perfumeと中田ヤスタカ
既に多くの人が指摘しているように、perfumeの楽曲のいくつかには、作詞作曲担当の中田ヤスタカから、perfumeへのメッセージが込められている。ここではperfumeの歴史と中田ヤスタカが込めたメッセージとの相関関係を見ていこうと思う。
「コンピューターシティ」 2006年1月11日リリース
この曲は、恋の病のせいで普段と違う自分になってしまった事に対する、とまどいの気持ちを歌っている、と考えるのが普通だろう。
だが、こうも聞こえる。
「完璧な計算で作られた楽園」
=完璧な計算で作られた新曲
「誰も見たことのない場所へ 夢の中で描いていた場所へ」
=オリコンTOP10入りのこと?
「あー どうして おかしいの コンピューターシティ」
=こんなにいい曲を書いているのにどうしてオリコンの集計結果を出すコンピューターの数値はこんなにおかしいのだろう?
「もうすぐ変わるよ 世界が もうすぐ 僕らの 何かが 変わるよ」
=もうすぐこの曲でオリコンチャート上位に入ってみせる。そうしたら、Perfumeの周囲はガラリと変わるだろう。
「絶対故障だ てゆうかありえない 僕が君の言葉で悩むはずはない」
=出す曲出す曲が全てこんなに売れないなんて ありえない。 売り上げの結果を伝える君の言葉で、僕が悩むはずはない。
当時のperfumeは、前年に出した「リニアモーターガール」が三千枚程度しか売れず、まさに「崖っぷち」にいた。
「常にお母さんからは『あんたらはいつでも崖っぷちにおるんじゃけえ、もっとがんばりんさい。』って言われて、そういう応援してくれている人たちがいたから、がんばってこれたんだと思いますね。」メンバーの一人あーちゃんは、NHKの番組「TOP RUNNER」のインタビューでこう答えている。
「エレクトロワールド」 2006年6月28日リリース
前作「コンピュータ・・・」もやはり売れなかった。中田ヤスタカにしてみれば、出す曲出す曲全く受け入れてもらえない。perfumeとの仕事もこれで最後かもしれない。歌詞もそんな世界の終末観を表している。
「この世界僕が最後で最後最後だ
エレクトロワールド 地面が震えて砕けた
空の太陽が落ちる 僕の手にひらりと
本当のことに気づいてしまったよ
この世界のしくみ 君に手紙残すよ」
このCDが僕たちの出す最後のCDだ。僕たちの希望は震えて砕けた。希望はひらりと落ちる。本当のことに気づいてしまった。この世界では、よい曲が売れるのではない。メディアに働きかける力が強くないと売れないのだ。それがこの世界のしくみなのだ・・・。中田ヤスタカのあきらめに近い気持ちが、歌詞に隠されている。
「エレクトロワールド」発売後ほとんど間をあけずに、ベスト盤アルバム「コンプリート・ベスト」が発売された。後に名曲の一つに数えられるようになる「エレクトロワールド」は、まったく売れないまま「コンプリートベスト」に収録される。事務所はこのベスト盤でPerfumeを終わらせようとしていたとも考えられる。事実、同じ事務所に所属していた他のアイドルたちは、ベスト盤を出した後、契約を打ち切られている。
翌年春、Perfumeの三人は、音楽一本でやっていく自信が持てず、大学に入学する。
「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」 (アルバム「コンプリート・ベスト」収録)
「いつ契約を打ち切られるか。いつ広島に帰されるか。びくびくしながら歌ってました。」
本人たちは当時のことをインタビューでこのように語っている。
この曲の歌詞は一見、つきあっていた彼(彼女)がアイドルとして成功し、スターになってしまったため、距離が離れてしまった。そのことを悲しむ歌に聞こえる。だが、よく聴くと、中田ヤスタカからperfumeへの、別れの歌とも取れるのである。
「I still love 君のことばがまだ離れないの
あの日あの場所で凍りついた時間が
逢えないままどれくらい たったのかなきっと
手を伸ばしてももう届かない」
君のことば=Pefumeのことばと思われる。 ひょっとしたら社長の「あ、中田君、悪いけどPerfumeね、解散することに決まったから」などというセリフを想像したのかも? このまま売れなければ、事務所の方針でperfumeは解散(=凍りついた時間)、広島に帰ってしまうのではないか? この3人娘とも、もう一緒に仕事をすることはないのではないか?
