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Maple林の花園(2)Hurwitz stable set
Robust Stability (1) (この一連の研究はK氏との共同研究である。また多大の感謝をN氏に捧げる。)
mapleはカナダ国旗の標章になっているカエデで、Maple V(メイプルファイブ)はカナダのWaterloo大学で1980年代初期からの研究成果を基に開発された数式処理システムである。数式処理では日本ではMathematicaが良く知られている。従来のコンピュータが本質的に数を処理した(数値計算)のに対し、数式処理システムは文字式の因数分解や展開から始まって、関数の漸近展開など数式を直接扱い、従来手計算するしかなかった数式処理を行う。Mapleは、数式処理と数値計算を両方こなす、ありがた〜いシステムである。
私とMapleの出会いは、阪大の授業に年2回機械演習としてMapleによる実習が取り入れられたことから始まる。もう3年位になるかと思うが、実は資料をさらっと見るだけで、実際の演習の時間はほとんどTA任せであった。
最近、友人でフリーの応用数学者K氏と、係数が複素変数xの多項式である2変数多項式
W^n + a_n-1(x)W^(n-1) + ・・・・+ a_0(x) = 0 ・・・(1)
の解が全て|W|<1となるx-平面の開集合Dの性質などを調べている。Dが開集合になるのは係数の連続性から解の連続性が従うからである。今のところ始まったばかりであるが、MapleでDの図を描いて実験的にアプローチしよう、というところである。
まず1つ分かっていることがある。
[オリオン定理] Dの連結成分は単連結である。
ということである。
先ず手始めに簡単な多項式で絵を描いてみた。(1)が
W^4 + x*W^3 + (2/3)*W^2 - 1/3 = 0 ・・・(2)
のDである。横軸は実軸、縦軸は虚軸である。有る程度広い範囲でDを求めたが下図に限られることは簡単に分かる。証明は次回やるつもり。
Robust Stability(2)
先ずDの範囲を限定出来る話をする。解と係数の関係から簡単に分かるのだが、
[定理1] (1)の解がすべて|W|<1なら |a_n-k(x)| < nCk (k=1,...,n) である。ここにnCkは組み合わせの記号。
従って、(2)のDの存在範囲は |x|< 4C3=4 であり、(3)の場合は |x^2|<4 より |x|<2、(4)の場合は |x^2|<4 かつ |2/3x|< 4C2 で |x|<2 である。
またa_0(x) ≡ 1 ならDは空集合であることが分かる。
一般に
[定理2] (1)の左辺の係数が全て定数でないなら、Dは有界集合である。
xー>∞(無限遠点)とすると係数が定理1の条件をみたさなくなるからである。
ちなみに(1)の左辺の係数が全て定数の時次の古典的な定理がある。
[定理(エネストレム・掛谷)] 1 > a_n-1 > a_n-2 > ・・・ > a_0 > 0 (A)ならWは|W|<1をみたす。
もうちょっと易しい命題として、
[命題3] 1 > |a_n-1| + |a_n-2| + ・・・ + |a_0| (B)ならWは|W|<1をみたす。
命題3の定数は複素数でもよいので、次の命題が言える。
[命題4] (1)の左辺の係数が 1 > |a_n-1(x)| + ・・・ + |a_0(x)| をみたすxはDに属する。
ここで話題を変えてDの対称性について考える。今までのDは全て何らかの対称性を持っていたが、それは実は特殊な出来事で計算時間を早くするために、簡単な係数を採用したことに関係している。
(2)、(3)のDは実軸に対しても虚軸に対しても対称である。その理由は実軸に対して対称なのは、式の共役を取ると容易に分かるが、x に対して解 W があると、\bar{x} に対して解 \bar{W} がある。(\bar{x}はx の共役複素数のこと)今 |W|<1 なら
|\bar{W}|<1 であるから、x がDの点なら \bar{x} もDの点である。虚軸に対して対称なのは、x がDの点なら \bar{-x} もDの点であることを言えば良い。ちょっと計算すると x に対して解 W があると、\bar{-x} に対して 解 \bar{-W} があることから分かる。
話を一般化すると、
[定理5] (1)の左辺の係数の x の多項式 a_i(x)の係数が全て実数であることが i= 0,...,n-1 について成り立つならば、Dは実軸に対して対称である。
(4)のDが実軸に対して対称であることは、定理5から予見できる。
Dが実軸、虚軸に対して対称でない例を作ってみよう。そうでないのが特殊なので、適当に
W^4 + (x + (1/3)*I)*W^3 + (x - (2/3)*I)W^2 - 1/3 = 0 ・・・ (5)
のDを描いてみた。(I は虚数単位)
Robust Stability(3)
今までのDは連結(つながっている)であった。しかし一般にはいくつかの連結成分に分かれる。その例をやってみよう。
何次式でも同じことなので、CPの負荷を下げるために3次式でやってみよう。
W^3 + (x^3 - 2.2)*W^2 - 1/3 = 0 (7)
(7)の方程式が何故Dが分かれるかと思えるかというと、まずx = 0 (0+0i)のときW^2の係数の絶対値が3以上なら[定理1]よりxはDに属さない。今回は3を2と間違えてやってみたのだが、結果オーライであった。ともかくxがDに入らないとすると、Dは空集合でないから(x^3 = 2.2 を満たすxは[命題3]よりDに属する)必ずいくつかの、多分3個のDに分かれることが予想されるのである。オリオン定理よりDがつながっていると原点はDに属さないからDの単連結性に反するのである。
