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《内海光司B》

舞台『女の一生』

東京公演:2000/11/1〜2000/12/28
名古屋公演:2001/1/2〜2001/1/29

感嘆日
@2000/11/26(土)16:30〜2列A2000/11/27(日)11:30〜23列B2000/12/29(木)12:00〜2列C2001/1/2(火)1:00〜2列
D2001/1/11(木)11:00〜9列E2001/1/27(土)16:00〜29列F2001/1/29(月)11:00〜1列

長かった3ヶ月が終わった。現実世界の季節が変わる中で、内海さんはひたすらに同じ時代の同じ時間を演じ続けていたんだなあと思うとちょっと面白い。舞台をやれば毎度そんな風だから内海さんの時間がやけにゆっくりと回っているような錯覚を覚えるのかなあとちょっと思ったりしている。単に「内海さん、前と全然変わってないよ・・・」ってことを言いたかっただけなのだが。では、内海光司出演場面を中心に感嘆文をば。

初見が公演開始から一ヶ月近く経っていたため、いつものごとく早くに観劇を終えられた同志の方からいただいた予備知識だけは満載で東京に乗り込んだ。

今回の舞台は三幕構成で、主人公清滝(氷室)しのぶ(佐久間良子さん)の一生を描いたものである。
第一幕の流れは「氷室との結婚、そして甘い新婚生活。幸せもつかの間、夫と自分の乳兄弟との浮気現場を目撃。離婚を決意したしのぶだが、夫との間の子を身ごもったことを知り・・・」とまあ、簡単に言えばこんな話である。しのぶの息子役である内海さんの出番は当然ながらない。第一幕での楽しみは、しのぶのお爺さま役にあたる「綿引勝彦」さんとの視線合わせである(笑)前から10列辺りまでの席で観劇された方ならおわかりかと思うのだが、綿引さんはやたらと客席にいる客と視線を合わせて微笑みかけるのがお好きなようで、わたしは何度か目が合ってしまった(^^;)そんなこんなで長い一幕が終了するのである。
第二幕は「一向に家族に見向きもしない夫との形ばかりの夫婦生活。近所に引っ越ししてきた伯爵夫人と親密になる夫に何も言えず、息子の誠美を生き甲斐として生きる女」編である。やたらと目まぐるしい場面転換な上に約30という短い幕で、子役の誠美が出てくる度に心の中で「早く大きくなれ〜〜」と呟き続けた。

そして5分の休憩の後。待ちに待った、内海光司さま登場の第三幕の幕が開く。

第三幕は清滝家の客間から始まる。舞台の設定は昭和の初めの初秋。
しのぶが不動産屋に土地を担保にしお金を作るシーンから始まる。溜息を吐いているしのぶを家の外から覗う怪しい影が・・・ってそれが待ちに待った氷室誠美(内海光司)の登場である。
家の玄関からのドアからではなく、庭へ続くドアからこっそりと家の中の様子を覗う様子からも家に帰り辛い誠美の役どころを現わしているのかもしれなかったが、あの登場シーンはいただけなかった。
だって、普通、役者さんが登場したら拍手で迎えたりするものなのに、そーっとこっそり足を忍ばせて入って来たんじゃ、拍手のタイミングも何もあったもんじゃなかったからである。母親の背後にそっと忍び寄り、「わっ」っと背中を叩いてソファの背に隠れる。一連の動作をつられて息を詰めて見ていたら拍手のタイミングなど全く見当たらなかった。
話を舞台の上へと戻して、ソファの背に隠れる誠美である。ツボ。ソファの背にコンパクトに隠れる誠美がなんとも可愛いのである。母の肩をぽんと叩いてソファに隠れる、という行動を無視すれば、とても可愛らしい誠美なのだ。まったく客席からは光司の、もとい、誠美の服のカケラすら見えなかったのである(場所によれば見える場所もあったのかもしれないが)。なにもそんなに思い通りにマンガのようにすっぽりとソファに隠れてるんじゃないよ〜誠美〜と可笑しくて堪らなかったのだ。是非是非そのしゃがんでいる向こう側に鏡を置いて欲しいと願ったのはわたしひとりではあるまい(断定)。
「誰っ?」と驚く母親に「誠美?」と訊ねられて現れた誠美の素晴らしく細い体ったらなかった。涙が出るほど凹凸のない立ち姿。ああああああ、光司〜〜〜とむせび泣き。このラインは、他の誰にも作り出せないであろうと思わせるほどに細い。学ランにコートの誠美はとても甘えた声で母親にお金の無心。なんて子どもだ。それも土地やら何やらを売ってもらって作っているとわかっているだろうに、簡単にお金だけ受け取ると帰ろうとする非道な息子。母がどうしてもと息子への荷物を取りに奥へ消えた時。それが今回のハイライトシーン。
ポケットからタバコとマッチを取り出しながらソファへボスンと座り込んで、脚を天上に届かんばかりに(嘘)ピンと伸ばしてから脚を組む。余りの脚の長さに観客の溜息が零れる。ホウ、素敵。そしてタバコをくわえてマッチで火を付ける。そのしぐさがもう格好よくて格好よくて。火を付けたらマッチを灰皿にポイっと捨て、マッチの箱も無造作に机に放り出される。右手にタバコをはさみ背もたれにぐいっともたれて上を仰いで煙をフウーっと吐き出しすその一連の動作がものすごく鮮明に目の奥に焼き付いている。素敵。素敵。かっこいい。
そこで母親が戻って来てしまい慌ててタバコを消してしまうのだが、もう少し煙を燻らせる光司を見ていたかった・・・。

