一条戻り橋・・・(鬼女の出没する橋)

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時は平安中期。
 
京の堀川あたりは、日が暮れると人の気配もなくなり
 
静まり返っていました。
 
ある日の日も暮れた頃、渡辺綱という当時勇猛で知られた侍が、
 
堀川に架かる一条戻り橋を通りかかりました。
 
聞こえるのは、堀川を流れる水の音と繁った草木が風にたなびく音だけです。
 
そんな静かな中で、渡辺綱を呼び止める声がしました。
 
「あのう、もし。」女の声でした。
 
振り向いてみると、そこには若い娘がひとり立っているのです。
 
「日も暮れたというのに、若い娘がひとり、なぜこんな場所にいるのだろう。」
 
渡辺綱が不自然な思いで娘を見つめていると、
 
その娘は綱の疑問を察したように答えた。
 
「五条まで参りますが、暗くなってしまい怖くて困っていました。
 
ご一緒させてもらえませんでしょうか?」
 
綱は、馬の後ろに娘を乗せ、送ってやることにしました。
 
一条戻り橋を渡っているとき、雲の影から月が顔を出しました。
 
その月光は、堀川の水面に馬上の二人を映し出したのです。
 
一人は渡辺綱、そしてその後ろにいるものは、
 
まぎれもなく鬼女の姿をしていました。
 
鬼女は見破られたことに気付くと、
 
咄嗟に渡辺綱の髻を掴むと空へと飛び上がりました。
 
豪胆で知られた綱は少しも慌てることなく、刀を抜くと一刀両断のもとに、
 
自分を掴んでいる鬼女の腕を切り払ったのです。
 
鬼女はそのまま雲の中へと逃げていきました。
 
綱が飛び降りた場所は、北野天満宮回廊の屋根の上でした。

北野天満宮には、渡辺綱が振るったとされる太刀が今も保存されています。
 



 
渡辺綱
 
平安中期の武将で源氏の一族。
源頼光(みなもとのらいこう)の配下で、
坂田公時、平貞道、平季武とならび四天王と称された。


 
一条戻り橋
現在の一条戻り橋

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