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はじめに
2月12日、秋田県と北秋田市、仙北市、秋田内陸縦貫鉄道(株)の4者で、今後の秋田内陸線の運営についての基本合意が調印され、秋田内陸線の長期的な存続の方向が決まりました。しかし、今後の状況次第では、また存廃論議が起きる可能性もあり、内陸線と沿線地域の活性化をすすめることによって、初めて長期的存続が確固としたものになると言えます。
私は昨年(2009年)1月に、「秋田内陸線の当面と将来の課題についての意見」という文書をまとめ、秋田内陸地域公共交通連携協議会の関係者の皆様に提案させていただき、私のホームページ上でも公開しています。
それから1年を経て、活性化への取り組みは一定の前進をしたと思っていますが、まだそのまま残されている課題がある一方、新たな展望も開けてきました。そこで、1年前の文書(以下、「2009文書」とする)の骨子に添う形で、「改訂版」として、今回、改めて意見を述べさせていただくことにしました。2009文書と合わせてご検討いただければ幸いです。
基本的な考え方
秋田内陸線は、沿線の人たちの大切な足であると同時に、その恵まれた景観、地理的条件から、多くの観光客を呼ぶことのできる貴重な観光資源です。したがって、「内陸線の活性化」とは、単に鉄道の乗客を増やすということにとどまらず、地域の産業の振興、福祉の充実などによって生活基盤の安定をはかり、地域全体を活性化させることであり、地域のためにいかに内陸線を活用できるかということを、基本にすえることが大切です。
この文書では、内陸線の会社と県、沿線自治体、民間の方たちが協力して内陸線の活性化に取り組むことを前提に考えていますが、もちろん内容は私が考えられる範囲内のものであり、他の様々な取り組みと合わせて、よりよいものにしていただければと思います。
1.内陸線の利用客を増やすための、
対象者の居住地別の働きかけ
(1)沿線の人たちに対する働きかけ

阿仁前田 2009.4.25
内陸線の利用者数のベースになるのは通勤・通学定期客です。通勤定期については、2008年度の両市の職員の取り組みで大幅に増えたものの、2009年度は残念ながら減少しています。2010年度も引き続き職員の皆さんに取り組みをお願いするとともに、民間事業所や県にも働きかける必要があると思います。一方で、鷹巣発の最終列車の時刻が早い(20時30分)ことについて、要望と利用客があれば改善も必要かと思います。
通学定期については、小中学校の児童・生徒の内陸線への再シフトがある程度進んでいますが、高校生については、1年後の市内4高校の統合によってさらに利用客の減少が考えられます。沿線からの通学生徒全体に対する内陸線利用率を上昇させるための、地元の人たちへの働きかけが課題になると思います。
定期外客については、現在、「チーム60万人 マイレールキャンペーン」が「沿線の皆さんの3回乗車で年間利用者20万人増」というわかりやすい数字を掲げて実施されています。まもなくキャンペーン期間が終わりますので、その効果と課題について分析がされると思います。
内陸線は定期外客の季節変動がとても大きいので、オフシーズンには今後も様々な形での集客活動が必要です。
車両の団体貸切料金が昨年秋から大幅に値上げされました。この値上げは往復利用について2万円上乗せしたもので、片道利用がほとんどの旅行会社のツアーには影響はありませんが、これまで乗車運動の一環として積極的に利用してきた地元の各団体にとっては負担増となり、利用の減少を心配しています。
往復利用での従前の料金(お座敷車両で4万5千円)は格安で、会社の収入にはあまりつながらないのではないかと思っていたので、値上げはやむをえないと思います。しかし、上げ幅が大きかったことと、これまで利用してきた地元団体に、値上げの内容と理由についてのていねいな説明と協力依頼がされなかったのは、今後の連携を考えるうえでの課題と言えます。
地元には、内陸線に対して協力をしたいと思っている人たちがたくさんいますし、これまでも様々な形で協力をしてきました。こうした地元の人たちに対して、内陸線から、もっと情報を提供すべきだと思います。「内陸線パック」などの商品の宣伝はもちろんのこと、イベントへの参加依頼や、利用者数や収入の状況などを会社から小まめに発信することによって、内陸線をさらに身近な存在にし、「マイレール意識」を「マイカンパニー意識」に高めていくことが必要です。
(2)県内の人たちに対する働きかけ

秋田市の通町商店街で内陸線イメージソングを演奏する川崎勉さん。
存廃問題以降、内陸線についての報道が増え、沿線以外の県内に住む人たちにも、内陸線への関心がある程度高まってきたと思います。しかし、その関心を来訪に結びつけるためには、やはり「仕掛け」が必要です。
2009文書でも、「内陸線パック」について、内陸線沿線からの利用者が多く、秋田市など県内他地域からの商品購入はあまりないことから、このパックを秋田市などの旅行会社との共同商品にするなどして、積極的に沿線以外からの利用客を増やすことが必要だと述べました。
このほかに、沿線出身で秋田市や県内の他市で事業所を営んでいる人たちや、県内在住の内陸線サポーターに協力を求めて、チラシを置いてもらったり、定期的に情報を発信するなどして、「ボランティア営業所」を設置、拡大することも考えられます。
今年度は、内陸線を利用した宿泊や日帰りのモニターツアーがいくつも組まれ、新しい観光、散策コースも開発されました。この成果を定着させていけるかどうかがポイントです。そして、「内陸線の楽しみ方」を広めていくために、様々な媒体を利用しての宣伝活動が求められます。
今年度は「秋田名物内陸線」というキャッチコピーが生まれました。秋田県民が1年に1回、内陸線を利用すれば、内陸線の赤字は解消します。期間を決めた全県キャンペーンの実施などによって、県民の間にも「マイレール意識」を育てて行ければと思います。
来年度は内陸線支援室(阿仁合)に、両市職員に加えて県職員も配置されるとのことで、行政と会社の一体的な取り組みがさらに進むと思います。
(3)県外の人たちに対する働きかけ

