教育分科会 in 大分 (2005.10)
午前9:00〜正午 参加数 のべ23名教育分科会のページへもどる
前日の講演で、無着成恭さんは「命に手を合わせる教育から、金に手を合わせる教育に変わった」と言われました。その後 のシンポジウムでは、「政府はホリエモンのような人物をつくる目的で教育を行っているが、現場の教職員はそれを理解して いるのか?」という問題提起もありました。分科会でも、「一部のエリートを除いて大多数の子どもたちが負け組とされ、 『負けたのは自己決定した結果なのだから自己責任』で済まされる」「教師自身も勝ち組と負け組みに分けられる今の現場の 中で、どんな実践をしているのか」という声がありました。このような現状認識の中で、前半は次のような内容が話し合われ ました。
(1) メインストリームにどう対応するか。どんな目標をもつのか
「最初は、授業とアドラー心理学がうまく結びつかないと思っていた。それが結びつきかけていた。『できること=能力 がある』『教えあい=仲間である』と思い、この路線で行けばいいと思っていた。しかし、前日の講演とその後のシンポジウ ムの話で、いつの間にか、メインストリームの中にいる私たちに気づき、これからどうすればいいだろうかと考えている。」 という問題提起がありました。これに対して、「パセージの考え方でやっていきたいし、やっていけるかなぁと思っている。 でも、そうしている私も大きな流れの中にいるのかな、と立ち止まった」「文部科学省から来るのは、一見するとアドラーに 近くみえる、きれいな言葉。でも誤解していた。アドラー心理学の目標を目指していくことで政府に対抗できるのか。自分は いいことをしていたつもりなのに。」といった戸惑いの声がだされました。問題が大きすぎて、どうすればいいのかはっきり した具体像はなかなか見えてきませんでしたが「まず自分自身がアドラーの思想を実践していくことが大前提ではないか。」 「すべてのことにこれでいいのかと問いかけながらやっていかなければいけないのでは。」といった意見がだされました。
(2) 現場でどのようにパセージを実践するのか。
@ 子どもとの関係
子どもとの関係では、「自分が目指すもの」と「子どもたちをそっちの方向に持っていく自分の支配欲」について話し 合われました。また、子どもたち自身に「学校へ来ることの意味」を問いかけることで勇気づけが行えるのではないかという 意見もありました。この場合も、「横の関係ではなく縦の関係(支配)のための目標になってしまうこともあるので意識して おくほうがよい」という指摘もありました。また、「学校は先生が待ち構えているところではなく、楽しめる場所であってほ しい。行きたい気持ちになる学校だといいと思う」という意見がありました。
A 同僚との関係
元幼稚園の先生から、「(小学校は)幼稚園から見ると今も昔も変わらない。先生同士がつながっていない。なぜつな がらないのかと聞くと、「忙しい」とか「ほかの人のことをしらない」など。まず変わるのは子ども。次が保護者。職員が一 番変わらない。」という指摘がありました。その前に他の方から、「パセージを学んでから、同僚と考え方自体に大きなズレ がある。それもパセージでなんとかなるのかな、と思っている。」という話がありました。
実際にはすべての論点は並行して話し合われており、他にもいろいろな論点が含まれていたと思います。ここにあげた内容に ついてもまだまだ話はつきませんでしたが、「続きをネットなどでしたいですね」という言葉で、前半を終わりました。
休憩を挟んで、後半は、障害をもつ二人の子ども(小6女子・小5男子)の事例を検討しました。 まず、その子どもの好きなこと、落ち着いていられること、認知の程度、サインは何を使うのか等について質問がありました。 そして、状況と感情の動きをよりはっきりと把握し代替案を考えるため、(提案者にとってより切実な)男児のロールプレイ を行いました。
その中で、身体の大きな男児がしつこく接触してくることへの先生の戸惑い、男児の側からは拒絶されたという気持ちと先生 の対応にさらに興奮していくことがわかりました。役割交換などを行いながら、「その子はその行動が不適切であると知って いるのか?」「その行動を起こす前に何かサインがないのか?」などを考え、子供が行動を始める前にこちらから手を組みに 行ってゲーム的に暖かくかかわる等の双方が安心できるような代替案をロールプレイしました。 また、彼の家族とのかかわり、第二次性徴への対応等も話し合われました。参加者から療育施設で広がりつつあるスヌーズレ ンというリラックスのための環境の紹介や、「以前、『言葉が通じないのならばアドラーの範疇外で行動療法になる。その子 を変えていくのなら行動療法。自分の心を変えていくのならアドラー。』と野田先生から言われた。」という話もありました。 最後は、「どんな大人になってほしいのか」「不適切な行動に注目せず、適切な行動に注目する」「学校でも共同体に貢献で きる場面をつくる」といったパセージの基本に戻った形になりました。一方で、障害者の方たちが、訓練の名の下に1時間7 0円で働いているという厳しい現実があることも確認して、後半を終わりました。
最後に、全国アドラー心理学教育実践連絡協議会の運営について、事務局員の棗田さんから相談がありました。アドラー心理 学会の教育分科会の運営と教育界でのアドラー心理学の実践および啓蒙を目的とした会ですが、本来2年で交代しなければな らない事務局員が交代出来ずに固定してしまい、活動自体も停滞状態にある。そこで「全ア教連(略称)の存続についてどの ようなニーズがあるのか?今後の運営をどうすべきか?」という相談がありました。これに対し、存続を望む声も、少数に負 担がかかる運営には無理があるという声もありました。
(報告 阿部聡子)