台風による海面の吸い上げ


 台風が接近すると、港湾での注意事項として「大潮、満潮、吹き寄せ、吸い上げ」による「高潮」への警戒が呼びかけられます。この「吸い上げ」を説明しましょう。本当は「押し上げ」なのですが、まあいいでしょう。

 

●まずはこんな実験というかマジックというかを知っている人もいるかと思います。

 水を入れたバットにロウソクを浮かべて火をつけます。そこへコップをかぶせると、しばらく燃えた後ろうそくは消えます。コップの中の暖かい空気が冷えて収縮すると水が中へ吸い上げられるというものです。

 これはコップ内の圧力Pと吸い上げられた水の柱が水面に及ぼす圧力ρhの和が、外の大気圧Pと釣り合うという現象です。

P=P+ρh

ですね。

 

●今度は台風です。模式的に、台風を海の上に伏せられた巨大なコップと見なしてしまいましょう。

 上の図で、台風の外では1気圧=1013hPa、台風の中心気圧が960hPaとしてみました。すると

960hPa+水圧=1013hPa

ですから、

水圧=1013−960=53hPa

ですね。

 

1気圧=1013hPaが、水の柱10mに相当するのでしたから、53hPaはどのくらいの水の柱になるのでしょう?比例式を立てます。

水柱10[m]:水柱x[m]=1013[hPa]:53[hPa]

x=(10×53)/1013=0.52[m]=52[cm]

 

 つまり、水面が平常時よりも52cmも吸い上げられてしまうのです。これは大きな効果ですね。この吸い上げに、大潮の時期の満潮時刻、中心付近の猛烈な風による吹き寄せ効果が重なると、大災害になります。1959年9月26〜27日の伊勢湾台風はこのような例だったと記憶しています。4697人の死者が出たと理科年表に記載されていました。白黒テレビで、一面に水没した現場の中継を見てショックを受けたことを覚えています。私は小学生でした。

 

 大ざっぱに言って、気圧が10hPa下がるごとに海面は10cm上昇します。100hPa下がって、910hPaの台風なら、約1mも海面が上昇するのです。

 2005年8月23日〜31日に荒れ狂ったハリケーン「カトリーナ」は、ニュー・オーリンズなどに大きな被害をもたらしましたが、最大風速は78[m/s](=281[km/h])で、中心気圧が最も低かった時は、902hPaでした。1013−902=111ですから、そうすると海面が約1.1mも上昇したことになります。

 

 台風の吸い上げ効果というものを十分に認識してください。