山菜シーズンの根子集落。 2009.5.17
秋田内陸線の知名度はこの数年間で大幅に上がりました。旅行雑誌にもしばしば取り上げられています。また、昨年にロケが行われた韓国ドラマ「アイリス」が今年の春から国内(TBS系)でも放映が始まります。この大きなチャンスを最大限に生かすことが重要です。
(昨年の提案を再掲載します。)
旅行会社のツアーでは、森吉山の樹氷や高山植物、紅葉の時期をのぞけば、多くの場合、内陸線沿線が主目的ではなく、宿泊地から次の宿泊地への移動手段をかねて利用しています。また、観光バスツアーの途中に内陸線の「体験乗車」を組み入れているケースも多く、角館、松葉、阿仁マタギ、阿仁合、阿仁前田、鷹巣がツアー客の乗降駅として利用されています。
内陸線は、沿線風景自体も魅力ですが、有名観光地に囲まれていて、移動手段として便利な位置にあり、観光客向けの車両が実働14両中6両あり、他の普通車両もボックスシート、トイレがついています。貸切料金も安く、増結などに融通が利くこともあって、旅行会社としてはたいへん利用しやすいと考えられます。
今後の課題は、オフ・シーズンの観光客誘致です。これには、景色だけでない、「食文化」や「田舎体験」を盛り込んだツアーの設定が必要です。地元の観光施設、自治体、住民組織と共同して、前項でもふれた「受け皿」をたくさん用意して、旅行会社、旅行雑誌などに宣伝します。
この「受け皿」は、すでに「マタギ体験」などの「田舎体験」としてパンフレットにまとめられているものもありますが、列車ダイヤに合わせてモデルを作って提案する必要があります。「山菜採り」、「栗拾い」、「きのこ採り」、「干し柿作り」、「きりたんぽ作り」など、土地の生活に根ざしたものが好まれると思います。(採集地の設定、受け入れ態勢を確立する必要があります。)また、沿線の農家でお茶と「がっこ」で休憩したり、集落を散策するといった、ゆるやかな「体験」もよいと思います。
冬の雪は、他の地方の人たちにとっては大きな魅力です。スキーやスノーボードの人たちはほとんどが車利用ですので、それ以外の人たちに、列車での雪国体験をアピールします。内陸線は、秋田県でも一番の豪雪地帯を走っていますが、風の通り道ではないので、列車の運休はほとんどありません。したがって、ゆったりとした旅を味わうことができます。車内で飲食し、温泉で温まるだけでも、立派なツアーになります。
観光客の中で、ある程度ジャンルを絞った宣伝も必要です。「体験ツアー」の中心は熟年層と思われますが、他の世代への働きかけも重要です。たとえば、サイクリング愛好者、団体に対して、内陸線での輪行(自転車を折りたたんで車内に持ち込むこと)と林道ツーリングをセットにして紹介したり、鉄道ファンを対象に阿仁合運転区の見学、職場体験のメニューを用意したり、中学生の修学旅行(グループ行動)の受け入れ態勢を作ります。また、今後は森吉スキー場の環境復元も課題になることから、「植林ツアー」なども考えられます。
内陸線沿線には観光客向けの宿泊施設が少なく、それが誘客のネックの一つになっています。駅からあまり離れていない場所に、30人くらいが泊まれる施設がもう一つあれば、だいぶ変わってきます。農家民宿は仙北市域に数軒ありますが、北秋田市域にもできればよいと思います。
こうしたメニューを前面に打ち出して、様々な媒体によって内陸線を宣伝していくことが求められます。
(昨年の提案、ここまで。)
「アイリス効果」は大きいと思いますが、訪れるたくさんの人たちへの対応によっては、逆に内陸線と地域に対してマイナスイメージを持たれてしまう可能性もあり、きめ細かな受け入れ態勢が求められます。
(4)海外からの観光客に対する働きかけ

韓国からのツアー客。 2009.1.30 阿仁合
海外への秋田県の宣伝や「直行便」の分野は秋田県観光課が主に担うと思いますが、内陸線沿線の観光パンフレットやホームページの英語版(中国語、韓国語版も)をまだ作成していなければ、国際教養大学などの協力を得て、作成できればと思います。
海外からの観光客を呼ぶ資源としては、「雪」が一番だと思います。日本は、世界でも稀な、「人里にたくさんの雪が降り、積もる」国です。雪国ならではの行事もたくさんあります。冬場の入り込み客を増やすために、(海外向けに限らず)雪国、雪列車をアピールすることが効果的と考えます。
なお、内陸線の車両のトイレは、冬は凍結防止のためとのことで、手を洗う水が出ません。これは大きなマイナスです。何とか改善をしてほしいと思います。
2.内陸線の企画・営業、接客体制についての意見
ここでは、内陸線としての企画・営業、接客体制について意見を述べますが、県、自治体、沿線の方たちの支援を前提にしています。
(1)情報発信力の強化

