廉承武の霊
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時は平安中期、月の明るい夜のことです。

村上天皇が清涼殿の御座(おまし)にて、琵琶の名器といわれる玄象(げんじょう)を

一人で奏でていました。

その時、影のようなものが空から飛んで来て、清涼殿の廂の外側にとまりました。

村上天皇が「何者ぞ」と問うと、その影のようなものが答えました。

「唐の琵琶博士で、字(あざな・・中国で元服に際して、実名の他に付ける名)は、

劉次郎(りゅうじろう)、廉承武(れんしょうぶ)でございます。

今、清涼殿の上空を通り過ぎて行こうとしたところ、素晴らしい琵琶の音が聞こえ

ましたので参上した次第です。  

昔、藤原貞敏(ふじわらのさだとし)に伝授した曲の残りを今、帝に伝授いたしたく

思います。」

天皇は感激し、琵琶を遣わしたところ、廉承武は琵琶をかき鳴らしながら言いました。

「これは、もとは廉承武の琵琶でした。藤原貞敏に譲ったものの一つです。」

それから廉承武と村上天皇は、一晩中語らい合いました。

そして廉承武は、琵琶の秘曲である上原石上(じょうげんせきじょう)を天皇に

伝授したのです。



参照  「十訓抄」 十ノ十九


京都御所の清涼殿 現在の京都御所内の清涼殿


平安時代の内裏の清涼殿を模倣している


廉承武 れんしょうぶ
754〜838
唐の琵琶の名人


村上天皇 924〜972
第62代天皇
村上帝の治世は天暦の治と称された


清涼殿 内裏において天皇が常の住居とする殿舎
紫宸殿が公務を行うのに対し、清凉殿は日常の天皇の住居


玄象 げんじょう
中国伝来の琵琶の名器
天皇家累代の宝物で、逸話が多い


十訓抄の教え




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