過ぎてつまらなかった方は、ここをご覧ください。
★最後のオマケ
オマケ1:月虹
●ここまで虹の話をしてきて、光源はずっと太陽でした。でも、光源が月であっても何ら支障はありません。都会のように夜空が明るいと「雑光」で見づらいですが、そうでなければ月を光源とする虹が出てもおかしくはありません。
ただ、水滴スクリーンがうまく空にかかっていること、それでいて月が低い空に出ていること、など条件が厳しいので、ポピュラーだとは言えませんが。
●U君には、新聞からカラーコピーをとったもの、二つをあげました。
・一つは、2003年11月4日付の朝日新聞に掲載されたイオナ化粧品の広告です。
高砂淳二さんの「night rainbow 祝福の虹」小学館発行、という写真集からの引用掲載でした。ハワイで撮影した月虹の写真です。
この写真集は書店で見かけましたけれど、買いませんでした。今になると買っておけばよかったかな、などとも思います。
・二つ目は2001年10月31日付の朝日新聞の記事です。「夜空にかかる『ムーンボー』」という見出しで月虹のカラー写真が掲載されました。
仙台市の佐々木さんという小学校の先生が、10月2日午後7時40分に撮影したものだそうです。
満月の夜で、小雨模様だったそうです。30秒露光で撮影した美しい月虹が載っています。
肉眼では白く見えたそうですが、現像してみたら七色に写っていたということです。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/lummox/OtherPhenomenon/OtherPh-06.htm
http://www2.mahoroba.ne.jp/~kurihara/photo2004.html#2004-08
ここに「月虹・ムーンボー」の写真があります。ご覧ください。
オマケ2:赤外線の虹
文献3に出ていた話です。
「空に赤外の虹は現れるだろうか?」
「人の目には見えないが、この赤外線の虹は目に入っているはずである。それは主虹の赤いアークのすぐ外側にあるはずである。文献を探してみたが、誰かが実際に赤外の虹を見つけたという証拠は一つも見当たらなかった。にもかかわらず、これを捜すのは私にとっては興味のあることであった。」
そこで、著者は、赤外線に感度のある赤外線感光フィルムと、可視光をカットして赤外線を通すフィルターを組み合わせて、ホースからでる水しぶきを撮影して、赤外の虹を撮影することに成功したのです。
「ホースから出る水しぶきの中に、赤外の主虹と副虹とをはっきり見てとることができる。この写真でも、二、三の過剰虹さえも見える(外側の過剰虹は、これまで、他のどんな虹、あるいは虹の写真でも見たことがない)。わくわくするようなスタートだったが、それ以後、その場にカメラと赤外フィルムとフィルターを持ち合わせて、自然の虹で赤外の虹の写真を撮るのには2年以上もかかった。このフィルムを現像したとき、人類が地上に生まれる以前から誰にも気づかれないままに空に現れていた赤外の虹を初めて見たのである。」
●ということで、実験で撮影した写真と、自然界で撮影した写真と2枚掲載されています。感動的ですね。
人間には見えませんが、たとえば蛇には赤外線を感じるピット器官というものがあります(赤外線視覚とまでは言えないかもしれませんが)。だれか、赤外虹を見ていた生物はいませんかね。
そう言えば、多くの昆虫たちの視覚は紫外線に対して感度があります。ミツバチやモンシロチョウの紫外線視覚は有名でしょう。
昆虫たちは「紫外線虹」が見えるのでしょうか?
●鳥類も紫外線視覚を持っています。鳥なら虹を見るかなぁ?どんな風に見えるのでしょうね?
●デジカメは赤外線や紫外線に対して感度のあるものがあります。可視光部分とうまく区別できるような工夫をすれば、赤外虹や紫外虹が撮れるかもしれません。どなたか工夫してみませんか?
http://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/denken/p06/6_10.html
紫外線で見たモンシロチョウ
http://eco.goo.ne.jp/nature/unno/diary/200006/962360591.html
モンシロチョウの紫外線映像
http://home.hiroshima-u.ac.jp/honce/forage.htm
菜の花のUV写真
jaxaのHPです。赤外線の虹そのものの写真ではありません。普通の虹の外側に目に見えない赤外線があるという話です。
オマケ3:放物線型の虹
長谷川眞理子著「科学の目 科学のこころ」岩波新書(新赤版)623、1999年 第1刷発行
この本は、長谷川さんが岩波書店の雑誌「科学」に連載したエッセイをまとめたものです。
「牧場の地面に降りた虹」という章に、長谷川さんがケンブリッジで経験した不思議な形の虹の話が載っています。
1997年の秋の日曜日の昼前、郊外の田園を散歩していたのだそうです。
「何カ所かの牧草地の一部が銀色に輝いて見えるのである。そこで、そばまで歩いていってみると、それは、そのような牧草地の一面に無数のクモが巣をはっており、そこに朝露が降りているためであった。」
「ところが、この、一面にクモの巣が張って、そこに朝露のおりた牧草地に立ち、太陽と反対の方向をみたとたん、地面の上に大きな虹がみえたのである。
その虹は、私が立っていた地点を頂点として、私の両側に、私から遠ざかる方向に広がって曲線を描いていた。私が歩くと、虹も、私といっしょに移動し、つねに私は曲線の頂点にいた。しかも、ふつう、空にかかっている虹は円形に見えるものだが、この地面にみえた虹は円ではなく、もっとカーブがきつく、放物線かそれ以上に狭いものだった、つまり、ふつうの空の虹は円形で、こちらがどこへ移動しようと動かないようにみえるものだが、この地面の虹は私が移動するとともに移動し、しかも、私はつねに、この「放物線」の虹の「底」にいるようにみえたのである。色の順番は、外側から順に赤橙黄緑青藍紫であったと思う。」
「どちらかというと、この虹は、私から遠ざかるにつれて、地面の底に沈んでいくかのようにみえた。」
私のこのホームページをよくお読みいただいた方なら、虹が観測者とともに動くことに不思議はないはずですね。虹は見る人に付随するものです。
また、円錐を切った時には放物線もあらわれ得ることを知っていらっしゃれば、もうほとんど正解に自力でたどり着けることでしょう。
このような内容のエッセイを「科学」に発表したところ、手紙で解答が寄せられたのだそうです。
そのうちの一つが「不思議な虹はこうしてできた」という章として掲載されています。寄稿者は、「寄川弘玄・村松伸二」となっています。一部分を紹介します。
「このようなコーン状の光の束を放射する一粒の水滴は人の目にどうみえるか。・・・。結局、水滴からの光がみえる位置というのは、人の目を頂点に太陽と人の目を結ぶ延長線を中心軸にしたコーンの形をしていることになります。このコーンは一粒の水滴が発する光のコーンと全く同じ形のものです。両者が違うのは、頂点が水滴ではなく人の目の位置であることと向きが逆であることです。このように配したコーンの肉厚部分に水滴があればその水滴からの可視光が目に飛び込んでくるわけです。雨による無数の水滴は面をなし、人の目の位置を頂点としたコーンと交差します。虹の形は、このコーンを水滴のつくる面で切ったときの断面のようすであるといえます。」

