グリーグ ピアノソナタ ホ短調Op.7
- アンスネス(Virgin<92>)(4:37/4:49/3:49/6:07)◎ ジャケット
個人的にはこの曲の理想的な演奏で、文句を付けるところがあまりない。
(逆にこの演奏を基準として他の演奏を測ってしまうきらいがあって、あまりフェアな聴き比べと言えないのかもしれない…。)
力強さと抒情性・繊細さを兼ね備え、解釈もあくまで自然で作為的なところがない(彼の演奏では、逆にその凝ったところがなさが物足りなさにつながる可能性もあるが、この曲ではそれを感じない)。まさに北欧を感じさせるというところか。強いて言えば第1楽章展開部の右手と左手の対話はもう少し強調してもよいか。
音がきれいで透明感があり、ここぞというところではスピード溢れる畳み込みとキレのよさを見せる。
特に終楽章が秀逸。何かに憑かれたような表現は他盤の追随を許さないものがある。
- イムセ(Naxos<93>)(4:27/4:41/3:45/6:13)◎-○
解釈・演奏の傾向はアンスネスと非常に似ている。というわけでアンスネスの項で言ったことはほとんどそのままあてはまる(別に彼の演奏を真似したわけではないだろうが)。
アンスネス盤に比べると、抒情性や繊細さがやや薄れて、より力強さやメリハリある表現に傾いている感じはする。
ただ終楽章に関しては(悪くはないのだが)アンスネス盤の魅力には今一歩及ばないか。
- クナルダール(BIS<78>)(4:47/4:46/3:04/7:09)◎-○
力強くダイナミック。テンポは落ち着いていて(特に終楽章)、また1音1音にかなりアクセントを付ける傾向がある。
ここぞという力が入るところでしっかり強打してくれる(かといって下品にぶっ叩くわけではない)ので、気持ちがいい(フラストレーションの解消にいいかも)。
微妙な陰影や繊細さ、デリカシーには欠けるかもしれないが、盛り上げるツボは押さえてあり、こういう演奏も悪くない。
- チッコリーニ(EMI<65>)(4:00/4:07/2:50/6:03)○-◎
非常にストレートで明晰。テンポも全体的に速く、特に第1楽章はインテンポで一気呵成にもっていく感じがあって、そのドライブ感が非常に魅力的。変に感傷的なところやもったいぶったところがないが、悪く言えば微妙な変化に乏しいというか一本調子で、残楽章はその欠点の方がやや気になる。
北欧の抒情性とか、そういうものは感じさせず、あくまで絶対音楽としてのソナタを聴いているという感じがする。
- ステーン=ノックレベルグ(Naxos<93>)(4:26/4:26/3:25/5:55)○
出だしのフレーズの上行音型でのノンレガートのタッチが新鮮。
全体的に非常に整っていて、これといった欠点はないのだが、逆に他盤にない魅力にも乏しい感じがする(やや厳しい評価か)。
強いて言えば細かいアゴーギクに私の感覚と少しズレというか違和感があり、ここぞというところであまりアッチェランドしなかったり、変なところで少しタメを作ったりするが、それも細かい話ではある。
- プレトニョフ(DG<99>)(4:44/3:49/2:31/6:32)○
音色や響きの変化が豊かで幻想的。テンポも細かく変わり(多少もったいぶったところがあるのは)チッコリーニとは対照的。
ただ特に終楽章で感じるのだが、1つ1つのフレーズに細心の注意が払われていて部分部分は面白いのだが、それらを単に接合したような寄木細工のような感じがあって、全体的な流れは阻害されているような気がしないでもない。
第3楽章はかなり速いテンポで、左手の8分音符の動きを目立たせるのが彼らしくて面白い。
- グールド(CBS<71>)(6:38/5:57/5:41/7:41)○-△
グールド独特の解釈。テンポが異様に遅い。躍動感とか熱気とか、そういうものは皆無で、静かな緊張感といったものが漂う。ただテンポには一貫性があり、プレトニョフが感覚的なものに走ったとすれば、さしずめ偏執狂的というところか。
特に第3楽章は失速しそうに遅く、息がつまりそうになる。
またデュナーミクなどの指定も意図的に無視しているが、これは再創造を行おうとする彼にとっては当然のことだろう。
確かに捨て置けない魅力がある。ただ(一聴の価値は十分にあると思うが)最初に聴く一枚にはしない方がいいかも。
- ヤブロンスキ(Decca<96>)(4:44/5:07/3:15/6:35)(初版)△
他の曲のところでも書いたが、ヤブロンスキの演奏は楽譜を(表情記号付きで)コンピュータに打ち込んでそのまま演奏させたみたいなところがあり、楽譜では表わせないような微妙な表情づけに乏しく、いわゆる「センス」が感じられない。
技巧(メカニック)が前面に出る曲ならそういう演奏も悪くないと思う(というか個人的には結構好き)が、この曲ではつまらなさだけが目立つ。音色の変化も乏しく、また音(特に和音)に透明感が欠ける。
なお初版を使っているが、大きな違いは終楽章の主題部提示部。最初は少し違和感があるが、聴き慣れるとこれも悪くない。また第2楽章ではデュナーミクが異なる(盛り上がったところでの急激なppがない。ちなみにグールドもそう)。
その初版が聴けることがこの盤の価値とも言える(が、ステーン=ノックレベルグも別に初版を録音している)。
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