「今も大切なあのファイル そっと抱えたあのまま」
これが自分が手がけるperfume最後のCD(ファイル)になるかも知れない。そんな気持ちで作詞したのではないかと思わせる内容である。
ところが、この世界(Perfume)は終わってはいなかった。周囲のスタッフはPerfumeを励まし続け、翌年2月,新曲「チョコレイト・ディスコ」の発売にこぎつける。そしてこの曲にはまった木村カエラが、自分のラジオ番組で何度も何度も繰り返し流す。たまたまそれを聞いていたNHKのディレクターが、AC公共広告にPerfumeを採用することを決めた。こうして作曲されたのが「ポリリズム」だ。
「ポリリズム」 2007年9月12日リリース
「エレクトロワールド」の後に続けて聞くと、終わりかけた世界が再びよみがえってまわり出すようなイメージを強く受ける。
「とても大事な君の思いは 無駄にならない 世界はまわる」
「エレクトロワールド」で残した手紙を「ポリリズム」で受け取ったという風にも取れる。同時にperfume三人の大事な思いが無駄にならず、ついにこの世界に伝わったという喜びも感じとれる。
「ほんの少しの僕の気持ちも 巡り巡るよ」
僕の気持ちをこめたperfumeの曲が、ファンからファンへ、少しずつ広まっていき、巡り巡ってついに、全国放送のCMで流れる所まで来た。ついに自分の曲が認められた! 中田ヤスタカの喜びが感じられる歌詞である。「ほんの少しの」という謙虚な表現がまた何とも言えない。Perfumeが不遇だった時代は、イコールそれを支えるスタッフたちも不遇の時代だったわけで、当然彼らの、Perfumeを成功させたいという思いは、半端なものではないはずだ。
他のアイドルたちが次々に契約を打ち切られる中、何故Perfumeだけが周囲のスタッフに励まされ続け、後押しされ続けたのか? どんなにCDが売れなくても,中田氏から新曲の提供が途切れることはなかったし、振り付けのMikiko先生も彼女たちを見捨てることはなかった。彼女たちがスタッフに愛され続けた理由は,何だろう?
経営トップからの「結果が出せないのならPerfumeは打ち切り!」というような圧力も当然あったに違いないのに、それをはねのけて、スタッフたちはPerfumeたちを支え続けてきた。スタッフたちのPerfumeにかける思いは、決してほんの少しではない。
ある番組でインタビュアーに「やめようと思ったことはなかったですか?」と聞かれ、あーちゃんとかしゆかは「まあ、ありましたね。」「あんまり言っていいかどうかわかんないけど、ありますね。」と答えている(この時のっちは「えーっ」という反応をするのだが)。「なんで乗り越えられたんですか?」と重ねて聞かれた時、3人はしばらく沈黙する。ややあって、のっちが「やっぱりPerfumeでがんばっていきたかったんじゃん。」と言い、あーちゃんが「うん、だと思います。」と答える。かしゆかが「ほんとこの三人でよかったなと思います。なんか、わかんないんですけど、ホント大好きなんですよ。気持ち悪いですよね。」と涙ぐみながら言う。突然泣き出したかしゆかに驚くインタビュアー。だが、かしゆかは「ほんとに、ほんとに好きなんですよ。この三人だから、ここまでこれた気がしますね。」と涙をふきながら続ける。
3人組というのは、人間関係を良好に保つのが難しいと言われる人数である。どうしても力関係が2対1になりがちだからだ。若い女の子三人組なら、なおさらである。それが、なぜ8年以上も仲違いすることなく(あったのだろうが、それを克服して)、逆境にも負けずに、ここまで続けることができたのか。その答えは、このインタビューの受け答えに隠されているように思う。それはたぶん、以下のようなものではないだろうか。
・お互いの人格や人としての価値を、認め合い、尊敬し合っていること。
・Perfumeを成功させたいという、一つの大きな目標を共有していたこと。その目標のためなら、三人は自分たちのエゴをあっさりと消すことができたと考えられる。