昨年、内陸線のホームページがリニューアルされました。すっきりして見やすいのですが、新しい情報の量が少ないと思います。毎日更新するのは大変かと思いますが、検討をお願いします。
現在のホームページの「トピックス」は、2月は比較的高頻度で更新されていますが、どうしても内容が事務的です。会社のオフィシャルページでも、最近は親しみの持てるものが増えています。いすみ鉄道のホームページ(http://www.isumirail.co.jp/)には「社長ブログ」があり、ほぼ毎日、鉄道や沿線の様子、社長の感想などを載せています。そこまでは行かなくても、日々の天気や沿線の団体客の利用状況などを生き生きと伝えるページがほしいと思います。その情報収集は大変なので、乗務員やアテンダントにあたたかいエピソードを報告してもらうことも考えられます。たとえば、現場の社員のブログができて、たくさんの人たちが書くようになれば、見る側にも会社の意気込みが直接伝わります。(秋田県にも職員のブログがあります。)
会社の新ホームページには、メールによる問い合わせができるようになりましたが、グッズ販売はFaxでの受付のままです。グッズの販売には、Webショップが有効だと思います。Faxでの申し込みも受け付けるとして、やはりホームページから直接購入できるほうが売り上げが伸びるはずです。
秋田県交通政策課の三セク鉄道利活用促進班によるホームページ「じゃんご鉄道」が昨年から開設されています。ここには、由利高原鉄道と内陸線の情報が掲載されています。
秋田内陸線エリアネットワークでは、自身のホームページで内陸線の様々な情報をたくさん発信しようとしたのですが、現時点では更新ができていない状況です。申しわけありません。エリアネットではこれを改善することにしています。また、観光案内の部分については、「じゃんご鉄道」と内容が重複することから、エリアネットのホームページの内容を絞り込むことも考えています。
サポーター掲示板は、現時点で最も内陸線のニュースが(重要度はともかく)集まっていると思います。会社からも佐藤専務がときどき疑問に回答しています。今まで、サポーター掲示板に会社からの投稿はまったくなかったので、専務の回答は大きな変革です。また、県の担当職員からも投稿もあり、だいぶ賑やかになってきました。アクセス数も、1日200件を越えることが多くなっています。これからも多くの方からの投稿をお願いいたします。
ホームページの改善と合わせて、内陸線からのメールマガジンの送信をしてほしいと思います。現在、「じゃんご鉄道」からはときどきメルマガが私のところにも送られてくるのですが、内陸線からも、ホームページに新しい情報を乗せたときなどに、メールで知らせてほしいと思います。
そのためには、たくさん広がった支援者の輪を大きくまとめたリストを作ることが必要です。内陸線単独では無理なら、県職員を加えた内陸線支援室に手助けをしてほしいと思います。
また、インターネット以外での情報発信も重要です。沿線の人たちからは、「内陸線からの情報が入らない。もっと知らせてほしい」という話が今でも多く聞かれます。会社では十分発信していると考えているでしょうが、認識にはだいぶ違いがあります。たとえば月々の利用者概数などをホームページや自治体、自治会などを通して知らせて、乗車への協力を求めるなど、具体的な支援のしかたが分かるようにしてはと思います。情報発信力の強化は緊急の課題です。
(2)支援者、支援団体相互の交流

前項の「情報発信力」を「縦糸」とすれば、支援者、支援団体相互の連絡や交流は「横糸」です。内陸線と沿線地域の活性化には、「縦糸」だけでなく「横糸」を張りめぐらすことが重要だと考えます。
インターネットでは、「掲示板」や「ブログ」がその「横糸」の役割を果たしています。また、限定された関係者相互の連絡には「メーリングリスト」が利用されています。
「掲示板」は、誰でも見ることができるのですが、半面、悪意の書き込みへの対処が必要になります。サポーター掲示板も、以前、悪意の書き込みの被害に遭ったのですが、その後は書き込みにパスワードを設定して、そのパスワードを管理者にメールで問い合わせた人だけが書き込めるシステムにしました。これによって悪意の投稿はなくなったのですが、今度は投稿者が減少してしまいました。そこでパスワードを掲示板で公開したところ、(善意の)投稿は増え、悪意の投稿はないままです。
公式な掲示板の設置は難しいと思いますが、内陸線を支援する人たちの日常的な交流の場を設定してほしいと思います。インターネットでなくても、メルマガに投稿を求めたり、季節ごとに貸切列車を仕立てて支援者の交流会を開いたりして、連携を強めることが、支援の強化、沿線の活性化につながると思います。
このような態勢を作っていく中で、現在の「内陸線サポーター」の再編も必要になります。たとえば、サポーター登録をしている個人に加えて、支援団体などを含めた全体を(新)「内陸線サポーター」として大きくまとめることもできると思います。
2003年に募集が始まった「内陸線サポーター」は、様々な形での支援を行う代わりに内陸線の3年間無料パスを発行するというものでした。「無料パス」には私もびっくりしましたが、実際には、車両清掃などの活動の際にだけ「無料パス」を使い、それも次第に自分で切符を買う方向になりました。現在はサポーターにパスは発行されていませんが、これは当然のことだと思います。
今後、大きくまとめたサポーターの「特権」は、メルマガ(インターネット環境のないサポーターにはFax送信などで)が届くことくらいでよいのではないかと思います。(プラスαがあればもっとよいのですが。)
(3)接客の改善

