宇治の橋姫
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時は平安初期、嵯峨天皇(809〜823)のときのことです。

大変に嫉妬深い公家の娘がいました。

その娘は、契りを結んだ男の心変わりに嫉妬し、浮気男とその相手の女を怨んで

いました。

嫉妬の末、娘は貴船神社に詣でて、七日間籠もり、次のように祈り続けました。

「貴船大明神、我を生きながら鬼神に成し給え。妬ましいと思う女を取り殺さん。」

すると貴船大明神から次のような示現があったのです。

「真に鬼に成りたくば、姿を改め宇治の河瀬に行き三十七日浸れ」

そのお告げを聞いた娘は悦んで都へ帰りました。

娘は人気のない場所に籠り、長い髪を五つに分けて五つの角を造り、

顔には朱を指し、身には丹を塗りました。

さらに頭には鉄輪(かなわ)を戴き、鉄輪の三つの足には松を燃やし、

松明を拵へて両方に火をつけ、口に銜えました。

そして娘は夜更けの大和大路へ走り出て、南の宇治の河瀬を目指すのでした。

娘の頭からは五つの火が燃え上がり、顔も身も赤く、さながら鬼の形相でした。

これを見た人は、あまりの驚きに肝魂を失い、倒れ絶命するのでした。

娘は、三十七日のあいだ宇治の河瀬に行って浸り、ついに生きながらにして

鬼となったのです。

そして妬ましい女とその縁者、妬ましい男とその縁者のことごとくを殺して

しまったのです。

「宇治の橋姫」と呼ばれるのは、この娘のことなのです。



貴船神社 元来は水の神、雨乞いの神として崇敬を集めている。
縁結びの神としても有名。
ただし、丑の刻参りの神社としても一般には語りつがれている。



参照、「平家物語剣の巻」

貴船神社 貴船神社


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