そうだとするならば、スタッフたちがこの3人組を見捨てず支え続けてきた理由もなんとなくわかるような気がする。見た目だけならAKB48に勝てず、歌だけならもっとうまいグループはいくらでもあり、ダンスだって体育会系出身の、もっと切れのあるダンスをするグループは、掃いて捨てるほどある。
スタッフたちがこの3人組を見捨てなかったのは、この3人に才能があったからではない。この3人の性格のよさに惚れたのだ。きっと。
Perfumeが出演していたある深夜番組(気になる子ちゃん)で、宮川大輔が他の出演者に「なぜ宮川さんはそんなにやさしんだろう。おかしいですよね。電波を通じてPerfumeに対してデレデレしてますよ。」「たしかに、もうちょっと他の番組ではわあわあ言うてるイメージのとこあります。」と言われて、やや考えたあと「いや、あの・・・正直楽しいんですけど、ここの感じがすごい楽しいんですけど。」「芸人のガツガツした・・・」「いやーああいうの、しんどい時がある。すごい、これが居心地がいい。」と答えている。
きっとPerfumeを支えるスタッフたちも、宮川大輔と同じ気持ちなのだろう。
また,武道館のコンサートで,あーちゃんは涙ながらにこんなセリフを残している。
「私たちはこないだまでイモ? ゴボウ? いやボンクラだったので」「本当にうれしいです。長い間求められていなかった存在だったので・・・。箸休めみたいなもんだったので・・・」
今まで一部のファン以外、ほとんど誰にも知られていなかった自分たちが,やっと多くの人に認めてもらえたことに対する素直な喜びと,それまで支えてくれたファンやスタッフに対する感謝の涙。有名になってもずっとぶれることのない彼女のこの姿勢が,きっとスタッフの「この子たちを支えてあげたい」という気持ちを大きく突き動かすエネルギーになったのであろう。人に認めてもらえることの喜び,それは人間の根源的な喜びであり,あーちゃんの言葉はそれを周囲の者にいつも共有させてくれる。perfumeのライブを見た者が、計り知れないほどの大きな多幸感に包まれる理由は、きっとこのあたりにある。
これだけ売れるようになっても,あいかわらず彼女たちのお辞儀が,若手の中で最も深くて長いのには,こういった背景があるからだろう。
「Baby crusing Love」 2008年1月リリース
この曲は歌詞の意味が最初から二重になっているところがおもしろい。
「恋の運命は 愛の証明は 二人の航海と 何かが似ているかもね」
「二人の航海」と「二人の後悔」、素直に二通りの意味を取ることができる。
「簡単な事って 勘違いをしていたら 判断謝って 後ろを振り返るんだ
何だって いつも近道を探してきた 結局大切な宝物までなくした」
いったいどんな判断ミスをしたのか、何を後悔しているのか。Perfumeの歴史を振り返ると、思い当たることがある。テクノポップ路線では売れないと考えた事務所は、一時期Perfumeをアキバ系アイドルグループとして売り出そうとしたことがある。だが時を同じくして、秋葉原にはAKB48という強力なアイドルユニットが登場する。ルックスではとうてい太刀打ちできないPerfumeは、当然のことながら惨敗を喫する。
「ただ前を見ることは 怖くて しょうがないね」
ポリリズムのヒットで、ブレイクしそうな予感はするものの、本当に自分たちの音楽が認められるのかどうか、不安でしょうがない。そんな気持ちが感じとれる歌詞である。
「たどり着きたいあの場所」
それでもたどり着きたいのは、オリコンチャート上位の場所であろうか。
だが、そんな不安をよそに、この曲は堂々3位を獲得。ついにミュージックステーションに出演し、全国にPerfumeの存在を知らしめることになるのである。
「Love the World」 2008年7月9日 リリース
ポリリズム7位 Baby crusing Love3位、着々とオリコンウィークリー順位が上がってきた後の、満を持しての曲である。
「こっそり秘密をあげるよ
きっと君も気に入るよ
二人だけの特等席」