2月12日の「20周年記念式典」では、会社の従業員、スタッフが壇上に上がり、「安全とおもてなし」の宣言を行いました。これは今までになかったことで、今後の内陸線の変革を参加者に強くアピールできたと思います。
私がサポーター活動を始めた2003年頃は、沿線の人たちからの内陸線の評価は芳しくありませんでした。「あんな会社はなくなればいい」と周囲の人に話す人もいたと聞きました。それは、単に赤字を生み出しているというだけでなく、会社の体質を批判する人たちが多かったということです。私はそうした話を聞いて、びっくりしましたが、サポーターとして実際に活動を始めると、批判される理由がだいぶわかってきました。
それから7年近く経ちました。サポーター活動の中で、私は内陸線の社員や多くの関係者の人たちと知り合いになりました。この7年間で、内陸線はずいぶん変わった、よくなったと思っています。
しかし現在でも、内陸線(会社)に対する地元の人たちの見方には、まだ厳しいものがあります。「赤字だから廃止しろ」ということではなく、「応援しているのだが、あれでは困る」という、「身内からの批判」がいまだに多いのです。その「批判」の中には、鉄道会社としての制約や内陸線の現状からしかたがないとして私が反論できるものもありますが、会社・社員の対応がまずいと思うケースもあります。
<乗務員、駅員の接客研修を>
内陸線で利用者と一番長い時間を接しているのが乗務員です。内陸線の普通列車はワンマン運転のため、運転士が車掌の役割もしなければならず、大変だと思いますが、内陸線の営業の最前線にいるのが乗務員だということも事実です。しかし、乗務員(女性車掌を除く)が接客についての研修を受けているようには見えません。もちろん、注意や指導はされているのでしょうが、接客のしかたはそれぞれの乗務員の個性に委ねられているのではと思います。
乗務員の第一の仕事は安全・定時運転であり、これについては内陸線はとてもしっかりしていると思います。しかし、多くの乗客は、(残念ながら)それよりも接客態度を重視してしまいます。内陸線の乗務員は、決して態度が悪いのではありません。「よい態度」を客にアピールしていないのです。
駅員についてもこれは当てはまります。以前よりは改善されてきましたが、それでも、「悪くはないのに、良くは見えない」という対応が目につきます。
これは乗務員や駅員個人の問題というよりも、会社としての接客研修(座学ではなく、実地研修)の必要性を感じています。具体的には別途、会社に提案したいと思いますが、以下に、2009文書から引用します。
ローカル線を訪れる観光客は、都会の鉄道とは違った体験を求めており、運転士や車掌、駅員には、「ローカル線の旅情を体験させてくれる舞台俳優」としての「演技」が求められます。
その「演技」の序幕が、あいさつです。「おはようございます」「どちらから来られたのですか?」「ありがとうございました」などのあいさつや、近所の人との日常会話を聞くことが、観光客にとって、他では得がたい体験となります。あるサポーターは、無人駅で、遅れてきたお年寄りが慌てて走ってくるのを見た運転士が「大丈夫だよ、待ってるから」と声をかけた場面に居合わせて大感激し、ことあるごとにその体験を内陸線の魅力として語っています。
乗客は単なる交通機関利用客ではなく、会社の大切な「顧客」です。笑顔で声をかけることによって、また、交換待ちの時間に談笑することによって、その客はリピーターとなる可能性があります。
運転業務に携わる動作や案内自体が、客の共感を呼ぶこともあります。発車前の案内放送を肉声で行ったり、運転席の横で前を見つめている子どもに声をかけたり、また、指差し確認の何気ない動作も、乗客に安心と共感を与えます。それが「内陸線の魅力」として口コミやインターネットなどで語られていけば、まったく費用のかからない効果的な宣伝となります。

車掌がきさくに話に応じてくれるのも内陸線の魅力、にしたい。 2007.2.10
<本社の対応の改善を>
内陸線本社に対しては、以前よりはずいぶん改善されていると思いますが、それでも、「用件が一度の連絡でかたづかない」、「それはできません、と入り口で断られる」、「役所よりも固い」といった声が聞かれます。
地元の人たちは、内陸線の大切な顧客であり、支援者であり、ともに内陸線沿線を盛り上げていくパートナーでもあります。一人でも多くの支援者を獲得するためにも、会社から積極的に地元の人たちとの交流をすすめて、相互理解を深めていくことが必要だと思います。
鉄道会社として、周囲からの要望に添えきれない面もありますが、要望実現の可能性を探ることを基本に対応してほしいと思います。
3.具体的な企画についての意見
ここでは、内陸線を利用した企画について述べます。
(1)企画列車
現在、内陸線では様々な企画列車を運行しています。これをさらに増やしたいと思います。
企画列車には、時期を設定して車内を飾りつけるタイプ(装飾列車)と、車内でイベントを行うタイプ(イベント列車)があります。
<装飾列車>
装飾列車では、従来からの「サンタ列車」に加えて、今年は「雛列車」が走りました。このような装飾列車は、その都度、マスコミの話題として取り上げてもらえるので、内陸線の宣伝に大きな効果があります。また、正月にお座敷車両を急行運用に入れる取り組みも、「装飾列車」の範疇に入ります。
これまで、沿線児童の絵画や内陸線の写真の「装飾列車」も運行されてきました。また、「笑顔」の広告掲示も、好評でした。これらの装飾列車を年間スケジュールに組み込んで、常に何らかの装飾列車が走っているという状況になればいいと思います。
企画列車を走らせるときは、マスコミやホームページ上で、「何色の車両にどんな装飾があるか」の情報を(できれば画像入りで)広く提供します。すでに事例がありますが、沿線の学校や趣味の団体、県内の大学などと提携して、楽しい装飾列車を走らせてほしいと思います。冬季オリンピック期間中は沿線出身選手の似顔絵と応援メッセージが貫通扉窓に掲示されていて好評だったと思いますが、選手のこれまでの活躍ぶりを伝える写真をたくさん車内に飾って運行すれば、もっとよかったのではないでしょうか。
企業による広告列車(ラッピングを含む)も今後の課題と言えます。ただ、広告ラッピング列車ばかりになると、観光客や鉄道ファンに不評を買いますので、ラッピングする車両は1、2両でよいと思います。
<イベント列車>