「蜘蛛の巣に並んだ水滴は、牧草の葉の上の露などよりも十分に球形だったと思われます。しかも広い範囲にわたって、その水滴が無数に、かなりの密度で存在したのでしょう。したがって水滴のつくる面が存在しこの面は地面に平行です。」
「長谷川さんの目の位置にコーンの頂点を置き、地面に映った長谷川さん自身の影の目の位置と思われる辺りにコーンの広がった側の中心を向けます。地面によるコーンの断面の形をみて下さい。まさに放物線女状の虹になり長谷川さんはその放物線の底に立っていることになります。実は、この虹はふつうはみることのできない円形の虹の下半分が変形したものなのです。計算してみると・・・太陽が地面に対して約40度以下の高さでなければならないのです。ケンブリッジ地方の秋の昼前と書かれていますが、どうだったでしょうか。」
「蛇足になりますが、虹を見ている人が移動すればコーンが移動するので虹は移動します。ただ、遠くの虹はほとんど動いて見えないのに対し、近くの虹ではそれがはっきりわかるのです。」 (『科学』1998年11月号掲載)
◆私が何かを加える必要は全くないと思います。吟味してみてください。
長谷川さんの専門は「行動生態学」という生物分野です。虹の成因は専門外でいらっしゃいます。しかし、ケンブリッジの牧場で「眼で見たこと」を克明に正確に記述なさいました。主観を排して、正確な記録をとったということです。これが科学者としての基本的な態度です。
その正確な記述があればこそ、その不思議な虹の成因について、精密な議論ができるのです。
●精密な議論によって、不思議な虹の成因が分かってしまったら、不思議さが消え、ロマンチックな気分も消え、バサバサの乾いた認識しか残らないでしょうか?
私はそうは思いません。成因がわかればかえって前にも増して不思議さが増大するように思えます。また、そのような現象に立ち会えた「運」というものは消えません。
つねに、日常、身辺を正確にみていらっしゃることがこのような運をつかませてくれたのでしょう。一種のセレンディピティです。ぼんやりと日常を送っている人には、そこにあるものも、見えないのです。
虹の成因がわかったら、つまらなくなった、という方こそ、感情が枯渇してしまっているのでしょう。科学とはみずみずしい精神にのみ可能な、旺盛な好奇心の発動のことです。
★今日はここまで。
◆とはいうものの、「オマケは続くよ〜、どこまでも〜♪」
◆ナント、U君が素手でオオシオカラトンボをつかまえました。両手をチョキにして、そ〜っと近づいて、パッと挟んだら、捕まったのですねぇ。
我が家で羽化したトンボはどうものんびり屋らしいですね。記念写真を撮ってまた放してやりました。


◆洗濯物のバスタオルにアブラゼミがとまっていました。これは捕虫網でつかまえました。捕まったオスのセミの大騒ぎは耳をろうするほどです。ちょっと、辟易しながらもしっかりつかまえています。きちっと安定させて持っていると騒がなくなります。


◆やけに近くでミンミンゼミの声がします。声の方向を確かめながら近づいて行ったら、高さ2mくらいのところにとまって鳴いていました。
捕虫網でつかまえたミンミンゼミのアップです。ちょっとブレましたが、独特の緑色は写っています。ふだんに聞くアブラゼミとは一味違って、ミンミンゼミを捕まえたときは、ドキドキしますよね。ボリュームもあるし、銅が丸くて太いし、声もでかいですよぉ〜。耳がガンガンしました。