そして暗転。そう、この暗転はただの暗転ではない。
「お母様、助けて下さい」
情けない誠美の声が流れるや、客席に薄い笑いの波が広がる。母へのお金の無心の手紙が、ナレーションという形で現れる。眠いだけの暗転のはずが、一気にお得な時間へと早変わりである。わたしは内海光司のマイクを通した語りの口調や、声がとても好きである。殆どマイクを通した声しか聞いたことがないじゃないか、はい、御尤もなのであるが、原稿を読む内海の語り口調がとてもすきなのである。記憶しておいて語るというのはどうも力が入るらしく声が高めなのであるが、原稿を読む時は字を追っていけばよいという安心からなのか、声が幾分落ち着いていて低めである。その声にわたしはとっても弱いのである。だから、この暗転中の手紙には毎回うっとりとしてしまった。
続いては誠美をかくまってくれている・・・支えて働いてくれている・・・ようである女性「あけみ」の働くカフェ『マグノリア』での一場面。誠美ったらとんでもない衣装で現れる。オレンジの柄シャツに紺のダボダボのジャケット。そしてグレーのストライプのパンツ。柄シャツのボタンを多めにはずして着ているくせに下にTシャツを着用しているのである。それじゃあ内海光司じゃねーかっ、と舌打ち(笑)まー、とんでもなく長い足がますます長く見えるウエスト履きのパンツにただただ呆然。なんて趣味の悪い服着てるんだ誠美よ・・・と嘆き悲しんでしまった。母と女に両挟みになって格好の悪い場面だし、いいとこなしの場面。そんな役が似合うって一体・・・。

次の雅美はというと、またもや手紙のナレーション。ああ、光司の声を堪能できる至福の時(^^)これって暗転でも眠くならないようにという配慮だろうか、なんて考えてしまう。素敵。

幕が開く。そして、雷鳴響き渡る窓の外を憂いの色を浮かべて眺める誠美の立ち姿が現れる。わたしはこの窓の外を見ている誠美の表情がとても好きだった。子どもが産まれたものの、妻・あけみは容体が悪く病床に伏したまま、子どもを育てていくお金さえなく、また養子にやることもできない。そんな悲しみや苦悩、そして不安を抱えてあけみにつきそっている誠美の憂いがとてもよく出ているように思った。横顔で笑っていない内海光司の美しさといったらなかった。横顔っていうのがポイント。また窓に映る光司の顔がなんとも格好よくて参った。どうしてこの人はこういう表情を無くしたような顔が格好いいんだろう、と涙してしまった。やっぱりあなたに付いて来てよかったわ、と意味不明な安堵を得た瞬間であった。
あけみの死ぬシーンでは、雅美はやたらと高い声で「あけみーっ、あけみーーーっ」と泣く。だがその声を聞く度に誠美が哀れに思えてならないのである。妻に死なれたからというわけではない。その前のシーンであけみが誠美の母(しのぶ)に「本名はゆみこといいます」って告白するシーンがある。で、その後に「あけみーっ」である。あけみは誠美に本名を明かさなかったのだろうか。本名で呼んでもらわなかったのだろうか、と思ってしまったのである。名前なんてたいした意味はないのかと思ったりしたのだが、自分は本名ではなく源氏名で呼ばれつづけたが、子どもは二つの名前で生きなくていいようにと願っていたあけみの意思に反していると思うのである。
まあ、幕が開けたらいきなり「ゆみこ」と呼びかけていたのではおかしいだろうが、誠美という存在の扱われ方を哀しいと思った一場面であった。
ビジュアル的にはベットのあけみに縋って泣く誠美がよろしかった。脚をぴんとまっすぐにしたままベッドに縋るので脚の長さが際立って見えたのである。高い腰の位置にうっとり。

最後の場面は脚をすっと組んだ誠美の美しいお姿から始まる。ぴんと背筋を伸ばして岩に腰掛ける姿はちょっと不自然である。内海光司は普段は猫背である。その癖に意識してぴんと背筋を伸ばしているので、ちょっと無理しているなあといった感じで可笑しい。ファンだからおかしく見えているだけのことであるが思わず笑ってしまった。
生まれ育った清滝の家がいよいよ取り壊されるというので清滝の家に最後の別れをつげに来たシーン。しのぶの腕に抱かれた我が子をそっと受け取る誠美の手つきがなんとも不器用で危なっかしい。それでもふわりと微笑む誠美の笑顔はとてもよかったと思う。

おぼっちゃんで世間知らずで親を泣かせてばかりの頼りない役だったが、こういう頼りなさを演技させたら内海光司は絶品だと思う。折角頼りなくて甘えたで可愛かったのに、衣装は本当に似合っていなかった。もう少し光司に似合う服を着させたあげてもらえたら、と少々心残りな舞台であった。次回に期待である。

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