「みのり号」での秋田万歳。 2007.11.3
「コンサート列車」や「民謡列車」、「ごっつお列車」など、車両の中で催し物をする列車で、「もみじ号」などのイベントは出入り自由、「ごっつお列車」などは予約した人だけが別料金で楽しめます。
これらのイベント列車も、年間スケジュールを組み立てたいと思います。装飾列車と違い、イベント列車は増結車両で実施されることが多いので、車両、乗務員、添乗員の配置が必要になります。したがって、年間スケジュールをあらかじめ公表するのは難しいかもしれませんが、旅行雑誌、鉄道雑誌、時刻表への掲載なども考えると、なるべく早い時期の発表が必要です。
イベント列車は、年に数回、または月に1回程度の運行だと、その都度の準備に手間がかかります。そこで、将来的には毎週末などに定例化できればいいと思います。
この冬の「ごっつお列車」は、参加客を集めるのが大変だったようです。しかし、テレビ局や週刊誌の取材が入り、宣伝効果は抜群でした。私は2月20日の「ごっつお列車」に乗りましたが、これはとてもすばらしい企画だと思いました。この「ごっつお列車」を何とか定着させたいと思います。 この「ごっつお列車」は角館始発でした。「ごっつお」を積み込むスタッフが仙北市エリアの人たちなので必然的にそうなるのですが、鷹巣方面の人たちも利用しやすい列車にできないでしょうか。
この「ごっつお列車」に鷹巣の人が参加しようとすると、朝8時15分の列車に乗り、阿仁合から急行「もりよし」で角館に行く必要があります。この時間のロスは致し方ないのですが、「ごっつお列車」に申し込んだ客には鷹巣から角館までの乗車証を発行して、追加運賃なしにしてほしいと思います。今のシステムだと、鷹巣からの参加客は、2時間以上の時間と2,000円のフリーきっぷ代を「ごっつお列車」の費用のほかに負担しなければならず、これでは尻込みしてしまいます。角館まで無賃で行ける(帰りは阿仁合などから鷹巣へ無賃で戻れる)というシステムにすべきだと思います。
今後、北秋田市エリアの人たちでも「ごっつお列車」のスタッフを構成できるようにして、鷹巣始発の運行を実現できればすばらしいと思います。(この場合、もちろん角館からの参加者には鷹巣までの乗車証を発行します。参加者の時間の負担より「お得感」が上回り、内陸線ファンが増えると思います。)
「ごっつお列車」の最少催行人員は25人でしたが、この人数を確保するのは大変だと思います。せめて20人くらいにできないでしょうか。行きはアルコールなしでした(飲んでいたら食べきれない量です)が、帰りの列車でビールやお酒、つまみなどを販売して利益を上げるなど、工夫していただきたいと思います。

「ごっつお」の、これはほんの一部。 2010.2.20
「ごっつお列車」は部外スタッフの力を借りているため、毎週末の運行や、農繁期の運行は難しいと思います。そうした時期には、リーズナブルの値段での「おべんとう列車」はいかがでしょうか。松葉の田代旅館、上桧木内の中島旅館(わくわくマーケット)からの積み込みだけなら、設定できるのではないかと思います。また、鷹巣始発では、合川の平川旅館、山喜旅館、米内沢の「あゆっこ」、阿仁前田のクウィンスなどの協力が得られると思います。
定期普通列車に増結する「ごっつお列車」に対して、通常の急行「もりよし2号」に積み込むのならば、5〜10人程度のグループでも、予約に応じて対応できると思います。従来も「あに丸ごと弁当」での実績があります。また、お弁当とお茶ならばワンマンの普通列車でも、乗車しているアテンダントを活用すれば可能です。鷹巣発10時41分の角館行き、角館12時10分発の阿仁合行きを指定列車としてレディーメイド化できるのではないでしょうか。レディーメイド化できれば、旅行会社に対してもその内容をプロモーションできます。

内陸線の雪景色は天下一品。 2009.3.28 上桧木内―戸沢
雪景色を眺めながら、ゆっくりと秋田の酒を楽しめる列車があればうれしいと思います。酒造会社とタイアップした貸切のイベント列車にすれば、内陸線と酒造会社両方の宣伝になると思います。もちろん、悪酔いする人がいると困りますが。
同じように、様々な会社とタイアップしたイベント列車を、相手のニーズに合わせて設定できたら、貸切の利用率はもっと上がると思います。そのためには具体的な貸切列車のダイヤ案を持って地域の会社、事業所に営業をかけることが必要です。積極的に沿線地域の中に入って行くことによって、新たな顧客を開発できると思います。
(2)駅からハイキング

