| 恋の鞘当 |
| 京都伝説へ |
| TOPへ |
|
今は昔、藤原定頼は小式部内侍と
長い間、情を通わしていました。
その小式部内侍には、藤原教通も通っていました。 ある日のことです。 藤原教通が小式部内侍の部屋で伏していると、 そうと知らずに藤原定頼がやって来て、小式部の部屋の戸を叩きました。 部屋付きの女童が理由を説明したので、定頼は沓を履いて出て行きました。 しかし定頼は、少し歩き去ったかと思うと、 突然大声でお経を読み始めました。 二声ぐらいまでは小式部が少し耳をそばだてるようにしただけだったので、 教通は少し妙だなと思いつつも、特には気にしませんでした。 お経を読む声は遠ざかるように思えて、しかし通り過ぎもしません。 四声五声とお経を読む声は続きました。 「ああ」 小式部はそう溜息をつくと、後ろ向きに伏し返りました。 小式部の部屋に伏していた教通は、 「あれほど堪えがたく、恥ずかしかった事はなかった」 と、後に語ったそうです。
|
| 京都伝説へ |
| TOPへ |