| 廉承武の霊 |
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時は平安中期、月の明るい夜のことです。
村上天皇が清涼殿の御座(おまし)にて、琵琶の名器といわれる玄象(げんじょう)を 一人で奏でていました。 その時、影のようなものが空から飛んで来て、清涼殿の廂の外側にとまりました。 村上天皇が「何者ぞ」と問うと、その影のようなものが答えました。 「唐の琵琶博士で、字(あざな・・中国で元服に際して、実名の他に付ける名)は、 劉次郎(りゅうじろう)、廉承武(れんしょうぶ)でございます。 今、清涼殿の上空を通り過ぎて行こうとしたところ、素晴らしい琵琶の音が聞こえ ましたので参上した次第です。 昔、藤原貞敏(ふじわらのさだとし)に伝授した曲の残りを今、帝に伝授いたしたく 思います。」 天皇は感激し、琵琶を遣わしたところ、廉承武は琵琶をかき鳴らしながら言いました。 「これは、もとは廉承武の琵琶でした。藤原貞敏に譲ったものの一つです。」 それから廉承武と村上天皇は、一晩中語らい合いました。 そして廉承武は、琵琶の秘曲である上原石上(じょうげんせきじょう)を天皇に 伝授したのです。
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