内陸線旅行センター主催の奥森吉赤水沢ハイキング。 2009.8.2
JRが募集して内陸線の駅から出発する「駅からハイキング」はたいへん好評とのことです。また、内陸線旅行センターが募集した沿線トレッキングも毎回多くの参加者がありました。沿線トレッキングはリピーターが多く、今年も企画が続いていくことを楽しみにしています。また、比立内や上桧木内の集落散策モニターツアーも好評だったと聞いています。
この「駅からハイキング」方式は、集合が現地の最寄り駅であるため、定期列車をそのまま利用でき、帰り道に自由に温泉に寄り道できるなどの利点があります。添乗員(旅行センター社員)が同行するため、最少催行人員が設定されていますが、今後は少人数のグループ向けに、利用客の受け入れ先と提携した添乗員なしのトレッキング(温泉パックのような形)も企画すればよいと思います。
今後のトレッキング企画として、たとえば以下のような企画が考えられます。
<伊勢堂岱遺跡と、田んぼでお昼>
遺跡を見学したあと、近くの田んぼでおにぎりを食べます。これは「定吉米本舗」の契約圃場で実施できます。
<阿仁合、湯口内集落、古河林業でナメコ採り、チェンソーアート見学>
昨年11月のモニターツアーで大好評でした。
<山菜採り体験>
エリアネットで2回、根子で試験的に実施しました。場所の確保、案内人体制などの整備が課題です。根子集落散策、二又荘での山菜料理の昼食があれば、山菜採りがなくても十分に魅力的なハイキングになります。
<比立内集落散策> これもモニターツアーの収穫です。松橋旅館での昼食がいいと思います。
<大覚野牧場と垂天池(たでち)沼>
駅から歩くのではちょっと大変なので、タクシーなどでの輸送が必要です。
<上桧木内集落散策>
これもモニターツアーで大好評でした。お昼を農家の庭先で食べます。お茶とがっこの提供を受けます。
<桧木内川の渓谷>
羽後長戸呂から八津まで、川沿いの林道を歩きます。八津のかたくり館で昼食。新緑、紅葉の時期は最高です。採石場から鎌足へ抜けるルートがあればよいのですが。かたくり館からクリオンのマイクロバスを利用して、温泉に浸かって西明寺駅解散がよいと思います。
内陸線の「駅からハイキング」の内容は無尽蔵にあります。地元の人たちと協力して、回数を増やし、定着させたいと思います。
(3)駅周辺の施設整備

車窓からの比立内の渓谷。ゆっくり歩いてほしい。 2007.10.27
内陸線の車窓がすばらしいことは言うまでもありませんが、観光客が途中下車して楽しめるスポットを整備する必要があります。
<各駅に周辺の散策地図を>
内陸線には、駅で降りて散策を楽しめる場所がたくさんありますが、散策のための地図を各駅に掲示する必要があります。窓口などで印刷された地図を配布している駅もありますが、多くが無人駅の内陸線では、ホームに地図看板を設置するのが有効かと思います。
今でもホームに「名所案内板」がある駅もありますが、言葉だけではその場所や魅力が伝わりません。駅名標のようなものは費用がかかると思いますが、待合室のホーム側の壁面などを利用して、簡単な、車窓から見て「今度降りてみようかな」と思わせる楽しい看板があればいいと思います。たとえば笑内駅に根子集落への地図を掲げるとか。
待合室の中にさらに詳しい地図やチラシがあれば、さらに高感度はアップします。

阿仁川に寄り添う湯口内の風景。 2009.11.7
<休憩できる施設を>
鷹巣駅前に、北秋田名物(株)による「駅の駅 べ」ができました。飲み物の販売機と土産品、そして自由に使えるカウンターやテーブル席は、内陸線の第二の待合室としても有効です。
座って、のんびりと時間を過ごせる場所は、観光客だけでなく、地元の人たちにも必要です。商店街を歩いても休憩場所がないと、買い物客は疲れてしまいます。ショッピングセンターに休憩所や喫茶コーナーがあれば、客がそこで過ごす時間が増え、購入単価も上がると思います。内陸線にとってもそれは同じではないでしょうか。
小ヶ田駅近くの伊勢堂岱遺跡のある丘の上から、小ヶ田駅が見えるようになりました。あの場所に小さな園地(ベンチとテーブル、トイレだけでも)ができればいいと思います。
上杉駅の「あいターミナル」は立派な施設ですが、土日祝日と早朝・夜間はトイレもつかえません。これはもったいないことです。無人駅でもトイレがいつも使えれば、安心して途中下車ができます。
米内沢駅前の店は閉店してしまったのでしょうか。駅前に駐車スペースがあるので、たとえば自家製パンの店とか、車でも買い物に来られる逸品の店があればいいと思っています。よい店には遠くからでも客が来るものです。
前田南から小渕にかけてはちょうどよい散策コースがあるのですが、トイレがありません。どちらかの駅のそばにでも、設置できないでしょうか。
阿仁合駅には売店、こぐま亭があり、観光案内所にアテンダントが詰めているようになりました。駅に賑わいが出ていますが、駅前にもう一工夫できると思います。また、近くに異人館・伝承館などのスポットがあるものの、阿仁合の街の中に休憩できる場所が見当たりません。明るい喫茶店がほしいと思います。伝承館の中に喫茶室を作るという手もあるのではないでしょうか。
また、ふるさと文化センターの敷地の奥には、北緯40度のモニュメントとベンチが置かれていますが、残念ながらここからは内陸線の阿仁合駅と運転区が潅木に遮られて見渡せません。阿仁合駅構内は、鉄道ファンだけでなく、旅好きの人にとってもたいへん魅力的なロケーションです。ぜひ、潅木を伐採して小さな園地として整備し、阿仁合駅構内の展望スポットにしてほしいと思います。

