| 女、鬼に喰われる |
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今は昔、在原業平という右近中将がいました。
業平は世間で評判の色好みでした。 世に存在するすべての美女と思いを遂げたいと願っていたのです。 そんな業平が、この世のものとも思えないほどの美しい女に夢中になりました。 業平は言い寄ろうと努力しますが、その女は高貴な家柄であり、手が出せません。 そこで業平は、女を館から密かに盗み出したのです。 しかし、盗み出したはいいものの女の隠し場所に困ってしまいます。 結局、北山科にある山荘に隠しました。 その山荘は荒れ果てていて、人も寄り付かないような山荘でした。 業平が女とともに山荘の中にある倉に隠れて程なくのことです。 俄かに雷鳴が轟きだしました。 業平は太刀を抜き、女を後方へ押しやって、太刀を振り回しました。 そうこうしているうちに、雷鳴も止み、夜が明けました。 業平は、ふと女が物音ひとつたてていないことが気になり、振り返ってみると、 女の頭と衣だけが残っていたのです。 業平は怖ろしくて、あわてて逃げ去りました。 それより、この倉は人取為す倉として知られました。 なぜなら、これは雷鳴の仕業ではなく、倉に住む鬼の仕業だからです。 様子の分からない所には決して立ち寄ってはいけない、 ましてや、様子分からないところに泊まるなどもっての外だと、 語り伝えられているのです。
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