中田ヤスタカの小さな録音ブース(二人だけの特等席)で、オリコン1位を目指して作った新曲をperfumeに授ける様子(秘密をあげるよ)が目に浮かぶ。
「きっと一人で悩んで
教えてくれていいんだよ
ちょっぴり反省みたいな
キャラにもないようなことも
たまにはいいんじゃないの」
NHKの「Top RUNNER」で,perfumeの3人が,中田ヤスタカの録音スタジオの雰囲気についてインタビューされた時「冗談も何も言い出せない雰囲気だった」「私たちの名前なんか知らないと思ってた」「誰かしらいつもどこかで泣いていた」と答えていた。これを聞いた中田ヤスタカも,「ちょっぴり反省」という気持ちになったのかもしれない。そんなことをうかがわせる歌詞である。
「まだこの先が見えない 一番星探す手が震えても
あきらめないで 大切な
少しの意地と君よダーリン
刺激的 ほら素敵 見える世界がきらめくわ
手探りの私にも 少しわかる気がするんだ」
一番星を取るまであきらめるな。大切なのは少しの意地だよ。
もう少しできらめく1位に手が届く。それが手探りの私にもわかる。
だが、この曲は初登場いきなりオリコン1位を獲得した。
「Dream Fighter」 2008年11月19日リリース
ついにトップを獲得したPerfume。つらいことや厳しい現実に打ちのめされ倒れそうになっても、あきらめずついに最高の位置にまでやってきた彼女たち(Dream Fighter)に対する気持ちがストレートに感じられる歌詞になっている。どん底を経験してもあきらめずに闘う彼女たちの強さがあったからこそ、中田ヤスタカその他のスタッフたちも一緒に走り続けることができたのかもしれない。
「最高を求めて 終わりのない旅をするのは
きっと僕らが生きている証拠だから
現実に打ちのめされ倒れそうになっても
きっと 前を見て歩くDream Fighter
もしつらいこととかがあったとしても
それはきっとずっと君があきらめない強さを持っているから
僕らも走り続けるんだ
こぼれ落ちる涙も全部宝物」
ドキュメンタリーとしても成立しそうな、ノンフィクションな言葉の数々が散りばめられた歌詞である。
かしゆかが,20歳を迎えるにあたってのコメントでこう言っている。
「ずっとずっと自分に自信がなくて、自分という存在がすごく嫌で、何で私ってこんな嫌な人なんだろうってずっと思ってたけど、その存在を認めさせてくれたのがperfumeであって、二人に出会ったことだったので・・・ほんとperfumeやっててよかったです。今まで支えてきてくれたみ〜んな、ありがとう。大好きだ」
確かに彼女は,取り立てて美人なわけではない。昔は腹筋も弱くて声も不安定に震えていたし,筋力が弱くてダンスには切れがなかった。デビュー当時は他の二人に負い目を感じていた部分が多かったのではないだろうか? 自分の弱さを自覚していたからこそ,謙虚な態度が自然と表に出るようになったと思われる。そして一つ一つ,自分の弱さを克服する努力を続けてきたのだろう。今や、部分的にはのっちをしのぐのではないかと思わせるほど、ダンスには切れがある。
彼女たちは今や、結成から9年もたとうとしている。こんなに長い期間(しかもそのうちの7年はまったく売れない時代なのである)、その絆がゆるがない三人組の存在それ自体が、奇跡だと言える。
この子たちを支えてあげたい。周囲の人間をそういう気持ちにさせる文化,それを日本では「アイドル」と言うのであれば,まさしくこの3人はその正当な継承者と言えるだろう。
ただ、これまでの歌詞には、どこか満たされない切なさ寂しさを感じさせるものがあり、それがPerfumeの魅力の一つであったのだが、本作は力強さが全面に出て、切なさがなくなってしまったのが残念である。トップに立った以上、満たされない気持ちを歌詞に乗せるのは、もはや難しいことなのだろうか?
ところでだれか、Perfumeのサクセスストーリーを、中田ヤスタカの視点から語る映画作ってくれませんかね。もちろんラストのライブコンサートのシーンは本人たちで。