比立内駅で2月に開かれた「がっこカフェ」は大変好評でした。駅の中のスペースはたいへん貴重です。せめて観光シーズンだけでも、「がっこカフェ」を開いてほしいと思います。お茶とがっこで300円程度の値段設定にして、少し離れている「道の駅あに」とリンクさせて散策の拠点にできると思います。
阿仁マタギ駅前の案内所も、活用されているとはいえません。集落のお母さんが交代で詰めているようですが、ここも「がっこカフェ」にできると思います。
上桧木内駅のすぐ近くに飲み物の自販機がありますが、列車からは見えにくい場所です。上桧木内は交換待ちの列車も多いので、もっと近くに自販機を移動して、乗客が停車時間に買えるようにしてはどうでしょうか。また、徒歩10分近くかかりますが、紙風船館と「わくわくマーケット」の存在を列車の乗客にも知らせたいと思います。
八津駅にはトイレはありませんが、すぐ近くのかたくり館のトイレが使えます。こうした場合は、駅にも案内があるといいと思います。かたくり館をもっと有効に活用できないでしょうか。
内陸線角館駅の待合室が、となりの旧スタシオンのスペースを使うことによってだいぶ広くなり、観光客に好評だと思います。角館駅前には「駅前蔵」もあり、全国的な観光地の玄関として整備されています。角館にとって、内陸線は言わば「奥座敷」です。奥座敷があることによって、観光地としての間口がいっそう広がります。角館でいかに内陸線をアピールするかも、今後の大きな課題と言えるでしょう。
(4)駅での販売と車内販売
列車での旅の楽しみの一つが、駅や車内での買い物です。沿線地域にとって、鉄道は特産品を紹介できる場であり、鉄道会社にとっては、運賃以外の収入源であると同時に、旅の楽しさを演出するアイテムでもあります。
<阿仁合駅の売店>
内陸線では、売店は阿仁合駅にあるだけです。阿仁合駅の売店は、こぐま亭と合わせて、内陸線の中心駅・阿仁合の「顔」として、販売だけでなく、慣れない利用客の案内をするなど、旅客の便宜をはかってきました。今はアテンダントの詰め所もでき、阿仁合駅は賑やかです。
駅の売店や食堂は、JRの場合でも、旅客にいろいろ訪ねられることが多く、ある程度の鉄道や駅の知識が求められます。すでに実施されているかもしれませんが、駅員と売店、こぐま亭、そしてアテンダントの情報交換を日常的に行い、共通理解をすることによって、阿仁合駅はさらに魅力的になると思います。
<合川駅の直売所>
2007.11.3
合川駅では、待合室を使ったJA女性部の直売所が初夏から秋まで毎週火曜日と土曜日に開かれています。直売所では手作りの菓子類なども販売していて、これをホームで列車の乗客にも販売しています。この風景はとても温かみがあり、内陸線の魅力の一つとして育てたいと思います。
しかし、停車時間が限られるために、駅での販売には限界があります。そこで、直売所の主催者と内陸線が契約を結び、列車に乗り込んでの車内販売をしたらどうでしょうか。合川から鷹巣または阿仁前田まで行き、帰ってくるパターンでよいと思います。「売る喜び」と「買う楽しみ」を双方に味わってもらえれば、内陸線の存在価値がさらに上がります。

直売所のおかあさんたちが交換待ちの列車に立ち売りに。 2007.11.3
<車内販売と停車時間>
急行列車では車掌が車内販売をしています。これも観光客からすれば、旅の楽しみの一つになり、内陸線の収入にも貢献していると思います。これに加えて、鷹巣側のアテンダントが、内陸線グッズの車内販売を始めました。様々な制約はあると思いますが、「旅の記念に何かを買いたい」と思う客、そして「何かを買って内陸線に貢献しよう」という人は多いので、購買チャンスを広げることが大切です。
1003D「もりよし3号」は阿仁合で14分の停車時間があります。阿仁合には売店もこぐま亭もあるので、阿仁合駅到着前に、停車時間の告知とともに売店などの案内をしてはいかがでしょうか。
115Dも上桧木内で昼どきに19分の停車時間があります。しかし駅周辺には飲み物の自販機しかないので、2年前に中島旅館にお願いして、試験的にホームでの立ち売りを実施してもらいました。乗客には好評で、それなりの売り上げはあったのですが、人手の関係で定例化には至っていません。この115Dは、鷹巣10時41分発の角館直通列車ですが、途中駅での停車時間があるのは上桧木内だけで、阿仁合でも2分停車です。したがって、115Dに鷹巣から乗った客は、途中駅で飲み物や食べ物を購入するチャンスがありません。これでは2時間40分が苦難の旅になってしまいます。乗客の救済のためにも、阿仁合の停車時間を増やすか、阿仁合または上桧木内のホームで立ち売りをするか、または車内販売をするかの対策をお願いします。
同様のことは17D〜217D、214D〜14Dにも言えます。昼時なのに、阿仁合での乗り換え時間はわずか2分です。
観光客を対象にした場合、短すぎる接続時間はかえって楽しみを奪います。ダイヤ設定上の制約は承知していますが、何らかの救済措置が必要です。