このDは
Robust Stability(4)
前回で種は尽きました。これから実験的試行錯誤でやっていくしかありません。前回の方程式で
W^3 + (x^5 + 0.5)*(x^5 - 1.2)*W^2 -1/3 = 0 (10)
でDは
Robust Stability(5)
2変数多項式
W^n + a_n-1(x)W^(n-1) + ・・・・ + a_0(x) = 0 ・・・(1)
の係数が大きくなるとDは小さくなります。たとえば「定理1」より|a_0(x)|≧1であればDは空集合です。
もっと具体的なのでやると、
W^4 + x*W^3 + 1/2*W^2 - 1/3 = 0 (14)
のDは、
Robust Stability(6)
今日はちょっと専門的な話。共同研究者のK氏が定理(Hollot-Bartlett,1986)として彼自身のレジュメ的資料に言明し、今後この分野で重要な役割を果たすとしている定理がある。私は何かクサイと思ったので原論文を送ってもらうよう頼んだ。それをながめてみると、K氏の言明しているステートメントは無い。なんやかんやでK氏の準拠しているRobust Controlの教科書を手に入りにくいのを無理して買ってもらうことになった。それで彼らの名前の引用されている部分を調べたが、先程のステートメントは記述されていない。ステートメントが間違っていることを証明するのは簡単である。反例を作ればいいのである。それも今までここでやってきた知識を頭に置きながら試行錯誤的にMaple様に働いてもらえばいいのである。結局は反例は見つからず、どうも定理は正しいように思えてきた。結局反例が出来たと思ったり、失敗とわかったり、本当に試行錯誤の連続であった。色々やっているうちにこのあたりの数覚が豊かになってくる。どうもオリオン定理が反例を作るのを難しくさせているようだ。なんか自信が無くなってきたが、どうも問題の定理は正しそうだ。根拠をK氏に聞いてみたいと思っている。
まず問題の定理?の一番重要な部分を述べる。
[仮説6] P(W) = W^n + [a_(n-1),a_(n-1)']W^(n-1) + ・・・ + [a_1,a_1']W + [a_0,a_0'] と置く。
a_i, a_i'は実数で a_i ≦ a_i' をみたす。i = [n/2]+1, ・・・,n-1 に対しては a_i = a_i' 、ここに[ ]はガウスの括弧。
P(W)のすべての頂点多項式の解が|W|<1をみたすなら、区間多項式P(W)の解は|W|<1をみたす。
言葉の詳しい説明は後程述べる。
まず2,3時間色々やってみてネタになる方程式が見つかった。
W^4 + 1/3*W^2 + x*W + 1 - 10*x^2 = 0 (18)
のDは、
Robust Stability(7)
再公開のご挨拶かたがた。10/3に私の属している多変数のセミナーで「On a Schur stable set」と題していつものメンバーに聞いてもらいました。今まで述べた定理、命題については基本的に間違いはなかったようです。ただ非公開にしてから出した命題で(5)に戻りますが、係数がxの多項式であるWのn次の多項式のDの連結成分の数は、xについて並べ変えた時、xのm次の多項式とすると高々m個である、つーのは間違っておりました。セミナーでは指摘されなかったのですが、そして配布した資料の図はすべてその命題通りだったのですが、証明がおかしいことに自分で気が付いて、このHPに出た例を見てみると反例があったんですね。それは(5)における(16)のDなんです。m=1なのに連結成分は2つに分かれています。それで色々考えてそういうものを考えるための助けになるようなプログラム(と言っても簡単なものなんですが)を作って絵を描く所までいきました。しかしもうすっかりMapleは忘れていたので、お〜じょ〜おしましたでぇ〜。それについては段々分かる程に公開していきます。ただしいつのことになるかは未定です。自分の研究が俄然いそがしぃ〜になりましてな。なんや、こだま・ひびきみたいでんな。命題はまちごうてるゆーても簡単には引き下がりまへんでぇ〜。大体はそないに目茶苦茶連結成分があるとは考えられません。それが常識ちゅーもんで、今までの絵もそうだ、そうだと言っております。
それ以後見つけた当たり前の定理をあげておきます。
[定理](Frazer-Duncan)
Jordan 閉曲線C上の1点x_0がDに属し、C上のすべてのxについて W^n + a_(n-1)(x)W^(n-1)+・・・+a_0(x)≠0が|W|=1で成立するなら、Cの囲む閉領域はDに属する。
理由は偏角の原理とオリオン定理を使うだけです。
それじゃぁ愛想無しですけど、今日はこのへんで。
06.11.3 数楽庵にて。
Robust Stability(8)
結局、ここまでの研究をまとめて On a Schur stable set of algebraic equations という題でプレプリントを作る一歩手前まできました。実は下書きも終え、図の取り込みの問題もマイミクさん(神戸大・情知の人)に教えてもらって簡単に解決し、これからTexで打つつもりをしています。
それで間違えていたSchur stable setの連結成分の数ですが、簡単には言えないか、もともと何かが言えることではないのか、しかと分からないのですが、Problem としておきました。そして例として新たに
W^4 +(x^4 + 2*x^3 + x^2 + x + 0.1)*W^3 + 0.7*W^2 - 0.3 = 0 (19)
のDは、