上桧木内で試験的に開いた出店。 2007.4.29
<立ち売り、車販のネットワーク化>
売店や立ち売り、車販は、運賃外収入を増やすという目的以外に、旅の楽しさを演出するアイテムと考える必要があります。内陸線の、他にはない魅力として定着させたいと思います。
様々な個性をもった団体・グループと協力して、内陸線を軸とした構内営業のネットワークを作り、それを広く紹介して、内陸線への集客をはかることができれば、すばらしいと思います。
たとえば、このようなことが考えられます。
・鷹巣……「べ」が内陸線鷹巣駅での立ち売り。
・合川……JA女性部がホームでの立ち売りと車内販売。
・阿仁前田……クウインスの職員がホームでの立ち売り。
・阿仁合……内陸線社員がホームで立ち売り、車内販売。
・比立内……「考える会」の人たちがホームで立ち売り、車内販売。
・上桧木内……「守る会」の人たちがホームで立ち売り、車内販売。
・松葉……「ごっつお列車」のスタッフが車内販売。
・八津……集落の人たちがホームで立ち売り、車内販売。
・角館……待合室を利用して観光協会が出店。
このような態勢を作り、マスコミに告知して試験的(イベント的)に実施してみます。
販売スタッフは各所1〜2人程度でよいと思います。また、車内販売には乗車列車と区間をモデル的に設定します。 数回実施して、手ごたえがあるようなら、一部の団体だけでも定例化(毎日でなくても週末、観光シーズンだけでも)できれば成功だと思います。
(5)沿線風景の整備

ソバの花が涼しさを運ぶ。 2009.7.5
昨年春には菜の花が、夏から秋にはソバの花が彩を添え、耕作放棄地が目立つ沿線を再生する動きが出てきました。ぜひこうした取り組みを続けてほしいと思います。
内陸線の沿線風景の特徴は、広葉樹に包まれた里山と、杉林。そして川の風景です。観光客は紅葉と角館の桜、八津のカタクリの時期に集中しますが、地元の人に聞くと、新緑が一番好きだという人も多いようです。私も、内陸線沿線の新緑は紅葉と同じくらいすばらしいと思います。
同じ紅葉でも、北国の紅葉はその冷え込みのために色が鮮やかです。それに、内陸線の場合は「全山紅葉」の風景が車窓から楽しめます。関東地方では杉の植林地が多く、たとえば奥多摩も、青梅線の車窓からは杉林の間に紅葉が挟まっているくらいにしか見えません。新緑も、「全山萌黄」から「全山新緑」への移ろいは見事です。杉も、広葉樹の山裾に遠慮がちに生えている場所が多く、景色を重層的にする役割を果たしています。
萌黄の時期に淡い紅を添えるのがヤマザクラです。山のあちらこちらにヤマザクラが点在している風景が、私は大好きです。
このヤマザクラを、もっと前面に出せないかと思います。桜といえばソメイヨシノが代表的ですが、山にはヤマザクラが似合っています。並木にするのではなく、今ある木を残し、苗を少しずつ植えていけばよいと思います。シダレザクラとソメイヨシノは角館で、ヤマザクラは内陸線で、と宣伝すれば、開花時期が少し遅い内陸線に観光客を呼べるのではないでしょうか。
杉林の中を走る大野台―合川間も特徴的な景観ですが、下草刈りや間伐を行い、生き生きとした林になれば、もっと魅力的になると思います。
内陸線沿線の集落には花がたくさん植えられています。春先のスイセンから秋のコスモスまで、駅の周りを取り囲むように花が咲いていたり、集落が花で包まれているのはとても素敵な光景です。これを地域ぐるみで意識的に取り組んではいかがでしょうか。
駅の周辺整備では、千葉県の小湊鉄道沿線、特に飯給(いたぶ)駅が先進例です。ここではホームの桜、線路端の菜の花、かえるのなく田んぼに炭焼き小屋まで作られ、見通しを遮る竹林は伐採されて、日本の里の原風景を再現しています。

乗客を楽しませた「田んぼアート」。 2009.10.3
4.内陸線のテーマパーク化を
2009文書の最後でも述べましたが、私は、内陸線の将来展望は鉄道と沿線地域が一体となった「テーマパーク」を作ることだと思っています。
「テーマパーク」と言っても、新たに多額の資金を投じて大きな施設を作ることではありません。今まで書いてきたように、内陸線と沿線の観光価値を活かし、今ある施設に手を加えながら、広く国内外から人を呼び込む「しかけ」を作ることです。観光客だけでなく、定住者も増やせるような魅力ある地域にしていくことです。
「内陸線テーマパーク」のコンセプトは、「自然の中の人々の暮らし」と考えます。田んぼと里山、そして集落の入り混じった景観は、日本の原風景とも言えるものです。そして、今もそこで人々が暮らしています。
鷹巣から角館まで、94kmを走る鉄道とその沿線が広いテーマパークとなり、国内外からたくさんの人たちが訪れるようになることを願っています。
内陸線と沿線の再生事業は、これからが本番です。多くの皆さんの力を合わせて、地域の活性化につなげるべく、自分自身も努力を続けて行きたいと思います。この文書がその一助になれば幸いです。

(おわり)
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